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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本エンタープライズは16年5月期業績予想を減額修正して増益幅縮小だが、営業増益を維持
- 2016/1/29 07:38
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
日本エンタープライズ<4829>(東1)はコンテンツ制作・配信や店頭アフィリエイト広告ビジネスなどを展開している。クルーズからフリマアプリ「Dealing」サービスを譲り受けてEC分野にも参入した。1月8日に16年5月期業績の会社予想を減額修正して営業増益幅が縮小する見込みとなったが、営業増益は維持するする見込みだ。新規事業の寄与も期待される。株価は地合い悪化も影響して安値圏だが、調整が一巡して反発のタイミングだろう。
■コンテンツサービス事業とソリューション事業を展開
交通情報、ライフスタイル、電子書籍、ゲーム、メール、音楽などのコンテンツを制作してキャリアの定額制サービスで配信するコンテンツサービス事業と、店頭アフィリエイト(広告販売)や企業向けソリューション(システム受託開発)などのソリューション事業を展開している。
配信コンテンツを自社制作して「権利を自社保有する」ビジネスモデルを基本戦略としている。そしてアライアンスも活用して事業領域を広げ、ネイティブアプリや法人向け業務支援サービスを新たな収益柱に育成する方針だ。
■中国では携帯電話販売事業を展開、コンテンツ配信子会社への出資持分は売却
中国にも積極展開して、チャイナテレコムの携帯電話販売店運営や、電子コミック配信サービスなどを手掛けている。中国・上海の携帯電話販売事業については、キャリアの販売施策変更に影響されない収益構造構築を目指し、大口法人への営業強化、付属品販売強化、徹底的なコスト削減などの収益改善策を推進している。そして15年10月には中国向けサンリオキャラクター商品卸売事業を行う合弁子会社としてNE銀潤(当社出資比率51.0%)を設立した。
なお15年12月には、中国全土をカバーするコンテンツ配信ライセンスを保有する中国子会社の北京業主行網絡科技有限公司の出資金持分を売却した。05年12月に子会社化して中国の携帯通信事業者(チャイナモバイル、チャイナユニコム、チャイナテレコム)向けにモバイルコンテンツを配信してきたが、その後のコンテンツプラットフォームの多角化に伴って、ICPライセンス保有メリットが低下し、同社の損失計上が続いているため出資金持分の売却を決定した。
今後の中国における事業展開については、中国での経験やノウハウを活かして、携帯電話等販売事業(チャイナテレコムの携帯電話販売店2店舗の運営)、卸売をはじめとしたソリューション事業(銀潤控股集団有限公司に対するサンリオキャラクター商品の日本からの輸出など)、およびモバイルコンテンツ事業を積極的に展開するとしている。
■中期成長に向けてM&A・アライアンスも積極活用
ネイティブアプリの開発力強化、ゲームコンテンツ市場への本格参入、法人向け業務支援サービスの早期収益化など、中期成長に向けてM&A・アライアンスも積極活用している。
13年3月音声通信関連ソフトウェア開発のandOneを子会社化、14年4月子会社HighLabを設立、14年11月アプリ開発の会津ラボを子会社化、15年6月スマートコミュニティ事業および太陽光発電・販売の合弁子会社として山口再エネ・ファクトリーを設立、15年7月プロモートを子会社化した。
■ネイティブアプリと法人向け業務支援サービスを収益柱に育成方針
法人向け事業では14年8月、スマートフォンを活用して企業の内線電話網を構築するアプリケーション「AplosOneソフトフォン」を開発した。従業員のデスク上のビジネスフォン(固定電話)が不要となり、スマートフォンを内線電話として使用できるアプリケーションだ。また14年10月にはビジネス専用メッセンジャーアプリ「BizTalk」を発表した。
15年5月には子会社の会津ラボが、会津若松市「桜咲く会津プロジェクト実行委員会」が実施する「次世代型食品生産トライアル事業」へ、農作物の高品質化・高付加価値化を実現するアプリケーションならびにシステムを開発して提供すると発表した。ICTを活用してスマート農業を支援する。
15年6月には子会社HighLabが、新機能「お絵かき通話」搭載したスマートフォン向け無料チャットアプリ「Fivetalk」最新版を公開した。また15年6月にはIDCフロンティアとクラウド分野で業務提携してクラウド型統合運用監視サービス「プレミアクラウド」サービスを開始した。
15年8月には、千葉県が少子化対策事業の一環として県民を支援するために提供するスマートフォンアプリ「ちばMy Style Diary」を、千葉県からの委託を受けて開発・運用開始した。
15年9月には総合電子書籍サービス「BOOKSMART」PC版の提供を開始した。これまでスマホ・タブレット向けに提供してきたが、新たに未配信作品2万タイトルを追加投入してPC版サービスも開始する。また15年9月には子会社の会津ラボが、山口県周南市が運営する徳山動物園で、来園者を見たい動物の前まで道案内するナビゲーション「あるく動物ナビ」を開発し、サービス開始した。
15年11月には、静岡県下田市のスマートフォンを活用した妊娠・出産子育てを支援する住民サービス「子育て支援アプリ導入業務」の受託を発表した。16年春のサービス開始に向けて効率的な情報配信、住民と市の心地よいコミュニケーションを実現する子育て支援アプリを開発・運用する。
1月5日には、千葉県山武群横芝光町が地方創生に資する若年層の定住促進を目的として実施する「横芝光町情報発信アプリサービス開発業務」を受託したと発表している。16年春のサービス開始に向けて、行政と町民の情報共有を活発化し、地方創生を促進するアプリサービスを開発・運用する。
1月21日には、タニタのデュアルタイプ体組成計インナースキャンデュアルで計測した体重や体脂肪率などのバイタルデータを、ヘルスケアアプリ「女性のリズム手帳」へBluetoothを使用して自動転送・記録できるサービスを提供すると発表した。
