インテリジェント ウェイブの山本祥之社長に現況と今後の方針を聞く

■売上100億円超えを目指して土台作り

インテリジェント ウェイブ<4847>(JQS)の前期(2013年6月期)は、開発案件が不採算となったことから増収ながら赤字となった。今期は第2四半期までにほぼ収束したことから、黒字転換を見込んでいる。業務内容、現況、今後の方針などについて、代表取締役社長山本祥之氏に話を伺った。

■今6月期は黒字転換、不採算案件は第2四半期で一巡

―― 最初に御社の主力業務であるカードビジネスのフロント業務内容について教えてください。

【山本社長】 例えば証券会社でいうと、フロント、ミドル、バックと業務が3つに分かれています。バックはどちらかといえば清算業務、ミドルは売買を指しています。フロントはネットワークを使って値動きを見ています。当社も区分けとして、フロントと言っているのは、カード会社のカードが使われる際に、ネットワーク経由で使っていいのかという問い合わせがあった場合、使っていいですよ、悪いですよという仕組みをメインに行っているので、フロント業務と呼んでいます。売上の清算とか請求は行っていません。

―― では、純粋にシステムの開発だけれども、開発する分野がカード会社のシステムの中で、カードの審査などに関連する分野を受託されているということですか?

【山本社長】 受託というより、カード会社が必要としているシステムを構築して販売しているということです。具体的には、カードの金額が限度額の範囲内であるかどうかということを瞬時に判断するシステムです。

―― 了解しました。では、次のシステムソリューション業務との違いは、システムの分野の違いということですか?

【山本社長】 そうです。フロント業務というのは24時間動かなければならない仕組みなので、特殊なコンピュータを使っています。それとは違い、普通のコンピュータを使ってシステムを開発して納入しているのがシステムソリューション業務です。システムソリューションの中にはクレジットカード会社向けの仕組みもありますし、証券会社向けの仕組みもありますし、一般会社向けの仕組みもあります。

―― つまり、フロント業務が特殊な分野なので、分けているということですね?

【山本社長】 その通りです。また、特殊なコンピュータを使っていますので、特殊なコンピュータの仕入・販売も行っています。

―― これはフロント業務の売上の中に含まれていますか?

【山本社長】 はい含まれています。

―― 次に確認しておきたいのが、今期の業績の中で、第2四半期業績の減額の要因となった大型案件の不採算について、確かに前期も不採算案件がありましたが、今期の不採算の要因は前期のものと同じものですか、それとも別のものですか?

【山本社長】 前期の案件の関連のものです。第1四半期だけ引きずっています。前期の第2四半期で大きな損失を処理して、第3四半期で修まりました。第4四半期は、その案件で少し品質不良が出ましたので、引き当てをかけました。それで終了したかと思っていたら、今期に入って予想外の品質不良が出ましたので、対応せざるをえなくなって、約2億円かけて至急処理することになりました。

―― 第2四半期に入って収束したということですか?

【山本社長】 コントロールの範囲内に入ったという状況です。全くゼロになったというわけではありませんが、今後出てきた場合でも軽微な引き当てで済むということです。

―― 今後、受託に関しては、システムの案件さえ入れば安定的に推移すると思われます。しかし、セキュリティシステム業務だとか、その他の業務は本当に必要なのか、ということを含めて、今後の方向性を教えてください。

【山本社長】 まず、社歴が30年目に入ってきた状況で、その中で、当初からクレジットカード会社をターゲットとしたシステムをメインにして動いてきました。ところが銀行などの統合の動きの余波を受けて、クレジット会社が統合されました。その結果、1社あたりの売上が多くなっても、元々当社のビジネスとしては、横展開でパッケージを売って、付加価値を付けて高収益という体質で動いていました。しかし、統合された結果、お客さんの数が少なくなり、開発系の事業は安定しているけれど、事業としては伸びない状況になりました。会社としては、当然、新しいところを手掛ける必要があります。そのような状況下で、約10年前、個人情報保護法が施行されることになり、当社の顧客全部が対象となりましたので、セキュリティシステム事業を始めました。最初の5年間は法律の後押しもあり売上は好調でした。しかし、その後、ウインドウズのバージョンが次々に代わるので、追随するためには踏襲しなければならないということで、そのころからセキュリティ事業については赤字になりました。しかし、お客さん達は使い続けていますので、フォローしていかなければならないということで、継続しています。ところが、ウインドウズが落ち着いてきましたので、固定費も減少し、収支が均衡してきた状況です。また、リーマン・ショックの影響で、一時はセキュリティに投資する企業も減少していましたが、最近は景況感が良くなりましたので、各企業ともセキュリティ投資に対する意欲が出てきましたので、上向く傾向にあります。

―― では、今後はセキュリティに関しては改善傾向にあるということですね?

