【アナリスト水田雅展の銘柄分析】MRTの16年3月期業績予想は増額含みで中期成長力を評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 MRT<6034>(東マ)は医師プラットフォームを運営して医療人材紹介事業を主力としている。主力の非常勤医師紹介が順調に推移して16年3月期業績の会社予想は増額含みだ。株価は地合い悪化の影響を受けたが売られ過ぎ感を強めている。中期成長力を評価して出直り展開だろう。なお1月26日に第3四半期累計(4月~12月)の業績発表を予定している。

■医師プラットフォーム運営で医療人材紹介事業が主力

 インターネットを活用した医師プラットフォームを運営し、医師を中心とする医療人材紹介事業を主力としている。東京大学医学部附属病院の医師互助組織を母体としているため、医師視点のサービスや医師を中心とする医療分野の人材ネットワークが強みであり、東大卒医師の3人に1人はMRT会員に登録している。

 主力のサービスは、非常勤医師を紹介する外勤紹介サービスの「Gaikin」、常勤医師を紹介する転職紹介サービスの「career」である。15年3月期末時点で医師紹介件数は累計70万件を突破した。

 また看護師・薬剤師・臨床検査技師・臨床工学技士・放射線技師などの転職・アルバイト情報サイト「コメディカル」も運営し、15年4月には医師とコンシューマを繋ぐ医療情報発信メディア「Good Doctors」も開始した。

■医師と医療機関を繋ぐ強力なネットワークが強み

 医局は教授を中心とした医師同士の相互扶助組織として存在し、各医局には数人から数百人の医師が存在している。医局は大学・診療科ごとに存在し、大学医局だけでも全国で2000以上存在している。そして医局は医師の人事業務も統制し、大学病院以外の医療機関の多くは医局の人事によって医師が供給(派遣)され運営が成り立っている。また大学病院で勤務している医師が大学病院以外で勤務することを医師間では「外勤」と呼び、医師は大学医局の指示のもとで「外勤」を行っている。

 外勤紹介サービスの「Gaikin」は、非常勤を希望する医師会員と医療機関との間で、インターネット技術を活用した当社の人材紹介システムを利用して、反復継続的に自動マッチングを行うサービスである。

 転職紹介サービスの「career」は、常勤医師紹介専任スタッフが直接面談を行い、会員医師の要望を把握したうえで、求人側の医療機関と転職(常勤医師)希望の医師をマッチングするサービスである。

 また医局向けサービスの「ネット医局」は、医局単位の医師ネットワークを構築するため、医局管理業務を支援するグループウェアを医局に無償提供している。医局管理業務の効率化を推進し、当社にとっても医局単位で医師をカバーして全国的に医師会員数を増やすことが可能となる。また「Gaikin」と「ネット医局」を組み合わせることで、市中病院への医師供給という医局機能を補完する。

 国内の医師需要については、高齢化社会の進展に伴って医療ニーズが増加する一方で医師の供給不足が深刻化し、中期的に医師の売り手市場が予想されている。また医師の地域偏在という地域間格差問題が存在する一方で、医師流動化が活発になることも予想されている。このため医師紹介市場においてはインターネットの活用や、医局との関係による競争優位性の確保が重要になる。

 こうした事業環境に対して、医師会員向けに提供する情報・サービスの付加価値を高めるとともに利便性も向上させて、医師と医療機関を繋ぐ強力なネットワークを構築していることが強みだ。

■全国へネットワーク展開

 中期成長戦略としては、医療・ヘルスケア情報プラットフォームを拡充し、全国へネットワーク展開して全国大学医局へのサービス導入を目指している。15年3月には全国展開への第一歩として名古屋営業所を開設した。

 15年9月には名古屋営業所に続く2拠点目となる大阪営業所を新規開設した。5年後の関西地区医師紹介件数5万件の達成を目指す。

■M&A・アライアンス戦略を積極推進

 M&A・アライアンス戦略を積極活用してシェア拡大を推進している。さらにコンシューマ向けサービスなどの新規事業も推進する方針だ。

 15年2月、日本最大級の税務相談ポータルサイト「税理士ドットコム」を運営する弁護士ドットコム<6027>と業務提携した。会員登録の医師や医療機関に対して「税理士ドットコム」に会員登録している税理士を紹介する。

