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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本スキー場開発は16年7月期は暖冬の影響だが売られ過ぎ感、2月1日付で株式2分割
- 2016/1/6 06:41
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
日本スキー場開発<6040>(東マ)は関東甲信越を中心にM&Aで取得したスキー場の再生・運営事業を展開している。16年7月期業績は記録的な暖冬の影響を受けそうだが、17年7月期は暖冬の影響が一巡して収益拡大が期待される。なお2月1日付で株式2分割を実施して株主優待制度も実質的に拡充する。株価は軟調展開で上場来安値に接近したが売られ過ぎ感を強めている。暖冬の影響の織り込みが完了して反発のタイミングだろう。
■関東甲信越を中心にM&Aで取得したスキー場の再生・運営事業
日本駐車場開発<2353>の連結子会社として05年12月に設立し、関東甲信越を中心にスキー場運営事業を展開している。M&Aで取得したスキー場を再生して収益を積み上げるビジネスモデルで、スキー場運営専業として国内初の上場企業である。
15年7月期末時点で、長野県・HAKUBA VALLEYエリアの4スキー場(白馬八方尾根スキー場、白馬岩岳スノーフィールド、栂池高原スキー場、鹿島槍スキー場)、長野県・竜王スキーパーク、群馬県・川場スキー場、および岐阜県・めいほうスキー場の7スキー場を運営している。
スキー場運営の子会社は、鹿島槍(06年9月取得、鹿島槍スキー場)、北志賀竜王(09年11月取得、竜王スキーパーク)、川場リゾート(10年10月取得、川場スキー場)、白馬観光開発(12年11月取得、白馬八方尾根スキー場、白馬岩岳スノーフィールド、栂池高原スキー場)、めいほう高原開発(14年10月取得、めいほうスキー場)である。付随サービスとして、スキー・スノーボード用品や登山用具などのレンタル(13年4月取得の子会社スパイシーなど)や、飲食店舗運営なども展開している。
15年10月には菅平高原スノーリゾート(長野県上田市菅平高原)においてスキー場を運営するハーレースキーリゾートの株式を取得して子会社化(株式譲渡実行は11月)した。長野県内でも有数の標高が高い低温地域にあり、安定した営業日数を確保している。また首都圏から日帰り圏内に立地してアクセスが良く、来場者数および業績は安定している。なお株式取得価額は2億07百万円で、取得後の所有割合は83.4%となる。同社の子会社化によって当社のスキー場運営は8ヶ所となった。
■ウィンターシーズンの構成比が高い収益構造
ウィンターシーズン(スキー場の営業開始日~営業終了日)は、リフト券の販売、料飲の提供、スキー・スノーボードなどの用品レンタル、土産物の販売などを行う。またグリーンシーズン(ウィンターシーズン以外の期間)は、リフト券の販売、料飲の提供、登山用具のレンタル、土産物の販売などを行う。
なお収益面で見ると、ウィンターシーズン(通常11月~4月)にあたる第2四半期(11月~1月)と第3四半期(2月~4月)の構成比が圧倒的に高く、グリーンシーズンにあたる第1四半期(8月~10月)と第4四半期(5月~7月)は営業赤字となる収益構造だ。そして冬の降雪量過多または不足などの天候リスク、地震・噴火などの自然リスクも影響しやすい。
ただしグリーンシーズンの収益化が冬の天候リスク吸収や雇用の安定化にも繋がるため、イベントや新規事業などの施策によってグリーンシーズンの売上構成比30%(13年7月期実績11.0%%、14年7月期実績21.7%、15年7月期実績16.9%)を目指している。
■地域活性化の中心的な役割を担う存在としてスキー場を再生・運用
事業再生・運営のプロ集団として、貴重な自然を最大限活用したスキー場運営の再デザインを目指し、スキー場取得とバリューアップの相乗効果で成長する独自のビジネスモデルを推進している。
スキー場再生というと投資ファンド的な印象を受けるが、スキー場を投資・投機・転売対象の不動産としてではなく、中長期的な視点でスキー場を基点とする地域活性化・地方創生を目指し、地元パートナーや地域社会と一体となったハンズオンスタイルで、スキー場の再生・運営に取り組んでいることが特徴だ。
そして豊富なノウハウをベースとして、スキー場運営における非効率性の改善や新規事業を推進し、スキー場運営事業の適正な収益化と持続的な成長の実現を目指している。
なお12月24日には、フリースタイル・スキーハーフパイプ競技の小野塚彩那選手(石打丸山スキークラブ)とのパーソナルスポンサー契約締結を発表した。アスリートの支援を通じてスポーツ文化の醸成や裾野拡大に取り組み、スキー場を含む地域の活性化を目指すとしている。
■オールシーズン化と世界からのインバウンド需要取り込み戦略を推進
持続的な成長に向けた戦略として、ウィンターシーズンにおけるスキー場への集客力を高めるだけでなく、グリーンシーズンも集客するオールシーズン収益化戦略、そしてジャパンパウダーを求める世界中の顧客を日本のスキー場へ集客するインバウンド戦略を基本方針としている。