【山本社長】 今後、6年間、東京オリンピックに向けて、当然、ロンドンオリンピックの例も含めて、不正アクセスとかセキュリティ危機の事件が起きるのは目に見えています。セキュリティ投資を行わざるをえない状況になってきています。また、この景況感はセキュリティ投資への後押しをしていますので、かなり販売系を含めて復活できるだろうと見ています。当然、自社パッケージの販売が良くなれば、利益率も改善するということです。開発事業は以前、横展開していたので、利益率は良かったのですが、システム開発がメインになってきて、パッケージはその後、売り先が少なくなりました。また、開発で利益をとるのは少しずつ厳しくなりました。そういう状況で、利益を確保しながら、増収を図るということになると、パッケージ販売に少し力を入れることが必要で、この2、3年はそのような状況です。

―― そこで、DNP(大日本印刷)との取組について教えてください。

【山本社長】 DNPが当社の親会社になって、DNPの営業の方々が、当社のセキュリティ製品も扱ってくださいました。DNPの営業のスキルとセキュリティの製品というのは、少し合いませんでした。DNPの営業の方は、販促商品を扱っています。例えば、エンドユーザーの人達が売上を拡大するための印刷物、その周辺の色々なビジネスを行っています。ところが、セキュリティ製品は販促物ではありませんので、少し商材としては合いませんでした。そこで、次の商材ということで、テキスト解析をすることで、何らかの効率化が図られないだろうかと考えました。例えば、IBMがワトソンというエンジンを作って、画像だとか、文章だとかをコンピュータで自動解析することを今後、大々的に行いますが、当社はその中のセマンティックといわれている文章のところだけ研究しています。これは、ゼロからのスタートをするのは大変なので、韓国のソフトベンダーで、セマンティックの製品を作っておられる方々がいますので、そこのエンジンで製品企画をしています。最初は、社内の文書などを全部自動解析して、何か不正をやっていないかということを行おうとしたのですが、それはあまりにも膨大でありましたので、取りやめ、何かもっと簡単なものはないかということで、ホームページのFAQに着目しました。質問をすると回答事例なようなものが出てきます。そのFAQが複雑になり過ぎて、結果的にホームページは使われないで、コールセンターに電話がかかってきます。そのため、コンシューマー系のお客様はコールセンターの費用がうなぎ上りになっています。その費用を抑えるための商品が必要といえます。今言っていた解析の技術のターゲットを絞ることによって、短期的に簡単に売れるのではということで始めたのが、Faceコンシェル(フェイスコンシェル)です。この商品であれば、DNPの営業の方が得意としている販促の商品でありますので、扱いとしてはマッチし、DNPの顧客層に対する販売チャネルとしてはかなり有望といえます。これで販売系の事業をさらに加速させて、利益の積み増しを図りたいというのが現状です。

―― セキュリティ事業が上向き、次にフェイスコンシェルの売上が伸びるということで、事業環境は良くなっていますね。その他に何かございませんか。

【山本社長】 確かに、これでは十分ではありませんので、売上を拡大するには、少し幅を広げる必要があります。冒頭にご質問がありました。フロント業務に関して、フロントはリアルタイムで使われたお金に対して、瞬時にチェックできる機能です。その後ろには、売上清算とか、請求業務だとか基幹業務があります。この基幹業務にも進むことで、一貫性を持ってクレジットカード会社の全般のサポート業務を作れるだろうということで、チャレンジしました。その結果、不採算となりました。原因は、つくる業務の見積もりが間違いでした。その金額がそれほど膨大になるとは思いませんでした。一括契約しましたので、責任を持ってやり遂げました。しかし、赤字とはなりましたが、次のステップのための蓄積はできたといえます。今後の開発ボリュームの拡大につながっています。

