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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】エストラストは2月期末の配当・株主優待に注目、日銀のマイナス金利も追い風
- 2016/2/2 07:21
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
エストラスト<3280>(東1)は山口県および福岡県を地盤とする不動産デベロッパーである。16年2月期はプロジェクト先行費用なども考慮して営業微減益予想だが、成長市場である九州主要都市への展開を加速し、17年2月期は増収増益基調が予想される。さらにアベノミクス「地方創生」や日銀のマイナス金利も追い風となって中期成長が期待される。株価は株主優待制度導入を好感して急反発した。指標面には依然として割安感があり、2月期末の配当・株主優待も注目点となって出直り展開だろう。
■山口県・福岡県を地盤とする不動産デベロッパー
山口県および福岡県を地盤とする不動産デベロッパーである。一次取得ファミリー型の新築分譲マンション「オーヴィジョン」シリーズ、およびハイクオリティ・ミドルプライスの新築戸建住宅「オーヴィジョンホーム」の不動産分譲事業を主力に、不動産賃貸事業、そして「オーヴィジョン」マンション管理受託の不動産管理事業(連結子会社トラストコミュニティ)も展開している。
15年2月期末時点で分譲マンション供給数は累計68棟・3389戸となった。14年のマンション販売実績は九州・山口エリアで5位、山口県では1位(13年に続いて2年連続)である。
成長市場である九州主要都市への展開を推進し、特に重点エリアとしている福岡県での事業展開加速に向けて、13年6月に第三者割当増資によって、ふくおかフィナンシャルグループ<8354>傘下の福岡銀行との関係を強化している。また14年3月には山口県内最大のオフィス街に立地する下関第一生命ビルディング(山口県下関市)を取得して、不動産賃貸事業の収益基盤を強化した。
■引き渡し物件数によって四半期収益は変動
15年2月期の四半期業績推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)3億60百万円、第2四半期(6月~8月)48億84百万円、第3四半期(9月~11月)49億65百万円、第4四半期(12月~2月)17億32百万円、営業利益は第1四半期2億12百万円の赤字、第2四半期6億50百万円、第3四半期7億32百万円、第4四半期8百万円だった。
引き渡し物件数によって四半期収益が変動する構造だ。15年2月期の売上総利益率は20.9%で14年2月期比1.7ポイント低下、販管費比率は11.0%で同2.1ポイント低下、ROEは21.3%で同8.7ポイント低下、自己資本比率は28.5%で同6.3ポイント上昇した。配当性向は9.6%だった。
なお15年1月に「オーヴィジョン下関海峡テラス」「オーヴィジョン広島パークサイド」「オーヴィジョン飯塚本町」の各プロジェクト、15年4月に「オーヴィジョン新下関駅南」プロジェクト、15年5月に「オーヴィジョン新山口駅ネクシア」「オーヴィジョン青山グランテラス」の各プロジェクト、15年6月に「オーヴィジョン舞鶴」プロジェクト、15年8月に「オーヴィジョン防府駅天神口」プロジェクト、そして15年11月には「オーヴィジョン西小倉」プロジェクトが始動している。
■16年2月期第3四半期累計は引き渡し減少で減収減益
今期(16年2月期)第3四半期累計(3月~11月)の連結業績は、売上高が前年同期比4.1%減の97億87百万円で、営業利益が同17.3%減の9億67百万円、経常利益が同14.4%減の8億36百万円、純利益が同12.6%減の5億26百万円だった。
分譲マンション引き渡し戸数の減少、分譲マンションの建設費上昇、新規分譲マンション販売開始に伴う販売費増加などで減収減益だった。売上総利益率は20.8%で同0.7ポイント低下、販管費比率は10.9%で同0.9ポイント上昇した。販管費では人員増に伴って人件費が増加した。営業外費用では前期に計上した固定資産除売却損や、東証1部への市場変更費用が一巡した。
不動産分譲事業における引き渡し戸数は、分譲マンションが「オーヴィジョン照葉アクアテラス」(福岡市、112戸)など4物件287戸(前年同期比91戸減少)、分譲戸建が27戸(同5戸増加)、合計が314戸(同86戸減少)だった。また分譲マンション開発目的で取得した不動産を売却した。
セグメント別売上高は、不動産分譲事業が同4.2%減の94億19百万円、不動産管理事業が同6.0%減の2億11百万円、不動産賃貸事業が同5.3%増の1億48百万円、その他(不動産仲介など)が同2.8%減の8百万円だった。不動産管理事業では、マンション管理戸数が2354戸(同265戸増加)と順調に増加したが、不動産分譲事業の引き渡しに伴うインテリア販売などが減少した。