ウィンターシーズンにおけるスキー場への集客策としては、国内外でのスキー・スノーボードに関係する大規模な催事・展示会への出展強化、スキー場の認知度向上に向けたTV・ラジオCMなど広告宣伝の強化、シャトルバスや自社運営直通バスなどによるアクセスの強化、HAKUBA VALLEY共通券などによる利便性の向上、旅行会社などと連携した商品企画、外国観光業への販路開拓などを実施している。
魅力的なスキー場づくりとしては、上級者が楽しめるゲレンデの設営、ファミリー層向けに子どもが安全に雪遊びできるキッズパークの増設、初心者向けにソリ遊びを中心としたゲレンデの設営、週末・祝日の来場者層に合わせたゲレンデ企画の実施、飲食テナントの充実などの施策を強化している。
15年10月にはバーガーキング・ジャパンとのフランチャイズ契約締結を発表した。長野県内およびスキー場内1号店となる「バーガーキング栂池雪の広場店」を栂池高原スキー場内のフードコートである雪の広場にオープンする。
またグリーンシーズンにおける集客については、高山植物園、キャンプなどの自然体験、音楽イベントや国際交流イベントの誘致、キャンドルナイトの開催、サバイバルゲームフィールドやスケートパークの設置など、自然を活かした施設への積極投資と販売強化を推進している。鹿島槍では子供向け合宿団体の大型受注に成功し、15年7月期のグリーンシーズン来場者数が前期比2.2倍に増加した。
世界中の顧客を日本のスキー場へ集客するインバウンド戦略については、15年5月に長野県のHAKUBA VALLEY(長野県白馬村・小谷村・大町市に所在する10ヶ所のスキー場からなる日本最大のスノーリゾート)が、世界的に著名なスキーリゾートのみで構成されるTMC(The Mountain Collective)から、日本で唯一のパートナーと承認されてアジアから初めて参加した。HAKUBA VALLEY10ヶ所のスキー場のうち、当社グループが4ヶ所を運営している。
■15年7月期は過去最高の業績、外国人来場者数も増加傾向
15年7月期は、白馬エリアにおいてウィンターシーズンに長野県神城断層地震、グリーンシーズンにおいて天候不順の影響を受けたが、めいほうスキー場のグループ化、インバウンド需要の取り込み、各スキー場での単価改善や業務効率化などで売上高・各利益とも過去最高を記録した。
15年7月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(8月~10月)5億54百万円、第2四半期(11月~1月)23億59百万円、第3四半期(2月~4月)25億28百万円、第4四半期(5月~7月)4億40百万円、営業利益は第1四半期1億74百万円の赤字、第2四半期6億46百万円、第3四半期8億07百万円、第4四半期3億73百万円の赤字だった。
15年7月期の来場者数(その他施設含む)は、子会社化しためいほうスキー場も寄与してウィンターシーズンが14年7月期比11.0%増の156.0万人、グリーンシーズンが同7.8%減の29.2万人、合計が同7.5%増の185.2万人だった。
白馬八方尾根スキー場における外国人来場者数の割合は12年12月~13年5月には10.9%だったが、13年12月~14年5月に12.6%、14年12月~15年5月には20.6%と増加傾向を強めている。外国人来場者は豪州などからの来場者が中心であり、中国からの来場者数の割合はまだ小さいようだ。
■16年7月期第1四半期はグリーンシーズンで赤字だが来場者数は増加
今期(16年7月期)第1四半期(8月~10月)連結業績は、売上高が6億40百万円、営業利益が2億64百万円の赤字、経常利益が2億67百万円の赤字、純利益が2億09百万円の赤字だった。来場者数が増加して前年同期比増収だったが、グリーンシーズンであることに加えて、14年10月に取得しためいほう高原開発ののれん償却費増加も影響して各利益は赤字だった。
なお索道(ゴンドラ、ロープウェイ、リフト)を稼働した施設の来場者数は、4施設(白馬八方尾根、白馬岩岳、栂池高原、竜王マウンテンパーク)合計で前年同期比16.4%増の180千人だった。その他の施設の来場者数は3施設(鹿島槍、川場リゾート、めいほう高原開発)合計で同49.8%増の34千人だった。
■16年7月期通期は増収増益予想だが、暖冬の影響で下振れの可能性
今期(16年7月期)の連結業績予想(9月3日公表)については、売上高が前期比11.5%増の65億59百万円で、営業利益が同14.3%増の10億35百万円、経常利益が同17.4%増の9億93百万円、純利益が同1.6%増の7億18百万円としている。配当予想は無配継続としている。
新規のM&Aを織り込まず、白馬エリアにおける集客増加策などで既存7スキー場の来場者数増加を見込み、さらに単価改善や業務効率化などの効果も寄与して2桁増収・営業増益予想としている。
