【アナリスト水田雅展の銘柄診断】翻訳センターは16年3月期増収増益・連続増配予想でテーマ性も多彩

翻訳センター 2483

 翻訳センター<2483>(JQS)は翻訳・通訳サービスなどを展開している。16年3月期増収増益・連続増配予想で、インバウンド関連、16年伊勢志摩サミット関連、20年東京五輪関連、TPP関連とテーマ性も多彩だ。株価は地合い悪化も影響して安値圏だが売られ過ぎ感を強めている。反発のタイミングだろう。なお2月9日に第3四半期累計(4月~12月)の業績発表を予定している。

■企業向け翻訳サービス事業を主力に業容拡大

 特許・医薬・工業・法務・金融分野などの企業向け翻訳サービス事業を主力として、派遣事業、通訳事業、語学教育事業、コンベンション事業などを展開している。

 翻訳事業では専門性の高い産業翻訳に特化している。グループ全体で約6300名の登録者を確保し、対応可能言語は約75言語と国内最大規模である。また取引社数は4000社、年間受注件数は5万9000件に達している。

 業容拡大に向けて、12年9月に通訳・翻訳・国際会議運営のアイ・エス・エス(ISS)を子会社化、13年6月にアイタスからIT関連のローカライゼーション/マニュアル翻訳事業の一部譲り受けた。14年10月には医薬品承認申請・取得に関するメディカルライティング業務を専門に受託する子会社パナシアを設立した。

 15年7月には、米国の調査会社Commom Senese Advisory社発表の「世界の語学サービス会社ランキング2015」において4年連続でアジア1位にランクインしたと発表した。

 15年8月には、工業・ローカライゼーション営業部が「Microsoft Visual Studio2015日本語版」の実機翻訳レビューにおいて適切なフードバックを行った功績が認められ、マイクロソフト米国本社から表彰された。

 なおグループ再編で15年3月、ISSが100%所有する人材紹介事業のISSコンサルティングの全株式を同社代表取締役関口真由美氏にした。協業関係は継続する。また15年12月、連結子会社の国際事務センターを当社に吸収合併した。グループ内で重複する経営資源を集約し、さらなる顧客サービスの拡充と効率的な業務運営を図る。

■翻訳サービス、通訳、国際会議の需要は拡大基調

 企業のグローバル展開加速を背景として、翻訳サービスの需要は企業の知的財産権関連、新薬開発関連、新製品開発関連、海外展開関連、IR・ディスクロージャー関連を中心に拡大基調である。

 また子会社のISSは国際会議運営の実績も豊富である。訪日外国人旅行客の増加、16年伊勢志摩サミット開催、20年東京夏季五輪開催なども背景として、通訳や国際会議の需要増加も期待される。

 15年7月には通訳者・翻訳者教育事業を展開するアイ・エス・エス・インスティテュートが、インバウンド需要の増加に対応すべく電話通訳オペレーター養成講座を開設した。

■総合的な言語ソリューションを目指してM&A・アライアンスも積極化

 翻訳だけではなく、通訳、人材派遣、多言語コンタクトセンターなど総合的な言語ソリューションの提供を目指して、M&A・アライアンス戦略も積極活用している。

 14年8月には、多言語対応コンタクトセンターサービスのディー・キュービックと、日本国内におけるマルチランゲージ・コンタクトセンターサービス(在日外国人を顧客とする企業や団体を対象とした通訳・翻訳サービス)に関して業務提携した。

 15年4月には、ディー・キュービックの親会社キューアンドエーと合弁で新会社ランゲージワンを設立した。ディー・キュービックの多言語対応コンタクトセンターサービスを新会社ランゲージワンに移管し、センター運営およびサービスの強化を図る。

 15年10月には、自動機械・電子機器の設計・製作事業およびドキュメントサービス事業を営むユースエンジニアリング(愛媛県)と、ドキュメントサービスにおける戦略的パートナーとして業務提携すると発表した。当社の翻訳サービス機能と同社のドキュメント制作機能を組み合わせて事業拡大を図る。

■翻訳サービス国際規格の認証取得

 15年11月には翻訳サービスの国際規格「ISO17100:2015」の認証取得を発表した。

 適正な翻訳サービスの提供に必要な所定のプロセス要件を翻訳サービス提供者が満たしていることを評価する国際規格で、今後世界各国で広く普及していく見通しだ。なお当社は一般社団方針日本翻訳連盟からの委託により「ISO17100:2015」策定を担当する専門委員会の日本代表の一員として参加した。