 15年4月、GMOリサーチ<3695>と業務提携した。同社のDIY型リサーチシステム「GMO Market Observer」を利用して、当社が保有する医師会員向けのインターネット調査サービスを開始する。

 15年4月、オウンドメディア構築事業のリボルバーと業務提携した。リボルバーのモバイル特化メディアプラットフォーム「dino」をベースシステムとして、医師が発信する医療・ヘルスケア情報発信メディア「Good Doctors」を立ち上げた。

 15年4月、国内最大級のショッピング・オークション一括検索サイト「オークファン」を運営するオークファン<3674>とデータ収集・解析において連携した。ビッグデータを活用して医師と医療機関に対する有益なサービスの拡充を図る。

 15年5月、ベビシッターサービス「キッズライン(KIDSLINE)」を運営するカラーズと業務提携した。会員登録している看護師に対して「キッズライン」に登録してもらい、看護師会員の一人一人に最適な勤務先を紹介する。

 15年6月、医療情報サービス「メドレー」を提供するメドレーの第三者割当増資の一部を引き受けて(保有割合1.7%)資本業務提携した。ITと医療という同じ事業ドメインを有する企業として、新たな事業機会や市場の創出を目指し、当社の外勤紹介サービス「Gaikin」とメドレーの医療介護分野求人サイト「ジョブメドレー」の連携などを推進する。

 15年7月、決済サービスプロバイダのゼウス(SBIAXESグループ)と業務提携した。当社へ会員登録している開業医・医療機関に対して、ゼウスが提供するクレジット決済サービスを導入することにより、決済の運用負担を軽減するとともに、当社の医療機関向けコンサルティングサービスの拡充を図る。

 15年8月、痛みの少ない採血法による検査システムの事業化を目指しているエム・ビー・エス(MBS)と資本業務提携した。MBSの株式19.5%を取得(取得金額1億47百万円)して関連会社化した。MBSが研究開発している「指先採血検査」を軸として新たな医療・ヘルスケアサービスを共同開発する。

 15年9月、ビジネス向けスマートフォン・タブレットアプリのマーケットリーダーであるオプティム<3694>と、IT医療・ヘルスケア分野で業務提携した。オプティムの画面共有をベースとした遠隔支援技術と当社の医療情報および医師・医療機関ネットワークを組み合わせることで、遠隔医療健康相談サービス「ポケットドクター」を共同で構築し、16年1月サービス開始予定だ。

 15年9月、健康コーポレーション<2928>の子会社RIZAPとの戦略的業務提携した。パーソナルトレーニング事業で全国55店舗を展開しているRIZAPと提携し、医療シンポジウムの共同開催等の取り組みを行うことで、営業所を開設した東海および関西を含めて、未進出エリアの医療機関・医師に対する認知度向上を図り、提携医療機関および登録会員医師の増加に繋げる。

 15年11月には、リクルートホールディングス<6098>のグループ会社であるリクルートメディカルキャリアと、医師ネットワーク拡大のための営業連携を開始した。

■医科歯科予約・送客サービス展開に向けて光通信と資本・業務提携

 15年12月には、光通信<9435>および光通信の連結子会社アイフラッグ(東京都)との、資本提携および業務提携ならびに合弁会社設立を発表した。

 医科歯科の予約・送客サービス(ユーザーと医科歯科を繋ぐプラットフォーム)を展開するため、会員数1000万人超を誇る「EPARK」ブランドで飲食店・医科歯科・美容院等の予約・送客サービスを中心としたソリューション事業などを展開する光通信と資本・業務提携を行い、また「EPARK」ブランドで医科歯科の予約・送客システムを運営するアイフラッグと合弁会社を設立する。

