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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アスカネットは16年4月期増収増益基調に変化なし、空中結像AIプレートは着実に進展
- 2015/12/28 09:03
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
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アスカネット<2438>(東マ)は遺影写真加工や写真集制作関連が安定収益源で、空中結像AIプレート事業も製品化に向けて着実に進展している。16年4月期第2四半期累計(5月~10月)はOEM関連が伸び悩んだようだが、通期ベースでの増収増益基調に変化はないだろう。株価は8月の年初来安値圏に接近したが売られ過ぎ感を強めている。目先的な売りが一巡して反発のタイミングだろう。
■写真加工関連事業が安定収益源、新規事業も育成
葬儀社・写真館向け遺影写真合成・加工関連のメモリアルデザインサービス(MDS)事業、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作関連のパーソナルパブリッシングサービス(PPS)事業を主力としている。
MDS事業は全国の葬儀社との間にネットワークを構築してデジタル加工処理を行っている。操作不要のフルリモートコントロール方法で、約2170ヶ所の葬儀社向けなどBtoBを中心に年間約32.6万枚の写真画像を提供している。収益は加工オペレーション収入、サプライ品売上、ハード機器類売上などである。
PPS事業は「1冊からの本格的写真集」をインターネットから受注して制作するサービスである。約3500社の写真館向け(BtoB)や一般コンシューマー向け(BtoC)に、年間約34.2万冊の写真集を提供している。高度なカラーマネジメント技術やオンデマンド印刷制御技術などを強みとしている。
遺影写真のMDS事業は葬儀関連、写真集のPPS事業はウエディング関連や卒業・入学イベント関連などが主力市場であり、景気変動の影響を受けにくい安定収益源である。
さらにエアリアルイメージング(AI)事業や、NTTドコモ<9437>向けフォトブック・プリント商品のOEM供給など、新規事業・サービスの育成にも注力している。
■空中結像AIプレート事業は製品化に向けて着実に進展
新規事業の空中結像技術エアリアルイメージング(AI)プレートは、画像映像を表す光を受け、特殊なパネルを通過することによって反対側の空中に映像を結像する新技術である。AIプレートだけで空中ディスプレイが可能となるシンプルな構造が特色であり、サイネージ関連をはじめとして車載、医療、操作パネル、飲食、アミューズメントなど多方面の業界・業種から注目されている。
独自技術を強固にするため特許申請も進め、将来的には自ら立体映像を空中に創出する技術の確立も目指している。そして基本技術を確立し、AIプレート試作品の販売を進めながら、低コストと大量生産を可能にする本格量産技術(ファブレス形態で製造して自社ブランドで販売)の確立に取り組んでいる。
15年4月に「AIプレート量産技術の現状と今後の方向性」を発表した。AIプレート量産については、ガラス素材による量産と樹脂素材による量産に分けられ、それぞれ複数の協力会社と取り組んでいる。ガラス素材プレートはコストおよび量産性が相対的に劣るものの、結像品質は相対的に優れている。樹脂素材プレートはコストおよび量産性が相対的に優れており、結像品質は想定的に劣る。両素材に一長一短があるため、並行して量産技術の確立に挑んでいる。
ガラス素材プレートについては量産技術を確立している。そして品質の安定・向上、歩留まりの向上への改善を進めている。樹脂素材プレートについては、試作品の製造手法とは全く異なる新しい方法にトライしている。技術課題が解決しだいα版の開発に取り掛かる。また大型パネルや視野角拡大タイプの研究・試作も進めている。
当社が想定している第一段階の量産は、リスク等を考慮して現有の設備やラインを最大限に活用することを前提としており、いきなり大規模・大ロットの量産を指向していない。複数の製造方法のうち最も優れた方法が明確になった時点で、専用ラインの立ち上げなどにより多量の量産が可能な体制を段階的に構築する方針としている。
またAIプレートは素材であるため、AIプレート供給先がAIプレートを活用して商品化することが量産の前提となる。したがってAIプレート供給先の実際の商品化までは一定の時間を要する可能性がある。このため16年4月期は小ロット案件を中心に確実に案件を積み重ね、その後の大ロット案件に繋げたいとしている。
15年10月開催「CEATEC JAPAN 2015」では、米インテル、NECソリューションイノベータ、NHKメディアテクノロジー、東京大学の協力を得て、先進的な技術との融合によりAIプレートが創りだす近未来を具体的に提案した。また1m四方の大型AIプレートを使用した迫力ある空中結像とインタラクティブな操作なども展示した。
■NTTドコモ向けOEM供給を開始
15年5月には、NTTドコモが新たに開始する「フォトコレクションプラス」向けに、フォトブックおよびプリント商品の独占OEM供給を開始した。PPS事業において新たなサービスを開始することにより、急速に拡大しているスマートフォンによる写真アウトプット市場にも本格的にターゲットを拡大していくとしている。
なお14年12月開始した新しいギフトサービスシステム「ギフトネットコム」は15年4月末に新規のギフトコードの販売を終了し、販売済みギフトコードの交換は15年10月末に終了した。販売実績が予想を下回り、短期的には収益改善が見込めず終了の早期決断が望ましいとの結論となった。15年4月期に減損損失77百万円を計上した。
■第3四半期および第4四半期の構成比が高い収益構造