―― 今後の売上目標についてはいかがですか。

【山本社長】 過去の歴史から見て、50億円、60億円、ピークの時で70億円というのが年間の売上でした。次のステップとして、100億円を超える土台を作る必要があります。そこを見据えた場合、今まで持っている商材だけだと不十分ですので、開発範囲の拡大と販売系事業の拡販ということを目指しています。そこで、アジアの方たちに向けた取組を始めています。ネットワークの話になると、各国個別のネットワークがありますので、そこは手作りになってしまいますので費用が掛かり過ぎます。しかし、VISA・Masterカードの国際ネットワークについては国際共通です。国内でも偽造カードが結構使われていましたが、これまでの仕組みの中では偽造カードであるかどうかは瞬時には分かりませんでした。そこで、新しいパッケージを作り、12、3年前から国内のカード会社さんに提供していました。この経験を生かし、偽造カードが使われるパターンであったら、アジアでも一緒だろうと、この4年ほど、台湾、中国、韓国などで営業を開始しました。こちらの方で、売上が確保できるのではないかと、腰を落ち着けて営業活動を続けています。次の期待としてみています。

―― こちらの方はまだ、成果としては出ていないのですか?

【山本社長】 日系企業様で進出しているお客様がいまして、そこでは使っていただいています。しかし、現地のローカルの企業に使っていただいて、初めて進出といえると思っています。

―― IT社会が進むと、セキュリティについては、色々な話が出てきそうですね。

【山本社長】 そうですね。

―― また、DNPさんとの相乗効果については、どの辺りからブレークしてくるか、ということが当面の焦点ということですね。

【山本社長】 そうです。

――  あとは、本来のフロント業務、システム業務は通常の受注をどれだけ増やしていくかという形になりますね?

【山本社長】 当社として、今一番ブレークしてほしいのはフェイスコンシェルです。こちらは全日空さんで昨年の夏くらいからいろいろチャレンジしていただいて、ようやく12月に開示してくれました。こちらはDNPの営業が取ってきてくれた仕事です。これを起爆剤に、動き出したところです。

――  導入されたばかりでしょうが、全日空さんのコールセンターに効果は出てきているのでしょうか?

【山本社長】 マイレージ系の問い合わせは少なくなってきたということです。ほとんどマイレージの問い合わせが多かったのが、かなり減ってきたそうです。

―― では、次の企業もということですね?

【山本社長】 FAQが複雑な企業はいっぱいあります。特に金融系は商品が複雑になってきていますので、よく分らないということもありますので、ニーズがあると見ています。

―― 1件当たりの単価はどれほどになりますか?

【山本社長】 大体目安としては、1千万円、2千万円という金額です。そのあと保守・運用という形で、問い合わせに対して改善していくために、電子辞書を充実させていきます。この様なコスト、保守・メインテナンスの費用として、年額数百万円かかります。

―― この辺りが積み上がってくると、ストック型になるわけですね。

【山本社長】 そうですね。また、FAQだけでなく、コーディネーションして、予約にも使えますので、一個売って終わりではなく、幅広く、深く使っていただけます。会社数も増やせますが、1社について深く対応することで、アップセルもできるということです。

―― 最後に今期の業績についてですが、第1四半期は赤字でありましたが、第2四半期だけを見ると黒字化したことで、通期業績予想は当初予想を据え置いておられますね。

【山本社長】 その通りです。

―― また、今期で不採算案件の影響は終わりますので、来期から利益面での大幅な改善が期待できますが、今後のシステム開発業界の動きについて教えてください?

【山本社長】 システム開発業界の動きとしては、今後数年間、カード会社さんから見れば、この2年から3年間は間違いなくシステム開発量というのは増えます。それ以外のところでも、ITの端末系が色々と進化していますので、どんどんと開発量が増えるのはここ数年間は間違いないという動きです。また、国のマイナンバー制度も含めて、民間に開放される話に繋がってきますので、この5年から6年は間違いなくシステム需要は増えると見ています。しかし、待っているだけでなく、体力に合った形でのチャレンジも忘れずに行っていこうと思っています。

―― 本日は時間をとっていただき誠にありがとうございました。

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