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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ティー・ワイ・オーは第1四半期は赤字だが16年7月期通期ベースでは増収増益基調
- 2015/12/28 10:06
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ティー・ワイ・オー<4358>(東1)はTV-CM制作の大手である。受注が拡大基調で中期成長に向けた戦略的M&Aも積極化している。株価は第1四半期(8月~10月)の赤字を嫌気して年初来高値圏から急反落したが、16年7月期通期ベースでは増収増益基調が期待され、目先的な失望売りが一巡して切り返す展開だろう。
■TV-CM制作の大手
TV-CM制作の大手で、広告事業(広告代理店向けのTV-CM企画・制作およびポスト・プロダクション業務、広告主向けWEB広告およびプロモーションメディア広告の企画・制作、クロスメディア広告業務)を主力として、映像関連事業(アニメーションおよびミュージックビデオなどの企画・制作)も展開している。
15年3月には民事再生手続き中のスカイマークに対して、ブランド再生に関する業務支援を行うことが正式決定した。投融資は行わず、スカイマークのブランド再生に必要であると判断される領域のクリエイター、関連スタッフ、ノウハウなどを無償で提供する。スカイマークの再生後は広告受注に繋がると期待される。
15年9月には、シンガポールで開催された広告祭Spikes Asia 2015(アジア太平洋地域の国々を対象としたクリエイティブフェスティバル)において、当社が制作に携わった広告がゴールド1作品、シルバー4作品、ブロンズ3作品を受賞したと発表している。
15年11月には、世界で優れた広告作品を表彰する国際的な広告賞である「ロンドン・インターナショナル・アワーズ2015」において、当社が制作に携わった4作品が受賞したと発表している。
■戦略的M&Aを積極化
中期成長に向けて、ブランディングやセールスプロモーションなどの分野を中心に、一定規模以上の企業を対象として戦略的M&Aを積極推進する方針を打ち出している。
15年3月に海外事業統括管理会社としてシンガポールにTYO-ASIAを設立し、15年7月にインドネシアの広告会社The First Editionの代表Uli氏と合弁会社TYO FIRST EDITION(TYO-FE)を設立した。
アジアにおける戦略的M&Aの第一弾として、The First Editionの事業を合弁会社に順次継承していく予定で、インドネシアにおける日系企業との取引拡大も目指すとしている。
15年8月にはケー・アンド・エル社(K&L社、東京都)が実施する第三者割当増資を引き受けて連結子会社化した。K&L社はグラフィック領域を中心に大手広告主案件を長期に手掛けるクリエイティブ・エージェンシーで、中国やインドなどアジア地域へも事業進出している。そしてK&L社の有する海外を含む豊富な実績とノウハウが、当社の広告主直接取引拡大や海外事業の本格展開に寄与するとしている。
15年9月にはグループ会社として、三浦武彦氏を代表とする100%子会社ミウラ・アンド・カンパニーを設立した。クリエイティブ機能強化を目的として、広告コミュニケーションのアイデア開発やディレクションを行うクリエイティブブティックの位置付けとしている。
15年9月には、サニーサイドアップのスピンオフベンチャー企業ENGAWA社(えんがわ社、東京都、15年11月設立予定)が実施する第三者割当増資を引き受けると発表した。
ENGAWA社はジャパン・ブランド確立を目指す事業、そのテーマから派生する複数の事業を統括する会社として設立され、高いジャパンクオリティを備えた商品・サービスの発掘・広報・販路開拓などを支援するプロジェクト「OMOTENASHI SELECTION」の継続実施が決定している。新会社に対して当社グループの広告戦略・企画・制作をはじめとする事業ノウハウを提供することも検討する。
また12月10日には、当社連結子会社のK&L社が、同社連結子会社(当社孫会社)の凱立広告(上海)を通じて、シンガポールに新会社(当社における曾孫会社K&L CREATIVE ASIA)を設立すると発表した。日系企業および外資系企業のアジア戦略等の広告活動サポートを拡充する。
■受注拡大基調
なお15年7月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(8月~10月)52億99百万円、第2四半期(11月~1月)72億97百万円、第3四半期(2月~4月)69億11百万円、第4四半期(5月~7月)88億86百万円、営業利益は第1四半期3億38百万円、第2四半期3億83百万円、第3四半期6億65百万円、第4四半期4億98百万円だった。
電気・情報通信、車両・交通器具・工業機械、飲料、娯楽・エンターテインメントなどの分野を中心に受注が拡大基調である。広告主直接取引の受注が大幅増加して案件規模も拡大しているようだ。
15年7月期の売上総利益率は17.5%で14年7月期比0.2ポイント低下したが、販管費比率は10.9%で同0.3ポイント低下した。ROEは14年7月期比8.3ポイント上昇して21.6%、自己資本比率は同0.8ポイント上昇して38.2%、配当性向は27.8%だった。
■16年7月期第1四半期は赤字
