【アナリスト水田雅展の銘柄分析】パシフィックネットの16年5月期第2四半期累計は大幅減益だが、通期は増益予想を据え置き

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 パシフィックネット<3021>(東マ)は中古パソコン・モバイル機器のリユース・データ消去を主力とするセキュリティサービス企業で、周辺領域への展開も強化している。16年5月期第2四半期累計(6月~11月)は大幅減益だったが、通期は増収増益予想だ。株価は急落したが15年7月の昨年来安値を割り込まず、売り一巡感を強めている。マイナンバー関連、サイバーセキュリティ関連、インバウンド需要関連、MVNO関連などテーマ性は多彩であり、3%台の配当利回りも見直して反発のタイミングだろう。

■中古情報機器の引取回収・販売などリユース・データ消去事業を展開

 中古パソコン・モバイル機器のリユース・データ消去を展開するセキュリティサービス提供企業である。パソコン、タブレット端末、スマートフォンなど中古情報機器の引取回収・販売事業を主力として、レンタル事業も展開している。

 13年10月に旗艦店としてオープンした「PC-NETアキバ本店」や、15年7月オープンした「PCNET秋葉原ジャンク通り店」など全国主要都市に10店舗を展開している。なおインバウンド需要に対応して15年5月期に7店舗を免税店化した。

 主要仕入先のリース・レンタル会社や一般企業からの引取回収強化、生産性向上、業務プロセス効率化などで収益力を高めている。

■データ消去・処分サービスなどセキュリティ体制に強み

 全国主要都市の引取回収拠点や、ISO27001(ISMS)およびプライバシーマークに準拠した情報漏洩防止のためのセキュリティ体制に強みを持っている。IT機器のデータ消去・処分サービスでは、マイナンバー制度のガイドラインに完全対応し、データ消去証明書発行サービスも行っている。

 15年5月には、電子記録メディア破壊機メーカーの日東造機から、オンサイト・オフサイトデータ物理破壊消去サービスの最優秀会社として「Crush Box プラチナサービスリセラー」の第1号に認定された。

 企業や官公庁のセキュリティ意識やコンプライアンス意識の向上を背景として、中古情報機器の入荷台数が大幅に増加している。そしてデータ消去サービスなども奏功して顧客カバー率が一段と広がり、大手金融機関からの中古情報機器引取回収も本格化している。

 なお1月19日には、マイナンバー完全対応のデータ消去サービスに関して、米国方式のハードディスク破壊サービス(NSA/DoD準拠のV字型破壊)を開始すると発表した。

■買取・回収サービスを強化

 14年10月には、企業・官公庁・自治体での使用済みIT機器の回収からデータ消去までの一連の作業を大幅に効率化する、日本初のWebサービス「P-Bridge」の無償提供を開始した。IT資産管理ソフト大手エムオーテックス社とデータ連携し、当社の引取回収サービスの提供価値を高める戦略だ。

 なお「P-Bridge」に関して15年2月に特許出願し、15年10月には特許を取得した。今後は「P-Bridge」をソリューション・プラットフォームと位置付けて新たなサービスも投入する方針だ。そして16年1月には、IT機器処分管理WEBサービス「P-Bridge」と、情報システム部門向けWEBメディア「ジョーシス」を連携して、双方の会員アカウントを共通化した。

 15年4月には、イオンリテールとApple製品等の下取りサービスにおいて協業した。イオンリテールが運営するApple製品専門店「NEWCOM(ニューコム)イオンレイクタウン店」(埼玉県越谷市)で、下取りサービスを協業で展開して仕入強化に繋げる。

 15年12月にはiPhoneおよびiPadの個人向け買取サービスを強化するため、従来の直営店での店頭買取に加えて、専用Webページ「R-mobile」を設置して買取受付を開始した。

■リユースの社会的取り組みを強化

 14年11月には、Windowsクラスルーム協議会の「Windowsクラスルーム包括プログラム」のサービスメニューとして「教育機関のお客様向けECOサービス」を展開すると発表した。教育現場におけるICT機器導入時・処分時のコスト削減サービスや、ICT機器処分時の情報漏洩などセキュリティリスクを軽減するサービスを教育機関向けに提供する。

 15年7月には特定非営利活動法人.sopa.jpと共に、子どもの学習支援と企業の使用済みパソコンの最活用を行うCSRプログラム「リユースforキッズ」の開始を発表した。なお「リユースforキッズ」の取り組みは環境省の「平成27年度使用済製品等のリユースに関するモデル事業」として採択された。

■周辺領域への事業展開も推進

 持続的な成長に向けて、モバイル・IoT・マイナンバーなど技術革新・社会的要請に対応した、新たなレンタル市場・リユース市場・周辺事業への展開も推進している。

 15年10月には、光通信<9435>と合弁会社2B(トゥー ビー)を設立して、BtoB専門のMVNO(仮想移動体通信事業者)事業に進出(営業開始11月1日)した。出資比率は当社51%、光通信49%である。そして16年1月には法人向け通信サービス「Bizmo」第2弾として、最新モバイル端末の商品ラインナップを拡充した。

 15年10月にはドローン(無人航空機)の法人向けレンタルを11月から開始すると発表した。世界のドローンのトップシェアメーカーであるDJI社製の最新モデル「ファントム3」を貸し出す。また企業のマイナンバー制度対策をワンストップでサポートする「マイナンバー安心パック」を11月から提供開始すると発表した。

