【アナリスト水田雅展の銘柄分析】第一実業は16年3月期減収減益予想の織り込み完了、指標面の割安感を見直し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 第一実業<8059>(東1)は各種産業機械が主力の総合機械商社である。グローバルビジネスを積極展開し、新規事業として植物工場システムやバイナリー発電関連への展開も強化している。株価は16年3月期減収減益予想を織り込んで下値固めが完了したようだ。3%台の予想配当利回りや0.8倍近辺の実績PBRなど指標面の割安感を見直して反発のタイミングだろう。なお2月4日に第3四半期累計(4月~12月)の業績発表を予定している。

■産業機械を主力とする総合機械商社

 各種産業機械の取扱を主力とする総合機械商社で、海外は米州、中国、東南アジア・インド、欧州の世界18カ国36拠点に展開している。セグメント区分は16年3月期から、プラント・エネルギー事業、産業機械事業、エレクトロニクス事業、ファーマ事業、航空事業とした。

 13年5月発表の新経営計画「AIM2015」では、最終年度16年3月期の売上高1550億円、営業利益57億円、経常利益59億円、純利益37億円、ROE10.7%を目標値として掲げ、広範囲な営業力とエンジニアリング集団としての強みを活かしてグローバルビジネスを積極展開している。

■植物工場やバイナリー発電関連など新規事業分野への展開も強化

 新規事業としては、植物工場システムの販売に関するプロジェクトを立ち上げて、埼玉県入間市にパイロットプラントを建設した。また14年3月には長野県飯田市でメガソーラー「第一実業飯田太陽光発電所」が竣工した。茨城県笠間市の太陽光発電所に続く2カ所目のメガソーラーである。

 バイナリー発電装置ビジネスに関しては焼却プラント6基、温泉地熱プラント5基が稼動し、焼却プラント向け1基、地熱・温泉向け11基を建設中である。

 14年4月に米アクセスエナジー社のバイナリー発電装置の日本国内での独占的製造権を取得し、14年5月には地熱・温泉業界向け小型バイナリー発電装置の独占販売代理店契約を締結した。地熱、温泉熱、焼却廃熱、一般工場廃熱など、未利用熱エネルギーを有効活用して発電するバイナリー発電システムの拡大を目指す戦略だ。

 また15年4月には連結子会社の第一メカテックのDJTECH事業部門を名古屋電機工業<6797>に譲渡した。DJTECH事業部門は高性能はんだ印刷検査装置の開発・製造・販売を行っており、これらに関するノウハウ・技術を名古屋電機工業と一元化する。そして名古屋電機工業と当該検査装置事業に係る代理店契約を締結し、製販サービスの一貫体制を強化して両社の事業拡大を目指すとしている。

■四半期収益は設備投資関連の大型案件によって変動

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)320億72百万円、第2四半期(7月~9月)412億59百万円、第3四半期(10月~12月)299億74百万円、第4四半期(1月~3月)400億56百万円、営業利益は第1四半期44百万円、第2四半期16億79百万円、第3四半期4億48百万円、第4四半期21億70百万円だった。また受注高は第1四半期427億64百万円、第2四半期300億50百万円、第3四半期338億04百万円、第4四半期673億87百万円だった。

 大型案件の受注・完成動向で四半期収益は変動しやすく、さらに設備投資関連のため概ね第2四半期および第4四半期の構成比が高い収益構造である。15年3月期のROEは8.7%で14年3月期比0.5ポイント上昇、自己資本比率は38.3%で同0.1ポイント上昇、DERは0.31倍で同0.03ポイント上昇した。配当性向は29.4%だった。

■16年3月期第2四半期累計は減収減益

 今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比15.7%減の617億92百万円、営業利益が同0.5%減の17億15百万円、経常利益が同5.1%減の18億81百万円、純利益が同19.1%減の10億56百万円だった。受注高は同3.0%減の706億53百万円だった。

