【アナリスト水田雅展の銘柄分析】マルマエは鹿児島大学との共同研究を材料視した短期売買一巡、収益改善基調を再評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 マルマエ<6264>(東マ)は半導体・FPD製造装置に使用される真空部品などの精密切削加工事業を展開している。16年8月期減益予想だが会社予想は保守的であり、受注が高水準で増額の可能性が高い。株価は鹿児島大学との共同研究を材料視して乱高下したが、短期的な売買が一巡し、高水準の受注や収益改善基調を再評価する動きを強めそうだ。

■真空部品や電極などの精密切削加工事業を展開

 半導体・FPD(フラットパネルディスプレー)製造装置に使用される真空部品や電極などの精密切削加工事業を展開し、新規分野として光学装置・通信関連分野なども強化している。

 15年1月に事業再生計画(11年7月に事業再生ADR成立)の終結を発表した。16年10月末日の最終弁済をもって終了する計画だったが、強固な収益体質の確立と財務体質の改善に目途がついたため、終了期間を前倒しして15年1月末日をもって事業再生計画を終結した。そして債務の株式化を行ったA種優先株式については15年5月に取得(246株、1株につき100万円)して消却した。

 なお15年9月には、商工組合中央金庫とのコミットメントライン契約(借入限度額50百万円)および当座貸越契約(借入限度額1億50百万円)を締結した。事業展開での資金需要に伴う手元資金の一時的な減少を防ぎ、経営のさらなる安定化を図る。

■15年8月期は半導体・FPDの高水準の受注が牽引して大幅増収増益

 前期(15年8月期)の非連結業績は売上高が前々期比34.0%増の21億24百万円で、営業利益が同68.3%増の4億50百万円、経常利益が同70.5%増の4億35百万円、純利益が同85.0%増の5億59百万円だった。純利益については、特別利益に「中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業に係る補助金」15百万円を計上したことや、繰延税金資産1億13百万円を計上したことも寄与した。

 半導体分野およびFPD分野の好調な受注が牽引した。分野別受注高は半導体分野が同60.8%増の12億36百万円、FPD分野が同86.2%増の7億57百万円、その他分野が同17.3%減の3億68百万円で、合計が同45.7%増の23億62百万円だった。

 コスト面では増収に伴って材料費、労務費、外注加工費が増加したが、増収効果と生産性向上効果で売上総利益率は同2.6ポイント上昇して30.9%、販管費比率は同1.7ポイント低下して9.7%となった。

 96年のマザーズ上場以来初となる年間36円(期末一括)の配当を実施した。配当性向は11.3%だった。またROEは同22.9ポイント低下して100.7%、自己資本比率は同10.3ポイント上昇して32.7%となった。BPSは135円80銭で14年8月期の28円68銭から大幅に改善した。

 なお15年8月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(9月~11月)3億84百万円、第2四半期(12月~2月)6億39百万円、第3四半期(3月~5月)5億59百万円、第4四半期(6月~8月)5億42百万円、営業利益は第1四半期41百万円、第2四半期1億30百万円、第3四半期1億40百万円、第4四半期1億39百万円だった。収益改善基調だ。

■16年8月期減収減益・実質増配予想、受注高水準で増額の可能性

 今期(16年8月期)の非連結業績予想(10月14日公表)は、売上高が前期比5.9%減の20億円、営業利益が同33.4%減の3億円、経常利益が同38.1%減の2億70百万円、純利益が同55.3%減の2億50百万円としている。

 配当予想は年間14円(第2四半期末7円、期末7円)としている。15年9月1日付の株式3分割を考慮して、前期の年間36円を株式3分割後に換算すると年間12円となり、今期は実質的に前期比2円増配となる。予想配当性向は29.5%となる。

 分野別売上高の計画は、半導体分野が同0.9%増の11億83百万円、FPD分野が同17.1%増の6億73百万円、その他分野が同57.6%減の1億42百万円としている。その他分野は光学関連消耗品の受注を見込むが、スポット的な受注も多いため先読みが困難としている。

