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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】JFEシステムズは戻り高値圏で堅調、16年3月期業績予想に増額余地
- 2016/1/7 06:51
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
JFEシステムズ<4832>(東2)は鉄鋼向けシステム構築を主力とする情報サービス企業で、一般顧客向け複合ソリューション事業なども拡大している。16年3月期通期業績予想に増額余地があり、3期連続増配予想や指標面の割安感も評価材料である。株価は地合い悪化の中でも戻り高値圏で堅調に推移している。15年1月の昨年来高値を目指す流れに変化はないだろう。
■JFEスチール系の情報サービス企業
川崎製鉄(現JFEスチール)のシステム部門を分離した情報サービス企業で、鉄鋼向け情報システム構築事業を主力として、ERPと自社開発ソリューションを組み合わせた一般顧客向け複合ソリューション事業や、自社開発のプロダクト・ソリューション事業も強化している。
アライアンス戦略では、13年5月に大阪ガス<9532>子会社オージス総研と協業、ビジネスブレイン太田昭和<9658>と資本・業務提携している。
■中期経営計画で18年3月期EPS150円以上目指す
16年3月期スタートの新中期経営計画では、高収益事業への構造転換を目指し、目標数値に最終年度18年3月期の売上高400億円以上、経常利益20億円以上、純利益12億円以上、EPS150円以上を掲げている。
重点課題として、JFEスチール製鉄所業務プロセス改革に向けたシステム刷新の遂行、ERPに自社ソリューションを組み合わせた一般顧客向け複合ソリューション事業の拡大、基盤サービス事業の拡大に向けたクラウドサービスの立ち上げを掲げ、自動車など製造業顧客基盤の拡大、e-文書(電子帳票)ソリューションなど自社プロダクト拡販の推進も継続する。
JFEスチール製鉄所の業務プロセス改革への対応で多くの技術・ノウハウを蓄積し、基盤サービス事業やソリューション事業に活用して一般顧客向け売上拡大を目指す戦略だ。製造業向けERPなど基幹系システムやサプライチェーン計画系システムに組み合わせて拡販し、高収益な事業構造への転換を推進する。
■鉄鋼はJFE製鉄所システム刷新に対応
鉄鋼事業ではJFEグループの海外展開を支援すべく、タイCGL(溶融亜鉛めっきライン)工場向けで開発した海外製造拠点向け標準システムを、インドネシアCGL工場へ導入中だ。
さらにJFEスチール製鉄所の業務プロセス改革に向けて、システムを刷新して生産管理システムの高度化・共通化を推進する。16年からの本格対応に向けて製鉄所システムプロジェクトを新設し、JFEスチールの製鉄所業務プロセス改革斑との連携を強化している。
■一般顧客向け複合ソリューションを拡大
ERPに自社ソリューションを組み合わせた一般顧客向け複合ソリューションは、自動車メーカー向けなどに新規受注が増加している。さらなる事業拡大に向けてアライアンス戦略も積極活用する。
15年6月にはセールスフォース・ドットコム社と、同社のクラウド・アプリケーション「Sales Cloud」およびクラウド・アプリケーション開発基盤「Force.com」に関する販売パートナー契約を締結した。
同社の「Force.com」を利用して親会社JFEスチール向けに「販売情報共有システム」を構築した実績を持ち、15年5月には経済産業省と東京証券取引所が企画する「攻めのIT経営銘柄」(18銘柄)にJFEホールディングス<5411>が選定された。JFEスチールの「販売情報共有システム」が選考のポイントの一つとして挙げられている。
15年9月にはITホールディングス<3626>グループのTISと、当社のデータ分析基盤構築テンプレート「KPIMart(ケイピーアイマート)」の販売代理店契約を締結した。ビジネス・インテリジェンス(BI)およびデータウェアハウス(DWH)分野で協業し、製造業への一層の販路拡大を図る方針だ。
■食品の品質情報管理分野のデファクト化目指す
食の安全・安心を支える食品業界全体の品質情報管理向上への取り組みを強化し、15年7月には自社開発「MerQurius Net(メルクリウスネット)原料規格書サービス」登録サプライヤ企業が3000社を超えた。原料規格書は食品メーカーがサプライヤから購入する原料の品質に係る情報である。
15年10月には、食品品質情報管理ソリューション「MerQurius」のクラウドサービス「MerQurius クラウド」の販売を開始した。16年1月からサービス開始する。
製菓、冷凍食品、調味料など大手食品メーカー中心に200社以上の利用実績を持つ「MerQurius」をクラウド環境で利用可能とするもので、同時に加入する「MerQurius Net 原料規格書サービス」と連携して原料規格書の授受を効率化する。クラウドサービスによって売上高100億円未満の中堅・中小食品メーカー約1200社をターゲットに拡販を推進してデファクト化を目指す方針だ。
■e-文書(電子帳票)ソリューション分野も強化
e-文書(電子帳票)分野では15年10月に、電子帳票システム「FiBridge2」事例として第一生命保険<8750>の導入事例を公開している。
15年11月には、シーイーシー<9692>と税務関係書類の管理分野において提携し、両社が強みとする製品を組み合わせた電子データ化・長期保存ソリューションの提供を開始すると発表した。
■厚生労働省「均等・両立推進企業表彰」で東京労働局長賞を受賞