12月10日に発表した今期(16年7月期)第1四半期(8月~10月)の連結業績は、売上高が前年同期比2.9%増の54億54百万円、営業利益が92百万円の赤字(前年同期は3億38百万円の黒字)、経常利益が1億13百万円の赤字(同3億54百万円の黒字)、純利益が1億33百万円の赤字(同2億07百万円の黒字)だった。
案件受注が順調に推移して増収だったが、複数の低利益率案件の発生、M&A関連費用や新会社の費用の計上、さらに海外新会社の業績不振などで各利益が赤字となった。売上総利益率は14.1%で同5.3ポイント低下、販管費比率は15.8%で同2.7ポイント上昇した。
営業外収益では保険返戻金が減少(前年同期は31百万円計上、今期は4百万円計上)、営業外費用では為替差損が増加(前年同期は0百万円、今期は13百万円計上)した。なお第1四半期末の人員は858人で前年同期比132人増加した。インドネシアTYO-FEおよびK&L社の連結も影響した。
セグメント別に見ると、広告事業は売上高が同3.5%増の51億83百万円、営業利益(連結調整前)が同42.4%減の4億13百万円だった。複数の大型案件の検収が第2四半期(11月~1月)以降にズレ込んで売上高が想定を下回り、低利益率案件の発生も影響して減益だった。
なお取引形態別に見ると、広告代理店取引は売上高が同5.4%増の41億47百万円、営業利益が同21.0%減の5億81百万円、広告主直接取引は売上高が同3.4%減の10億36百万円、営業利益が96百万円の赤字(前年同期は3百万円の黒字)だった。検収の後ズレに加えて、広告代理店取引は低利益率案件の発生、広告主直接取引はインドネシアにおける新会社の不振も影響した。
映像関連事業は売上高が同7.6%減の2億71百万円、営業利益が10百万円の赤字(前年同期は27百万円の黒字)だった。前期の大型ライブ映像案件が一巡して減収、営業赤字となった。
■16年7月期通期は増収増益基調
今期(16年7月期)通期の連結業績予想については前回予想(9月11日公表)を据え置いて、売上高が前期比12.7%増の320億円、営業利益が同14.1%増の21億50百万円、経常利益が同10.7%増の20億円、純利益が同7.2%増の12億円としている。配当予想は前期と同額の年間5円(期末一括)としている。予想配当性向は26.0%となる。
受注は拡大基調で売上高は8期ぶりに過去最高を更新する。また原価管理徹底効果も一段と進展して、営業利益、経常利益は連続で過去最高を更新する見込みだ。
なお採用活動を積極的に展開し、M&Aによる連結子会社の増加も含めて、グループ人員数は15年7月期末の802人から、16年7月期末には900人規模へ増加する見込みだ。そして定着率向上に向けて福利厚生制度の拡充も推進するが、人件費の増加などを吸収して増収増益予想だ。通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は低水準だが、通期ベースでは増収増益基調が期待される。
■中期経営計画で17年7月期営業利益27億円目標
中期経営計画では目標数値として17年7月期売上高400億円、営業利益27億円を掲げ、株主還元として配当性向25%以上目標と株主優待の継続実施の方針を示している。
広告市場は拡大基調であり、国内TV-CM制作業界では当社を含む大手制作3社による寡占化傾向を強めている。国内景気回復や20年東京夏季五輪開催も追い風となるため、事業環境は中期的に良好だろう。戦略的M&Aや海外展開本格化も寄与して中期的に収益拡大基調が期待される。
■株主優待制度を一部変更
なお10月14日に株主優待制度の一部変更(クオカード贈呈の保有株式数による条件および贈呈金額変更)を発表した。変更後の株主優待制度は、毎年1月31日現在の10単元(1000株)以上保有株主を対象として、クオカード(1000株以上保有株主に対して1000円相当、3000株以上保有株主に対して5000円相当、5000株以上保有株主に対して1万円相当)を贈呈する。
さらにTYOオリジナル株主優待(対象条件に変更なし)として、毎年1月31日現在の5単元(500株)以上保有株主を対象として、応募者の中から抽選で実施する。16年1月31日時点の株主から実施する。
■株価は第1四半期の赤字に対する失望売りが一巡
株価の動きを見ると、12月2日と3日の年初来高値248円から急反落して12月24日の185円まで調整した。第1四半期(8月~10月)の赤字を嫌気したようだ。ただし25日は切り返して目先的な失望売り一巡感を強めている。
12月25日の終値190円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS19円24銭で算出)は9~10倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間5円で算出)は2.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS89円31銭で算出)は2.1倍近辺である。時価総額は約119億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線を一気に割り込んだが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感を強めている。16年7月期通期ベースでは増収増益基調が期待され、目先的な失望売りが一巡して切り返す展開だろう。