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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】セーラー万年筆は経営体制刷新によって一段の収益改善基調を期待
- 2016/1/25 08:28
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
セーラー万年筆<7992>(東2)は万年筆の老舗でロボット機器事業も展開している。15年12月期増収増益予想であり、16年12月期も経営体制刷新によって一段の収益改善基調が期待される。株価は地合い悪化も影響して昨年来安値を更新したが、調整が一巡して出直り展開だろう。
■文具事業やロボット機器事業を展開
文具事業(万年筆、ボールペン、電子文具、景品払出機、ガラスCD、窓ガラス用断熱塗料など)、およびロボット機器事業(プラスチック射出成形品自動取出装置・自動組立装置など)を展開している。中国の写楽精密機械(上海)については15年中に清算結了予定としている。
■文具事業はブランド力の高さが強み
文具事業はブランド力の高い万年筆を主力として、中期成長に向けて電子文具への事業展開も加速している。また熱を逃がす“冷めやすい塗料”の屋根・壁用太陽光反射・遮熱塗料「アドグリーンコート」の拡販も強化している。
15年6月には、15年4月発売の新しい超微粒子顔料ボトルインク「STORiA(ストーリア)」が「第24回日本文具大賞2015」デザイン部門・優秀賞に選出された。
15年9月には「有田焼創業400年記念万年筆」の受注生産の受付を開始した。07年に有田焼窯元の「香蘭社」「源右衛門窯」と当社万年筆のコラボレーションを実現している。そして16年の有田焼創業400年を記念して新たに合計16種類の有田焼万年筆を受注生産する。
■ロボット機器事業はプラスチック射出成形用自動取出ロボットに強み
ロボット機器事業は1969年に開発に着手した歴史を持ち、09年にはプラスチック射出成形品用自動取出ロボットで世界初の無線ハンディコントローラ搭載RZ-Σシリーズを開発した。
15年7月には高速・高精度取出機RZ-ΣⅢシリーズが、日刊工業新聞社主催第45回機械工業デザイン賞において日本ロボット工業会賞を受賞した。
■経営体制を刷新
12月12日に代表取締役および役員の異動を発表した。経営体制の刷新を図り、業績の一層の進展を期すとしている。
そして12月24日には、12月14日に当社前代表取締役の中島義雄氏より役員の地位を仮に定める仮処分申立があったが、当社新執行部と中島氏との間で話し合いを重ねた結果、和解が成立し、12月12日の取締役会決議を受け入れて今後、新執行部とともに当社の発展に力を尽くしていくことに同意し、12月24日に同氏が申立全部の取下を東京地方裁判所に行ったと発表している。
■15年12月期黒字化予想で収益改善基調
前期(15年12月期)の連結業績予想(2月16日公表)は、売上高が前々期比2.1%増の63億円、営業利益が1億10百万円(前期は91百万円の赤字)、経常利益が85百万円(同2億38百万円の赤字)、純利益が80百万円(同2億09百万円の赤字)の黒字化としている。配当予想は無配継続としている。
ロボット機器事業の好調が牽引して営業黒字化見込みだ。ロボット機器事業は前期末から受注が回復傾向を強めており、高価格の上位機種の拡販や中国子会社の撤退で売上原価率改善も期待される。また国内文具事業では前期末に発売した新機能ボールペン「G-FREE」が好評であり、消費増税の影響一巡も期待される。
第3四半期累計(1月~9月)連結業績は、売上高が前年同期比1.8%減の44億92百万円、営業利益が26百万円の黒字(前年同期は33百万円の赤字)、経常利益が1百万円の黒字(同1億54百万円の赤字)、純利益が18百万円の黒字(同80百万円の赤字)だった。
ロボット機器事業における損益改善が牽引して営業黒字化した。なお売上総利益率は28.0%で同2.2ポイント上昇、販管費比率は27.4%で同0.8ポイント上昇した。営業外収益では持分法投資利益が増加し、営業外費用では株式交付費用が一巡した。為替差損益は悪化した。特別利益では投資有価証券売却益が減少したが、固定資産売却益を計上した。
セグメント別に見ると、文具事業は売上高が同2.2%減の30億45百万円、営業利益が74百万円の赤字(同15百万円の赤字)だった。インバウンド消費も寄与して中高級万年筆の店頭販売は堅調だったが、法人ギフト向けなど中低価格ボールペンの販売不振、材料価格上昇が影響した。
ロボット機器事業は売上高が同1.0%減の14億47百万円だが、営業利益が1億01百万円の黒字(同18百万円の赤字)だった。射出成形用取出ロボットがほぼ計画通りの売上を維持した。利益面では競合による製品価格低下や材料費上昇で直近の利益率が低下したが、中国子会社の撤退などによる売上原価率改善効果などで、第3四半期累計としては営業損益が大幅に改善した。
四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)16億07百万円、第2四半期(4月~6月)14億78百万円、第3四半期(7月~9月)14億07百万円、営業利益は第1四半期29百万円、第2四半期12百万円、第3四半期15百万円の赤字だった。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が71.3%、営業利益が23.6%、経常利益が1.2%、純利益が22.5%である。やや低水準のため通期下振れに注意が必要だが、第4四半期(10月~12月)の挽回に期待したい。
■中期計画で文具の新製品開発やロボット機器の拡販を推進
14年12月期実績が計画を下回ったため、中期経営計画(14年12月期~16年12月期)の最終目標達成年度を1年延長するととともに、新たな数値目標を17年12月期売上高70億70百万円、営業利益2億円、経常利益1億80百万円、純利益1億35百万円、売上高経常利益率2.5%以上、有利子負債11億円以下とした。
基本戦略としては、文具事業ではターゲットを絞った特徴ある製品の開発、新規販売チャネルの開拓、海外市場の再構築、音声ペンや水処理機器など新規事業の推進、ロボット機器事業では射出成型機用取出ロボットの拡販、海外市場への取り組み強化を推進する方針だ。
なお15年12月期第1四半期で営業黒字化したが、14年12月期まで数期連続して当期純損失を計上しているため、継続企業の前提に疑義の注記が付されている。
■株価は底打ち感
株価の動きを見ると、地合い悪化も影響して水準を切り下げ、1月21日と22日には昨年来安値となる33円まで下押した。ただし22日は終値で35円まで戻している。
1月22日の終値35円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS64銭で算出)は55倍近辺、そして前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS15円35銭で算出)は2.3倍近辺である。なお時価総額は約44億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線を割り込んで調整局面だが、安値圏で下ヒゲをつけて底打ち感を強めている。経営体制刷新による一段の収益改善基調も期待され、調整が一巡して出直り展開だろう。