【アナリスト水田雅展の銘柄分析】フランスベッドホールディングスは年初来高値圏で堅調、16年3月期増収増益・増配予想

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 フランスベッドホールディングス<7840>(東1)はシニア・シルバービジネス分野を中心に介護・インテリア関連事業を展開している。株価は年初来高値圏で堅調に推移し、900円台のボックスレンジから上放れる動きだ。アベノミクス「介護離職ゼロ」関連銘柄であり、16年3月期増収増益・実質増配予想、自己株式取得なども評価材料である。上値追いの展開だろう。なお1月29日に第3四半期累計(4月~12月)の業績発表を予定している。

■シニア・シルバービジネスに事業展開

 成長分野のシニア・シルバービジネスに経営資源をシフトして、メディカルサービス事業(介護・福祉関連用具のレンタル・販売、介護予防の通所介護施設「悠々いきいき倶楽部」運営)、インテリア健康事業(家庭用高級ベッド、医療・介護用ベッド、リハビリ商品)、その他事業(日用品雑貨販売など)を展開している。

 独自の新商品・新サービスでは、医療・介護用電動リクライニングベッド・マットレス、超低床リクライニングベッド、アクティブシニア向け「リハテック」ブランドの電動アシスト三輪自転車、ハンドル型電動三輪車いす、リフトアップチェア、電動リフトアップ車いす、在宅・病院・福祉施設向けの見守りケアシステム、徘徊防止外出通報システム、超低床フロアーベッド、体位変換マットレスなどの新製品を積極投入して、介護・福祉用具レンタル市場でのシェア拡大戦略を推進している。

 15年9月には、さまざまな形に変えてリラックスできる新製品「スリープバンテージ フルール」を発売した。適度な柔らかさと弾力性のある中わたの発泡ビーズと特殊な縫製の組み合わせによって、形を変えても元の形に戻らずに、そのままの形を維持するドーナツ状のクッションである。

 新規販売チャネル開拓では、病院・施設向けに加えて、20年東京夏季五輪開催に向けて需要が拡大しているシティホテル向けの拡販も強化している。

■営業損益は15年3月期第2四半期をボトムに改善基調

 なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)123億85百万円、第2四半期(7月~9月)125億64百万円、第3四半期(10月~12月)127億84百万円、第4四半期(1月~3月)141億74百万円、営業利益は第1四半期5億16百万円、第2四半期2億86百万円、第3四半期4億94百万円、第4四半期4億27百万円だった。

 営業損益は第2四半期がボトムとなって改善基調だ。15年3月期のROEは2.4%で14年3月期比1.4ポイント低下、自己資本比率は62.7%で同3.0ポイント上昇した。配当性向は106.5%だった。

■16年3月期第2四半期累計は大幅増益

 今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比2.8%増の256億51百万円、営業利益が同48.9%増の11億94百万円、経常利益が同47.1%増の11億76百万円、純利益が同76.5%増の6億56百万円だった。メディカルサービス事業の好調が牽引して増収・大幅増益だった。売上総利益率は47.6%で同0.2ポイント低下したが、販管費比率は42.5%で同1.6ポイント低下した。

 セグメント別に見ると、メディカルサービス事業は売上高が同6.3%増の142億53百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同46.9%増の10億61百万円だった。営業拠点の新設、前期から在宅介護部門へ投入した「超低床リクライニングベッドFLB-03」のテレビCM継続、15年4月から介護保険給付対象となった介助式電動車いす「SP40-K」など「リハテック」ブランドの新商品投入や出張試乗会の実施など、営業強化策が奏功して増収、大幅増益だった。

 インテリア健康事業は売上高が同2.0%減の96億46百万円、営業利益が同2.3倍増の1億69百万円だった。消費増税後の需要低迷が続いているが、新商品投入や新販路開拓に注力して営業損益が改善した。その他事業は売上高が同3.1%増の17億51百万円、営業利益が53百万円の赤字(前年同期は7百万円の赤字)だった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)125億55百万円、第2四半期(7月~9月)130億96百万円、営業利益は第1四半期6億31百万円、第2四半期5億63百万円だった。

■16年3月期増収増益・増配予想

 今期(16年3月期)通期の連結業績予想(5月14日公表)は、売上高が前期比3.0%増の535億円、営業利益が同27.6%増の22億円、経常利益が同23.1%増の21億50百万円、純利益が同21.5%増の11億円としている。

 セグメント別の計画は、メディカルサービス事業の売上高が同4.4%増の296億50百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同7.1%増の17億80百万円、インテリア健康事業の売上高が同1.2%増の202億40百万円、営業利益が同3.2倍の3億20百万円、その他の売上高が同2.9%増の36億10百万円、営業利益が45百万円(前期は66百万円の赤字)としている。

