【アナリスト水田雅展の銘柄分析】寿スピリッツの16年3月期第3四半期累計は大幅増益で高進捗率、通期再増額が濃厚

寿スピリッツ 2222

 寿スピリッツ<2222>(東1)は「お菓子の総合プロデューサー」を企業ビジョンに掲げて地域限定ブランド菓子の製造・販売を展開し、首都圏エリアでのブランド展開も強化している。2月1日発表の16年3月期第3四半期累計連結業績は大幅増益で、通期予想に対する進捗率も高水準だった。過去最高更新の通期業績予想は再増額が濃厚だろう。インバウンド消費関連、地方創生関連も注目点となる。株価は好業績を評価して高値を更新している。上値追いの展開だろう。

■地域限定ブランド菓子を製造・販売

 地域事業会社を傘下に置いて、地域限定ブランド菓子の製造・販売を主力としている。駅・空港・高速道路SAなど交通機関チャネルでの土産品としての販売比率が高いことも特徴であり、国内旅行客の増加や訪日外国人旅行客のインバウンド消費も追い風となる。

 主要子会社は、山陰地区中心に「お菓子の壽城」「ラングドシャ」ブランドなどを展開する寿製菓、北海道中心に「ルタオ」ブランドを展開するケイシイシイ、首都圏中心に「東京ミルクチーズ工場」「ザ・メープルマニア」など洋菓子を展開するシュクレイ、九州中心に「赤い風船」ブランドを展開する九十九島グループ、関西中心に「遊月亭」ブランドを展開する但馬寿、そして販売子会社(東海地区3社、中国・九州地区4社、関西地区2社)である。

 15年3月期の販売チャンネル別売上構成比は、卸売(駅・空港・高速道路SAなどの小売店、代理店卸、OEMなど)46.7%、店舗販売(直営店舗、催事など)42.6%、通信販売10.6%(うちルタオ通販が9.0%)、その他0.1%だった。

 16年1月には、但馬寿の菓子製造部門の全部および販売部門のうちグループ向け卸営業に関する事業を、会社分割によって寿製菓に承継した(15年11月公表)。経営資源を集約して経営効率の向上を図る。

 また16年1月には、明治ホールディングス<2269>グループのフランセの全株式を譲り受けて子会社化(15年12月公表)した。フランセはミルフィユをはじめとする洋菓子類の製造・販売を行い、地盤の神奈川県および関東を中心に全国で店舗展開している。重点施策として掲げる関東圏での展開強化および強固な経営基盤構築に寄与するとしている。

■企業ビジョンは「お菓子の総合プロデューサー」

 全国各地のお菓子のオリジナルブランドとショップブランドを創造する「お菓子の総合プロデューサー」を企業ビジョンに掲げ、製造卸から製造小売に事業モデルを転換して高収益化を推進している。

 さらに「ワールド サプライジング リゾート(WSR)宣言」を経営スローガンとして掲げて、中期経営目標の指標を売上高経常利益率20%としている。

 重点施策として、プレミアム・スイーツブランドの創出と育成(地域・チャンネル特性にマッチした商品開発推進、主力商品のリニューアルによるバージョンアップと価格改定、販路開拓やリアル店舗と通販の融合、新業態店事業の拡大)、インバウンド対策の強化(国内主要国際空港における免税売店等への販売強化、直営店舗での免税対応強化)、首都圏でのWSR化展開の推進(シュクレイのブランド力向上、フレンチトースト専門店「Ivorish(アイボリッシュ)」など新ブランドの確立)、海外展開、生産性向上による製造採算改善などを推進している。

 15年7月にはケイシイシイが東京・表参道で人気のアントルメグラッセ・生グラス専門店GLACIEL(グラッシェル)をリニューアルオープンした。15年10月には九十九島グループが、ららぽーと海老名(神奈川県)に人気のフレンチトースト専門店「Ivorish海老名」をオープンした。福岡、東京・渋谷に続く3店舗目で、大型ショッピングモールへの初出店となる。

 15年12月には九十九島グループが、JR博多駅の商業施設「マイング」リニューアルに伴って「赤い風船マイング店」を増床リニューアルオープンした。土産菓子を提供するとともに、新しい試みとして赤い風船が手掛ける新たなチーズケーキ専門ブランドを展開する。

 海外展開については、台湾は直接進出、韓国はフランチャイズ方式で進出する方針だ。またシュクレイが香港・ハンドメイド社との共同出資で香港に合弁会社ハニーシュクレイを設立し、15年12月から香港で「東京ミルク工場」を展開している。

 なお当面の重点施策の数値目標としては、18年3月期に国内主要国際空港でのインバウンド売上25億円(16年3月期予想6億円)、海外売上15億円(同4億60百万円)、首都圏主要売上(シュクレイ、アイボリッシュ、グラッシェル)60億円(同36億40百万円)の合計100億円(同47億円)を掲げている。

 健康食品事業については再構築に向けて、藍染めで知られる「タデ藍」を使用した機能性食品の企画販売を行う新会社の純藍を14年9月設立した。第一弾製品として「藍の青汁」を開発し、50代~70代女性をメインターゲットに、野菜不足を補うアンチエイジング飲料として15年1月販売開始した。一方で通販基幹業務システムサービス事業のジュテックスについては事業中止に伴って14年12月解散した。

