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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】メディカル・データ・ビジョンは戻り高値圏で堅調、ビッグデータ関連の中期成長力を評価
- 2016/1/18 07:05
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
メディカル・データ・ビジョン<3902>(東マ)は医療分野のビッグデータ関連ビジネスを展開している。15年12月期増収増益予想で16年12月期も一段の収益拡大が期待される。株価は地合い悪化の状況でも戻り高値圏で堅調に推移している。ビッグデータ関連のテーマ性や中期成長力を評価する流れに変化はなく水準切り上げの展開だろう。なお2月8日に15年12月期の決算発表を予定している。
■医療情報のネットワーク化を推進
医療情報のネットワーク化を推進する企業で、医療機関向けに医療情報システムを開発・販売するデータネットワークサービス、および製薬会社向けに各種データ分析ツールを販売するデータ利活用サービスを展開している。
データネットワークサービスで医療機関向けに医療情報システムを販売するとともに、2次利用許諾を得た患者の医療・健康関連情報を集積する。そして集積した各種情報をビッグデータとして活用するためのデータ分析ツール・サービスを、製薬会社向けに販売するビジネスモデルだ。
医療機関からのシステム利用料・メンテナンス費用、および製薬会社からのサービス対価(システム利用料含む)が収益源である。
■医療機関向けデータネットワークスサービス
医療機関向けのデータネットワークサービスでは、DPC制度導入対象病院向けのDPC分析ベンチマークシステム「EVE」「EVE-ASP」および病院経営支援システム「Medical Code」を主力としている。
DPC制度とは、急性期病院における入院医療を対象とした診療報酬の包括評価制度である。医療費の適正化、診療データ(DPCデータ)開示による透明性の向上、医療の質向上などを目的として厚生労働省が03年に導入した。DPC対象病院には厚生労働省への診療データ提出が義務付けられているが、より効果的な診療を実施すれば従来に比べて収入が増えるというメリットがある。
DPC制度導入対象病院向けDPC分析システム「EVE」(06年8月リリース)は、自院の診療内容や状況を他院と比較しながら分析できるベンチマークシステムである。14年12月期販売数は58病院で累計導入病院数は705病院、14年12月末現在のDPC対象病院の42.4%という圧倒的シェアを獲得している。DPC詳細分析ベンチマークシステム「EVE-ASP」(07年11月リリース)は、実名を公開した自院と他院を比較できるシステムだ。
病院向け経営支援システム「Medical Code」(09年9月リリース)は原価管理など病院経営全般に関わる事項を分析できるシステムである。14年12月期販売数は32病院、累計導入病院数は131病院となった。
なお15年9月末時点のDPC分析システム「EVE」導入病院数は14年12月末比46病院増加の751病院(DPC準備病院等も含む)、DPC対象病院1580病院における「EVE」のシェアは44.5%、病院向け経営支援システム「Medical Code」導入病院数は同28病院増加の159病院となった。
■医療機関向け新サービスも積極リリース
医療機関向け新サービスでは、14年5月に診療所向け電子カルテソリューション「カルテビジョン」をリリースした。2次利用の許諾を得た個人データをさらに集積するため、治験会社などとのアライアンスも積極活用して拡販を強化する。
15年5月には、患者が自分自身の診療情報の一部を保管・閲覧することを目的とした、病院向けデジタル健康ソリューション「エースビジョン」の本格導入を開始した。診察記録モジュール、医療情報統合IDカード「CADA」および診療情報保管・閲覧サービス「カルテコ」を付帯したトータルソリューションである。
そして15年5月に浜田病院(福岡県北九州市)、8月に諏訪湖畔病院(長野県岡谷市)へ導入した。15年12月期中に、さらに東北地方で1病院への提供が決定しているようだ。
なお「エースビジョン」については、25年を目途に2次医療圏(医療法に基づき厚生労働省が決定している医療の地域圏)344医療圏に各1病院の導入を目指している。
