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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アルコニックスは調整の最終局面、16年3月期増配予想や指標面の割安感を見直し
- 2015/12/22 08:53
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
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アルコニックス<3036>(東1)は商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合企業」を目指している。平和金属の株式取得が完了して負ののれん発生益を計上するため、16年3月期の純利益は大幅増益予想だ。株価は全般地合い悪化も影響して11月の戻り高値圏から反落したが、8月の年初来安値に接近して調整の最終局面と考えられる。16年3月期増配予想や指標面の割安感を見直して反発のタイミングだろう。
■商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合企業」
軽金属・銅製品(伸銅品、銅管、アルミフィン材など)、電子・機能材(レアメタル・レアアース、チタン・ニッケル製品など)、非鉄原料(アルミ・亜鉛地金など)、建設・産業資材(配管機材など)を取り扱う非鉄金属商社である。
レアメタル分野に強みを持つことも特徴だが、中期成長に向けて商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合企業」を目指し、M&Aも積極活用して、非鉄金属の周辺分野も含めた川上(製造)~川中(流通)~川下(問屋)を網羅するビジネス展開を推進している。
13年1月金属・化成品メーカーの米ユニバーティカル社を子会社化、13年3月アルミ合金スクラップ販売の大阪アルミセンターを子会社化、13年4月産業機械用精密加工部品メーカーの大羽精研を子会社化、14年4月住宅建設関連資材メーカーのケイ・マックを持分法適用関連会社化した。
14年11月には子会社アルミ銅センター(大阪アルミセンターが14年9月1日付で商号変更)が、稲田商会(福岡県北九州市)の銅リサイクル事業(稲田銅センター)を譲り受けた。
15年7月には当社100%出資の中間持株会社アルコニックス・トーカイを設立し、アルコニックス・トーカイが東海溶業(愛知県豊田市)の全株式を取得して子会社化した。
東海溶業は溶接材料の製造ならびに溶射加工事業を展開して、特に金型用肉盛溶材および溶射加工において業界で高い地位を確保している。また国内主要自動車メーカーを筆頭に優良大手企業を取引先として、安定した収益基盤を確立している。当社グループの製造・加工分野に溶接・溶射加工という新たな事業基盤が加わることになる。
15年10月には非鉄金属専門商社の平和金属(大阪市)の株式を取得して連結子会社化(所有割合78.35%)した。株式取得時期が当初予定より遅れたが、16年3月期第3四半期(10月~12月)から連結対象とした。同社は大手高炉メーカーの指定代理店で、国内の大手空調機器や自動車メーカーなどの優良顧客を持ち、グループに製造子会社も有している。
■収益は非鉄金属の市況が影響するが積極的なM&A効果も寄与
なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)484億04百万円、第2四半期(7月~9月)485億96百万円、第3四半期(10月~12月)546億06百万円、第4四半期(1月~3月)499億37百万円で、経常利益は第1四半期17億13百万円、第2四半期13億95百万円、第3四半期13億02百万円、第4四半期7億95百万円だった。
レアメタル・レアアースの市況、持分法投資損益、そしてM&Aに伴うのれん償却や負ののれん益なども収益変動要因となるが、積極的なM&Aの効果も寄与して収益拡大基調だ。また15年3月期の配当性向は14.6%だった。ROEは14年3月期比2.5ポイント低下して14.9%、自己資本比率は同5.0ポイント上昇して29.3%だった。
■16年3月期第2四半期累計は増収減益
今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比4.3%増の1011億85百万円、営業利益が同8.9%減の21億90百万円、経常利益が同25.5%減の23億14百万円、純利益が同24.9%減の17億19百万円だった。
スマートフォン・タブレット端末関連の電子材料、チタン・ニッケル展伸材や銅管・銅スクラップなどが増加し、国内連結子会社である大羽精研や国内販売子会社も増収に貢献し、売上総利益は同5.3%増加したが、販管費の増加で営業減益だった。なお売上総利益率は6.1%で同0.1ポイント上昇、販管費比率は3.9%で同0.4ポイント上昇した。
経常利益は営業外収益でケイ・マックを持分法適用関連会社化したことに伴う負ののれん発生益が一巡したことも影響して減益だった。なお純利益については、平和金属の株式取得遅れに伴って負ののれん益の特別利益計上が第3四半期(10月~12月)に変更となったことも影響した。
