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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】マーケットエンタープライズは調整の最終局面、16年6月期大幅増収増益予想で中期成長力を評価
- 2016/1/15 06:35
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
マーケットエンタープライズ<3135>(東マ)はネット型リユース事業を展開し、新サービス構築による事業ドメイン拡大も推進している。16年1月1日付で株式2分割を実施した。株価は地合い悪化も影響して上場来安値圏だが、IPO直後の15年7月高値からほぼ3分の1水準で調整の最終局面と考えられる。16年6月期大幅増収増益予想であり、ネット型リユース事業の中期成長力を評価して反発のタイミングだろう。
■インターネットに特化したリユース品買取・販売事業を展開
06年7月設立(事業開始04年11月)で、15年6月東証マザーズに新規上場した。インターネットに特化してリユース(再利用)品を買取・販売するネット型リユース事業を展開している。
買取総合窓口サイト「高く売れるドットコム」など自社運営26カテゴリーのWEB買取サイトを通じて一般消費者や法人からリユース品を仕入れ、全国6拠点(15年6月末時点)のリユースセンターで在庫を一括管理し、複数の主要Eマーケットプレイス(ヤフオク、楽天市場、Amazon、Ebayなど)に出店した自社運営サイト「安く買えるドットコム」で一般消費者や法人向けに販売する。
販売の実店舗を持たずにEC(電子商取引)によってリユース品の売買を行うサービスであり、ITとリアルを融合させて仕入・販売ともに、マルチチャネル対応で全国的な仕入・販売網を構築していることが強みだ。なお累計買取依頼数は14年5月に50万件を突破し、15年3月には月間買取依頼数が約26千件に達している。
■サイト運営、コンタクトセンター、リユースセンターまで一気通貫
総合窓口サイトである「高く売れるドットコム」をフラッグシップサイトとして、26カテゴリーの買取専門サイトを自社構築・運営している。自社サイトを運営することで、顧客ニーズに合ったコンテンツマーケティングを行うことが可能になり、ネットサービスを有する大手企業との効果的なアライアンスを展開することも可能になる。
またコンタクトセンターにおける事前査定サービス、3つのチャネル(出張買取、宅配買取、店頭買取)による買取サービス、全国6拠点のリユースセンター(15年6月末時点で東京、横浜、埼玉、名古屋、大阪、福岡)での在庫一括管理という、コンタクトセンターからリユースセンターまで一気通貫のオペレーションシステムを特徴としている。そして独自の単品管理ステムと全国販売網によって、高い在庫回転率(14年実績で年間14.2回転)を実現している。
事前査定~仕入~在庫管理~販売のオペレーションに関しては、自社開発のITシステムおよびデータベース(複数の買取依頼チャネルや複数の買取手法に対応したマルチチャネル買取システム、査定データベース、商品管理システム、在庫連動システム、受注管理システムなど)によって運営し、効率性の高いオペレーションを実現している。
15年9月には新リユースブランド「ReRe(リリ)」をリリースした。ギフトボックスでの丁寧なラッピング、ブランドマークを印刷したボックスによる梱包など、当社の「安心できるリユースをすべての方に・・・for Real Reuse」との思いを込めたサービスとしている。
また15年10月には国内7拠点目となるリユースセンターを兵庫県神戸市にオープンした。近畿圏では12年3月にオープンした大阪リユースセンターに次ぐ2拠点目となる。
■アライアンス戦略も強化
大手企業とのアライアンスも強化している。15年2月にはヤフー<4689>が運営する「Yahoo!買取」で、法人向け在庫買取サービスを開始した。15年6月にはコープサービスが運営する「ライフなび くらしのサービス」と提携して、関東信越6生協組合員向けに総合買取サービスの提供を開始した。
15年10月には、ネクスト<2120>グループが運営する引越し見積もり・予約サイト「HOMES引越し」と共同で買取サービスの提供を開始した。またヤフーと電通<4324>の共同企画で11月スタートのリユース活用型クラウドファンディングサービス「reU funding(リユーファンディング)」に協力した。
■中期成長に向けて事業ドメイン拡大を推進
中期経営目標としては3~5年の間に売上高100億円、営業利益10億円の達成を目指すとしている。中期成長戦略では収益基盤強化を目指し、事業拠点拡大の水平展開、取扱商品拡大の垂直展開、そして新サービス構築による事業ドメイン拡大を推進する。
水平展開では仕入基盤のさらなる拡充に向けて、全国主要都市への新規リユースセンターの開設を推進する。3年以内に5拠点のリユースセンターを新設する予定で、出張・店頭買取における人口カバー率の向上や、買取コンバージョン率の向上を目指している。
