【アナリスト水田雅展の銘柄分析】トレジャー・ファクトリーは調整局面だが売られ過ぎ感、16年2月期増収増益基調に変化なし

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 トレジャー・ファクトリー<3093>(東1)はリユースショップをチェーン展開し、新業態開発や買い取り強化に向けたアライアンス戦略も積極推進している。株価は第2四半期累計(3月~8月)の利益伸び率鈍化や、11月既存店売上の前年割れを嫌気して調整局面だが、売られ過ぎ感を強めている。16年2月期増収増益基調や中期成長シナリオに変化はなく、反発のタイミングだろう。

■リユースショップを首都圏中心にチェーン展開、関西へもドミナント出店

 首都圏を中心として、総合リユース業態「トレジャー・ファクトリー」や服飾専門リユース業態「トレファクスタイル」などのリユースショップを直営店中心にチェーン展開している。

 15年2月期末時点の店舗数は直営総合業態「トレジャー・ファクトリー」50店舗、直営服飾業態「トレファクスタイル」24店舗、新業態の古着アウトレット業態「ユーズレット」1店舗、スポーツ・アウトドア業態「トレファクスポーツ」1店舗、事業を譲り受けた「ブランドコレクト」業態2店舗、およびFC総合業態「トレジャー・ファクトリー」4店舗の合計82店舗である。

 中期成長戦略として、多店舗展開(複数の業態を組み合わせて年間10店舗程度の新規出店、および関西地域でのドミナント出店)、既存店活性化(店舗移転・リニューアルによる収益力改善、既存店の売上総利益率改善)、ネットへの取り組み強化(宅配買い取りの強化、ネット経由の販売強化)、そして新業態開発を推進している。

 関西地域でのドミナント出店については、13年5月に総合業態の関西1号店・神戸新長田店、15年2月には服飾業態の関西旗艦店となるアメリカ村店(大阪市中央区)、そして15年11月には総合リユース業態・松原店(大阪府松原市)をオープンし、関西圏の店舗数は合計7店舗となった。

■新業態の開発・出店も積極化

 新業態はスポーツ・アウトドア用品専門業態「トレファクスポーツ」1号店の横浜市・青葉台店を14年9月にオープンし、ネット通販も強化して13年4月に楽天市場へ出店した。また新規事業として10年10月からブランドバッグ&ファッションのオンラインレンタルサービス「Cariru」を運営している。

 14年10月にはファーストザウェーブ社の「ブランドコレクト」事業(ウェブサイト、フルフィルメントセンター1拠点、ブランドコレクト原宿店)を譲り受け、15年1月原宿2号店をオープンした。ネットでの事業展開を加速するとともに、ハイブランド・高価格帯のブランド古着に特化した都心型店舗の新業態としてファッションカテゴリーを強化する。

 また15年8月には「ブランドコレクト」が、サイバーエージェント<4751>の運営する国内最大級のユーズドショッププラットフォーム「Ameba古着屋」に出店した。

■出張買い取りサービスを強化

 アライアンスも積極活用して出張買い取りサービスを強化している。15年2月に不動産賃貸仲介大手のハウスコム<3275>、8月にミニミニ(東京都)と業務提携した。ハウスコム店舗、ミニミニ店舗で契約したお客様限定で、引越と不用品買い取りの一括対応サービス「トレファク引越」を割引料金で提供して買い取りを強化する。

 15年6月には、大規模マンションの管理組合を対象にした新サービス「リユースコンシェルジュ for mansion」を開始した。マンション内のコンシェルジュデスク等を介して不用品回収・買い取りなどのサービスを提供する。

 15年9月には、引越と不用品買い取りの一括対応サービス「トレファク引越」について、オフィス移転にも対応し、対象エリアも関東・関西・九州エリアに東海エリアが加わると発表した。

 なお15年9月には、東京都内のタワーマンションを中心に進めているマンション専用リユース品定期回収システム「シールdeリユース」が、2015年度グッドデザイン賞を受賞したと発表している。住民は専用シールを貼って指定の置き場に出すだけで、無料かつ複雑な手続きなく、気軽に不用品を再流通させることができる。

■第1四半期と第3四半期の売上総利益率が高くなる季節要因

 15年2月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)25億82百万円、第2四半期(6月~8月)23億36百万円、第3四半期(9月~11月)28億85百万円、第4四半期(12月~1月)28億79百万円、営業利益は第1四半期3億51百万円、第2四半期77百万円、第3四半期3億43百万円、第4四半期1億84百万円だった。

 既存店の売上総利益率は第1四半期66.8%、第2四半期65.9%、第3四半期66.5%、第4四半期63.4%だった。第1四半期と第3四半期は、引越シーズンなどで利益率の高い家電製品や家具の構成比が高まるため、売上総利益率が高くなるという季節要因があるようだ。また15年2月期のROEは14年2月期比2.4ポイント上昇して21.0%、自己資本比率は同0.3ポイント上昇して58.5%、配当性向は17.7%だった。

■16年2月期第2四半期累計の利益伸び率鈍化だが増収増益

 今期(16年2月期)第2四半期累計(3月~8月)の連結業績は、売上高が前年同期比16.3%増の57億19百万円となり、営業利益が同0.4%増の4億32百万円、経常利益が同1.2%増の4億49百万円、純利益が同10.8%増の2億70百万円だった。利益の伸び率が鈍化したが増収増益だった。

