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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ジオネクストは太陽光パネル売買契約締結が16年12月期にズレ込んだが収益改善基調
- 2016/1/20 07:18
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ジオネクスト<3777>(JQS)は収益柱を再生可能エネルギー事業にシフトしている。太陽光発電事業に係る収益を計上して15年12月期第3四半期(7月~9月)に四半期ベースでの営業黒字化を達成した。太陽光パネル売買契約締結が16年12月期にズレ込んだが、収益改善基調に変化はないだろう。株価は地合い悪化も影響して昨年来安値圏だが、収益改善基調を見直して反発のタイミングだろう。
■再生可能エネルギー事業、ヘルスケア事業に収益柱をシフト
14年4月にターボリナックスHDから現社名ジオネクストに商号変更した持株会社である。
従来のIT関連事業(ターボリナックスのITソリューション関連)、環境事業(東環のビルメンテナンスサービス)に加えて、新規事業の再生可能エネルギー事業(エリアエナジーの太陽光発電所開発・運営・O&Mサービス、日本地熱発電の地熱・温泉バイナリー発電開発)、ヘルスケア事業(仙真堂の調剤薬局・サプリメント事業)を展開している。先端医療関連の遺伝子治療研究所については持分法適用関連会社に移行した。
収益改善および中期成長に向けた基本戦略としては、14年に開始した新規事業の再生可能エネルギー事業に収益柱をシフトし、従来のIT関連事業と環境事業の収益性を確保しつつ、新規事業のヘルスケア事業の拡大・収益化も目指す方針としている。
■再生可能エネルギー事業のO&Mをストック型収益モデルとして育成
再生可能エネルギー事業のO&M(Operation & Maintenance)は、太陽光発電所事業者から運用・保守・管理業務を受託するサービスである。
独自開発した最先端の24時間365日対応常時遠隔監視・制御システム、監視カメラによる犯罪防止のための常時監視、発電データの管理、官公庁への報告書の作成、保安規程に基づく定期点検の実施、草刈・除雪・太陽光パネル清掃といった発電所構内の管理、さらに地域の各種行事・イベントへの参加といった地域との共生までワンストップサービスで受託する。
電力会社からの出力抑制要請(電力会社が必要に応じて太陽光発電で発電した電気の買い取りを制限できる制度)にも対応して、監視・制御センターでの遠隔操作で常時監視・制御するため、コスト低減と安全な運用が可能となる。既存の太陽光発電所からの受託件数増加が予想されているため、O&Mサービス収入をストック型ビジネスモデルの収益柱として育成する方針だ。
■太陽光発電所の売却進展、自社運営の北海道三笠市の発電所は売電開始
再生可能エネルギー事業で開発を進めている太陽光発電所は、買い取り価格32円/kWで19ヶ所が確定し、このうち14ヶ所の太陽光発電所に係る権利等の譲渡に関して15年8月、当社の連結子会社エリアエナジーがコネクトホールディングス<3647>の連結子会社エコ・ボンズと基本合意契約を締結した。その後の個別契約に基づいて引き渡しおよび土地造成業務受託(11ヶ所)などを進めている。譲渡金額の総額は13億53百万円となる。
15年11月には土地造成業務(11ヶ所)の完了を発表した。そして15年12月期末時点で、土地売買契約、地上権譲渡契約、地位譲渡契約、土地造成業務委託契約を締結し、それぞれ引き渡しと代金決済が完了し、受領した代金の総額は5億74百万円となった。
なお12月28日には、エコ・ボンズとの太陽光発電所に係る権利等の譲渡に関して、未了となっている商品(太陽光パネル)売買契約締結が16年12月期にズレ込むと発表した。太陽光パネルの売買代金の総額は7億78百万円で、このうち77百万円を申込証拠金として受領済みである。
また15年12月には、エリアエナジーが建設を進めていた自社運営の北海道三笠市弥生町太陽光発電所が完成して売電を開始した。年間収入見込みは約18百万円としている。
