なお「もうはまだなり、まだはもうなり」の自問自答ならIPO第1号の既上場類似株から出直り相場を期待=浅妻昭治

編集長の視点

<マーケットセンサー>

 早くもネットには「神様、仏様、ドラギ様」との書き込みが目立っている。かつての西鉄ライオンズを3連敗から4連勝させ、日本シリーズで日本一に導いた今はなき鉄腕・稲尾和久投手を讃えた「神様、仏様、稲尾様」になぞらえた最大限の賛辞である。当然だろう。中国景気の大減速、上海株の波乱、原油先物(WTI)価格の急落による世界同時株安が、底なし沼状態に陥った土壇場で、ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁が、1月21日開催の理事会後に3月の次回理事会での追加金融緩和策を示唆し、「地獄で仏」とばかり株安、原油価格安のストッパーになってくれたからだ。おかげで日経平均株価も、前週末22日には、941円高と昨年9月9日以来の大幅な上げ幅で急反発、大発会以来の急落幅3016円の3分の1戻し水準近くまでリバウンドした。

 この「ドラギ様」に「イエレン様」、「黒田様」が続いてくれるかどうかが今後のポイントとするのが、マーケットの一致した見方になっている。「イエレン様」は、米連邦準備制度理事会(FRB)の議長で、今週26日~27日開催予定のFOMC(公開市場委員会)後に発表の声明文で、世界的な金融情勢の急変について何らかの言及があるか、「黒田様」も、当の黒田東彦総裁が今週28日~29日開催予定の日銀の金融政策決定会合で追加緩和策について何らかの決定をしてくれるかどうかが注目されているものだ。とくに「黒田様」について、日経平均が、大発会以来の3016円安で2014年10月30日以来1年3カ月ぶりの安値に落ち込み、翌10月31日に日銀が決定した追加金融緩和策を歓迎したその後の株高、いわゆる「バズーカ2効果」が往って来いとなってハげ落ちているだけに、昨年12月18日に決定された「量的緩和の補完措置」から一歩でも二歩でも踏み込んだ対応を望んでいるのである。

 要するに、大発会以来の株価急落についてマーケットは万策尽き果てていたのである。テクニカル指標的には騰落レシオにしろ移動平均線からのマイナスかい離率しろとっくに陰の極、底打ちを示唆し、日本のファインダメンタルズ(基礎的諸条件)からも下げ過ぎで海外株安に過剰反応しているとされたものの、何をしようが、何をアナウンスしようが、株価は、底打ちどころか急降下を止めず、相場格言が教える「もうはまだなり」で底入れは道半ばなのか、それとも「まだはもうなり」でテクニカル指標通りにすでに底値に到達しているのか、そのどちらかなのか思い煩っていたのである。それが、「神様、仏様、ドラギ様」のご利益で相場格言流に表現すれば、「もうはもうなり」と底入れ期待を強めたわけである。

 もちろんFRBのFOMCや日銀の金融政策決定会合の結果次第では、マーケットは、揺り戻しがあってまた「もうはまだなり、まだはもうなり」の自問自答を迫られることになる。そして自問自答とともに、「もうはもうなり」として底打ちしたとして、大きく下げた主力株の「リターン・リバーサル」を狙い突っ込み買いを敢行するか、「まだはまだなり」で先行した値幅調整相場には日柄調整相場が続くとして戻り売りに徹するか、さらに調整相場後の修復相場では物色銘柄が変化するとの相場セオリーに従って新規テーマ株をマークするかなどなど、可能性のある相場シナリオを想定し、次の出直り相場に備えなければならないことになる。

 この想定シナリオのなかで、新規テーマ株として注目したいのが、IPO(新規株式公開)関連株である。今年のIPO第1号は、今年1月21日に上場が承認されたはてな<3930>(東マ)である。上場予定日は2月24日で、昨年12月25日上場の一蔵<6186>(東2)以来、2カ月ぶりのIPOの再開となるが、IPO株のセールストークが、上値のシコリがなく、値動きが軽いとなっており、この通りにはてなが人気化するようなら、同社株に類似の既上場会社もツレ高、出直り相場へ先発余地が生じてくると期待していいのかもしれないのである。

 確かに昨今のIPO株投資は、既上場の類似会社株を売ってIPO株に乗り換える展開が多く、類似会社が割を食い、かつてのようにIPO株の前人気を高めるために先行して類似会社を買い上げる思惑相場はカゲを潜めているのは否定できない。しかし、現在は、平時でなく非常時であり、なお疑心暗鬼の強い相場環境下で逆に新規投資家を呼び込む物色テーマとして浮上する可能性も小さくない。しかも、はてなはIPO株として人気のネット系で想定価格を700円としており、2月5日に仮条件を決定し、2月8日から15日までをブック・ビルディング期間とし、2月16日に公開価格の決定を予定するIPOスケジュールの進行とともに、既上場の類似会社の投資も一考余地がありそうだ。

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