【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ピックルスコーポレーションは16年2月期増収増益予想、指標面に割安感

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ピックルスコーポレーション<2925>(JQS)は漬物やキムチ製品の最大手で、新商品の開発や惣菜分野への事業展開も加速している。16年2月期第3四半期累計は営業減益だったが、通期は増収増益予想である。1桁台の予想PER、1倍割れ水準の実績PBRと指標面の割安感も強い。株価は地合い悪化の影響で水準を切り下げたが調整一巡感を強めている。出直り展開だろう。

■漬物製品の最大手、主力の「ご飯がススムキムチ」のブランド力向上

 漬物・浅漬・キムチなど漬物製品の最大手メーカーで、セブン&アイ・ホールディングス<3382>など大手量販店・コンビニエンスストアが主要取引先である。

 ブランド力の向上、新製品の積極投入、成長市場である惣菜製品の強化などを推進し、主力の「ご飯がススムキムチ」シリーズのブランド力向上とともに収益力が大幅に向上している。

 新製品では、16年1月に鰹節の老舗にんべんとのコラボレーション商品「鰹だしのきいたおひたし風菜の花」を発売した。16年2月には「ご飯がススム カレーキムチ」「ご飯がススム 本格キムチ」を発売する。

■M&Aも活用して業容拡大

 事業エリア拡大や供給能力増強に向けた動きも加速し、中・四国エリアでは広島新工場(ピックルスコーポレーション関西)、北海道エリアでは札幌新工場(ピックルスコーポレーション札幌)が稼動している。

 14年8月には漬物製造の(有)尾花沢食品(山形県尾花沢市、民事再生)から資産を取得し、子会社の尾花沢食品を設立して事業を承継した。

 15年6月には青果市場を運営する県西中央青果(茨城県古河市)の株式を取得して子会社化した。主要原材料である国産野菜の調達方法の多様化を図るとともに、国産野菜の産地における生育状況や取引価格動向などの情報収集の強化を図る。

■増収基調だが利益は原料野菜価格の影響を受けやすい収益構造

 15年2月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)68億18百万円、第2四半期(6月~8月)73億04百万円、第3四半期(9月~11月)63億18百万円、第4四半期(12月~2月)63億65百万円で、営業利益は第1四半期3億83百万円、第2四半期2億94百万円、第3四半期2億13百万円、第4四半期1億66百万円だった。

 増収基調だが利益は原料野菜の価格動向の影響を受けやすい収益構造だ。また15年2月期のROEは7.3%で14年2月期比1.3ポイント低下、自己資本比率は41.5%で同9.4ポイント低下した。配当性向は17.3%だった。

■16年2月期第3四半期累計は増収・営業減益

 1月8日に発表した今期(16年2月期)第3四半期累計(3月~11月)の連結業績は、売上高が前年同期比13.0%増の231億06百万円だが、営業利益が同16.0%減の7億47百万円、経常利益が同16.8%減の7億76百万円となった。純利益は減損損失一巡が寄与して同41.1%増の5億53百万円だった。

 既存取引先への拡販、新規取引先の開拓、新商品の投入などの効果で、キムチ製品や惣菜製品が好調に推移して2桁増収だった。ただし春や秋の天候不順の影響で主要原料野菜の白菜や胡瓜の価格が高騰したため営業減益、経常減益だった。売上総利益率は22.3%で同1.6ポイント低下、販管費比率は19.1%で同0.4ポイント低下した。営業外では持分法投資損益が悪化(前期は利益5百万円計上、今期は損失19百万円計上)した。特別利益では負ののれん発生益89百万円を計上し、特別損失では前期計上した減損損失1億32百万円が一巡した。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)76億83百万円、第2四半期(6月~8月)80億53百万円、第3四半期(9月~11月)73億70百万円、営業利益は第1四半期2億69百万円、第2四半期3億64百万円、第3四半期1億14百万円だった。

