- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アーバネットコーポレーションは16年6月期増収増益基調、5%台の高配当利回りに割安感
【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アーバネットコーポレーションは16年6月期増収増益基調、5%台の高配当利回りに割安感
- 2016/1/25 08:10
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アーバネットコーポレーション<3242>(JQS)は、投資用マンションの開発・販売を主力としている。投資用マンションの需要は高水準で16年6月期も増収増益基調が期待される。株価は地合い悪化も影響して昨年来安値を更新したが、1桁台の予想PER、5%台の高配当利回りと指標面の割安感は強い。調整が一巡して出直り展開だろう。なお2月9日に第2四半期累計(7月~12月)の業績発表を予定している。
■東京23区中心に投資用マンションの開発・販売
東京23区を中心に投資用・分譲用マンションの開発・販売事業を展開している。収益基盤強化に向けて15年3月に連結子会社アーバネットリビングを設立(15年7月操業)した。
当社は投資用ワンルームマンションの開発・1棟販売や分譲マンションの開発などのBtoB卸売、子会社アーバネットリビングは当社開発物件の戸別販売、他社物件の買取再販、マンション管理・賃貸などのBtoC小売を基本事業とする。
REIT、ファンド、海外投資家の参入などで投資用ワンルームマンションに対する投資・購入マインドは旺盛である。日銀の異次元金融緩和、20年東京夏季五輪、脱デフレ、そして日本経済再生の流れも追い風となる。
■海外投資家への直接販売も強化
都心部での事業用地取得難、土地価格上昇と建設コスト上昇による売上総利益率低下傾向という事業環境に対して、投資意欲旺盛な台湾・シンガポール・香港・中国本土の海外投資家への直接販売など販売手法の多様化、川崎市や横浜市など人口増加・優良地域への開発エリアの拡大、売上総利益率安定化に向けた分譲物件開発の平準化などの施策を強化している。
海外投資家への直接販売については、14年7月売買契約締結した投資用ワンルームマンション「アジールコート銀座イースト」(39戸、15年6月期売上計上)が第一弾となり、14年11月に投資用ワンルームマンション「アジールコート新宿」(38戸、16年5月竣工・16年6月期売上計上予定)の売買契約を締結した。
15年2月には、投資用ワンルームマンション「AXAS大森西アジールコート」(15年6月竣工、マンション74戸、店舗1戸)の店舗1戸の売買契約(15年6月期売上計上)を締結した。
15年10月には、投資用ワンルームマンション「アジールコート麻布十番(仮称)」(16年12月末竣工・引き渡し予定、56戸うち店舗1戸)の売却を発表した。東急リバブルソリューションン事業本部の仲介で海外法人との売買契約が成立した。なお売却価格は非公表だが15年6月期売上高の10%以上に相当する額としている。
15年12月には、投資用ワンルームマンション「錦糸町IVPJ(仮称)」(16年6月竣工・16年7月引き渡し予定、96戸)について、国内法人への1棟販売が確定したと発表した。売上計上は17年6月期で、売却価格は15年6月期売上高の10%相当額以上としている。なお本物件の取引は信託受益権売買としている。
また1月14日には、投資用ワンルームマンション「芝公園PJ(仮称)」(16年12月竣工・17年1月引き渡し予定、56戸)の売却確定を発表した。売上計上は17年6月期の予定である。国内個人投資家への1棟販売で、売却価格は15年6月期売上高の10%以上に相当する額としている。
■物件売上計上で四半期業績は変動
15年6月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(非連結7月~9月)29億47百万円、第2四半期(非連結10月~12月)18億84百万円、第3四半期(連結1月~3月)53億91百万円、第4四半期(連結4月~6月)16億88百万円、営業利益は第1四半期3億63百万円、第2四半期1億33百万円、第3四半期9億51百万円、第4四半期2億05百万円だった。
物件売上計上で四半期収益は変動しやすい収益構造である。15年6月期の売上総利益率は21.7%(14年6月期非連結ベースの18.8%に対して2.9ポイント上昇)だった。ROEは21.1%、自己資本比率は32.6%だった。また配当性向は31.3%だった。
なお配当性向についての基本方針は、従来は当期純利益から法人税等調整額の影響を排除した数値の30%を配当するとしていたが、16年6月期より当期純利益から法人税等調整額の影響を排除した数値の35%を配当するとしている。
■16年6月期増収増益基調
今期(16年6月期)第1四半期(7月~9月)の連結業績は売上高が17億55百万円、営業利益が93百万円、経常利益が14百万円、純利益が7百万円だった。
前期からの継続2件を含む投資用ワンルームマンション3棟の一部戸別決済80戸を売上計上した。なお前年同期(15年6月期第1四半期、非連結決算)は投資用ワンルームマンション4棟の一部戸別決済162戸の売上計上だった。
今期(16年6月期)通期の連結業績予想(8月6日公表)については、売上高が前期比34.3%増の160億円、営業利益が同6.5%増の17億60百万円、経常利益が同3.2%増の14億40百万円、純利益が同3.1%増の9億円としている。
投資用ワンルームマンション661戸(15年6月期は投資用ワンルームマンション11棟507戸、コンパクトマンション1棟47戸)、建売4戸、買取再販44戸の販売を予定して大幅増収見込みだ。
売上総利益率の想定は同3.3ポイント低下の18.4%としている。前期に利益率の高い物件が含まれていたことに加えて、17年6月期売上計上予定の分譲マンション販売に係る販売促進費を計上するため、利益の伸び率は小幅にとどまるとしている。
通期の会社予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が11.0%、営業利益が5.3%、経常利益が1.0%、純利益が0.8%である。低水準の形だが、物件売上計上で四半期収益は変動しやすい収益構造であり、第1四半期は概ね会社計画水準のようだ。
低金利の継続、相続税増税による不動産投資の見直し需要の高まり、そして円安に伴って海外投資家が加わり、投資用ワンルームマンションに対する投資・購入マインドは旺盛である。増収増益基調が期待される。
なお配当予想(8月6日公表)は同1円増配の年間14円(第2四半期末7円、期末7円)としている。予想配当性向は38.8%である。
■株価は調整一巡して出直り、指標面に割安感
株価の動きを見ると、地合い悪化も影響して水準を切り下げ、1月21日に昨年来安値となる249円まで下押した。ただし22日には265円まで切り返している。調整が一巡したようだ。
1月22日の終値265円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS36円06銭で算出)は7~8倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間14円で算出)は5.3%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS203円43銭で算出)は1.3倍近辺である。時価総額は約66億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、昨年来安値圏で下ヒゲをつけて底打ち感を強めている。投資用マンションの需要は高水準であり16年6月期も増収増益基調が期待される。1桁台の予想PER、5%台の高配当利回りと指標面の割安感は強い。調整が一巡して出直り展開だろう。