また「エースビジョン」の本格導入開始に伴って、医療情報統合IDカード「CADA」の発行・管理・運用受託などを行うことを目的に15年4月設立した子会社CADAが本格稼働する。今後は「CADA」を活用した新サービス開発や運用代行などを行っていく予定としている。
なお1月6日リリースの診療データベース概況によると、15年12月末時点で実患者数が1265万人(14年12月末比400万人増加)となり、2次利用の許諾を得たデータ提供病院数が225病院(がん拠点病院91病院を含む)となった。日本国民の1割に相当する民間企業では最大規模のデータベースに成長し、規模と質において製薬会社などから高い評価を受けている。
■製薬会社向けデータ利活用サービス
製薬会社向けデータ利活用サービスは、データネットワークサービスで集積した医療情報などの各種データをビッグデータとして活用し、処方数分析、処方日数分析、処方診療科分析、併用薬分析、副作用発生リスク分析などの分析ツール・サービスを提供する。
医療機関における処方実態が把握可能な診療データ分析ツール「MDV analyzer」(12年8月リリース)は、利用製薬会社数が14年12月期末で10社、15年6月末時点で11社となった。また「MDV analyzer」の分析メニューでは対応できない製薬会社個別ニーズに対するサービスとして「アドホック調査サービス」も提供している。
さらに15年3月には薬剤安全性分析をはじめとした疫学調査支援を目的とした分析システム「MDV analyzer for Academia」を、15年4月には薬剤処方実態に関する基礎分析が簡便に行えるWEB分析ツール「MDV analyzer Light」をリリースした。
現在は先発薬メーカー向けが主力だが、15年2月にはOTC(一般用医薬品)およびH&BC(ヘルス&ビューティケア)分野を対象とした調査分析サービスも開始した。
15年4月にはクロス・マーケティンググループ<3675>と共同で、OTC・H&BCメーカー向けに診療統計データと定性データをリンクさせたワンストップ分析サービス「ヘルスオプティマイザー」の提供を開始した。
15年6月には、診療統計データ分析レポート「Medical Trend Report for 食品・機能性食品」の提供を開始した。15年4月から機能性表示食品制度がスタートしたことに対応して、機能性表示食品群において未整備のカテゴリー体系を当社が独自に26カテゴリー・83セグメントに定義構築し、食品・機能性食品向けの疾病市場分析などを提供する。
15年9月には診療統計データ分析レポート「Medical Trend Report for シニアマーケット」の提供を開始した。60~80歳における疾病マーケットをEBM(根拠に基づいた医療)の観点で捉え、シニアマーケットの動向を現状分析のみならず、高齢化による人口動態や疾病構造の変動も考慮し、10年後の将来予測も踏まえてレポートしている。
■中期成長に向けて領域拡大推進
今後はDPCデータにとどまらず、DPCデータを含めた個人データをさらに集積し、カルテ情報を永続的に取得できるように、電子カルテ・オーダリングシステム・レセプトコンピュータなど基幹システム分野への進出も計画している。病院・診療所への事業展開加速、永続的に取得するインフラおよびデータベース作りを通じて、事業基盤安定化とともに中期成長を目指す方針だ。
15年6月には医師専門転職サイト「メディリア」をオープンした。厚生労働省が04年に「新臨床研修医制度」を導入して以来、大学医局へ入局するのではなく、自ら情報を集めて勤務先病院を選択する医師が増加していることに対応し、勤務地・病床数・報酬といった基本情報だけでなく、当社が独自に保有している大規模診療データベースなどを活用して患者特性や診療実績などの情報も提供する。
■15年12月期第3四半期累計は増収増益
前期(15年12月期)第3四半期累計(1月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比30.7%増の16億86百万円、営業利益が同11.3%憎の1億円、経常利益が同11.6%増の98百万円、そして純利益が同36.0%増の56百万円だった。
