【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ジェイテックは16年3月期収益改善基調、新規ビジネスも注目点

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ジェイテック<2479>(JQS)は「技術職知財リース事業」を主力として人材サービス事業を展開している。16年3月期の収益は改善基調であり、改正労働者派遣法もプラス要因となる。多言語対応注文支援システム「グルくる」など新規ビジネスも注目点だ。株価は調整の最終局面で反発のタイミングだろう。なお2月1日に第3四半期累計(4月~12月)の業績発表を予定している。

■技術者派遣の「技術職知財リース事業」が主力

 製造業の開発・設計部門向けに技術者を派遣する「技術職知財リース事業」を主力として、子会社ジオトレーディングは製造業向け一般派遣・エンジニア派遣事業を展開している。

 専門教育による知識を基盤として新たな付加価値を顧客に提供する社員を「テクノロジスト」と呼称し、一般的な「エンジニア」と区別していることが特徴だ。そして「技術商社」を標榜し、当社のテクノロジストが保有する知恵を提供(リース)することで、顧客とともに新たな価値を創造する「技術職知財リース事業」としている。

 12年10月にエル・ジェイ・エンジニアリング(旧トステム・エンジニアリング・オフィス)を子会社化して建築設計分野に事業領域を広げた。

 15年7月には子会社ベンチャービジネスサポートを設立し、ベンチャー総研グループのヒューマンリソース事業およびポスティング事業の一部を譲り受けて事業開始した。一般派遣事業の業務領域の拡大によって新たな人材サービス事業を掘り起こす方針だ。

 なお15年10月1日付で、旧ジオトレーディングがジェイテックアドバンストテクノロジに、旧エル・ジェイ・エンジニアリングがジェイテックアーキテクトに各々商号変更した。ジェイテックグループの社名によるアイデンティティの確立と、知財リース事業におけるコアコンピタンスの確立を目指す方針だ。

■機械、電気・電子、ソフトウェア、建築の4分野が柱

 主力の「技術職知財リース事業」では機械設計開発、電気・電子設計開発、ソフトウェア開発、および建築設計分野を柱としている。

 15年3月期の顧客業種別売上構成比を見ると、建築関連29.8%、自動車関連22.1%、産業用機器関連16.2%、情報処理関連9.8%、電子・電気機器関連6.6%、精密機器関連6.0%、半導体・集積回路関連3.5%、情報通信機器関連3.3%、航空機・宇宙関連2.6%だった。特定の業界・企業への依存度を低くして業種別・顧客別売上構成比のバランスを維持していることも特徴だ。

■新規ビジネスなどで事業領域を拡大

 15年3月に飲食店向け多言語対応注文支援システム「グルくる」を発表した。NFC(近距離無線通信技術)など先端IT技術を活用し、飲食店の運営効率化を支援するために提供するサービスだ。スマートフォンからNFCタグまたはQRコードを読み取るだけで注文できる。約十カ国後の多言語対応のため外国人旅行客もスムーズに注文できるとしている。

 15年8月にはバージョンアップした多言語対応注文支援システム「グルくる」(Ver.2)のサービスを開始した。

 そして15年10月には、インバウンド対応需要が高まっている鎌倉市小町通り商店街およびその周辺店舗において、多言語対応注文支援システム「グルくる」(Ver.2)の試験導入を開始した。

■新卒テクノロジストが戦力化する期後半の利益構成比が高い収益構造

 なお15年3月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)8億27百万円、第2四半期(7月~9月)8億18百万円、第3四半期(10月~12月)8億46百万円、第4四半期(1月~3月)8億57百万円、営業利益は第1四半期45百万円の赤字、第2四半期18百万円の黒字、第3四半期37百万円の黒字、第4四半期69百万円の黒字だった。

 期後半の利益構成比が高い収益構造である。期前半は新卒テクノロジストの研修期間中の人件費や教育・研修費用が先行するため利益がやや低水準だが、期後半に向けて新卒テクノロジストの戦力化が寄与する。