15年4月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(5月~7月)11億70百万円、第2四半期(8月~10月)11億55百万円、第3四半期(11月~1月)14億16百万円、第4四半期(2月~4月)12億37百万円、営業利益は第1四半期1億55百万円、第2四半期1億26百万円、第3四半期2億60百万円、第4四半期97百万円だった。
葬儀関連、ウエディング関連、卒業・入学イベント関連などで第3四半期および第4四半期の構成比が高い収益構造だ。また15年4月期のROEは14年4月期比1.4ポイント低下して11.3%、自己資本比率は同1.1ポイント上昇して85.6%となった。配当性向は31.5%だった。
16年4月期第2四半期累計はOEM伸び悩みで減益
12月10日に発表した今期(16年4月期)第2四半期累計(5月~10月)の非連結業績は、売上高が前年同期比2.9%増の23億93百万円、営業利益が同5.5%減の2億66百万円、経常利益が同5.8%減の2億68百万円、純利益が同2.7%減の1億75百万円だった。
OEMを含めたBtoC関連の売上が想定をやや下回った。PPS事業におけるOEM生産ラインの稼働率が低いため原価率が上昇して営業減益だった。売上総利益率は49.4%で同1.1ポイント低下した。販管費では創立20周年記念行事を実施し、人員増強に伴って人件費も増加したが、広告宣伝費や減価償却費が減少した。販管比率は38.2%で同0.2ポイント低下した。
セグメント別(連結調整前)に見ると、MDS事業は売上高が同3.7%増の11億02百万円で、営業利益が同4.0%増の3億32百万円だった。メモリアルビデオなどの映像サービスや演出ツールの伸長も寄与して、売上高・利益とも着実に増加した。
PPS事業は売上高が同2.1%増の12億66百万円だが、営業利益が同8.1%減の2億06百万円だった。BtoBの「ZENレイフラット」などは好調に推移したが、OEM関連が伸び悩んで採算ラインに到達していないため減益だった。
AI事業は売上高が同11.6%増の23百万円、営業利益が54百万円の赤字(前年同期は49百万円の赤字)だった。その他事業は4月末で「ギフトネットコム」の新規販売を終了して売上高が1百万円、営業利益が15百万円の赤字だった。
なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(5月~7月)11億97百万円、第2四半期(8月~10月)11億96百万円、営業利益は第1四半期1億14百万円、第2四半期1億52百万円だった。
■16年4月期増収増益・増配予想、下期の構成比が高い収益構造
今期(16年4月期)通期の非連結業績予想については前回予想(6月9日公表)を据え置いて、売上高が前期比8.9%増の54億22百万円、営業利益が同14.1%増の7億28百万円、経常利益が同13.8%増の7億32百万円、純利益が同13.4%増の4億81百万円としている。配当予想は同1円増配の年間9円(期末一括)で予想配当性向は31.2%となる。基本方針として配当性向30%を目安としている。
セグメント別売上高の計画は、MDS事業が同4.5%増の23億84百万円、PPS事業が同10.0%増の29億01百万円、AI事業が同2.4倍の1億33百万円、その他が3百万円としている。
売上面では既存分野のMDS事業、PPS事業が引き続き順調に推移して増収基調だ。PPS事業のOEM供給も本格化が期待される。新規分野のAI事業では人員体制を増強して営業活動を開始し、試作品やガラス素材の小ロット量産品の販売を推進する。
利益面では、OEM供給に関しては本格的な製品供給に向けてコストが先行するため初年度は赤字を見込み、また「ギフトネットコム」も10月までは商品交換のためのサービスを継続するため一定のコストが発生する。ただし全体としては増収効果に加えて、有形固定資産の減価償却方法変更(定率法から定額法に変更)も寄与して増益予想だ。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が44.1%、営業利益が36.5%、経常利益が36.6%、純利益が36.4%である。低水準の形だが、第3四半期および第4四半期の構成比が高い収益構造であり、下期はギフトネットコム関連費用が発生しないことも営業損益改善要因となる。通期ベースで増収増益基調に変化はないだろう。
■毎年4月末に株主優待を実施
株主優待制度は毎年4月30日現在の株主に対して、所有株式数に応じて自社サービス(マイブック)割引利用券を贈呈している。100株以上400株未満所有株主に対して1000円割引利用券1枚、400株以上2000株未満所有株主に対して1000円割引利用券2枚、2000株以上所有株主に対して1000円割引利用券3枚を贈呈する。
■株価は売られ過ぎ感
株価の動きを見ると、9月の戻り高値2829円から反落して調整局面が続いている。12月25日には1387円まで下押す場面があった。第2四半期累計の減益が嫌気され、全般地合い悪化も影響したようだ。
12月25日の終値1412円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS28円88銭で算出)は49倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間9円で算出)は0.6%近辺、そして前期実績PBR(前期実績のBPS230円69銭で算出)は6.1倍近辺である。時価総額は約247億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線を割り込んだが、8月下旬~9月上旬の年初来安値圏に接近して調整の最終局面だろう。また日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が20%近くまで拡大して売られ過ぎ感を強めている。目先的な売りが一巡して反発のタイミングだろう。