■フリマアプリ譲り受けでEC分野に参入
15年12月には、クルーズ<2138>が運営するフリマアプリ「Dealing」サービスを譲り受けて、電子商取引(EC)分野に参入した。
競争激化するフリマアプリ市場へ初期投資を抑えながら短期間で参入できるとともに、当社が運営する300万DLを突破したヘルスケアアプリ「女性のリズム手帳」と「Dealing」を連携することで、あらゆるライフステージで女性の健やかな暮らしを支援するライフサポートプラットフォーム形成の促進が可能となる。
■15年5月期は販管費増加も影響
15年5月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(6月~8月)13億16百万円、第2四半期(9月~11月)11億98百万円、第3四半期(12月~2月)12億26百万円、第4四半期(3月~5月)13億76百万円、営業利益は第1四半期52百万円、第2四半期10百万円、第3四半期52百万円、第4四半期75百万円だった。
15年5月期はソリューション事業の売上が大幅に伸長したが、原価率の上昇や販管費の増加などで営業損益がやや低調だった。売上総利益率は47.1%で14年5月期比1.5ポイント低下、販管費比率は43.4%で同2.2ポイント上昇、ROEは3.8%で同7.1ポイント低下、自己資本比率は81.6%で同5.9ポイント上昇した。配当性向は64.8%だった。
■16年5月期第2四半期累計は増収減益
1月8日発表の今期(16年5月期)第2四半期累計(6月~11月)の連結業績は、売上高が前年同期比1.3%増の25億47百万円、営業利益が同29.8%減の43百万円、経常利益が同24.9%減の52百万円、純利益が同56.3%減の69百万円だった。
ソリューション事業が順調に拡大して増収だったが、ソリューション事業の増収に伴う売上総利益率の低下で減益だった。売上総利益率は45.7%で同2.5ポイント低下、販管費比率は43.9%で1.8ポイント低下した。販管費ではネイティブアプリへの広告投資抑制で広告宣伝費が減少した。なお特別利益では投資有価証券売却益が減少(前期は3億31百万円計上、今期は17百万円計上)した。
セグメント別に見ると、コンテンツサービス事業は売上高が同11.0%減の11億48百万円、営業利益(連結調整前)が同5.1%増の2億82百万円だった。キャリア定額制サービス向けが堅調だったが、月額課金サービス(特にフィーチャーフォン)が低調だった。分野別には交通情報が同9.5%減収、エンターテインメント(ゲーム)が同3.7%減収、ライフスタイルが同33.3%減収だった。
ソリューション事業は売上高が同14.3%増の13億99百万円、営業利益が同59.0%減の41百万円だった。売上面では広告(広告代理サービス)が前期第1四半期の特需の反動で同30.2%減収だったが、ソリューション(受託開発)が新規連結も寄与して同54.1%増収、海外が中国の端末販売の好調で同2.2倍増収だった。利益面ではソリューションの増収に伴って売上総利益率が低下した。
なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(6月~8月)13億19百万円、第2四半期(9月~11月)12億28百万円、営業利益は第1四半期57百万円、第2四半期14百万円の赤字だった。
■16年5月期通期業績予想を減額修正
今期(16年5月期)通期の連結業績予想について1月8日に減額修正した。前回予想(7月10日公表)に対して、売上高が8億60百万円減額して前期比2.4%増の52億40百万円、営業利益が2億40百万円減額して同10.7%増2億10百万円、経常利益が2億40百万円減額して同12.4%増の2億30百万円、純利益が50百万円減額して同21.2%減の1億40百万円とした。配当予想は前回予想(7月10日公表)を据え置き、前期と同額の年間3円(期末一括)としている。予想配当性向は87.0%となる。
コンテンツサービス事業においては、スマートフォン向け月額課金コンテンツのプロモーション抑制、定額制サービスの新規コンテンツ投入遅延、ソリューション事業においては一部大型案件が計画を下回ったことに加えて、広告ビジネス(店頭アフィリエイト)の協業先である携帯電話販売店での端末販売減少、キャリアオリジナルコンテンツとの競合などで、売上高が計画を大幅に下回り、各利益とも計画を大幅に下回る見込みだ。
なお業績予想減額修正に至った経営責任を明確にするため、1月8日に役員報酬の自主返上を発表している。代表取締役社長は月額報酬の10%、常務取締役は月額報酬の5%で、対象期間は16年1月~16年5月までとしている。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が48.6%、営業利益が20.9%、経常利益が23.0%、純利益が49.7%である。営業利益と経常利益の進捗率が低水準のため再減額に注意が必要となるが、受託開発事業の積極推進、地方創生に伴う事業領域の拡大、新規事業の創出加速に取り組むとしている。事業譲り受けた「フリマアプリ」なども寄与して下期の挽回を期待したい。
■株価は調整一巡して反発のタイミング
株価の動きを見ると、今期(16年5月期)業績予想の減額修正に地合い悪化も影響して水準を切り下げた。1月21日には13年10月以来の安値となる175円まで調整した。その後は190円近辺に戻して調整一巡感を強めている。
1月28日の終値188円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS3円45銭で算出)は54倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間3円で算出)は1.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS126円65銭で算出)は1.5倍近辺である。時価総額は約76億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえて調整局面だが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%程度と売られ過ぎ感の強い水準だ。調整が一巡して反発のタイミングだろう。