【アナリスト水田雅展の銘柄分析】テラスカイはクラウド分野のソリューション事業を展開、16年2月期業績予想増額

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 テラスカイ<3915>(東マ)はクラウド分野に特化して、システム導入コンサルティング・受託開発のソリューション事業を主力としている。15年12月には一般社団法人FinTech協会に加盟した。1月14日には16年2月期連結業績予想を増額修正した。株価は地合い悪化の影響を受ける場面があったが、中期成長力を評価して高値圏を目指す展開だろう。流動性向上に向けた株式分割期待も高まる。

■クラウド分野のシステム導入コンサルティング・受託開発が主力

 クラウド分野に特化して、企業向けクラウドシステム導入コンサルティング・受託開発のソリューション事業、および製品を開発・販売する製品事業を展開している。15年2月期の売上構成比はソリューション事業75%、製品事業25%だった。

 10年9月NTTソフトウェアと資本業務提携、12年8月米国カリフォルニア州に連結子会社TerraSky Incを設立、13年9月サーバーワークスと資本業務提携(持分法適用関連会社)、14年5月クラウドに特化したMSP事業(企業が保有するサーバやネットワークの運用・監視・保守などを請け負う事業)の連結子会社スカイ365を設立、14年10月米Salesforceと資本提携した。

 15年12月にはデロイト トウシュ トーマツ リミテッド(DTTL)のテクノロジー・メディア・テレコミュニケーション(TMT)業界の収益(売上高)に基づく成長率ランキング「第14回アジア太平洋地域テクノロジー Fast500」において、直近3決算期の成長率92%を記録して500位中469位を受賞した。また15年12月15日には一般社団法人FinTech協会に法人会員として加盟した。

■クラウド世界大手Salesforce関連の技術力に強み

 ソリューション事業では、Salesforceを中心としたシステムの導入・保守、業務コンサルティングや企業システムのグランドデザインなどシステムコンサルティングの提供、クラウドによるERPシステムの導入・開発・保守など、クラウドを活用した最適なシステム開発支援および受託開発を行っている。

 製品事業ではクラウドに特化したサービスおよび製品の開発・販売を行っている。Salesforceの画面を自由にユーザー自身でデザインできるSaaS型画面作成サービス「SkyVisualEditor」、クラウドサービス間や社内システムとのデータ連携をノンプログラミングで提供するシステム連携サービス「SkyOnDemand」、Salesforceに特化したシステム連携ソフトウェア「DCSpider」の開発・販売を中心として、Salesforceのライセンス販売や、クラウドシステムと親和性の高いサービスの紹介・仕入販売も行っている。

 クラウド世界大手の米Salesforceが主催する4つの認定資格の国内合格者が1番多く所属している(15年3月1日時点)という技術力が強みである。15年3月には日経BP社「クラウドランキング」パブリッククラウド導入支援サービス部門において6回連続でベストサービスに選出された。

 そしてクラウド世代のリーディングカンパニーとして業種業態を問わず豊富なクラウドサービス導入実績を誇り、15年12月にはSalesforce等クラウドサービスの導入実績が2000件を突破したと発表している。

 また15年12月には、当社が提供する企業向けカレンダーアプリコンポーネント「Multi-Vuew Calendar」のSalesforce組織へのダウンロード数が、提供開始から6ヶ月間で1000件を超え、SalesforceのアプリマーケットAppExchangeで最もダウンロードの多いコンポーネントになっていると発表した。

■中期成長に向けてクラウド業界における「パラダイムシフトの勝者」目指す

 中期成長に向けて、クラウド業界における「パラダイムシフトの勝者」を目指し、ハイブリッドクラウド事業への積極的投資、クラウドに特化したMSP(企業が保有するサーバやネットワークの運用・監視・保守などを請け負う事業)市場の確立、クラウドERP市場の創造と収益化、グローバルマーケットへの進出、IoTへの取り組みなどを推進している。

 ハイブリッドクラウド戦略では、各クラウドサービスの適材適所を組み合わせた「ハイブリッドクラウドソリューション」の提供を目的として戦略的提携を推進する。なお14年5月にはサーバーワークスと共同で、クラウドに特化した運用支援サービスを専業体制で提供する新会社スカイ365を設立した。

 15年8月にはNTTPCと連携して企業の生産性向上を支援するため、センサーデータと顧客データ(CRM)を掛け合わせたIoT利用を早期実現できるソリューションを提供すると発表した。なお両社はセールスフォース・ドットコム社が運営する「Salesforce1 IoT ジャンプスタートプログラム」に参加している。

 15年9月には、パスロジが開発・提供するトークンレス・ワンタイムパスワード「PassLogic」の提供を開始した。セキュリティに関して認証機能のニーズが高まっているため「PassLogic」を採用する。アマゾン・ウェブ・サービス上で提供することによって強力な認証機能を含めたすべてをクラウドで提供できるようになる。この提携によってクラウドの多様なセキュリティに関するニーズや「PassLogic」のクラウド利用ニーズに応えるとしている。