■遺伝子治療研究所は遺伝子導入製剤の開発に取り組み
先端医療関連の遺伝子治療研究所は、パーキンソン病、ALS(筋委縮性側素硬化症)、アルツハイマー病を対象として、AAV(アデノ随伴ウイルスベクター)による遺伝子導入製剤の開発に取り組んでいる。
遺伝子治療は、遺伝子または遺伝子を導入した細胞を人の体内に投与することにより病気を治療する最先端医療である。iPS細胞のようながん化のリスクもない。脳と脊髄の神経細胞に遺伝子を送達するため、ウイルスを遺伝子のベクター(運び屋)として使用する方法が優れているとされ、ウイルスの中でも非病原性のAAVが最も安全性が高く、今後の遺伝子治療においてはAAVが主流になるとされている。
進行したパーキンソン病に対して、遺伝子治療研究所が開発に取り組んでいる新しい遺伝子治療戦略は、パーキンソン病においても脱落することなく残っている被殻内の神経細胞に、ドパミン合成に必要な酵素の遺伝子を導入してドパミン産生能を回復させる治療法だ。
パーキンソン病を対象とする遺伝子導入製剤の開発に目途がつき、15年7月~9月期にセルバンクシステム(製剤生産の基本となる仕組み)が完成し、16年前半から前臨床試験、17年前半からフェーズⅠを開始する見込みとしている。
■15年12月期第3四半期は四半期ベースでの営業黒字化を達成
前期(15年12月期)第3四半期累計(1月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比2.7倍の5億55百万円、営業利益が1億35百万円の赤字(前年同期は86百万円の赤字)、経常利益が1億84百万円の赤字(同1億15百万円の赤字)、純利益が1億87百万円の赤字(同1億44百万円の赤字)だった。
経常利益については営業外費用(調剤薬局事業に係る開業費償却、親会社リゾート&メディカルからの借入金に係る支払利息、当社第15回新株予約権の行使および自己株式取得に伴う支払手数料、持分法適用会社である遺伝子治療研究所に係る投資損失)の増加、純利益については特別損失(本社移転に伴う固定資産除却損)も影響した。
再生可能エネルギー事業は、太陽光発電所開発案件の一部を譲渡してセグメント利益(営業利益)が黒字化した。ヘルスケア事業は仙真堂調剤薬局(14年12月1店舗目開業、15年5月2店舗目開業)の店舗運営費用が先行している。IT関連事業と環境事業は減収減益だった。
セグメント別(連結調整前)動向はIT関連事業の売上高が同35.4%減の46百万円、営業利益が同73.9%減の6百万円、環境事業の売上高が同47.9%減の67百万円、営業利益が1百万円の赤字(前年同期は16百万円の黒字)、ヘルスケア事業の売上高が42百万円(同0百万円)、営業利益が50百万円の赤字(同17百万円の赤字)、再生可能エネルギー事業の売上高が3億98百万円(同0百万円)、営業利益が33百万円(前年同期は19百万円の赤字)だった。
四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)48百万円、第2四半期(4月~6月)48百万円、第3四半期(7月~9月)4億59百万円、営業利益は第1四半期73百万円の赤字、第2四半期90百万円の赤字、第3四半期28百万円の黒字だった。
累計ベースで見ると営業赤字であり、前年同期との比較で営業赤字が拡大したが、四半期ベースで見ると、第3四半期は太陽光発電所開発案件での収益を計上して営業黒字化を達成した。
■15年12月期は太陽光パネル売買契約ズレ込みで下振れの可能性だが、16年12月期収益改善基調に変化なし
前期(15年12月期)の連結業績予想(8月13日に減額)は、売上高が16億80百万円(前期は2億64百万円)、営業利益が50百万円の黒字(同1億75百万円の赤字)、経常利益が10百万円の赤字(同2億46百万円の赤字)、純利益が15百万円の赤字(同2億74百万円の赤字)としている。