期初計画との比較では、新たに子会社化したハーレースキーリゾートの収益が加わるが、記録的な暖冬の影響を受けてスキー場オープンが遅れたことなどで下振れの可能性が高いだろう。なお各スキー場のオープンの状況は、11月末に白馬八方尾根スキー場、栂池高原スキー場、12月上旬に竜王スキーパーク、川場スキー場、12月中旬に菅平高原スノーリゾート、鹿島槍スキー場、白馬岩岳スノーフィールド、12月末にめいほうスキー場がオープンした。
ただし国内外におけるセールスプロモーション効果で、ウィンターシーズンでは外国人来場者が増加基調であり、長期滞在の傾向も強めている。またグリーンシーズンでは多くの登山客に加えて、宿泊施設を活用した自然体験学校の合宿、スポーツ関係者の合宿などの需要も増加しているようだ。16年7月期は記録的な暖冬の影響を受けそうだが、17年7月期は暖冬の影響が一巡して収益拡大が期待される。
■M&A投資額は順調に回収、さらにポートフォリオ拡充
M&Aで取得した7スキー場はいずれも収益性が改善し、7スキー場取得費用累計26億67百万円に対して、15年7月期までの営業利益累計が25億04百万円となった。M&A投資額をほぼ回収している状況だ。
スキー場に対する「目利き力」の醸成、再生・運営・危機対応などのノウハウの蓄積、再生トラックレコード(実績)の積み上げで、さらなるスキー場および関連事業の取得・再生に繋げる。
IPOによる知名度や信用力の向上も背景として、エリア分散、収益性、雪不足リスク、雪質、アクセス、グリーンシーズンにおける改善余地などを意識しながら、スキー場・関連事業を継続的に取得するM&A戦略を質・量ともに加速する。年1件程度ペースでポートフォリオ拡充戦略を推進する方針だ。
■中期的に収益拡大基調、22年中国・北京冬季五輪も追い風
国内のスキー人口は、スキーブームと呼ばれたバブル期の80年代~90年代をピークとして長期減少傾向が続いた。しかし近年はスノーボード愛好者の増加や、バブル世代ファミリー層のゲレンデ回帰などで下げ止まり感を強めている。
さらにジャパンパウダーを求める世界中のインバウンド顧客が急増し、滞在長期化傾向も強めている。22年冬季五輪開催地が中国・北京に決定したことを契機に中国でスキー人口が増加すれば、雪質の良い日本のスキー場でスキーを楽しむ中国人旅行客が一段と増加する可能性もあるだろう。
一方では、スキー場の淘汰などでスキー場数の減少傾向は続いている。スキー場の新規開発はなく、大手不動産・鉄道会社においてもノンコア事業となったスキー場運営事業から撤退する動きも見られる。
このためスキー場数と来場者数の需給バランスが改善傾向を強め、特にアクセス、ホスピタリティ、雪質に優れたスキー場には残存者利益が期待できる状況となっているようだ。こうした事業環境の好転も追い風であり、スキー場再生・運営専業企業としての強みを活かして、中期的に収益拡大基調だろう。
■2月1日付で株式2分割
株主優待制度については15年7月期から実施している。毎年7月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して、日本スキー場開発グループが運営するスキー場の割引チケット5枚(1枚で4名利用可)、および日本駐車場開発が運営・管理している時間貸し駐車場の1日駐車料金30%割引券5枚を贈呈する。
11月27日には株主優待制度の利用範囲拡充を発表した。スキー場割引チケットの利用範囲に、新たに運営を開始する菅平高原スノーリゾートを対象スキー場に追加する。利用可能スキー場は8ヶ所となる。
また12月25日には株式分割を発表した。16年1月31日を基準日(効力発生日16年2月1日)として1株を2株に分割する。投資単位当たりの金額を引き下げることで、投資家層の拡大と当社株式の流動性の向上を図る。株式分割後の発行済株式総数は800万200株となる。
なお株主優待制度については従来どおり、毎年7月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象とするため、実質的に制度拡充となる。
■株価は売られ過ぎ感
株価の動きを見ると、11月の戻り高値5590円から反落して軟調展開だ。12月25日に3890円、1月5日に3910円まで調整し、15年4月の上場来安値3650円に接近した。記録的な暖冬の影響による16年7月期業績下振れ懸念に、地合い悪化の影響も受けたようだ。
1月5日の終値3925円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS179円50銭で算出)は21~22倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1168円37銭で算出)は3.4倍近辺である。なお時価総額は約157億円である。
週足チャートで見ると再び13週移動平均線を割り込んで調整局面だが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が15%程度に拡大して売られ過ぎ感を強めている。17年7月期は暖冬の影響一巡が期待され、2月1日付の株式2分割や株主優待制度の実質的拡充も注目点だ。記録的な暖冬の影響の織り込みが完了して反発のタイミングだろう。