■クリスマス・年末年始需要などで第3四半期の構成が高い収益構造

 15年3月期業績の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)50億01百万円、第2四半期(7月~9月)58億89百万円、第3四半期(10月~12月)62億75百万円、第4四半期(1月~3月)58億02百万円、営業利益は第1四半期2億02百万円、第2四半期5億10百万円、第3四半期8億66百万円、第4四半期4億55百万円だった。

 クリスマス・年末年始需要などで第3四半期の構成比が高い収益構造だ。15年3月期の売上総利益率は53.2%で14年3月期比0.1ポイント低下、販管費比率は44.3%で1.2ポイント上昇、ROEは15.3%で同1.6ポイント低下、自己資本比率は61.1%で同5.8ポイント上昇した。配当性向は31.8%だった。

■16年3月期第3四半期累計は大幅増益

 今期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比11.1%増の190億78百万円で、営業利益が同53.9%増の24億28百万円、経常利益が同54.1%増の24億63百万円、純利益が同79.0%増の16億86百万円だった。売上、利益とも第3四半期累計として過去最高を更新した。

 シュクレイを中心とする首都圏エリアでの販売強化、駅・空港でのインバウンド対応強化、商品のプレミアム化など積極的な事業展開で大幅増収増益だった。利益面では製造採算の改善や経費の効率的使用なども寄与した。売上総利益率は54.8%で同2.1ポイント上昇、販管費比率は42.1%で同1.4ポイント低下した。

 セグメント別の売上高(連結調整前)はケイシイシイが同7.7%増の63億58百万円、寿製菓が同9.8%増の65億67百万円、販売子会社が同10.6%増の37億62百万円、九十九島グループが同4.4%増の27億03百万円、但馬寿が同0.1%減の8億09百万円、シュクレイが同33.6%増の27億60百万円、その他が同8.4倍の1億68百万円だった。積極的なイベント・販売展開や「ザ・メープルマニア」などのブランド知名度向上効果で特にシュクレイが躍進した。その他は台湾の子会社を新規連結した。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)55億42百万円、第2四半期(7月~9月)65億68百万円、第3四半期(10月~12月)69億68百万円、営業利益は第1四半期3億49百万円、第2四半期9億31百万円、第3四半期11億48百万円だった。

■16年3月期通期は大幅増益予想で再増額が濃厚

 今期(16年3月期)通期の連結業績予想については、前回予想(10月26日に増額修正)を据え置いて、売上高が前期比6.9%増の245億60百万円、営業利益が同31.5%増の26億75百万円、経常利益が同30.5%増の27億円、純利益が同43.3%増の18億70百万円としている。配当予想(5月13日公表)は前期と同額の年間40円(期末一括)で予想配当性向は22.2%となる。

 出雲大社・伊勢神宮の遷宮特需反動影響の一巡に加えて、シュクレイを中心とする首都圏エリアでの販売強化、駅・空港でのインバウンド対応強化、商品のプレミアム化など重点施策の積極展開、さらに製造採算の改善や経費の効率的使用も寄与して最高益更新予想だ。売上総利益率は54.4%で同1.2ポイント上昇、販管費比率は43.5%で同0.8ポイント低下を想定している。

 セグメント別売上高(連結調整前)の計画は、ケイシイシイが同3.7%増の86億39百万円、寿製菓が同6.3%増の79億56百万円、販売子会社が同6.2%増の47億08百万円、九十九島グループが同5.4%増の35億94百万円、但馬寿が同0.7%増の10億05百万円、シュクレイが同22.8%増の34億31百万円、その他が同9.4倍の2億46百万円としている。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は、売上高が77.7%、営業利益が90.8%、経常利益が91.2%、純利益が90.2%である。クリスマス・年末年始需要などで第3四半期の構成比が高い収益構造であることを考慮しても高水準である。通期業績予想は再増額が濃厚だろう。

 中期的にも、首都圏を中心とする新業態店の知名度・ブランド力向上、新商品の開発・投入の加速、販促・接客強化による消費者への訴求力向上、製造採算改善などの効果が期待される。訪日外国人旅行客のインバウンド消費増加や、アベノミクス重点戦略の「地方創生」も追い風となって収益拡大基調だろう。

■毎年3月末に株主優待

 株主優待制度は毎年3月末現在の株主に対して実施している。100株以上所有の全ての株主に対して2000円相当の自社グループ製品、200株以上所有の全ての株主に対して4000円相当の自社グループ製品を贈呈し、さらに1000株以上所有株主に対して3000円分のグループ直営店舗優待券(優待券の代わりに指定商品への交換も可)を贈呈する。

■株価は高値更新の展開

 株価の動きを見ると、地合い悪化の影響で1月21日に4240円まで調整する場面があったが、素早く切り返して高値更新の展開となった。2月1日には5770円まで上伸した。好業績や中期成長力を評価する流れに変化はないだろう。

 2月1日の終値5670円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS180円27銭で算出)は31~32倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間40円で算出)は0.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS865円60銭で算出)は6.6倍近辺である。なお時価総額は約588億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線近辺から切り返して高値を更新した。サポートラインを確認して上昇トレンドを維持している。過去最高更新予想の16年3月期連結業績予想は再増額が濃厚であり、インバウンド消費関連、地方創生関連も注目点となる。上値追いの展開だろう。

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