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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ゼリア新薬工業の16年3月期は収益改善基調
- 2016/1/21 07:29
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ゼリア新薬工業<4559>(東1)は、消化器分野が中心の医療用医薬品事業と、一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。16年3月期は利益予想を増額して収益改善基調である。株価は地合い悪化も影響して軟調展開だが、売られ過ぎ感を強めて反発のタイミングだろう。
■消化器分野が中心の医薬品メーカー
消化器分野が中心の医療用医薬品事業と、一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。
医療用医薬品事業では、潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」を主力として、H2受容体拮抗剤「アシノン」や亜鉛含有胃潰瘍治療剤「プロマック」なども展開している。そして13年6月には自社開発の機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」を発売し、アステラス製薬<4503>と共同で早期の市場浸透を目指している。
コンシューマーヘルスケア事業では、ヘパリーゼ群、コンドロイチン群、およびウィズワン群を主力としている。15年10月には、肝臓水解物・イノシトール配合の滋養強壮保健剤「ヘパリーゼ・プラス2」(第3類医薬品)を、全国の薬局・ドラッグストアにおいて発売開始した。さらに関節痛・腰痛治療薬「コンドロイチンZS錠」(第3類医薬品)の錠剤を小型化した製品の販売を開始した。
■グローバル展開を推進
M&Aを活用してグローバル展開も推進している。08年10月基礎化粧品のイオナ、09年9月「アサコール」の開発会社ティロッツ社(スイス)、10年9月コンドロイチン原料のZPD社(デンマーク)を子会社化した。
13年8月にはビフォーファーマ社(スイス)と鉄欠乏症治療剤「Ferinject」の日本国内における独占的開発・販売契約を締結した。またZPD社の株式を追加取得して完全子会社化した。
15年4月にはベトナムの中堅医薬品製造販売会社F.T.Pharma社の株式49.0%取得を発表した。当社グループのアジア地域における事業展開の拠点とする。
■消化器分野を最重点領域として新薬開発を推進
新薬開発は消化器分野を最重点領域と位置付けて、国際的に通用する新薬の創製を念頭に置き、自社オリジナル品の海外での臨床試験を積極的に推進するとともに、海外で実績のある薬剤を導入して国内での開発を進めている。
国内消火器系分野の「Z-206」は協和発酵キリンとの共同開発で、潰瘍性大腸炎を適応症として「アサコール」の用法・用量を追加するフェーズ3、膵臓癌を適応症とする「Z-360」は日本を含むアジア地域における国際共同フェーズ2、エーザイ<4523>から導入した長時間作用型プロトンポンプ阻害剤「Z-215」は酸分泌関連疾患を適応症としてフェーズ2を実施している。
その他の分野では、子宮頸癌を適応症とする「Z-100」は日本を含むアジア地域における国際共同フェーズ3、ビフォーファーマ社から導入した鉄欠乏性貧血治療剤「Z-213」はフェーズ1bを実施している。
海外は、中国で潰瘍性大腸炎を適応症として「Z-206」を承認申請中である。また機能性ディスペプシアを適応症とする「Z-338」は欧州でフェーズ3を実施し、北米ではフェーズ2が終了した。
14年8月にはエーザイの新規化合物「E3710」(プロトンポンプ阻害剤:PPI)に関するライセンス契約を締結した。エーザイは当社に対して「E3710」の日本における独占的開発権、共同販促権、非独占的製造権を付与し、開発および製造販売承認は当社が行う。承認取得後は両社で共同販促を行う。
14年9月には、日本で初めて月経前症候群の効能を取得した西洋ハーブ・ダイレクトOTC医薬品「プレフェミン」(要指導医薬品)を販売開始した。
■アストラゼネカのIBD治療剤の権利を取得
15年7月には消化器領域に特化した子会社のティロッツ社(スイス)が、アストラゼネカ社が販売している炎症性腸疾患(IBD)治療剤「Entocort」(一般名:ブデソニド)の、米国を除く全世界における権利を取得する契約を締結した。取得額は2億15百万米ドル(約265億円)である。
炎症性腸疾患(IBD)は潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)を含めて、世界中に約500万人の患者が存在すると推定されている疾患である。米国を除く全世界40ヶ国以上でCDを適応として販売されているIBD治療剤「Entocort」の権利を取得することにより、IBD治療においてUCの第1選択薬として用いられている「アサコール」を補完することが可能になる。
■15年3月期は新規開発テーマ導入費用や研究開発費を想定以上に投入
15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)147億15百万円、第2四半期(7月~9月)154億21百万円、第3四半期(10月~12月)156億46百万円、第4四半期(1月~3月)152億30百万円、営業利益は第1四半期8億58百万円、第2四半期14億21百万円、第3四半期10億61百万円、第4四半期6億62百万円の赤字だった。
15年3月期は薬価改定や後発品使用促進の影響、機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」の市場構築遅れ、ライセンス収入やロイヤリティ収入の減少、広告宣伝費の増加、成長戦略に欠かせない新薬パイプラインの充実を図るため当初予定していなかった新規開発テーマの導入費用の発生、ヨーロッパとアジア地域で実施している治験の進捗による研究開発費の想定以上の増加などで大幅減益だった。