なお15年10月には、厚生労働省が実施する平成27年度「均等・両立推進企業表彰」の均等推進企業部門において「東京労働局長奨励賞」を受賞したと発表している。
「均等・両立推進企業表彰」は、女性労働者の能力発揮を促進するための積極的な取組(ポジティブ・アクション)および仕事と育児・介護との両立を支援する取組について、他の模範ともいうべき取組を推進している企業を「均等・両立推進企業」として表彰するものである。平成27年度東京労働局長賞は当社を含めて5社が選定された。
■第4四半期の構成比が高い収益構造
15年3月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)77億69百万円、第2四半期(7月~9月)89億33百万円、第3四半期(10月~12月)84億38百万円、第4四半期(1月~3月)106億67百万円、営業利益は第1四半期83百万円の赤字、第2四半期5億28百万円、第3四半期4億77百万円、第4四半期7億79百万円だった。
第4四半期の構成比が高い収益構造である。そして営業損益は改善基調である。また15年3月期の配当性向は26.3%だった。ROEは14年3月期比2.5ポイント上昇して8.4%、自己資本比率は同1.8ポイント低下して49.5%となった。
■16年3月期第2四半期累計は計画超で増収増益
今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比2.9%増の171億86百万円で、営業利益が同13.6%増の5億05百万円、経常利益が同14.9%増の4億95百万円、純利益が同18.6%増の2億81百万円だった。
下期売上計上予定の高収益案件の前倒しが寄与して、期初計画の減益予想から一転して増益(10月19日に増額修正)となった。前年同期との比較で見ると、売上は鉄鋼がほぼ横ばいだったが、自動車や金融向けの一般顧客が増収だった。売上総利益率(17.3%)は鉄鋼事業の先行投資で同0.3ポイント低下したが、販管費比率(14.3%)は同0.6ポイント低下した。
四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)80億12百万円、第2四半期(7月~9月)91億74百万円、営業利益は第1四半期56百万円、第2四半期4億49百万円だった。
■16年3月期通期営業減益予想だが増額余地
今期(16年3月期)通期の連結業績予想(4月27日公表)は、売上高が前期比5.6%増の378億円、営業利益が同3.0%減の16億50百万円、経常利益が同1.3%減の16億60百万円、純利益が同16.2%増の9億70百万円としている。配当予想(4月27日公表)は同2円増配の年間30円(期末一括)で予想配当性向は24.3%となる。3期連続の増配で配当額は上場後の最高となる。
売上面ではJFEスチール向けや一般顧客向けが好調に推移して増収、営業利益と経常利益は開発労務費の増加に加えて、製鉄所業務プロセス改革対応や基盤サービス事業強化といった戦略的先行投資コストを勘案して減益、純利益は15年度税制改正の影響で増益見込みとしている。
事業別売上高の計画を見ると、鉄鋼は下期にJFEスチール製鉄所システム刷新に着手して同11億円増加の166億円、一般顧客は複合ソリューション拡大で同8億円増加の141億円、基盤サービスはJFEグループ会社向けが寄与して同1億円増加の29億円、子会社が機器販売からサービス分野にシフトして同横ばいの42億円としている。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が45.5%、営業利益が30.6%、経常利益が29.8%、純利益が29.0%である。やや低水準の形だが、第4四半期の構成比が高い収益構造であり、企業の高水準なIT投資、鉄鋼向け案件の規模拡大、複合ソリューションの収益改善なども考慮すれば、16年3月期会社予想は保守的な印象も強く、増額余地があるだろう。
■ウェブサイトの受賞相次ぐ、本社受付に人型ロボットも配属
15年7月には当社ウェブサイトが、モーニングスターによる「GomezIRサイトランキング2015」において総合91位を獲得し、銅賞を受賞した。
15年12月には当社ウェブサイトが、日興アイ・アール「2015年度全上場企業ホームページ充実度ランキング」で最優秀サイト、大和インベスター・リレーションズ「2015年インターネットIR表彰」で優良賞を受賞した。
なお15年12月には、ソフトバンクロボティクスが提供する人型ロボット「Pepper」を本社受付に配属した。
■株価は戻り高値圏で堅調
株価の動きを見ると、12月7日と8日の戻り高値1263円から反落し、12月24日に1116円まで調整する場面があったが、1月5日と6日には1245円まで戻している。全般地合い悪化の中でも戻り高値圏で堅調に推移していると言えるだろう。
1月6日の終値1245円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS123円52銭で算出)は10倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間30円で算出)は2.4%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1309円13銭で算出)は1.0倍近辺である。時価総額は約98億円である。
週足チャートで見ると一旦割り込んだ13週移動平均線と26週移動平均線を素早く回復した。16年3月期通期業績予想に増額余地があり、3期連続増配予想や指標面の割安感も評価材料である。15年1月の昨年来高値1400円を目指す流れに変化はないだろう。