【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本アジアグループは地合い悪化の状況でも戻り高値圏で堅調、依然として指標面に割安感

日本アジアグループ 3751

 日本アジアグループ<3751>(東1)は社会インフラ・環境・エネルギー関連事業に経営資源を集中して成長戦略を強化している。株価は地合い悪化の状況でも戻り高値圏で堅調な動きだ。1桁台の予想PER、1倍割れ水準の実績PBR、4%台の予想配当利回りと指標面の割安感は依然として強い。テーマ性も多彩だ。15年5月の昨年来高値701円を目指す展開だろう。なお2月12日に第3四半期累計(4月~12月)の業績発表を予定している。

■社会インフラ・環境・エネルギー関連に経営資源を集中

 社会インフラ・環境・エネルギー関連にグループ経営資源を集中し、空間情報コンサルティング事業(国際航業の社会インフラ関連事業)、グリーンエネルギー事業(太陽光発電の受託および売電事業、土壌・地下水保全コンサルティング事業、戸建住宅・不動産事業)、ファイナンシャルサービス事業(日本アジア証券などの証券業)を展開している。

 防災・減災・社会インフラ更新関連、環境関連、メガソーラー関連、再生可能エネルギー関連などテーマ性は多彩である。

 なお15年12月には国際航業が、メタウォーター<9551>を代表企業とする特別目的会社「あらおウォーターサービス」に参画し、荒尾市企業局と特別目的会社が「荒尾市水道事業等包括委託」業務委託契約を締結したと発表している。水道事業に関する業務を包括的に民間委託する全国に先駆けた先進的事業である。

■再生可能エネルギー関連では流水式水力発電にも参入

 再生可能エネルギー関連事業に関して、14年10月に子会社JAG国際エナジーが、東京都が創設する官民連携再生可能エネルギーファンドの運営事業者に選定された。そして15年4月には第1号案件として、当社グループが開発したメガソーラー発電所「足柄大井ソーラーウェイ」と「行田ソーラーウェイ」を運営する合同会社に投融資を実行した。

 14年12月にはシーベルインターナショナル(東京都)の経営権を取得した。アジア・アフリカ各国に事業展開している同社の流水式超低落差型マイクロ水力発電システム(商品名:ストリーム)を活用して、マイクロ水力発電事業を再生可能エネルギー関連事業の第2の柱に育成する方針だ。

 15年3月には独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業」の公募に対して、インドにおける「火力発電所放流渠を活用したマイクロ水力並列配置発電システム技術実証事業」が採択された。また小水力発電プロジェクトに関しては、国際連合工業開発機構(UNIDO)と「アフリカエチオピアプロジェクト」および「アフリカケニアプロジェクト」に関して正式契約を締結した。

 15年7月には、流水式小水力発電装置「スモールハイドロストリーム」が湖北土地改良区(滋賀県長浜市)の中央幹線用水路に採用された。FIT(固定価格買取制度)を活用した民間企業による小水力発電事業(100kw以下)において「スモールハイドロストリーム」の採用は初となる。

 国内の太陽光発電事業に関する進捗状況は、15年9月末時点で売電事業の稼働・竣工60.2MW、案件確保80.0MW、交渉中70.9MWの合計211.1MW、受託事業の稼働・竣工103.6MW、案件確保30.9MW、交渉中3.2MWの合計137.7MWとなり、総合計348.8MWである。

■空間情報コンサルティング事業は第4四半期の構成比が高い収益構造

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)124億60百万円、第2四半期(7月~9月)176億00百万円、第3四半期(10月~12月)181億62百万円、第4四半期(1月~3月)276億81百万円、営業利益は第1四半期1億45百万円、第2四半期11億47百万円、第3四半期10億07百万円、第4四半期30億53百万円だった。

 空間情報コンサルティング事業は公共事業関連が主力のため第4四半期の構成比が高い収益構造である。そして営業損益は改善基調だ。15年3月期のROEは14年3月期比3.3ポイント上昇して15.6%、自己資本比率は同1.9ポイント上昇して21.7%となった。

■16年3月期第2四半期累計は2桁増収

 今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比16.2%増の349億19百万円、営業利益が同17.7%減の10億63百万円、経常利益が同50.4%減の2億54百万円、純利益が4億91百万円(前年同期は30百万円)だった。ファイナンシャルサービス事業が低調で営業減益だったが、空間情報コンサルティング事業とグリーンエネルギー事業の好調で2桁増収だった。

 空間情報コンサルティング事業は地方自治体からの受注好調、グリーンエネルギー事業は太陽光関連売電事業の発電施設増加および受託事業の大型開発案件進捗で大幅増収となり、いずれも増収効果で営業損益が大幅に改善した。ただしファイナンシャルサービス事業の減収減益をカバーできず、全体としては営業減益だった。経常利益は短期・長期の有利子負債乗り換え先行費用が影響した。純利益は投資有価証券売却益が増加して大幅増益だった。