 売上面では、既存店売上高が同7.1%増収と好調に推移し、新規出店4店舗や1件あたり販売単価の上昇も寄与して2桁増収だった。商品別売上(直営事業)を見ると、主力の衣料が同15.1%増収、服飾雑貨が同15.3%増収、電化製品が同19.9%増収だった。出張買取の増加で大型家電の仕入が増加し、電化製品の販売も好調に推移した。

 ただしコスト面で、移転リニューアル3店舗の一時費用(36百万円)が予算額を超過したため、各利益の伸びは小幅にとどまった。差引売上総利益率は同1.2ポイント低下して64.9%、販管費比率は同横ばいの57.4%となった。なお既存店売上総利益率は同1.2ポイント低下して65.2%となった。販売促進のための衣料品などの値引き販売の増加、出張買い取り時の配送委託費用(仕入副費として売上原価に算入)の増加が影響した。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)30億11百万円、第2四半期(6月~8月)27億08百万円、営業利益は第1四半期3億95百万円、第2四半期37百万円だった。既存店の売上総利益率は第1四半期66.0%、第2四半期64.2%だった。

■16年2月期通期増益基調に変化なし

 今期(16年2月期)の非連結業績予想(4月10日公表)は売上高が前期比10.9%増の118億53百万円、営業利益が同8.2%増の10億39百万円、経常利益が同8.8%増の10億52百万円、純利益が同11.4%増の6億31百万円としている。

 配当予想は中間配当を開始して年間11円(第2四半期末5円50銭、期末5円50銭)としている。15年6月1日付の株式2分割を考慮して前期の年間18円を年間9円に換算すると実質的に前期比2円増配となる。予想配当性向は19.5%となる。なお配当性向については当面の目標を25%としている。

 既存店は前期並みの増収率(7.9%増)と売上総利益率(65.6%)の達成を目指し、新規出店は11~13店舗の計画だ。中部地域や北関東など新規エリアへの出店も検討するようだ。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が48.3%、営業利益が41.6%、経常利益が42.7%、純利益が42.8%である。出張買い取り時の配送委託費用の増加で売上総利益率が低下し、予算額を超過した移転3店舗の一時費用も影響して第2四半期累計の利益が伸び悩んだ形だが、通期ベースで増収増益基調に変化はないだろう。

■11月の既存店売上は前年割れだが天候影響の一時的要因

 なお月次売上(直営店の店舗売上、前年比速報値ベース)を見ると、15年11月は全店が107.0%、既存店が99.7%だった。既存店売上は関東地方が2週連続の大雪の影響を受けた14年2月以来21ヶ月ぶりの前年割れだった。気温が例年に比べて高めに推移して衣料品が低調だった。ただし天候影響という一時的要因だろう。好調な仕入も背景として販売単価の高い生活家電は引き続き好調に推移している。

 新規出店は3月0店舗、4月1店舗、5月0店舗、6月1店舗、7月1店舗、8月1店舗、9月1店舗、10月2店舗、11月1店舗で、15年11月末時点の店舗数は合計90店舗(15年2月末比8店舗増加)となった。

 15年8月に服飾業態・トレファクスタイル川越店を移転し、古着アウトレット業態2号店・ユーズレット本川越店としてオープンした。9月にはスポーツ・アウトドア用品業態2号店・トレファクスポーツ柏店、10月には総合リユース業態・鎌ヶ谷店、服飾専門リユース業態・横浜都筑店、11月には総合リユース業態・松原店をオープンした。

■中期成長シナリオに変化なし

 リユース市場は拡大基調であり、中期成長に向けて国内主要都市への新規出店や業態の多様化を加速させる方針だ。首都圏や関西圏を中心に年間10店舗程度の新規出店で100店舗体制構築を当面の目標としている。

 知名度上昇、新業態を含めた積極的な新規出店、大口仕入や出張買い取りの強化、ネット事業の強化も寄与して中期成長シナリオに変化はないだろう。

■株主優待制度は毎年2月28日時点の株主を対象に実施

 なお、株主優待制度については毎年2月28日時点の1単元(100株)以上保有株主に対して「トレジャーチケット」を贈呈している。「トレジャーチケット」の内容は「トレジャー・ファクトリーオリジナルクオカード1000円分」、プレゼント抽選券「トレジャーロト」、および当社の店舗および宅配買い取りサービスで利用できる「買い取り金額アップクーポン」をセットにしている。

■株価は調整局面だが売られ過ぎ感

 株価の動きを見ると、第2四半期累計の利益伸び率鈍化や、11月既存店売上の前年割れを嫌気して調整局面となり、12月21日には年初来安値となる1015円まで下押した。ただし売られ過ぎ感を強めている。

 12月21日の終値1036円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS56円38銭で算出)は18~19倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間11円で算出)は1.1%近辺、前期実績PBR(前期実績に株式2分割を考慮したBPS263円60銭で算出)は3.9倍近辺である。時価総額は約116億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形となったが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感を強めている。16年2月期増収増益基調や中期成長シナリオに変化はなく、反発のタイミングだろう。

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