■16年2月期通期は増収増益予想

 今期(16年2月期)通期の連結業績予想は前回予想(4月15日公表)を据え置いて、売上高が前期比5.0%増の281億50百万円、営業利益が同14.3%増の12億07百万円、経常利益が同13.2%増の12億43百万円、そして純利益が同39.3%増の7億01百万円としている。なお子会社化した県西中央青果の影響を織り込んでいない。配当予想(4月15日公表)は前期と同額の年間15円(期末一括)で予想配当性向は10.0%となる。

 キムチ製品や惣菜製品のブランド力向上、全国の製造・販売拠点を活用した営業活動、積極的な広告宣伝・販売促進活動、新製品開発・投入や他の食品メーカーとのコラボレーションなどの効果で、既存取引先への拡販や新規取引先の開拓が一段と進展する。増収効果に加えて、ピックルスコーポレーション札幌の収益性改善や、固定資産減損損失の一巡も寄与する。

 売上高の計画は、品目別には浅漬・キムチが同4.0%増の130億97百万円、惣菜が同13.2%増の58億円、ふる漬が同3.0%増の5億51百万円、漬物が同1.8%増の87億円としている。販路別には外食が同5.0%増の28億10百万円、コンビニが同5.0%増の45億93百万円、量販店・問屋が同5.0%増の207億46百万円としている。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が82.1%、営業利益が61.9%、経常利益が62.4%、純利益が78.9%である。営業利益と経常利益の進捗率がやや低水準の形だが、増収基調に変化はなく、原料野菜価格の落ち着きも期待される。

■漬物業界は大手による寡占化が進展、収益拡大基調

 漬物業界はコメの消費減少、食の多様化、少子高齢化などで市場の縮小が続いている。また家族経営など中小・零細企業も多いため、大手による寡占化が一段と進展すると予想される。

 こうした事業環境も背景として、主力の「ご飯がススム キムチ」シリーズのリニューアル、積極的な新製品の開発・投入、既存取引先への拡販や新規取引先の開拓、事業エリア拡大と供給能力増強、契約栽培拡大や6月の県西中央青果の子会社化などによる原料野菜の安定調達、原材料購買方法の見直しなどの戦略を着実に推進している。

 そして市場の規模が大きく、拡大基調の惣菜分野への事業展開を加速している。さらに、売上が想定以上に増加して生産能力が不足気味の関西・九州方面では、新工場建設も含めて能力増強投資を検討しているようだ。

 中期経営目標としては18年2月期の売上高330億円、営業利益13億円を掲げている。新工場立ち上げ時の創業負担なども考慮して利益は控えめな計画としているが、積極的な事業展開とブランド力向上効果で中期的に収益拡大基調だろう。

■安定株主作り進展

 14年11月実施のTOBによる自己株式取得によって、第1位株主の東海漬物の保有割合が27.20%に低下して親会社に該当しないこととなった。親会社の経営戦略の影響を受けずに、当社独自の経営判断で企業価値向上を図ることのできる体制を構築する。

 15年5月には第三者割当による自己株式処分(処分株式数34万2000株、処分価格1329円)を実施した。割当先は武蔵野銀行<8336>、三菱商事フードテック、味の素<2802>、高速<7504>など8社で、いずれも長期保有の方針としている。

 また安定株主作りの一環として、当社取引先が継続的かつ安定的に当社株式を取得することを目的に、ピックルスコーポレーション取引先持株会を設立して運営開始した。現在40社が参加し、今後さらに参加社数を増やす方針としている。

■株価は調整一巡感

 株価の動きを見ると、第3四半期累計の営業減益を嫌気し、さらに地合い悪化も影響して水準を切り下げた。ただし15年2月と8月の昨年来安値950円まで下押すことなく、1000円近辺で下げ渋る動きだ。調整が一巡したようだ。

 1月26日の終値1000円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS149円47銭で算出)は6~7倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間15円で算出)は1.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1394円19銭で算出)は0.7倍近辺である。時価総額は約64億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線を割り込んだが、1000円近辺が下値支持線の形だ。16年2月期第3四半期累計は営業減益だったが、通期は増収増益予想である。1桁台の予想PER、1倍割れ水準の実績PBRと指標面の割安感も強い。調整が一巡して出直り展開だろう。

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