15年3月期の差引売上総利益率は69.7%で14年3月期比0.7ポイント低下、販管費比率は65.3%で同5.9ポイント上昇、ROEは4.2%で同6.9ポイント低下、自己資本比率は65.0%で同6.0ポイント上昇した。配当性向は62.3%だった。
■16年3月期第2四半期累計は減益だが利益計画超で減益幅縮小
今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比0.7%増の303億43百万円、営業利益が同7.2%減の21億14百万円、経常利益が同29.3%減の15億84百万円、純利益が同23.6%減の16億16百万円だった。
前回予想(8月5日に利益を増額修正)との比較では、医療用医薬品事業において機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」の市場構築が遅れ、海外で「アサコール」がスイスフラン高の影響を受けたことで売上高が前回予想を下回った。利益面では研究開発費など一部経費の発生が第3四半期(10月~12月)以降にズレ込んだため前回予想を上回った。
前年同期との比較では研究開発費の増加、スイスフラン高に伴うグループ会社における為替差損の計上などで減益だった。差引売上総利益率は70.6%で同1.9ポイント上昇したが、販管費比率は63.7%で同2.5ポイント上昇した。また営業外費用で為替差損5億95百万円(前年同期は1億17百万円)を計上し、特別利益で投資有価証券売却益10億27百万円(同9億75百万円)を計上した。
セグメント別に見ると、医療用医薬品事業は潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」が好調だが、スイスフラン高も影響して売上高が同1.8%減の166億06百万円、営業利益(連結調整前)が同18.5%減の16億40百万円だった。コンシューマーヘルスケア事業は、製品認知度が一段と向上して、売上高が同3.9%増の136億58百万円、営業利益が同13.9%増の30億04百万円だった。その他は売上高が同0.9%減の78百万円、営業利益が同3.7%減の1億18百万円だった。
主要製品別の売上高は、医療用医薬品事業の潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」が同4.3%増の94億24百万円、コンシューマーヘルスケア事業のヘパリーゼ群が同11.8%増の48億67百万円、コンドロイチン群が同3.8%増の35億96百万円だった。
なお四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)147億25百万円、第2四半期(7月~9月)156億18百万円、営業利益は第1四半期10億27百万円、第2四半期10億87百万円だった。
■16年3月期の利益予想を増額して収益改善基調
今期(16年3月期)通期の連結業績予想(10月28日に利益を増額)は、売上高が前期比6.5%増の650億円、営業利益が同68.0%増の45億円、経常利益が同48.0%増の41億円、純利益が同29.0%増の33億円としている。
医療用医薬品事業では潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」が国内外で伸長し、コンシューマーヘルスケア事業も引き続き好調に推移する。研究開発費や広告宣伝費が増加するが、増収効果で吸収して大幅増益予想だ。
前回予想(5月8日公表)との比較では売上高を据え置き、利益は営業利益を5億円、経常利益を6億円、純利益を3億円、それぞれ増額修正した。第2四半期累計の修正に加えて、15年7月に権利取得した炎症性腸疾患(IBD)治療剤「Entocort」の寄与を織り込んだ。
配当予想(5月8日公表)は前期と同額の年間30円(第2四半期末15円、期末15円)としている。予想配当性向は48.3%となる。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が46.7%、営業利益が47.0%、経常利益が38.6%、純利益が49.0%である。為替差損の計上で経常利益がイレギュラーな形だが、営業利益の進捗率は概ね順調な水準である。機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」の市場浸透進展、炎症性腸疾患(IBD)治療剤「Entocort」の寄与も期待され、16年3月期の収益は改善基調だろう。
■株主優待は毎年9月末と3月末の年2回実施
株主優待制度については、毎年9月末および3月末現在の株主に対して自社グループ商品を贈呈している。
1000株以上所有株主に対してはA・B・C・D・Eコースの中からいずれか1コース選択、100株以上~1000株未満所有株主に対してはFコースを贈呈する。
■株価は売られ過ぎ感を強めて反発のタイミング
株価の動きを見ると、地合い悪化も影響して軟調展開だ。1月20日には1350円まで下押した。15年9月1423円を割り込み、13年7月1336円以来の安値水準だ。ただし売られ過ぎ感を強めている。調整の最終局面だろう。
1月20日の終値1351円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS62円13銭で算出)は21~22倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間30円で算出)は2.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1178円00銭で算出)は1.1倍近辺である。なお時価総額は約718億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形になったが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感を強めている。反発のタイミングだろう。