過日、マネックスグループとクレディセゾン、バンガードの3社が共同記者会見をし、ラップ運用を行う投資顧問会社の設立を発表した。「マネックス・セゾン・バンガード投資顧問」といって、出資比率はマネックスグループが51.01%、クレディセゾンが44%、バンガードが4.99%。2016年4月から、ラップ口座の運用会社としてのサービスを開始する予定だ。
新会社についてよく耳にする誤解は、「新会社のラップ口座はマネックスグループを通じて提供される」というものだが、厳密に言うと、若干違う。確かに、新会社はマネックスグループの連結子会社だが、サービスの販売先はマネックスグループに限定されてはいない。他の証券会社、地方銀行でも、販売会社として新会社のサービスを顧客に提供することはできる。
ただ、現時点で新会社のサービスは、可能な限りのローコストを実現する予定であり、投資信託の販売手数料のようなフロントのコストは取らない方針を、すでに表明している。これまでの投資信託のように、フロントで手数料を取り、かつ投資家がファンドを保有している間も、「代行手数料」という名目でフィーを取り続けていた販売金融機関からすれば、このサービスを取り扱うビジネス上のメリットを、どこに見出せば良いのか分からないだろう。
もし、実店舗を構えた証券会社や銀行が、営業担当者を介して取り扱うとしたら、その販売金融機関の経営陣は、手数料収入に対する認識を大きく変えざるを得ないし、変えられなければ、このサービスを取り扱うことはできない。新会社は、この分厚い壁を壊すという、難儀なチャレンジに臨むことになる。
ところで、新会社の名前に入っている「セゾン・バンガード」から、セゾン投信の主力ファンドである「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」と勘違いする人も出てきそうだ。新会社が提供するラップサービスは、「投資信託並みの小口で利用できるものになる」ことからすると、最低利用金額は1万円程度と推測される。「セゾン・バンガード」でインターネット検索をかけた時、両者が混然となって検索フィールドに並んだら、何も知らない投資信託初心者は、恐らく混乱するだろう。杞憂に過ぎないのかも知れないが、気になったのでとりあえず指摘しておきたい。
ちなみに、セゾン投信と新会社は、バンガード社のファンドを主軸に据えるという点において、プロダクツこそ似ているが、根本的には別物と考えた方が良い。あくまでも直販重視のセゾン投信に対して、新会社は販売金融機関を介してサービスが提供される。結果、販売サイドのバイアスがかかることも考えられる。新会社は顧客に対するファイナンシャルプランニングの提供を重視し、同サービスを通じて、一人一人のライフプランに合ったポートフォリオを提供するとのことだが、それを実現させるためには、販売金融機関とのベクトルをいかにして一致させるかが、今後の大きな課題になるだろう。
(鈴木雅光=証券会社、公社債新聞社、金融データシステム勤務を経て2004年にJOYntを設立、代表取締役に就任、著書多数)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)