 15年3月期は契約単価の上方改定に伴って期前半は稼働率が低下したが、期後半には稼働率が回復した。契約単価改定も寄与して営業損益は改善基調のようだ。なお15年3月期の平均単価は3702円で14年3月期比392円(11.85%)上昇した。

 15年3月期のROEは14年3月期比2.9ポイント低下して9.9%、自己資本比率は同3.2ポイント上昇して45.9%、配当性向は14.6%だった。

■16年3月期第2四半期累計は稼働率上昇して黒字化

 今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比1.0%減の16億28百万円で、営業利益が13百万円(前年同期は27百万円の赤字)、経常利益が12百万円(同28百万円の赤字)、純利益が1百万円(同39百万円の赤字)だった。

 微減収だったが各利益とも黒字化した。自動車業界向けを中心として機械設計開発分野、電気・電子設計開発分野、ソフトウェア開発分野の需要が堅調に推移し、新卒テクノロジストの配属も進捗して稼働率が上昇した。売上総利益率は24.1%で同4.8ポイント上昇、販管費比率は23.2%で同2.2ポイント上昇した。

 セグメント別動向を見ると、技術職知財リース事業は売上高が同1.3%減の15億66百万円だったが、稼働率上昇効果などで営業利益(連結調整前)が同39.9%増の1億79百万円だった。一般派遣およびエンジニアリング派遣事業は、ベンチャービジネスサポート設立および事業譲受も寄与して売上高が同7.6%増の62百万円だったが、営業利益が同6百万円の赤字(前年同期は7百万円の黒字)だった。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)8億05百万円、第2四半期(7月~9月)8億23百万円、営業利益は第1四半期2百万円の赤字、第2四半期15百万円だった。営業損益は改善基調だ。

■16年3月期通期は収益改善基調

 今期(16年3月期)通期の連結業績予想(5月8日公表)は、事業譲り受けたベンチャービジネスサポートの影響を織り込まず、売上高が前期比8.2%増の36億21百万円、営業利益が同68.0%増の1億33百万円、経常利益が同69.8%増の1億32百万円、純利益が同89.7%増の1億10百万円としている。

 配当予想(5月8日公表)は前期と同額の年間1円(期末一括)で、予想配当性向は7.8%となる。なお現時点では1株当たり1円の予定だが、株主優待も含めて今期の業績を勘案して決定するとしている。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が45.0%、営業利益が9.8%、経常利益が9.1%、純利益が0.9%である。低水準のため通期下振れに対する注意も必要だが、期後半の利益構成比が高い収益構造であり、稼働率上昇効果で第3四半期(10月~12月)以降の挽回を期待したい。

■中期経営計画で18年3月期純利益1億52百万円目指す

 中期経営計画では基本戦略として、さらなる成長発展に向けた収益基盤の強化、財務基盤の一層の強化と安定した株主還元、経営理念に基づく新たな挑戦を掲げ、経営目標値は18年3月期の売上高42億23百万円、営業利益1億90百万円、経常利益1億90百万円、純利益1億52百万円としている。

 主要取引先の大手製造業では新製品開発など高水準の研究開発投資を継続しているため、自動車関連、産業機器関連、電機・精密機器関連などを中心に、技術開発や製品設計に対応可能なスキルを持つ技術者に対して派遣需要が一段と高まっている。そして改正労働者派遣法もプラス要因となる。人材確保が課題だが、中期的に受注環境は良好だろう。

■株価は調整の最終局面

 株価の動きを見ると、220円~240円近辺でモミ合う展開だったが、12月中旬以降は200円近辺に水準を切り下げた。

 1月8日の終値210円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS12円87銭で算出)は16~17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間1円で算出)は0.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS75円66銭で算出)は2.8倍近辺である。時価総額は約18億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、15年8月の昨年来安値177円に接近して調整の最終局面だろう。16年3月期の収益は改善基調であり、改正労働者派遣法もプラス要因となる。多言語対応注文支援システム「グルくる」など新規ビジネスも注目点だ。株価は調整の最終局面で反発のタイミングだろう。

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