 1月13日には、マイナンバーに完全対応したIT機器の回収・データ消去サービスに関して、コンピュータシステムやネットワークシステムのLCMサービス業界大手である都築テクノサービスとのパートナーシップ締結(15年12月から)を発表した。

■中古情報機器の流通量の影響を受けやすい収益構造

 15年5月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(6月~8月)11億50百万円、第2四半期(9月~11月)10億86百万円、第3四半期(12月~2月)10億52百万円、第4四半期(3月~5月)12億03百万円、営業利益は第1四半期1億19百万円、第2四半期32百万円、第3四半期36百万円、第4四半期40百万円だった。

 中古情報機器の流通量の影響を受けやすい収益構造である。また15年5月期のROEは9.7%で14年5月期比0.8ポイント低下、自己資本比率は62.8%で同6.1ポイント低下した。配当性向は45.4%だった。

■16年5月期第2四半期累計は大幅減益

 1月14日に発表した今期(16年5月期)第2四半期累計(6月~11月)の連結業績は、売上高が前年同期比3.4%減の21億60百万円となり、営業利益が同79.5%減の30百万円、経常利益が同74.2%減の41百万円、そして純利益が同65.3%減の36百万円だった。

 期初計画(7月15日公表)を下回る大幅減収減益だった。売上高は2億29百万円、営業利益は79百万円、経常利益は73百万円、純利益は40百万円下回った。14年4月の「WindowsXP」サポート終了に伴う入れ替え需要の反動減が想定以上に大きかったことに加えて、円安に伴う新品パソコンの価格高止まりなどで国内ビジネス系パソコンの出荷台数が大幅に減少し、ビジネス系使用済み情報機器の排出台数が大幅に減少したことも影響した。

 大幅減収による売上総利益の減少や、仕入競争激化による売上総利益率の低下などで大幅減益だった。売上総利益率は44.7%で同4.3ポイント低下、販管費比率は43.3%で同1.0ポイント上昇した。特別利益では保険解約返戻金14百万円を計上した。

 セグメント別に見ると、引取回収・販売事業は売上高が同7.7%減の18億07百万円、営業利益が8百万円の赤字(前年同期は1億46百万円の黒字)、レンタル事業は営業強化策が奏功して売上高が同27.5%増の3億53百万円、営業利益が同9.1倍の39百万円だった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(6月~8月)10億70百万円、第2四半期(9月~11月)10億90百万円、営業利益は第1四半期5百万円、第2四半期25百万円だった。

■16年5月期通期は増収増益予想を据え置き

 今期(16年5月期)通期の連結業績予想については、前回予想(7月15日公表)を据え置いて、売上高が前期比11.3%増の50億円、営業利益が同36.3%増の3億10百万円、経常利益が同29.9%増の3億18百万円、そして純利益が同16.7%増の2億12百万円としている。

 第2四半期累計が計画を下回ったが、15年11月から12月にかけては前年同月を上回る回収台数を確保しており、使用済み情報機器の排出市場は回復基調としている。さらに顧客拡大策・営業強化策の継続実施、IT機器レンタル強化、新たなサービス展開などの効果を見込んでいる。

 配当予想(7月15日公表)は同3円増配の年間19円(期末一括)としている。予想配当性向は46.2%となる。配当については、継続的な利益還元を基本としたうえで業績連動型の配当方式を採用し、当期純利益の30%以上を配当性向の目安として決定することを基本方針としている。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が43.2%、営業利益が9.7%、経常利益が12.9%、純利益が17.0%である。低水準のため通期下振れに注意が必要だが、下期の挽回に期待したい。

■中期経営計画で18年5月期ROE10%以上目標

 15年7月に中期経営計画「VISION2018」を発表し、次の3ヶ年を「持続的成長・高い収益性を可能とする新たな事業モデルへのステップ」と位置付けた。また東証1部への市場変更も目指すとしている。

 成長への基本戦略は、競争優位の確立と営業マーケティング強化による顧客拡大、モバイル・IoT・マイナンバーなど技術革新・社会的要請に対応した新たなレンタル市場・リユース市場・周辺事業の創出と展開、レンタル事業の拡大とリユース事業との相乗効果の発揮、戦略実行力の強化と自律型組織・人財への変革としている。

 そして経営目標値には18年5月期売上高65億円、営業利益6億円、営業利益率9.2%、ROE10.0%以上を掲げている。リユース市場の拡大も背景として収益拡大が期待される。

■株価は売り一巡して反発のタイミング

 株価の動きを見ると地合い悪化も影響して700円近辺でのモミ合いから下放れ、さらに第2四半期累計の大幅減益を嫌気して1月18日には497円まで下押した。ただし15年7月の昨年来安値456円を割り込まず、その後は500円近辺で推移している。失望売りは概ね一巡したようだ。

 1月22日の終値528円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS41円15銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間19円で算出)は3.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS371円92銭で算出)は1.4倍近辺である。時価総額は約27億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が15%程度と売られ過ぎ感の強い水準だ。また週足チャートで見ると52週移動平均線を割り込んだが、500円近辺が下値支持線の形だ。マイナンバー関連、サイバーセキュリティ関連、インバウンド需要関連、MVNO関連などテーマ性は多彩であり、3%台の配当利回りも見直して反発のタイミングだろう。

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