 また中国関連に不透明感があることや、半導体分野とFPD分野の需要変動幅が大きいことなどを考慮して、売上高およびコストとも全般的に保守的な計画としているようだ。しかし半導体やFPD分野の受注は高水準に推移することが予想され、会社予想は増額の可能性が高いだろう。

■月次受注動向は高水準維持

 15年11月度の月次受注残高(速報値)を見ると、半導体分野1億05百万円(前月比20.8%減、前年同月比25.4%減)、FPD分野2億50百万円(前月比0.0%減、前年同月比566.9%増)、その他分野12百万円(前月比43.3%減、前年同月比93.0%減)、合計3億68百万円(前月比9.2%減、前年同月比2.5%増)だった。

 合計ベースで見ると、前月比で減少したが、前年同月比では増加基調だ。半導体分野は出荷検収が高水準で、受注残に占める長納期品の比率が低下しているため前月比、前年同月比とも減少したが、受注状況は良好のようだ。FPD分野は受注、出荷検収とも好調のようだ。

 今後の見通しとして、半導体分野はエンドユーザーの大規模な微細化投資に伴って再拡大が始まる見通しだ。FPD分野は中小型から大型パネルまで幅広く設備投資が拡大しているため高水準の受注と出荷検収が継続する見通しだ。

 全般的に好調な受注状況であり、今後は大型真空パーツにおいて協力企業選定を進めることで生産性を改善し、小型真空パーツでは社内の試作能力を高めることで受注拡大を図るとしている。

■新中期事業計画「Evolution2018」

 15年10月、新中期事業計画「Evolution2018」(16年8月期~18年8月期)を公表した。

 半導体分野では微細化投資の本格化でエッチング、洗浄、ALDなどの工程で市場拡大が見込まれるため、洗浄分野への参入、エッチング分野での試作強化などを推進する。FPD分野では中長期的に8Kなどで需要拡大が見込まれるため、自社における設備投資ではなく、協力企業の拡大によって需要変動に対応する。その他分野ではスマートフォン関連の需要が継続し、自動車関連やロボット関連の市場へ参入するため、生産余力の効率的活用と協力企業の拡大を図る。

 また半導体分野を成長ドライバーとする既存事業のブラッシュアップに加えて、現業とのシナジー効果や半導体・FPD分野の需要変動に対するリスクヘッジとして、売上高20億円規模までの中小企業を対象としてM&Aも積極活用する方針だ。M&Aの分野としては、半導体洗浄・樹脂パーツや自動車・ロボット部品などを想定しているようだ。

 なお12月9日には、鹿児島大学大学院理工学研究科との共同研究契約締結を発表した。リハビリ装置の研究開発と、作業筋力補助ロボットの研究開発の2件について、早期の実用化を目指して共同研究する。

 数値目標としては、18年8月期の連結売上高40億円、営業利益10億円(単体ベースで売上高30億円、営業利益7億円、M&Aで売上高10億円、営業利益3億円)を掲げている。また株主還元として配当性向35%以上(順次向上)を目指し、計画期間中に東証1部への市場変更を目指す方針だ。

■株価は乱高下したが収益改善基調を再評価

 株価の動き(15年9月1日付で株式3分割)を見ると、鹿児島大学との共同研究を材料視して乱高下した。12月9日終値484円から12月14日の764円まで急伸した後、急反落して12月22日の530円まで調整した。ただし500円台では売り一巡感を強めている。

 12月22日の終値536円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS47円46銭で算出)は11~12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間14円で算出)は2.6%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS135円80銭で算出)は3.9倍近辺である。時価総額は約30億円である。

 日足チャートで見ると急反落して目先的な過熱感が解消した。さらに25日移動平均線近辺で下げ止まる動きだ。また週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなりそうだ。16年8月期減益予想だが会社予想は保守的であり、受注が高水準で増額の可能性が高い。短期的な売買が一巡し、高水準の受注や収益改善基調を再評価する動きを強めそうだ。

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