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【小倉正男の経済羅針盤】アメリカの利上げと円高
- 2016/1/25 12:32
- 小倉正男の経済コラム
■「いまでしょ」日銀の超金融緩和テコ入れ
アメリカが利上げに踏み切った途端、世界経済は凄まじい変調に見舞われている。
日本の場合は、株価が激しく下がり、意外なことに通貨である円は上昇した。為替は、「ドル安円高」になり、それが日本の株価をさらに押し下げることになった。
「ドル安円高」になったのは、原油価格が大きく下落し、日本の貿易収支が改善されるという思惑から、という見方が言われている。理屈はいつでも後から付いてくるわけである。
その理屈によれば、原油価格が下がっているのに円高が加われば、さらに貿易収支の改善が加速されるという予測が出てくることになる。ますます円高になる方向に作用する。
■円高是正と株価オーバーシュート是正には日銀のテコ入れ効果は絶大
変動が変動を呼び、オーバーシュート、つまりは行き過ぎた変動に走り出す。マーケットの激震は、収まってほしいものだが、まだ終わっていないという見方が一般的である。
狂いが生じているのがアベノミクスにほかならない。アベノミクスの根底は、金融緩和による「円安」政策――。
これにより、トヨタ自動車などに代表される輸出型主力産業の収益を改善させる。さらには、これらの主力産業に賃上げを誘導する。賃上げがなされれば、消費にプラスの要因となる。マーケットの変動は、このシナリオに打撃を与えている。
となれば、自ずと待たれるのは日銀による超金融緩和テコ入れということになる。いつやるのか、それは「いまでしょ」。
日銀のテコ入れ策は3度目であり、株価へのカンフル効果は以前より大きくないのではないか、という見方もある。しかし、現状の円高を是正して、マーケットのオーバーシュートを手直しするとすれば、効果はむしろ絶大である。
■企業サイドのマインドは変えられるか
賃上げへの影響も考える必要がある。早々に日銀が動かなければ、賃上げへの支援にはならない。やるのなら、それこそいましかない。
企業サイドを見れば、昨年あたりから人手不足になってはいるが、一般には賃上げはなかなか進んでいないのが実情といえそうだ。
政府としては、今年こそは賃上げをしてほしいと願っているに違いない。賃上げがなければ景気に火がつかない。
しかし、この春も、企業サイドは中国経済の失速、世界的な株式市場の低落などがあり、賃上げに慎重な姿勢を採るのではないか。企業サイドの賃上げマインドはホットとはいえない。
日銀の3度目の超金融緩和のテコ入れは、いまの円高や株式市場の変調にストップをかけられるか――。さらに企業サイドのマインドを変えられるか。
イチかバチかといっては語弊があるが、その時が接近している。
(経済ジャーナリスト 『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所)など著書多数)