- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 【アナリスト水田雅展の銘柄分析】インフォマートはストック型ビジネスモデルで中期成長シナリオに変化なし
【アナリスト水田雅展の銘柄分析】インフォマートはストック型ビジネスモデルで中期成長シナリオに変化なし
- 2016/1/15 06:46
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インフォマート<2492>(東1)はフード業界向け企業間(BtoB)電子商取引プラットフォームをベースとして各種システムを提供している。1月4日にはサービスブランドを、企業間で行われている世界共通の商行為を電子化するサービスとして「BtoBプラットフォーム」に変更すると発表した。ストック型ビジネスモデルで15年12月期、16年12月期とも増収増益基調が予想される。株価は地合い悪化の影響を受けたが、中期成長シナリオに変化はなく調整の最終局面だろう。なお2月15日に15年12月期の決算発表を予定している。
■フード業界向け企業間ECプラットフォームが主力
フード業界向けの企業間(BtoB)電子商取引(EC)プラットフォーム「FOODS info Mart」をベースとして、ASP受発注システム(飲食店チェーンと食材卸売の間の受発注)、ASP規格書システム(食の安全・安心の商品仕様書DB)、ASP商談システム(BtoB専用の販売・購買システム)などをネット経由で提供している。
14年11月には全ての業界・企業に対応し、企業間の請求書を電子化して請求業務をWeb上で行える「BtoB電子請求書プラットフォーム」(旧名称ASP請求書システム)を開始した。15年9月には支払通知書を電子化した「通知書機能」を追加リリースした。
さらにサービス拡充の一環として、フード業界企業向け総合マーケティングサービス「BtoB F-Marketing」や、フード業界向け情報発信の総合ポータルサイト「フーズチャネル」も開始している。
子会社はインフォライズがクラウドサービス事業、インフォマートインターナショナル(香港)が海外「FOODS info Mart」事業を展開している。なお15年3月に日立システムズとの合弁事業契約を解消し、インフォライズに対する日立システムズ出資分49%を譲り受けてインフォライズを完全子会社化した。
■事業セグメント区分とサービスブランドを変更
なお15年12月期から事業セグメント区分を変更して、ASP受発注事業(ASP受発注システム)、ASP規格書事業(ASP規格書システム)、ES事業(ASP商談システム、BtoB電子請求書プラットフォーム)、その他(クラウドサービス事業、海外事業)とした。
また1月4日にはサービスブランドの変更を発表した。従来の商行為ごとに特化した個別のASPシステムから発展させ、企業間で行われている世界共通の商行為を電子化する「BtoBプラットフォーム」としてサービス提供する。
従来サービスのBtoB電子請求書プラットフォームはBtoBプラットフォーム請求書、ASP受発注システムはBtoBプラットフォーム受発注、ASP商談システムはBtoBプラットフォーム商談、ASP規格書システムはBtoBプラットフォーム規格書となる。
■利用企業数、取引高、そして月額システム使用料収入は増加基調
15年9月末時点の「FOODS info Mart」利用企業数(海外事業除く)は14年12月末比1473社増加の3万8633社(売り手企業が同1493社増加の3万1412社、買い手企業が同20社減少の7221社)だった。15年9月末の利用事業所数は20万5073事業所で、フード業界全体118万6312事業所に対するシェアは17.2%となった。
そして「FOODS info Mart」における年間取引高は、14年に13年比13.8%増の9806億円となり、外食産業における仕入金額ベースのシェアは13年の12.4%から14年の13.6%に上昇した。
1月12日には15年の年間取引高が14年比20.0%増の1兆1768億円、外食産業における仕入金額ベースのシェアが16.4%になったと発表している。中期目標として掲げた年間システム取引高1兆円を達成した。
15年9月末時点のBtoB電子請求書プラットフォームの利用企業数は、14年12月末比450社増加の746社(受取モデル企業が同350社増加の549社、発行モデル企業が同100社増加の197社)となった。
顧客企業はネット環境さえあれば月々低料金で最新サービスを利用できるため、大手の食材卸売企業や外食・中食チェーンも利用し、電話やFAXからWebに切り替えて受発注する企業・店舗が増加基調だ。そして利用企業数の増加に伴って月額システム使用料収入が増加するストック型収益構造である。
■業界標準化に向けたシステム連携で100万社普及を目指す
中期成長戦略として、業界標準化に向けたシステム連携によるフード業界向けBtoBビジネスの強化、ASP受発注システムの業態およびエリアの拡大、他業界BtoB展開としての美容業界向け「BEAUTY info Mart」や医療業界向け「MEDICAL info Mart」による事業領域拡大、次世代BtoB&クラウドプラットフォームの拡販、顧客ニーズに対応した新機能・サービスのリリース、そして海外事業などを推進している。
アライアンス戦略では13年5月にJFEシステムズ<4832>、13年6月に東芝テック<6588>、13年11月に東京システムハウス、14年10月にヤマトホールディングス<9064>傘下のヤマトシステム開発とデータ連携した。
15年1月には全国の商工会議所・商工会等が運営する「ザ・ビジネスモール(B-MALL)」の事務局を務める大阪商工会議所と、全国の企業へ電子請求を推進することを目的として業務提携した。BtoB電子請求書プラットフォームによる企業のコスト削減・効率化で企業の利益アップを応援する。