 また15年9月にはSalesforce Lightningに対応した画面やアプリケーションを手軽に作成できる世界初のクラウドサービス「SuPICE(スパイス)」を開発し、初期バージョンを15年12月から米国で提供開始した。日本国内向けは初期バージョンを改良して16年春提供開始するとしている。

 15年10月には米サービスマックス社と日本国内における初めての販売代理店契約を締結した。同社のフィールドサービス業務支援クラウドサービス「ServiceMax(サービスマックス)」の日本国内への販売および導入支援を行う。

 15年11月には16年5月施行の改正保険業法に対応した保険代理店向けソリューション「Insurance Agency Solution(IAS)」の提供を開始した。16年5月の保険業法改正に対応した保険代理店向けクラウドサービスである。

 1月14日にはIoT専業ソリューションベンダーであるエコモット(札幌市)に出資(実行日1月29日、出資比率3.6%)して資本・業務提携すると発表した。同社の有するIoTソリューションを当社のクラウドインテグレーションに組み込んで企画・販売する。そして今回の提携により、初年度20社(45百万円)、3年間で100社(2億25百万円)の売上を目指すとしている。

■16年2月期第3四半期累計は大幅増収増益

 1月14日に発表した今期(16年2月期)第3四半期累計(3月~11月)の連結業績は、売上高が前年同期比62.7%増の17億99百万円となり、営業利益が同2.8倍の1億69百万円、経常利益が同3.3倍の1億43百万円、そして純利益が75百万円(前年同期は1百万円の赤字)だった。

 ソリューション事業におけるクラウドシステム構築案件が好調に推移して大幅増収増益だった。当社製品の導入社数の増加や、保守運用子会社を通じた多角的クラウドサービスの展開も寄与して着実に顧客基盤を拡大した。売上総利益率は42.8%で同1.4ポイント低下、販管費比率は33.4%で同5.4ポイント低下した。営業外費用では持分法投資損失が拡大(前期は13百万円計上、今期は21百万円計上)し、株式交付費4百万円を計上した。

 セグメント別動向を見ると、ソリューション事業は売上高が同71.3%増の13億81百万円、営業利益(連結調整前)が同52.3%増の3億23百万円だった。大型案件の受注および受託開発・保守案件の件数が増加した。製品事業は売上高が同39.5%増の4億17百万円、営業利益が同3.8倍の1億36百万円だった。契約社数、契約金額が順調に増加した。

 なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)5億30百万円、第2四半期(6月~8月)5億60百万円、第3四半期(9月~11月)7億09百万円、営業利益は第1四半期42百万円、第2四半期26百万円、第3四半期1億01百万円だった。四半期ベースでも増収基調だ。

■16年2月期予想を増額して大幅増収増益

 今期(16年2月期)通期の連結業績予想については、1月14日に増額修正を発表した。前回予想(4月30日公表)に対して、売上高は96百万円増額して前期比46.4%増の24億円、営業利益は60百万円増額して同56.4%増の2億52百万円、経常利益は60百万円増額して同52.7%増の2億36百万円、純利益は29百万円増額して同69.1%増の1億22百万円としている。配当予想は無配継続としている。

 クラウド市場の拡大も背景として、主力事業であるクラウドインテグレーションの新規契約獲得や、これに伴う自社製品販売が計画以上に好調のようだ。ソリューション事業では大企業向けシステム開発案件を中心に10百万円超の大型案件が増加し、製品事業ではSalesforceの利用拡大に伴って当社製品の利用が拡大することも寄与する。

 売上原価ではシステム開発および製品開発に伴う労務費・外注費の増加、販管費および営業外費用では人件費の増加、事務所移転に伴う賃借料の増加、株式公開費用の発生があるが、増収効果で吸収する。修正後の通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が75.0%、営業利益が67.1%、経常利益が60.6%、純利益が61.5%である。通期ベースでも好業績が期待される。

■クラウドサービス市場は拡大基調

 総務省「平成25年版情報通信白書」によると、法人向けクラウドサービスの世界市場規模は10年の約410億ドルから16年には約1080億ドルに成長すると予測されている。

 またMM総研「国内クラウドサービス需要動向」によると、15年度の市場規模は13年度比2.9倍の1兆8000億円規模に拡大すると予測している。クラウド市場の成長も追い風として中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は調整一巡して切り返し

 株価の動きを見ると、地合い悪化の影響で水準を切り下げる場面があったが、1月21日の直近安値1万1790円から切り返す動きだ。29日には1万4430円まで上伸した。調整が一巡して好業績を見直す動きのようだ。

 1月29日の終値1万4420円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS89円09銭で算出)は162倍近辺、実績PBR(16年2月期第1四半期末の連結BPS574円34銭で算出)は25倍近辺である。時価総額は約203億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線突破の動きを強めている。直近安値圏の下ヒゲで調整が一巡したようだ。流動性向上に向けた株式分割期待もあり、中期成長力を評価して高値圏を目指す展開だろう。

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