■第4四半期の構成比が高い収益構造

 15年3月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)21億08百万円、第2四半期(7月~9月)22億53百万円、第3四半期(10月~12月)23億07百万円、第4四半期(1月~3月)25億23百万円、営業利益は第1四半期16百万円、第2四半期1億38百万円、第3四半期1億31百万円、第4四半期2億19百万円だった。

 第4四半期の構成比が高い収益構造としている。また15年3月期のROEは14年3月期比3.4ポイント上昇して10.4%となり、自己資本比率は同1.1ポイント低下して62.5%だった。配当性向は28.5%だった。

■16年3月期第2四半期累計は減収減益

 今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比2.2%減の42億62百万円で、営業利益が同12.9%減の1億34百万円、経常利益が同19.4%減の1億26百万円、純利益が同28.9%減の61百万円だった。

 売上面では翻訳事業が堅調に推移したが派遣事業が大幅減収となり、利益面では販管費が減少したが減収に伴って売上総利益が減少した。売上総利益率は42.3%で同1.9ポイント低下、販管費比率は39.2%で同1.5ポイント低下した。営業外費用では為替差損1百万円、持分法投資損失7百万円を計上した。

 セグメント別売上高を見ると、翻訳事業は各分野とも好調で同5.0%増の32億07百万円、派遣事業は前期に人材紹介事業の子会社を売却した影響で同35.8%減の4億45百万円、通訳事業はIT通信関連企業からの受注減少で同2.0%減の2億94百万円、語学教育事業は同6.7%減の1億06百万円、コンベンション事業は第1四半期に「第7回太平洋・島サミット」を受注したが第2四半期の開催案件が少なく同8.3%減の1億36百万円、その他は同42.5%増の72百万円だった。

 翻訳事業の分野別売上高は特許分野が同3.5%増の8億75百万円、医薬分野が同3.1%増の10億97百万円、工業・ローカライゼーション分野が同2.7%増の9億02百万円、金融・法務分野が同25.3%増の3億31百万円だった。各分野とも好調に推移している。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)21億10百万円、第2四半期(7月~9月)21億52百万円、営業利益は第1四半期52百万円、第2四半期82百万円だった。

■16年3月期通期は増収増益予想

 今期(16年3月期)通期の連結業績予想(11月27日に投資有価証券売却益計上に伴って純利益を増額修正)は、売上高が前期比3.3%増の95億円、営業利益が同8.9%増の5億50百万円、経常利益が同9.4%増の5億50百万円、純利益が同52.0%増の4億30百万円としている。配当予想(5月13日公表)は同5円増配の年間53円(期末一括)で予想配当性向は20.8%となる。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が44.9%、営業利益が24.4%、経常利益が22.9%、純利益が14.2%である。低水準の形だが第4四半期(1月~3月)の構成比が高い収益構造であり、主力の翻訳事業が好調に推移している。純利益については投資有価証券売却益が寄与する。通期ベースでは増収増益が期待される。

■中期経営計画で18年3月期ROE10%以上目標

 15年5月に発表した第3次中期経営計画(16年3月期~18年3月期)では、目標数値として18年3月期の売上高110億円、営業利益7億50百万円、純利益4億50百万円、ROE10%以上を掲げている。また営業利益率については中期的に8%を目指すとしている。

 重点施策としては、顧客満足度向上のための分野特化戦略のさらなる推進、ビジネスプロセスの最適化による生産性向上、ランゲージサービスにおけるグループシナジーの最大化を推進する。需要は拡大基調であり、中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は安値圏だが売られ過ぎ感

 株価の動きを見ると地合い悪化も影響して軟調展開だ。1月18日には15年8月の3330円を割り込んで昨年来安値となる3235円まで調整した。

 1月18日の終値3305円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS255円26銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間53円で算出)は1.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1671円18銭で算出)は2.0倍近辺である。なお時価総額は約56億円である。

 週足チャートで見ると52週移動平均線を割り込んで調整局面だが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感を強めている。16年3月期増収増益・連続増配予想で、インバウンド関連、16年伊勢志摩サミット関連、20年東京五輪関連、TPP関連とテーマ性も多彩だ。反発のタイミングだろう。

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