【インタビュー】ヨコレイの吉川俊雄社長に聞く
- 2014/5/12 15:59
- IRインタビュー
【ヨコレイ<2874>(東1・売買単位100株)吉川俊雄社長に聞く】
■堅実性に加え、『成長に向けての脱皮』を掲げ売上急拡大
ヨコレイ<2874>(東1・売買単位100株)は、まもなく、人でいえば「古希」にあたる会社設立70周年を迎える。冷蔵倉庫では収容能力約90万トンを超える業界大手である。長らく700億円前後だった売上を1300億円へ拡大した吉川俊雄社長に取組みと今後の展望を聞いた。
■第5次中期経営計画では、食の安全安心ニーズに対応、人材育成・ITの推進などクオリティ面に注力
――横浜の「みなとみらい」の真ん中にあって、オフィスからの眺めはすばらしいですね。真新しいビルですが、最近、本社を移されたのですか。
【吉川社長】 2013年5月が会社設立65周年に当っていたこともあって2012年3月に、ここ、「みなとみらいグランドセントラルタワー7階」に本社を移しました。
――今年は設立66年、次は、人間で言うと70歳の古希を迎えられるのですね。ところで、社名ですが、「横浜冷凍」が正式と思いますが、マーケットでは「ヨコレイ」での表記が多いようです。この点についてお聞かせください。
【吉川社長】 1948年(昭和23年)5月の設立時には、「横浜冷凍企業」としてスタートしました。1953年に「横浜冷凍」へ変更し現在に至っていますが、登記の上では「横浜冷凍」です。ただ、会社設立当時から横浜中央卸売市場では、「ヨコレイ」で呼ばれていました。お得意先や株式マーケットなどでも「ヨコレイ」で呼ばれることがほとんどですから、対外的には「ヨコレイ」の社名を使っています。
――直近の2013年9月期では売上1186億9100万円のうち、「冷蔵倉庫事業」が約18%、「食品販売事業」が約82%という構成比率です。事業の概要と事業毎の利益状況をお願いします。
【吉川社長】 国内はもとより世界中の水産品・畜産品・農産品などを食することができる日本の多彩で豊かな食生活を支えているのが、「冷蔵倉庫事業」です。当社は港湾、産地、そして消費地に最適な冷蔵倉庫を持ち、高度な技術とノウハウを駆使し安全で安心な食品の安定供給に努めています。業界トップクラスの業容を誇り、当社収益の柱でもあります。一方、「食品販売事業」は、国内外の商品ニーズに的確に対応できるネットワーク力、すなわち調達力に優れていることが当社の強みです。輸入品は、主要調達先である東南アジアや北欧をはじめ、ロシア・北米・南米・オーストラリアなど世界中から輸入しています。国産品はヨコレイ全国の営業所をはじめ、国内全域から幅広く調達し、国内外への供給を展開しています。食品販売事業の主な取扱い品目は、水産品では鮭鱒、エビ、ウナギ、サバ、イカ、ホッケ、カニ、ほたて、タコ、アジ、サンマなど、畜産品ではポーク、ビーフ、チキンなど、農産品ではイモ類、玉ねぎなどです。食品販売事業での利益は、前々期(2012年9月期)の市況悪化を招いた水産品相場が回復し堅実な販売に取組んだことで前期は黒字に転換しました。
――収益の柱の冷蔵庫事業について、収納能力などについて、もう少しお願いします。
【吉川社長】 会社設立30年後の1978年に収容能力10万トンを突破して以降、大体3~5年で10万トンずつ能力をアップしています。足元では前々期から前期にかけて新設した北港(大阪府)、鹿児島(鹿児島県)、喜茂別(北海道)の各物流センターが高い稼働率を上げています。また、前々期から本格稼動したタイ国のワンノイ物流センターも近代的な冷蔵倉庫設備を求める現地ニーズとマッチして、極めて好調に推移しています。昨年9月での収容能力は国内外合わせて約85万トンとなっています。さらに、本年中に石狩第二物流センター(北海道)と夢洲物流センター(大阪府)が稼動し、都城第二物流センター(宮崎県)が竣工します。また、海外ではバンパコン第2物流センター(タイ国)を着工しています。収容能力はまもなく約90万トンを超える予定です。当社の誇る高度な冷蔵技術・保管システムの一例を紹介すれば、天井からの自然対流による冷却方式効果で温度や湿度の変化が極めて少なく品質保持が最適な「天井ヘアピンコイル」冷却方式があります。また、先日竣工した石狩第二物流センターには最新鋭の自然冷却方式である「SittoryDI」を導入しました。中期経営計画の一環として開始した、低温物流業務全般を一括して請け負う「物流アウトソーシングサービス」は、おかげさまでご好評をいただき順調に売上げを伸ばしています。
――今年9月期が最終年度の第4次中期経営計画の概要についてお願いします。
【吉川社長】 第4次中期経営計画は、長期的ビジョン『持続的な企業価値向上の実現』にむけて、あらゆる環境の変化に強く、柔軟かつスピーディに対応できる磐石な事業モデルを構築する第1ステップと位置付けています。実現に向けて、コア事業の強化と成長力の強化を推進し、未来永劫成長を続け、存続する企業となるための事業モデルの礎を築きあげることを基本方針として掲げています。第4次中期経営計画最終年度の2014年9月期の売上1300億円(第4次中期経営計画初年度2012年9月期1111億円)、営業利益45億円(同10億円)、ROE4%台、配当性向40%台の見通しです。
――第4次中期経営計画のネーミングに『成長に向けての脱皮』とあります。とくに、『脱皮』ということには、どのような意味が込められていますか。また、第4次に続いて第5次中期経営計画をお考えですか。
【吉川社長】 当社は、堅実性ということでは高い評価を受けていますが、堅実を重視するあまり考え方まで硬直してはいけません。一見すると食べ物の世界は変化はないように見えても、たとえば中食分野が伸びるなど大きく変化しています。変化を見逃すと成長どころか企業の存続さえ危うくなってきます。私が社長になる前は売上700億円前後が長期間続いていました。固く堅実なことはいいが、考え方まで同じではいけない、「過去からの脱皮」が大切であると言い続け、結果、売上を1300億円まで伸ばすことができました。第5次中期経営計画では、これまでのような新規大規模投資よりもメンテナンスのための投資が中心になると思います。とくに、食の安全安心に対するニーズはますます高まっているため、人材育成・ITの推進などクオリティ面にいっそう力を入れていきます。
――ありがとうございました。
■株価は800円前後のモミ合い、指標割安で4ケタ相場目指す展開へ
【編集後記】=2014年9月期の売上は前期比9.5%と2ケタ近い伸びである。60年以上の経験を活かした「保管業務」に、「通関サービス」や「配送サービス」を融合させた「物流アウトソーシングサービス」などによって、新たな成長期を迎えている印象である。株価は昨年4月に913円と買われたあと800円を挟んだモミ合いで推移している。予想1株利益48.3円に対しPERは16倍ていどとほぼマーケット平均並みだが、1株純資産1126円に対しPBR0.7倍超、年20円配当に対し利回り約2.5%と割安である。次期(2015年9月期)の1株利益は恐らく50円台、配当も増配が期待できそうだ。今後はこのあたりを期待して株価は4ケタ台に乗せの展開が予想される。