「株高の好循環」でも「株安の悪循環」でも硬軟両様で「訳あり銘柄」の「訳あり高」にはアプローチ余地=浅妻昭治
- 2016/2/15 08:57
- 編集長の視点
<マーケットセンサー>
また厳しく難しく、悩ましい1週間が始まる。ただ今週は、前週までとは違う難しさ、悩ましさとなるかもしれない。というのも、前週末にニューヨーク(NY)・ダウ工業株平均が、313ドル高と6営業日ぶりに反発した米国市場が、プレジデントデーの祝日のために休場になる一方、春節(旧正月)明けで中国・上海市場が、1週間ぶりに取引再開となるためだ。欧州市場の株高を受けて米国株が上昇して折角、「株高の好循環」入りを予感させたが、取引再開の上海市場がこれをさらに欧州市場に引き継ぎ、「株高の好循環」の2回り目に入るか、それともまたも上海市場を震源地に「株安の悪循環」に舞い戻ってしまうか不透明だからだ。
しかも、NY市場と上海市場の間に挟まった東京市場では、週明け15日の寄り付き前に昨年10-12月期のGDP(国内総生産)実質成長率の発表が予定されている。事前の市場予想では、2期ぶりのマイナス成長となっており、このマイナス幅が市場予想を上回るのか下回るのか、その場合にそれでも年初来の株価急落で織り込み済みとなるのかは、悪材料出尽くしと評価してくれるのか、為替相場は円高、円安のいずれで反応するのかなどなど、株価にポジティブかネガティブかこのコラム執筆時には読み切れない。東京市場が、「株高の好循環」のサポーターとなるか、「株安の悪循環」のファクターとなるか、いわば出合い頭の出た所勝負を余儀なくされる。
さらに東京市場では、3月期決算会社の今3月期4~12月期(第3四半期、3Q)決算の発表が、前週末でほぼ終了した。日経平均株価は、昨年2015年大納会終値から前週末12日の取引時間中の安値まで4167円安、21%超の暴落をしたが、そのなかでも逆行高した銘柄は、3Q決算開示に合わせて3月通期業績を上方修正した銘柄や増配銘柄、自己株式取得を発表した銘柄が中心であった。現に前週末12日は、東証第1部の値下がり銘柄は、全体の約97%の1877銘柄に達し、値上がり銘柄は、わずか53銘柄にとどまったが、この値上がり率ランキングの上位にランクインした銘柄は、2月10日に12月期決算とともに株主優待制度の拡充を発表してランキング・トップとなったすかいらーく<3197>(東1)を筆頭に、3月通期業績の上方修正、増配、自己株式取得などを発表した銘柄で占められた。
今週は、こうしたファンダメンタルズを評価して逆行高する銘柄が一巡するのである。しかも「株高の好循環」が続くのか、「株安の悪循環」に舞い戻るのかも不透明である。そこでどちらに転んでも逆行高展開を期待して注目したいのが「訳あり銘柄」である。例えば2月10日の値上がり率ランキングの上位銘柄に仲間入りした銘柄に神戸物産<3038>(東1)とワタミ<7522>(東1)、京セラ<6971>(東1)があるが、これが「訳あり銘柄」である。神戸物産は、2月9日にインサイダー取引疑惑が報道されて、事と次第によっては上場廃止も懸念されて2日連続のストップを交えて昨年来安値まで急落したが、下げ過ぎとして底上げした。またワタミも、かつてブラック企業として業績も低迷、株価的にも毛嫌いされたが、今3月期3Q業績に介護子会社売却の特別利益約151億円計上を発表して値上がり率ランキングの上位に浮上した。さらに京セラは、今年1月29日に今3月期業績の2回目の下方修正を発表して昨年来安値まで売られたが、KDDI<9433>(東1)が実施する自己株式取得に同社が保有株の売却で対応することを手掛かりに底上げに転じたのである。
要するに3銘柄とも「少々」か「大いに」かは問題だが「難あり」銘柄であることは間違いなく、株価急落でその「向こう傷」を織り込んだとすれば、「訳」に対応してあとは底上げする展開が想定されるはずだ。とくに京セラは、前週末の米国市場でADR(米預託証券)が続伸した追う風を吹いており、同社株をリード役に「好循環」、「悪循環」のいずれにも対応する「訳あり銘柄」にアプローチする硬軟両様の投資スタンスも一考余地があることになる。(本紙編集長・浅妻昭治)