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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】DNAチップ研究所は安値圏から急反発、DNAチップ技術の事業化を目指すバイオベンチャー
- 2016/1/12 07:14
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DNAチップ研究所<2397>(東マ)はDNAチップ技術の事業化を目指すバイオベンチャーで、診断サービス事業を強化している。株価は12月25日の昨年来安値から急反発している。1月6日発表の共同研究成果も好感されたようだ。出直りの動きが本格化しそうだ。
■DNAチップ技術の事業化を目指す研究開発企業
将来の個人化医療や未病社会の実現を見据えた遺伝子発現プロファイル収集・統計受託解析など、DNAチップ(DNAマイクロアレイ)技術の事業化を目指す研究開発企業である。
大学病院・研究機関や製薬・食品メーカー向けDNAチップ関連受託実験・解析・統計処理サービスなどの研究受託事業、および免疫細胞の加齢遺伝子の働き具合から体内年齢を予測する「免疫年齢サービス」などの診断事業を展開している。
14年11月に第三者割当増資および新株予約権発行で、エンジニアリングプラスチック大手のエンプラス<6961>と資本業務提携した。バイオ事業における業界ネットワークの補完、新製品開発能力の強化、海外インフラの利用などでシナジー効果を目指すとしている。
■遺伝子検査のRNAチェックに強み
時々刻々と変化する体調変化や加齢とともに起こる免疫変化などを遺伝子検査するRNAチェック(血液細胞遺伝子発現マーカー検査)に強みを持っている。
中期成長に向けて、次世代シークエンス受託解析サービスなど研究受託メニューを充実させるとともに、RNAチェックによる遺伝子解析検査サービス、独自開発パッケージソフトウェアによる診断サービス、健康モニタリングサービスなどの診断関連事業を収益柱に育成する方針だ。
■診断関連事業を強化
診断関連事業では、新規サービスの「リウマチェック」(関節リウマチ薬剤効果予測検査)による多剤効果予測検査サービス、世界初の遺伝子発現による生体年齢の評価方法「免疫年齢」サービス、肺がん患者を対象に血液を用いてEGFR遺伝子の変異を検出する「EGFRチェック」サービスを強化する。
商品販売関連では高校・大学生教育用DNAチップ教材「ハイブリ先生」、乳癌再発リスクを予測する乳癌予後予測キット「MammaPrint」(導入商品)、問診パッケージソフト「iRIS:関節リウマチ問診システム」、DNA鑑定向け硬組織(歯牙・骨)からのDNA抽出キット「Tbone EX Kit」などの販売を強化している。
戦略商品に関しては中長期的に一般健康診断への採用拡大を目指し、大腸がん・悪性神経膠腫の術後予後予測、免疫年齢・肥満・うつ病・疲労・アルツハイマーなどの診断関連マーカーの開発・事業化、医薬品開発と一体化した診断マーカー開発(コンパニオン診断薬開発支援)、再生医療支援事業(培養細胞の安全性評価系)なども強化して業容を拡大する。14年3月には「神経膠腫予後予測方法、およびそれに用いるキット」に関する国内特許を取得した。
15年1月には、関節リウマチ患者の血液中の遺伝子発現解析から疾患活動性と高い相関性を示すバイオマーカーを発見し、学校法人慶應義塾および学校法人埼玉医科大学と共同出願で国内特許を取得(15年5月公表)した。本特許を活用して、関節リウマチの薬剤効果の予測研究を含め研究開発(RNAチェック技術開発)の加速と診断メニューの拡充を進める。
15年2月には、末梢血のRNA発現を調べることにより個人の生体年齢を評価する受託サービス「免疫年齢」を開始した。加齢遺伝子(年齢とともに発現量が変化する遺伝子)から選んだ約90種類の遺伝子の発現量をマイクロアレイ法によって測定し、独自開発した回帰式を用いて生体年齢を算出することに成功した。世界初の遺伝子発現による生体年齢の評価方法である。
この検査で体調変化の客観的評価ができるようになるため、健康食品、機能性食品、サプリメント、運動などアンチエイジング(抗加齢)や健康への取り組みの評価に利用することを目指す。
15年3月には、愛媛大学および北海道大学とともにJST研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)に採択された共同研究で、脳腫瘍の一種であるグリオーマ(神経膠腫)の機能を抑制するマイクロRNAを発見した。本研究は癌の根治療法を生み出すと期待されている。