セグメント別経常利益(連結調整前)を見ると、軽金属・銅製品は増収だがケイ・マックの負ののれん発生益が一巡して同27.7%減の13億84百万円、電子・機能材はスマートフォン・タブレット端末関連が伸長したがレアメタル・レアアースの数量減少などで同14.1%減の8億39百万円、非鉄原料は市況下落に伴う在庫評価損などで同82.1%減の24百万円、建設・産業資材は国内配管機材の減少で同30.1%減の68百万円だった。
なお四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)529億30百万円、第2四半期(7月~9月)482億55百万円、経常利益は第1四半期12億71百万円、第2四半期10億43百万円だった。
■16年3月期売上高、営業利益、経常利益を減額、純利益を増額修正
今期(16年3月期)通期の連結業績予想については11月6日に売上高、営業利益、経常利益を減額修正、純利益を増額修正した。前回予想(5月15日公表)に対して、売上高は100億円減額して前期比2.2%増の2060億円、営業利益は4億50百万円減額して同14.9%減の39億円、経常利益は7億円減額して同21.2%減の41億円、純利益は8億円増額して同36.9%増の48億円とした。
レアメタル・レアアースの需要低迷や中国経済減速による国内外の生産に対するマイナス影響を考慮して、売上高、営業利益、経常利益を減額した。純利益については平和金属の負ののれん発生益20億円を計上するため増額修正した。
配当予想は前回予想(5月15日公表)を据え置いて同4円増配の年間44円(第2四半期末22円、期末22円)としている。予想配当性向は11.8%となる。
セグメント別経常利益の計画は、軽金属・銅製品が同21.8%減の23億50百万円、電子・機能材料が同11.2%減の15億40百万円、非鉄原料が同88.8%減の30百万円、建設・産業資材が同13.0%減の1億80百万円とした。軽金属・銅製品は新規M&Aが寄与して増収を見込み、利益はケイ・マックの負ののれん発生益一巡の影響を除けば実質的に前期と同水準となる。建設・産業資材では新規連結の東海溶業が下期から本格寄与する。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が49.1%、営業利益が56.2%、経常利益が56.4%、純利益が35.8%である。純利益がやや低水準の形だが、第3四半期(10月~12月)に平和金属の連結子会社化に伴う負ののれん発生益を特別利益に計上する。
■新中期経営計画で18年3月期ROE13~15%程度目標
15年5月に新中期経営計画(16年3月期~18年3月期)を発表した。1年ごとに見直すローリング方式で、経営目標値として18年3月期の経常利益65億円超、純利益43億円超、ROE13~15%程度、NET/DER1.0~1.3倍程度を掲げ、3年間の投融資総額はM&Aを中心に200億円の計画としている。
セグメント別には軽金属・銅製品が売上高982億円、経常利益34億50百万円、電子・機能材が売上高1008億円、経常利益23億80百万円、非鉄原料が売上高360億円、経常利益3億10百万円、建設・産業資材が売上高180億円、経常利益3億60百万円としている。
商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合企業」を目指し、アクションプランとして、業容拡大に向けた川上・川中・川下等のM&A推進および新規事業投資案件の発掘推進、成長著しいレアメタルおよび電子・機能材料分野のさらなる強化、アルコニックスグループの商いの基盤をなすアルミ・銅分野の維持・拡大、環境問題に対応したリサイクル分野の強化、海外店ネットワークのさらなる充実による顧客ニーズ対応および地場取引・三国間取引の拡大に向けた商社機能の発揮としている。
積極的なM&A戦略も奏功し、グループのシナジー効果を高めて中期的に収益拡大基調だろう。
■株価は調整の最終局面、16年3月期増配予想や割安感を見直し
株価の動きを見ると、11月27日の戻り高値1786円から反落し、ほぼ一本調子に12月21日の1516円まで調整した。全般地合い悪化も影響したようだ。
12月21日の終値1562円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS372円83銭で算出)は4~5倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間44円で算出)は2.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2053円83銭で算出)は0.8倍近辺である。時価総額は約201億円である。
週足チャートで見ると、26週移動平均線が戻りを押さえる形となって反落し、再び13週移動平均線を割り込んだ。ただし8月の年初来安値1472円に接近して調整の最終局面と考えられる。16年3月期増配予想や指標面の割安感を見直して反発のタイミングだろう。