15年4月には企業の受発注・請求業務の生産性向上を提供するため、内田洋行<8057>やミロク情報サービス<9928>など19社24ソリューションが提供する販売管理・会計・店舗管理システムとのデータ連携を強化した。そして15年末現在で「BtoBプラットフォーム受発注」は約66社が提供する販売管理・会計・店舗管理など79システムとデータ連携している。
企業の受発注業務、請求業務、会計処理などにおける生産性向上を提供し、BtoB標準のプラットフォームを実現するため、他社とのシステム連携戦略を強化し、今後3年間で利用企業数100万社への普及を目指すとしている。
■ストック型ビジネスモデル
なお14年12月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)11億57百万円、第2四半期(4月~6月)12億06百万円、第3四半期(7月~9月)12億66百万円、第4四半期(10月~12月)13億48百万円、営業利益は第1四半期4億23百万円、第2四半期4億17百万円、第3四半期5億46百万円、第4四半期5億57百万円だった。
利用企業数の増加に伴ってシステム使用料収入が積み上がるストック型ビジネスである。そして売上高、利益とも拡大基調だ。14年12月期のROEは13年12月期比11.7ポイント上昇して32.3%、自己資本比率は同5.5ポイント上昇して70.8%となった。配当性向は49.1%だった。
■15年12月期、16年12月期も増収増益基調
前期(15年12月期)第3四半期累計(1月~9月)連結業績は、売上高が前年同期比14.2%増の41億46百万円、営業利益が同10.4%増の15億32百万円、経常利益が同10.1%増の15億30百万円、純利益が同12.6%増の9億54百万円だった。
売上高、利益とも計画をやや下回ったが、システム使用料が順調に増加して増収増益だった。セグメント別売上高は、ASP受発注事業が同14.3%増の24億54百万円、ASP規格書事業が同30.0%増の7億03百万円、ES事業が同5.8%増の9億22百万円、その他が同0.1%増の96百万円だった。
利益面では、ソフトウェア償却費の増加、今後の利用拡大に向けたサーバ増強に伴うデータセンター費の増加、事業成長に向けた営業部門の人員増に伴う人件費の増加などを増収効果で吸収した。売上総利益率は同3.6ポイント低下して73.2%、販管費比率は同2.3ポイント低下して36.3%となった。
四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)13億10百万円、第2四半期(4月~6月)14億04百万円、第3四半期(7月~9月)14億32百万円、営業利益は第1四半期5億11百万円、第2四半期4億77百万円、第3四半期5億44百万円だった。
前期(15年12月期)通期の連結業績予想(2月13日公表)は、売上高が前々期比19.5%増の59億48百万円、営業利益が同17.4%増の22億83百万円、経常利益が同16.2%増の22億79百万円、純利益が同19.3%増の14億04百万円としている。
各システムの利用拡大に伴ってシステム使用料が順調に増加し、サーバ増強に伴うデータセンター費の増加、新システムリリースに伴うソフトウェア償却費の増加、事業成長に向けた人員増に伴う人件費増加などを吸収する。売上総利益率は同1.8ポイント低下の75.2%、販管費比率は同1.1ポイント低下の36.8%の計画としている。
セグメント別売上高の計画は、ASP受発注事業が同12.5%増の33億13百万円、ASP規格書事業が同31.8%増の9億77百万円、ES事業が同28.3%増の15億39百万円、その他が同29.3%増の1億19百万円としている。
配当予想(2月13日公表)については年間11円76銭(第2四半期末5円88銭、期末5円88銭)としている。15年1月1日付の株式2分割を考慮すると実質的に前期比2円07銭増配で、予想配当性向は50.6%となる。配当方針は個別業績に応じた基本配当性向50%としている。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が69.7%、営業利益が67.1%、経常利益が67.1%、純利益が68.0%である。やや低水準の形だが、システム使用料収入が積み上がるストック型収益構造であることを考慮すれば概ね順調な水準と言えるだろう。各システムの利用企業数、システム取引高とも順調に増加して、システム使用料収入は増加基調であり、増収増益基調に変化はない。そして今期(16年12月期)も増収増益基調が予想される。
業界標準化の進展、システム連携の強化、サービスの拡充、ホテル・給食業界への利用企業開拓、さらに新規分野への事業展開なども寄与して中期成長シナリオに変化はないだろう。
■株価は地合い悪化の影響を受けたが調整の最終局面
株価の動きを見ると、12月の戻り高値圏1300円台から反落し、地合い悪化の影響で1月14日には1003円まで調整した。ただし11月の直近安値938円に接近して調整の最終局面だろう。
1月14日の終値1027円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS23円26銭で算出)は44倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間11円76銭で算出)は1.2%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績に新株式発行を考慮した連結BPS62円12銭で算出)は17倍近辺である。時価総額は約666億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線を割り込んで調整局面だが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感を強めている。ストック型ビジネスモデルで15年12月期、16年12月期とも増収増益基調が予想される。中期成長シナリオに変化はなく調整の最終局面だろう。