15年8月には健常者向け生体年齢評価サービス「免疫年齢」を、エムスリー<2413>が運営するm3.comにおいて取り扱い開始した。血液から採取したRNAを検査することにより現在の生体年齢評価を測定することを目指したサービスだ。
15年9月には消化器がん検査「マイクロアレイ血液検査」(キュービクス社)の取り扱いを開始した。RNAの発現解析により健診でがんの有無をチェックする検査サービスだ。
15年10月には再生医療研究分野向けに、ヒト間葉系幹細胞の品質評価に特化したカスタムアレイCGH技術「C3チェックサービス」の開発と、サービス開始を発表した。東海大学医学部との共同開発を活用したサービスで、今後は検査対象の適用範囲を、ES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)にも拡充する計画としている。
15年11月には、平成27年度「再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事業(再生医療等の産業化に向けた評価手法等の開発)」の採択を受けて、研究開発代表者として参画することが決定したと発表している。なお本助成事業は当社、ならびに東海大学医学部整形外科学、セルシード<7776>が共同で実施する。
1月6日には、当社と国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの共同開発チームが、うつ病の病態に関与する複数の遺伝子および、それら遺伝子の相互作用ネットワークを同定し、その研究成果が国際科学論文誌「Scientific Reports」に掲載されたと発表している。本成果を応用することで、当社が推進するRNAチェックによるうつ病の客観的な診断方法の確立に繋がることが期待される。
■16年3月期は増収効果などで営業赤字縮小を目指す
今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の非連結業績は、売上高が前年同期比32.7%減の64百万円で、営業利益が1億34百万円の赤字(前年同期は1億03百万円の赤字)、経常利益が1億34百万円の赤字(同1億03百万円の赤字)、純利益が1億48百万円の赤字(同1億03百万円の赤字)だった。
研究受託事業で大型案件の受注に至らず、大幅減収で営業赤字が拡大した。部門別売上高は、研究受託事業が同32.0%減の61百万円、診断事業が同46.1%減の2百万円だった。診断事業は第3四半期(10月~12月)からの売上拡大に向けた販売促進資料準備や、販売ルートの確保などの取り組みを実施している。
なお四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)33百万円、第2四半期(7月~9月)31百万円、営業利益は第1四半期68百万円の赤字、第2四半期2億02百万円の赤字だった。
今期(16年3月期)通期の非連結業績予想(4月23日公表)は、売上高が前期比23.1%増の4億40百万円、営業利益が48百万円の赤字(前期は99百万円の赤字)、経常利益が48百万円の赤字(同1億19百万円の赤字)、純利益が49百万円の赤字(同1億35百万円の赤字)としている。
増収効果、採算性の高いメニューの重点拡販、作業効率改善による粗利益率改善などで営業赤字縮小を目指す。なお新規ラボ(研究施設)開設、事務所・研究所移転に伴って、特別損失に事務所移転費用を計上する。
研究受託事業では提案型研究受託の強化で製薬会社や食品会社向けビジネスの拡大を目指す。また診断事業では「リウマチェック(多剤効果判定)」「免疫年齢」「EGFRチェック」などを拡販し、海外展開も推進する方針だ。部門別売上高の計画は、研究受託事業が同10.9%増の3億77百万円、診断事業が同3.7倍の63百万円としている。
■研究受託メニューの強化や診断支援サービスの拡充で業績改善目指す
中期的な業績改善推進プランとしては「研究開発から事業化への加速」を掲げている。新規研究受託メニュー(がん領域を中心としたエクソソーム受託サービスや健康支援事業など)の開発・強化、診断支援サービス(リウマチェックやRNAチェックなど)の開発・拡充を推進する方針だ。
エンプラスとの資本業務提携効果(バイオ事業における業界ネットワークの補完、新製品開発能力の強化、海外インフラの活用など)なども寄与して、中期成長が期待される。
■株価は12月の昨年来安値から急反発
株価の動きを見ると、12月25日の昨年来安値462円から急反発している。売られ過ぎ感を強めたうえに、1月6日発表の共同研究成果も好感されたようだ。そして1月8日には前日比100円高(ストップ高)水準の600円まで上伸した。
1月8日の終値は600円で、時価総額は約25億円である。週足チャートで見ると13週移動平均線近辺まで一気に切り返した。出直りの動きが本格化しそうだ。