垂直展開では取扱商品のさらなる拡大に向けて、比較サイト運営・専門企業などとのアライアンスによって、高単価・低粗利益率帯の車・バイク・不動産など、低単価・高粗利益率帯の衣類・本など「未取扱商材」や「依頼情報」のマネタイズゾーン拡充を図る。そして「シェアードエコノミー」を実現する社会的インフラの一翼を担うべく、積極的なIT投資によって新サービスを創造・拡充させるとしている。
■引越しシーズンの第4四半期(4月~6月)の構成比が高い収益構造
15年6月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(7月~9月)8億33百万円、第2四半期(10月~12月)9億61百万円、第3四半期(1月~3月)10億04百万円、第4四半期(4月~6月)11億89百万円、営業利益は第1四半期3百万円の赤字、第2四半期50百万円、第3四半期76百万円、第4四半期1億13百万円だった。
転居に伴う商品の買い替えや新規購入などのニーズが高まり、買取依頼・販売が集中する春季の引越しシーズンにあたる第4四半期(4月~6月)の構成比が高くなる一方で、第1四半期(7月~9月)は売上高が減少して営業損益が低水準となる収益構造だ。
■16年6月期第1四半期は過去最高業績
今期(16年6月期)第1四半期(7月~9月)の非連結業績は、売上高が10億56百万円、営業利益が7百万円、経常利益が7百万円、純利益が3百万円だった。
前年同期との比較で売上高は2億23百万円増加、営業利益は11百万円増加した。第1四半期は売上高が減少して営業損益が低水準という季節要因があるが、積極的な事業展開の結果、大幅増収増益で第1四半期として過去最高の業績となった。なお売上総利益率は48.3%、販管費比率は47.6%だった。
■16年6月期通期は大幅増収増益予想
今期(16年6月期)通期の非連結業績予想(8月7日公表)は、売上高が前期比31.6%増の52億50百万円、営業利益が同34.6%増の3億20百万円、経常利益が同41.3%増の3億21百万円、純利益が同46.3%増の2億円としている。配当予想については無配継続としている。先行投資を積極的に実施しつつも、既存体制のさらなる効率化で成長率と利益水準を維持する。
新規拠点開設効果(15年3月開設の埼玉リユースセンター、および15年10月開設の神戸リユースセンター)、15年9月にリリースした買取・販売における新サービス「ReRe」の効果、大手企業とのアライアンス強化の効果などで、買取・販売とも大幅に伸長する。
買取件数は同30%程度増加、買取案件単価は前期と同水準で、結果として仕入高は同30%程度の増加を見込んでいる。さらに海外Eマーケットプレイスへのテストマーケティングを実施する。
増収効果、業務プロセス標準化推進効果などで大幅増益予想だ。売上総利益率および販管費比率は前期(売上総利益率47.6%、販管費比率41.6%)と同水準を見込んでいる。経常利益と純利益については前期営業外費用で計上した上場関連費用の一巡も寄与する。
通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高20.1%、営業利益2.2%、経常利益2.2%、純利益1.5%である。低水準の形だが第1四半期の構成比が低く、第4四半期の構成比が高い収益構造を考慮すればネガティブ要因とはならない。積極的な事業展開が奏功して増収増益基調だろう。
■「リユース市場×EC市場」は拡大基調
リユース市場とEC(電子商取引)市場はともに拡大基調だ。そして環境省調査によると、12年度のリユース品購入経路の54.0%がインターネット経由(インターネットオークション28.7%、インターネットショッピングサイト25.3%)となり、インターネット経由が過半を占める状況になってきた。
「リユース市場×EC市場」は拡大基調であり、事業拠点拡大の水平展開、取扱商品拡大の垂直展開、そして新サービス構築による事業ドメイン拡大も奏功して、中期的に収益拡大基調だろう。
■株価は調整の最終局面
株価の動き(16年1月1日付で株式2分割)を見ると、水準を切り下げて12月28日には上場来安値となる936円まで下押した。その後は地合い悪化も影響して1000円近辺でモミ合う展開だ。ただし売られ過ぎ感を強めている。そしてIPO直後の15年7月高値2825円からほぼ3分の1水準で調整の最終局面と考えられる。
1月14日の終値990円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想に株式2分割を考慮したEPS39円45銭で算出)は25倍近辺、前期実績PBR(前期実績に株式2分割を考慮したBPS174円11銭で算出)は5.7倍近辺である。時価総額は約50億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形となったが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感を強めている。16年6月期大幅増収増益予想であり、ネット型リユース事業の中期成長力を評価して反発のタイミングだろう。