なお12月28日に、エコ・ボンズとの太陽光発電所に係る権利等譲渡に関して、未了となっている商品(太陽光パネル)売買契約締結が16年12月期にズレ込むと発表した。これによって前期(15年12月期)の連結業績は下振れの可能性だが、太陽光発電事業の本格化で今期(16年12月期)の収益改善基調に変化はないだろう。
また12月8日に、連結子会社ターボリナックスが保有する当社関連会社の北京拓林思の出資持分全てを、北京拓林思の親会社である北京万里に譲渡(16年3月20日予定)すると発表している。北京拓林思は持分法適用関連会社から除外され、16年12月期の特別利益に関係会社株式売却益約16百万円が発生する見込みだ。
■中期経営計画で17年12月期純利益8.4億円目標
なお営業損失および営業キャッシュフローのマイナスが9期継続して発生しているため、継続企業の前提に疑義の注記が付されているが、営業損益と営業キャッシュフローの黒字化に向けて、顧客基盤の拡大、成長戦略に不可欠な人材の確保および協力会社の活用、財務体質の強化、内部統制の強化、法令順守体制の強化に取り組むとしている。
14年2月発表の中期経営計画ローリングプラン(15年12月期~17年12月期)では、経営目標値として17年12月期の売上高55億円、営業利益14億50百万円、経常利益14億円、純利益8億40百万円を掲げている。本計画では第15回新株予約権(14年12月発行)の行使は前提としていない。
セグメント別(17年12月期、連結調整前)には、既存分野のIT関連事業が売上高1億20百万円、営業利益43百万円、環境事業が売上高1億30百万円、営業利益22百万円、新規分野のヘルスケア事業が売上高6億50百万円、営業利益1億40百万円、再生可能エネルギー事業が売上高46億円、営業利益14億25百万円の計画としている。ストック型ビジネスモデルのO&Mサービス収入が収益柱となって全体を牽引する計画だ。
IT関連事業と環境事業は規模拡大ではなく、付加価値の高い商品・サービスの提供で収益性を確保するとともに、再生可能エネルギー事業への人員活用などでシナジー効果も高める方針だ。ヘルスケア事業は、新株予約権行使による資金調達の状況に合わせて、東北地方や北関東地方を中心に調剤薬局6店舗程度を開設する方針としている。
15年9月にはIT関連事業においてCHARACOM社(東京都)と業務提携した。両社がキャラクターライセンス事業を推進するための企画・商品開発・販売業務を協力して行う。
再生可能エネルギー事業の地熱・温泉バイナリー発電については、鹿児島県指宿市山川地区の2ヶ所において、源泉使用権および発電機を設置する土地を取得済みである。16年前半に10ヶ所程度で売電を開始し、17年12月期に収益が本格化する計画としている。再生可能エネルギー事業におけるストック型ビジネスモデルが牽引して収益改善基調だろう。
■有利子負債削減も進展
14年12月発行の第15回新株予約権340個(=3400万株)について、割当先であるEVO FUNDから、S&BROTHERS(シンガポール)へ200個(=2000万株)、および当社第4位株主である須田忠雄氏へ35個(=350万株)譲渡した。
なお第15回新株予約権の行使状況は、15年12月31日時点で未行使予約権個数325個となっている。
15年8月には、親会社リゾート&メディカルとの間で14年9月に締結したコミットメントライン契約に基づく借入金3億68百万円を全額返済し、当該契約を解除した。再生可能エネルギー事業を中心として一定の収益が実現されたのを機に、借入金の返済により有利子負債の削減を図るとともに、親会社リゾート&メディカルからの独立性を明確にする。良好な関係は継続する。
■株価は売られ過ぎ感強めて反発のタイミング
株価の動きを見ると、地合い悪化も影響して昨年来安値圏だ。1月18日には昨年来安値となる81円まで下押す場面があった。1月19日の終値は94円で、時価総額は約35億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が16%程度に拡大して売られ過ぎ感を強めている。また週足チャートで見ると80円近辺が下値支持線のようだ。収益改善基調を見直して反発のタイミングだろう。