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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】建設技術研究所は新たな事業フィールド開拓で初の本格的建築設計業務を受注
- 2016/1/29 07:45
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建設技術研究所<9621>(東1)は総合建設コンサルタントの大手で、中期成長戦略として新たな事業フィールドの開拓も推進している。15年11月には福島県で復興支援に係る商業施設建築・設備設計業務を受注した。当社にとって初の本格的な建築設計業務である。15年12月期増収増益予想で中期的にも事業環境は良好である。株価は地合い悪化も影響して14年2月以来の安値圏だが、0.7倍近辺の低PBRなど指標面の割安感が強い。調整が一巡して出直り展開だろう。
■総合建設コンサルタントの大手
総合建設コンサルタントの大手で河川・ダム・海岸・海洋、道路、橋梁、トンネル、都市・地方計画などの分野に強みを持っている。
13年9月に農業・農村関連ビジネスへの参入を視野に入れて子会社CTIフロンティアを立ち上げた。また14年4月には太陽光発電事業に着手した。
15年6月には環境総合リサーチ(旧ユニチカ環境技術センター)を完全子会社化した。土壌、大気、水質などさまざまな環境要素のモニタリング・解析が可能となり、当社グループの環境分野でのソリューション提供力のさらなる強化を目指すとしている。
15年11月には、スポンサー契約を締結(15年9月)していた民事再生手続中の日総建(東京都)が、新設分割による新会社としてスタートした。日総建の主力分野である建築設計と当社関連部門との連携による業務拡大が見込まれるとしている。
1月22日には、福島県富岡町の復興支援に係る商業施設建築・設備設計業務および工事発注準備支援業務の受注を発表した。当社にとって初の本格的な建築設計業務であり、入居する商業者の調整や大規模小売店舗立地法手続きなどの新たな分野を開拓する業務である。
■中期経営計画で18年連結受注高470億円目指す
15年5月にCTIグループ中長期ビジョン「CLAVIS2025」を策定し、さらに15年11月に「中期経営計画2018」を発表した。
グループの目指す方向は、幅広いインフラを対象としてあらゆるニーズに対応する「マルチインフラ企業」、世界に貢献するために海外業務をさらに拡大する「グローバル企業」であり、これを技術者と技術を経営資源とする「アクティブ企業」への推進によって実現するとしている。
「中期経営計画2018」では、CTIグループ中長期ビジョン「CLAVIS2025」の最初の3年間の計画として、今後のインフラ多様化および競合の激化に備え、企業体力を強化するとともに事業ドメインの拡大を図り、マルチインフラ&グローバル企業へ向けての基盤を築くことを基本的な考え方とした。
そして中長期ビジョン「CLAVIS2025」の目標(25年単体受注高400億円、連結受注高600億円)達成に向けて、15年11月発表「中期経営計画2018」では目標値として、18年の単体受注高350億円、連結受注高470億円、単体の営業利益率7.0%(営業利益24億円)、連結の営業利益率6.5%(営業利益30億円)を掲げた。株主還元については安定配当を維持する方針だ。
また「中期経営計画2018」における重点課題は、人材力向上戦略、経営・組織および生産の構造改革、受注シェアの戦略的拡大、新たな事業フィールドの開拓、品質および効率の向上としている。
■期前半の構成比が高い収益構造
なお14年12月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)100億06百万円、第2四半期(4月~6月)108億72百万円、第3四半期(7月~9月)92億80百万円、第4四半期(10月~12月)93億66百万円、営業利益は第1四半期10億22百万円、第2四半期8億85百万円、第3四半期3億76百万円、第4四半期1億05百万円だった。
期前半の構成比が高い収益構造だ。また14年12月期のROEは6.9%で13年12月期比2.2ポイント上昇、自己資本比率は53.1%で同4.2ポイント低下した。配当性向は17.1%だった。
■15年12月期第3四半期累計は営業減益だが受注は順調
前期(15年12月期)第3四半期累計(1月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比1.8%増の307億05百万円、営業利益が同4.5%減の21億81百万円、経常利益が同4.9%減の22億40百万円、純利益が同3.4%増の13億86百万円だった。受注高は同1.5%増の341億80百万円だった。
販管費の増加で営業減益だったが、技術力によって契約企業を選定するプロポーザル方式において優位性を発揮し、価格競争力も強化して受注は順調に推移している。なお売上総利益率は26.8%で同0.1ポイント低下、販管費比率は19.7%で同0.4ポイント上昇した。
四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)78億09百万円、第2四半期(4月~6月)137億37百万円、第3四半期(7月~9月)91億59百万円、営業利益は第1四半期1億92百万円、第2四半期15億05百万円、第3四半期4億84百万円だった。
■15年12月期通期は増収増益予想、配当予想を増額修正
前期(15年12月期)の連結業績予想(2月13日公表)は、売上高が前々期比3.7%増の410億円、営業利益が同4.6%増の25億円、経常利益が同3.0%増の26億円、純利益が同4.0%増の15億50百万円としている。
受注高は同0.9%減の400億円の計画としている。東日本大震災の復興関連業務の重点が設計段階から施工段階に移行することに加えて、財政再建のための公共工事発注減少も予想されるとして、やや慎重な見通しだ。
配当予想は11月19日に増額修正を発表し、前回予想(2月13日公表)に期末2円増額して年間20円(期末一括)とした。前々期との比較では2円増配となる。また予想配当性向は18.3%となる。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は、売上高が74.9%、営業利益が87.2%、経常利益が86.2%、純利益が89.4%だった。期前半の構成比が高い収益構造だが、通期ベースで増収増益が期待される。
■中期的に事業環境は良好
中期的に事業環境は良好である。20年東京夏季五輪関連、リニア新幹線関連など建設ビッグプロジェクトが目白押しであり、国土強靭化基本計画に沿って社会資本整備に対する計画的な投資が実行される。
防災・減災関連、老朽化インフラ補修・更新関連、都市再開発関連、アベノミクス重点戦略「地方創生」関連の案件が増加し、土木コンサルタント業務の積算に用いられる技術者単価や一般管理費の比率が上昇して採算改善も期待される。
中期的に良好な事業環境も背景に、CTIグループ中長期ビジョン「CLAVIS2025」で掲げた新分野・未参入分野・周辺分野・新業種等への事業領域拡大戦略も奏功して収益拡大が期待される。農業ビジネスへの参入でTPP(環太平洋パートナーシップ)関連としても注目される。
■株価は調整一巡して出直り
株価の動きを見ると、地合い悪化も影響して水準を切り下げ、1月21日には14年2月以来の安値となる973円まで調整した。その後は1000円台に戻して調整一巡感を強めている。
1月28日の終値1055円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS109円61銭で算出)は9~10倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は1.9%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS1539円79銭で算出)は0.7倍近辺である。時価総額は約149億円である。
週足チャートで見ると、1200円~1300円近辺でのモミ合いから下放れた形だが、直近安値圏の下ヒゲで調整一巡感を強めている。中期的に事業環境は良好であり、0.7倍近辺の低PBRなど指標面の割安感が強い。調整が一巡して出直り展開だろう。