事業別の売上高は、データネットワークサービスが同25.0%増の10億66百万円、データ利活用サービスが同42.2%増の6億20百万円だった。データネットワークサービスでは「Medical Code」導入病院数増加や「エースビジョン」導入などでパッケージが同45.0%増の4億76百万円、メンテナンスが同8.7%増の5億29百万円、データ利活用サービスでは「MDV analyzer」が同13.4%増の1億81百万円、アドホック調査サービスが同47.8%増の4億08百万円と好調に推移した。
新規事業の立ち上げ、積極的な人材採用、営業活動の強化などで売上原価と販管費が増加したが、増収効果で吸収して営業増益だった。なお売上総利益率は77.3%で同3.2ポイント低下したが、販管費比率は71.4%で同2.1ポイント低下した。
なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)4億77百万円、第2四半期(4月~6月)4億77百万円、第3四半期(7月~9月)7億32百万円、営業利益は第1四半期21百万円、第2四半期49百万円の赤字、第3四半期1億28百万円だった。
■15年12月期は先行投資負担で営業微増益予想だが、大幅増収基調
前期(15年12月期)通期の非連結業績予想(2月9日公表)は、売上高が前期比34.4%増の26億22百万円、営業利益が同0.6%増の2億62百万円、経常利益が同5.5%増の2億62百万円、純利益が同7.8%増の1億46百万円としている。配当予想は無配継続としている。
システム開発、データ蓄積セキュリティ強化、電子カルテソリューション拡販、新規事業に関する人件費の増加で営業利益は微増益だが、主力製品・サービスが好調に推移し、新サービス投入も寄与して大幅増収見通しだ。事業別売上高の計画はデータネットワークサービスが同43.9%増の17億46百万円、データ利活用サービスが同18.8%増の8億76百万円としている。
データネットワークサービスでは「EVE」および「Medical Code」の導入病院数が増加し、診療所向け電子カルテソリューション「カルテビジョン」の本格化も寄与する。データ利活用サービスでは「MDV analyzer」「MDV analyzer for Academia」「アドホック調査サービス」の拡販に加えて、OTC・H&BC分野の寄与も期待される。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が64.3%、営業利益が38.2%、経常利益が37.4%、純利益が68.4%と低水準だったが、外資系製薬メーカーは12月決算期末に予算を消化する傾向が強く、第4四半期(10月~12月)の構成比が高い収益構造である。
■17年12月期から成長の第4フェーズで投資回収期
中期成長イメージでは、15年12月期および16年12月期を成長の第3フェーズの投資継続期として、目標値として売上高は毎年30%前後の増加、売上高経常利益率は10%前後の維持としている。電子カルテソリューションを介して個人から同意を得た診療データを蓄積し、個人が診療情報を管理できる仕組みを構築する。さらに蓄積された多様なデータを活用して、利活用サービス領域の成長を加速させる。
そして17年12月期からは成長の第4フェーズで投資回収期としている。蓄積データを活用して利活用サービスのビジネス領域が拡大し、売上高の拡大とともに投資回収を開始する方針だ。中期的に収益拡大基調が期待される。
■株価は戻り高値圏で堅調
なお医療関連企業との資本業務提携により、富士フイルムが第1位株主、メディパルホールディングスが第2位株主、シミックホールディングスが第4位株主となっている。
株価の動き(15年7月1日付で株式4分割)を見ると、8月下旬~10月上旬の上場来安値圏1000円近辺でのモミ合いから上放れて戻り歩調の展開だ。1月6日には戻り高値となる1968円まで上伸する場面があった。そして地合い悪化の影響で1月12日に1598円まで調整する場面があったが、その後は素早く切り返している。地合い悪化の状況でも堅調な動きだ。
1月15日の終値1804円を指標面で見ると、前期推定PER(会社予想のEPS31円48銭で算出)は57倍近辺、前々期実績PBR(前々期実績に株式4分割を考慮したBPS492円63銭で算出)は3.7倍近辺である。時価総額は約84億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインの形だ。ビッグデータ関連のテーマ性や中期成長力を評価する流れに変化はなく水準切り上げの展開だろう。