 大手化学会社向け蒸留設備や大手製紙会社向け薬品回収設備などの大口案件の納期が遅延し、PC関連機器やスマートフォンの需要減少に伴ってエレクトロニクス業界向け電子部品実装関連設備の大口案件売上が減少した。利益面では、売上高の減少に伴う利益減少に加えて、既受注の排水処理プラント建設において下請け業者の作業品質に起因する工期遅延でコストが増加したことも影響した。

 セグメント別に見ると、プラント・エネルギーは受注高が同21.4%増の204億79百万円、売上高が同18.2%減の157億98百万円、営業利益(連結調整前)が2億14百万円の赤字(前年同期は74百万円の黒字)だった。受注高は大手エンジニアリング会社経由での化学プラント用設備の大口受注が寄与したが、売上面では海外向けプラント用設備の大口案件が減少し、海外排水処理プラント建設工事の工事遅延によるコスト増加で営業損益が悪化した。

 産業機械は受注高が同10.2%減の219億62百万円、売上高が同20.1%減の206億36百万円、営業利益が同19.4%減の7億54百万円だった。自動車関連業界向け自動組立ライン、自動加工機、塗装システムなどの大口案件が減少した。

 エレクトロニクスは、受注高が同11.5%減の219億46百万円、売上高が同7.8%減の211億44百万円、営業利益が同3.3倍の7億21百万円だった。中国・アジア地域を中心に、IT・デジタル関連機器製造会社向け電子部品実装機などの大口案件が減少したが、粗利益率の改善で営業損益は大幅に改善した。

 ファーマは、受注高が同2.4%増の39億92百万円、売上高が同4.8%減の29億94百万円、営業利益が同64.2%増の4億35百万円だった。ジェネリック医薬品製造会社向け自動包装ラインなどが概ね順調に推移し、粗利益率の改善も寄与した。

 航空は受注高が同25.5%減の19億04百万円、売上高が同45.9%減の9億58百万円、営業利益が同82.1%減の20百万円だった。航空機地上支援機材や空港施設関連機器などの大口案件が減少した。その他は受注高が同65.3%増の3億67百万円、売上高が同21.9%減の2億60百万円、営業利益が42百万円の赤字(前年同期は39百万円の黒字)だった。

 四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)296億61百万円、第2四半期(7月~9月)321億30百万円、営業利益は第1四半期5億16百万円、第2四半期11億98百万円だった。受注高は第1四半期390億71百万円、第2四半期315億81百万円だった。

■16年3月期通期も減収減益予想だが増配予想

 今期(16年3月期)通期の連結業績予想(10月22日に減額修正)は、売上高が前期比12.8%減の1250億円、営業利益が同19.4%減の35億円、経常利益が同20.0%減の38億円、純利益が同24.1%減の22億円としている。受注高の計画は同22.4%減の1350億円だ。

 配当予想については前回予想(5月11日公表)を据え置いて、前期比1円増配の年間17円(第2四半期末8円、期末9円)としている。予想配当性向は41.4%となる。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が49.4%、営業利益が49.0%、経常利益が49.5%、純利益が48.0%である。大口案件の減少や、排水処理プラント建設工事遅延によるコスト増加などの影響で通期減収減益予想となったが、下期の収益改善を期待したい。

■株価は16年3月期減収減益予想を織り込んで下値固め完了

 株価の動きを見ると、安値圏500円~550円近辺でモミ合う展開だが、15年11月の昨年来安値494円まで下押すことなく徐々に下値を切り上げている。16年3月期減収減益予想を織り込んで下値固めが完了したようだ。

 1月8日の終値520円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS41円07銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間17円で算出)は3.3%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS659円44銭で算出)は0.8倍近辺である。なお時価総額は約288億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線突破の動きを強めている。下値固めが完了し、3%台の予想配当利回りや0.8倍近辺の実績PBRなど指標面の割安感を見直して反発のタイミングだろう。

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