 セグメント別(連結調整前)動向を見ると、空間情報コンサルティング事業は売上高が同11.0%増の177億75百万円、営業利益が4億77百万円の赤字(前年同期は6億42百万円の赤字)、グリーンエネルギー事業は売上高が同44.1%増の125億88百万円、営業利益が同40.8%増の9億54百万円、そしてファイナンシャルサービス事業は売上高が同14.2%減の45億37百万円、営業利益が同47.8%減の7億34百万円だった。

 四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)155億14百万円、第2四半期(7月~9月)194億05百万円、営業利益は第1四半期3百万円、第2四半期10億60百万円だった。

■16年3月期減益予想だが増額余地、太陽光発電関連も収益寄与本格化

 今期(16年3月期)通期の連結業績予想(5月14日公表)については、売上高が前期比4.1%増の790億円、営業利益が同21.5%減の42億円、経常利益が同33.1%減の25億円、純利益が同33.1%減の25億円としている。

 セグメント別(連結調整前)計画を見ると、空間情報コンサルティング事業は売上高が同5.2%増の442億円、営業利益が同15.7%増の16億円、グリーンエネルギー事業は売上高が同9.3%増の253億円、営業利益が同1.5%増の17億円だが、ファイナンシャルサービス事業は売上高が同11.6%減の95億円、営業利益が同54.0%減の12億円としている。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が44.2%、営業利益が25.3%、経常利益が10.2%、純利益が19.6%である。低水準の形だが、空間情報コンサルティング事業は第4四半期の構成比が高い収益構造だ。また空間情報コンサルティング事業の収益が改善基調であり、グリーンエネルギー事業で太陽光発電関連の収益寄与も本格化している。通期業績予想に増額余地があるだろう。

■16年3月期に配当を実施

 16年3月期の配当予想については11月26日に配当実施を発表した。第3四半期末(15年12月末)に東証1部への市場変更記念配当20円、期末(16年3月末)に普通配当10円を実施する。年間配当は30円で予想配当性向は31.7%となる。

 資本政策および株主還元に関する基本方針は、成長投資と安定した株主還元を両立して継続的な株主価値向上に努めるとして、業績に応じた配当を行うこと、中長期的な視点から安定的に配当を継続することを基本に、競争力、事業環境、財務体質などを勘案して総合的に決定する。当面の配当性向は10%~20%を目途とする。

■中期経営計画では非金融事業の成長戦略を強化

 中期計画では目標値に17年度売上高980億円、営業利益77億円、そして20年度売上高1500億円(G空間×ICT700億円、エネルギー分野600億円、金融/新規ビジネス200億円)、営業利益120億円を掲げている。

 グループ組織再編も実施して、成長の加速と株主還元の早期化を図る方針だ。特に「G空間×ICT」取り組み強化や、エネルギーマネジメント分野における新サービス開始などで、非金融事業の成長戦略を強化する。ファイナンシャルサービス事業では預かり資産の増大を優先する戦略を推進する。また「グリーン・コミュニティ」化プロジェクトを推進する。

■コーポレートガバナンス基本方針を制定

 なお15年5月に「資本準備金の額の減少および剰余金処分に関するお知らせ」を発表し、6月開催の定時株主総会で承認された。今後の機動的かつ効率的な経営および株主還元施策を可能とすることを目的として、単体の資本準備金の額を減少して欠損の填補を行った。発行済株式総数は変更せずに資本準備金の額のみを減少するものであり、総資産の額に変動はなく1株あたりの純資産額に変更は生じない。

 この処理によって株主還元施策を行うことが可能な状態になるためグループ組織の再編を実施し、当社が15年7月1日付で中間持株会社2社(日本アジアホールディングスおよび国際航業ホールディングス)を吸収合併し、中間持株会社体制を解消した。

 また太陽光発電事業にかかる子会社事業を統合し、グリーンエネルギー事業のJAG国際エナジーとグリーンプロパティ事業の国際ランド&ディベロップメントが合併(15年7月1日付、新JAG国際エナジー)した。また日本アジア証券にファイナンシャルサービス部門の子会社を集約してファイナンシャルサービス事業の強化を図る。

 15年8月に第1四半期末の自己株式数の減少についてリリースした。連結子会社である国際航業ホールディングス、日本アジアホールディングス、国際航業、おきなわ証券が、各社が保有する当社株式を長期保有が見込める投資家に証券会社を介して売却したことによるもので、処分株式数は合計121万8400株、処分時期は15年5月26日としている。

 なお12月24日には「日本アジアグループ コーポレートガバナンス基本方針」の制定を発表している。

■株価は地合い悪化の状況でも戻り高値圏で堅調

 株価の動きを見ると、急伸した12月2日の戻り高値695円から利益確定売りで一旦反落したが、12月28日の577円から切り返している。地合い悪化の状況でも戻り高値圏で堅調な動きだ。

 1月14日の終値611円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS94円62銭で算出)は6~7倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間30円で算出)は4.9%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1000円90銭で算出)は0.6倍近辺である。なお時価総額は約169億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が接近して切り返す動きだ。サポートラインを確認した形だろう。1桁台の予想PER、1倍割れ水準の実績PBR、4%台の予想配当利回りと指標面の割安感は依然として強い。テーマ性も多彩だ。15年5月の昨年来高値701円を目指す展開だろう。

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