 資本提携に関しては第三者割当で光通信およびアイフラッグに各13万5000株の新株式を発行(発行価額1453円)した。調達資金(差引手取概算額3億90百万円)は新規サービス拡充などに充当する。合弁会社についてはMRT NEOを設立した。出資比率は当社60%、アイフラッグ40%で、事業開始は16年3月予定としている。

■16年3月期第2四半期累計は増収増益

 今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の非連結業績は、売上高が前年同期比15.0%増の5億20百万円で、営業利益が同3.2%増の1億50百万円、経常利益が同4.7%増の1億50百万円、純利益が同9.6%増の1億円だった。

 主力の非常勤医師紹介が順調に推移し、業容拡大に伴う人件費増加や上場維持関連費用の増加などを吸収して増収増益だった。全国展開の推進やサービス向上なども寄与した。売上総利益率は84.8%で同2.0ポイント上昇、販管費比率は55.9%で同5.3ポイント上昇した。なお15年9月末時点のネット医局導入数は101局となり、15年3月期末比41医局(23大学)増加した。

 事業別売上高を見ると、非常勤医師紹介「Gaikin」は料金体系の変更や定期非常勤紹介件数の増加で同28.4%増の4億15百万円、常勤医師紹介「career」は紹介後の退職者返金額の増加で同20.5%減の82百万円、看護師・薬剤師・臨床検査技師・臨床工学技士および放射線技師紹介「コメディカル」は転職者数の減少で同10.6%減の22百万円だった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)2億88百万円、第2四半期(7月~9月)2億32百万円、営業利益は第1四半期1億01百万円、第2四半期49百万円だった。

■16年3月期通期予想は増額含み

 今期(16年3月期)通期の非連結業績予想(5月12日公表)は、売上高が前期比20.3%増の10億円、営業利益が同3.7%増の1億80百万円、経常利益が同15.8%増の1億80百万円、純利益が同10.5%増の1億06百万円としている。配当予想は無配継続としている。

 前提として、外勤医師紹介件数は同13.2%増の11万4500件、外勤医師給与取扱高は同13.3%増の71億円、ネット医局導入数は同90医局増の150医局の計画としている。事業別売上高は、主力の外勤紹介サービス「Gaikin」が同24.7%増の8億08百万円、転職紹介サービス「career」が同0.7%増の1億42百万円、転職・アルバイト情報サイト「コメディカル」他が同17.1%増の48百万円としている。

 学会への参加、医師会員向けキャンペーン、営業増員、医師情報プラットフォームの利便性向上などの効果で、医師登録件数および医師紹介件数が順調に増加する。価格改定(15年4月勤務開始案件分から外勤紹介サービス「Gaikin」の医師紹介手数料を値上げ)効果も寄与する。さらに地方拠点展開、新規メディアサービス「Good Doctors」の普及、新サービス開発も推進する。

 営業利益については営業拠点、医師医局情報プラットフォーム、およびメディアの拡充に向けた投資フェーズとして小幅増益にとどまる見込みだが、経常利益は上場関連費用一巡も寄与して2桁増益見込みだ。なお下期については本社移転費用、および「ポケットドクター」サービス展開に係る費用を織り込んでいる。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が52.0%、営業利益が83.3%、経常利益が83.3%、純利益が94.3%と高水準である。下期に発生予定の本社移転費用や「ポケットドクター」サービス展開費用など、中期成長に向けた先行投資を考慮して通期会社予想を据え置いたようだが増額含みだろう。

■株価は地合い悪化の影響を受けたが売られ過ぎ感

 株価の動きを見ると、12月7日の戻り高値1903円から反落し、地合い悪化も影響して水準を切り下げた。1月21日には1185円まで調整した。ただし売られ過ぎ感を強めている。

 1月22日の終値1241円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS46円79銭で算出)は26~27倍近辺、実績PBR(前期実績のBPS302円74銭で算出)は4.1倍近辺である。時価総額は約32億円である。

 週足チャートで見ると再び26週移動平均線を割り込んだが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が20%近くまで拡大して売られ過ぎ感を強めている。16年3月期業績の会社予想は増額含みであり、中期成長力を評価して出直り展開だろう。

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