なお四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)17億01百万円、第2四半期(6月~8月)45億10百万円、第3四半期(9月~11月)35億76百万円、営業利益は第1四半期2億32百万円、第2四半期3億52百万円、第3四半期3億83百万円だった。
■16年2月期は営業微減益予想だが、17年2月期は増収増益基調
今期(16年2月期)通期の連結業績予想は前回予想(4月9日公表)を据え置いて、売上高が前期比9.7%増の131億円、営業利益が同3.3%減の11億40百万円、経常利益が同1.7%増の9億70百万円、純利益が同2.4%増の6億円としている。
不動産分譲事業における通期引き渡し予定戸数は、分譲マンションが同59戸減少の370戸、分譲戸建が同29戸増加の65戸としている。分譲マンション引き渡し戸数の減少、分譲マンション建設費の上昇、プロジェクト先行費用などで営業微減益予想だ。
売上高の計画は、マンション分譲が同3.4%増の108億78百万円、戸建が同84.6%増の17億20百万円である。売上総利益率は20.4%で同0.5ポイント低下、販管費比率は11.7%で同0.7ポイント上昇の想定としている。
配当予想は年間8円(第2四半期末4円、期末4円)としている。予想配当性向は8.2%となる。前期比2円減配の形だが、前期の年間10円には第2四半期末の市場変更記念配当2円を含んでいるため、普通配当ベースでは前期と同額である。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が74.7%、営業利益が84.8%、経常利益が86.2%、純利益が87.7%である。引き渡し物件によって四半期収益が変動する構造のため進捗率は参考程度だが、第3四半期累計の分譲マンション引き渡し戸数287戸は、通期引き渡し予定戸数370戸に対して進捗率が77.6%であることを考慮すれば、概ね順調な水準と言えるだろう。
16年2月期は営業微減益予想だが、第3四半期累計末時点の契約残高は前年同期比78戸増加の318戸(金額ベースでは同38.3%増の82億58百万円)と高水準である。不動産管理事業の管理戸数増加や不動産賃貸事業のポートフォリオ充実も寄与して、17年2月期は増収増益基調が予想される。
■九州・山口エリアでのNO.1デベロッパーを目指す
中期経営計画では九州・山口エリアでのNO.1デベロッパーを目指し、福岡県および九州主要都市への進出加速、九州・山口エリアでのマンション年間供給500戸体制構築、山口県での戸建住宅年間供給100戸体制の構築、ストック型ビジネスとなる不動産管理事業でのマンション管理戸数拡大、不動産賃貸事業での収益物件長期保有による収益基盤強化などを推進している。
経営目標値としては、16年2月期の新築分譲マンション引き渡し戸数494戸、売上高130億円、営業利益12億50百万円、経常利益12億円、純利益7億20百万円を掲げている。
16年2月期業績の会社予想では、分譲マンション引き渡し戸数および利益が計画未達成の形となるが、約3年分の供給物件(事業用地取得済プロジェクト17棟、計画戸数1186戸、総売上高305億円、および分譲開始プロジェクト6棟、分譲中プロジェクト488戸、分譲中売上高124億円)を確保済みである。中期成長シナリオに変化はないだろう。
事業展開の重点エリアとしている福岡市では、国家戦略特区に指定されたことも背景として一段と人口増加傾向を強めることが予想される。アベノミクス重点戦略「地方創生」も追い風だ。成長市場への事業展開を加速して中期的に収益拡大基調が期待される。
■株主優待制度を導入して積極還元
1月8日には株主優待制度の導入を発表した。毎年2月末日現在の1単元(100株)以上保有株主に対してクオカード2000円分を贈呈する。16年2月末日時点の株主を対象に開始する。
■株価は急反発して戻り歩調
株価の動きを見ると、上場来安値圏500円~550円近辺でモミ合う展開だったが、株主優待制度増入を好感して急反発した。1月18日の戻り高値668円から利益確定売りで1月21日の566円まで一旦反落したが、2月1日には650円まで上伸した。日銀のマイナス金利導入も好感して戻り歩調の展開だ。
2月1日の終値650円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS97円29銭で算出)は6~7倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は1.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS551円06銭で算出)は1.2倍近辺である。時価総額は約40億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインの形となった。また週足チャートで見ると13週移動平均線が26週移動平均線を上抜いた。強基調への転換を確認した形だろう。指標面には依然として割安感があり、2月期末の配当・株主優待も注目点となって出直り展開だろう。