 メディカルサービス事業では人員増強、拠点拡充、新製品投入によって、市場拡大が見込まれる介護関連レンタル市場での拡販に注力する。インテリア健康事業では魅力的なデザインの新商品投入、高機能・高付加価値製品の拡販を強化する。20年東京夏季五輪開催に向けてシティホテル向けの拡販も強化する方針だ。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が48.0%、営業利益が54.3%、経常利益が54.7%、純利益が59.6%である。消費増税の反動影響一巡、ドル高・円安進行に伴う国産品の価格競争力回復、原材料価格上昇に伴う価格改定なども寄与して収益改善基調であり、通期業績の会社予想に増額余地がありそうだ。

 なお16年3月期の配当予想は、第2四半期末が2円50銭、期末が15年10月1日付の株式併合(5株→1株に併合)に伴って12円50銭としている。株式併合後に換算すると年間25円となり、前期の年間4円50銭を株式併合後に換算した年間22円50銭に対して実質的に2円50銭増配となる。

■中期経営計画でシルバービジネスをさらに強化

 15年5月にグループ中期経営計画を発表した。基本方針としては、本格的な高齢社会で求められるニーズに対応するため、グループが保有する経営資源を集中させ、シルバービジネスのさらなる強化と積極的な展開を図ることにより「グループ総体としての企業価値の最大化」を目指すとした。

 主要戦略については、得意分野の強化(主力のメディカルサービス事業における福祉用具貸与事業を中心とした介護事業の深耕と事業基盤の拡充)、新たな収益機会の獲得(介護保険制度に対する過度な依存による収益変動リスクを避けるため、介護保険給付を利用しないアクティブシニア向け「リハテック」事業の拡大)、安定的に収益を確保できるビジネスモデルへの転換(インテリア健康事業における量から質への転換、他社との差別化、多品種少量生産に対応した受注生産方式などによる安定的な収益確保)、経営基盤の強化(事業成長のための人材育成、コーポレートガバナンスの強化)としている。

 経営目標数値としては18年3月期売上高578億円、営業利益34億50百万円、経常利益34億円、純利益20億円、ROE5.1%を掲げた。セグメント別にはメディカルサービス事業の売上高328億50百万円、営業利益(全社費用等調整前)29億50百万円、インテリア健康事業の売上高212億円、営業利益4億40百万円、その他事業の売上高37億50百万円、営業利益40百万円とした。

 メディカルサービス事業の営業拠点は15年3月期末の74ヶ所から18年3月期末83ヶ所、レンタル・販売代理店は1500店から2000店への拡充を目指す。

■安定配当、自己株式取得、株主優待制度で株主還元姿勢

 株主還元については、従来同様に安定配当を維持し、毎期1株あたり25円以上の配当(15年10月実施の株式併合後)を目標として、機動的な自己株式取得の実施を検討する。

 なお15年10月1日付で単元株式数を1000株から100株に変更し、併せて証券取引所が望ましいとしている投資単位の水準とすることを目的として5株を1株に併合した。株式併合により発行済株式総数が5分の1に減少するが、純資産等は変動しないため1株当たり純資産額は5倍となり、株式市況の変動など他の要因を除けば当社株式の資産価値に変動はない。

 10月30日に発表した自己株式取得(取得株式総数の上限100万株、取得価額総額の上限10億円、取得期間15年11月2日~16年1月29日)については、11月30日時点での累計取得株式総数が72万5100株、累計取得価額総額が7億352万6900円となっている。

 なお11月4日に株主優待制度の変更を発表した。15年10月1日付で5株を1株に併合したことに伴って株主優待制度の対象となる保有株式数を変更した。また優待内容に「自社グループ製品を主に掲載予定の株主優待専用インターネットサイト」を新設した。変更後は毎年3月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して、保有株式数に応じて「フランスベッド直営店舗で利用可能なご利用券」などの中から1点を選択する。16年3月期末から実施する。

■株価は年初来高値圏で堅調、ボックスレンジから上放れの動き

 株価の動き(15年10月1日付で株式併合)を見ると、11月以降はやや小動きで上げ一服となったが、年初来高値圏1000円近辺で堅調に推移している。そして12月22日には年初来高値となる1029円まで上伸する場面があった。900円台のボックスレンジから上放れる動きだ。

 12月29日の終値997円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS25円68銭で算出)は38~39倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想に株式併合を考慮した年間換算25円で算出)は2.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績に株式併合を考慮した連結BPS870円50銭で算出)は1.1倍近辺である。時価総額は約448億円である。

 週足チャートで見ると1000円近辺で上げ一服の形だが、13週移動平均線が26週移動平均線を上抜くゴールデンクロスを形成して先高感を強めている。900円台のボックスレンジから上放れる展開であり、13週移動平均線が接近して再動意のタイミングのようだ。アベノミクス「介護離職ゼロ」関連銘柄であり、16年3月期増収増益・実質増配予想、自己株式取得なども評価材料である。上値追いの展開だろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■金先物と原油価格、史上最高値に迫る―地政学リスクが市場に与える影響  今週のコラムは、異例中の異…
  2. ■「虎」と「狼」の挟撃を振り切り地政学リスク関連株で「ピンチはチャンス」に再度トライ  東京市場は…
  3. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  4. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る