- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 【アナリスト水田雅展の銘柄診断】ソフトクリエイトHDは16年3月期増収増益基調、積極還元姿勢も評価
【アナリスト水田雅展の銘柄診断】ソフトクリエイトHDは16年3月期増収増益基調、積極還元姿勢も評価
- 2016/2/17 06:26
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ソフトクリエイトホールディングス<3371>(東1)はECサイト構築ソフトや不正接続防止製品を主力としてソリューション事業を強化している。16年3月期第3四半期累計は営業減益だったが、第4四半期の構成比が高い収益構造で通期増収増益基調に変化はないだろう。株価は地合い悪化も影響して一気に13年10月以来の安値水準まで急落したが、売られ過ぎ感を強めて切り返す動きだ。株主優待制度や継続的な自己株式取得といった積極還元姿勢も評価して出直り展開だろう。EC(電子商取引)関連やサイバーセキュリティ関連のテーマ性も注目点だ。
■ECサイト構築ソフトと不正接続防止製品で首位
ECソリューション事業(ECサイト構築パッケージソフト「ecbeing」の販売・保守から、ECサイト構築・運用支援、データセンターでのホスティングサービス提供、ECプロモーション提供までの総合サービス)を主力として、SI事業(自社グループ開発ソフトの販売、基幹系システムの受託開発)、物品販売事業(法人向けIT機器販売など)も展開している。
顧客のEC事業立ち上げ時の戦略コンサルティングから、ECサイト構築パッケージソフト「ecbeing」の販売・カスタマイズ・保守、ECサイト構築・運用支援、さらにリスティング広告・SEO対策などのプロモーションサービスまで、総合的なサービスを提供していることが強みだ。
ECサイト構築実績は中堅・大手優良企業向けを中心に、国内断トツ首位の800社以上に達している。そしてECサイト構築実績の積み上げに伴う運用支援・保守などストック型収益が拡大基調である。
15年11月には、05年11月販売開始した社内ネットワークへの不正接続を検知するセキュリティ製品「L2Blocker」が、富士キメラ総研「富士マーケティング・レポート・情報漏洩対策需要に湧く不正接続防止ツール市場」において、不正接続防止ツール市場における累計導入社数で第1位を獲得したと発表している。なお同レポートでは、不正接続防止ツール市場の導入社数は13年4400社、14年4700社から、19年5600社に増加すると予測している。
■中期成長戦略でeビジネス総合デベロッパー目指す
中期成長戦略としては、単なるECシステム提供企業からeビジネス総合デベロッパーへの発展を目指してソリューション事業を強化している。またインターネット広告や運用支援などデジタルマーケティング市場にも積極展開してビジネス領域を拡大している。
アライアンス戦略では13年5月に日本ユニシス<8056>と資本・業務提携、13年9月に東芝テック<6588>と業務提携した。
15年5月には子会社ソフトクリエイトが、サイボウズ<4776>の「CYBOZU AWARD 2015」において「セールスアドバイザ・オブ・ザ・イヤー」を受賞したと発表した。本アワードは年間を通じてサイボウズ製品の提案・営業活動で際立った実績を残したSA認定者に贈られる。
15年7月には子会社ソフトクリエイトが、Windows Serverのディレクトリ・サービス「Active Directory」をクラウドスタイルで提供する「SCCore Directory」のサービスを開始した。
15年10月には子会社ソフトクリエイトがクラウドサービス分野で、アルテリア・ネットワークス社(東京都)の「VECTANTクローズドIPネットワーク」の販売を開始した。同社の閉域網サービス「VECTANT」で企業向け専用の閉域IPバックボーンを介したセキュアで高品質なネットワークを提供するとしている。
15年11月には子会社ソフトクリエイトが、情報セキュリティ専門のコンサルティング会社グローバルセキュリティエキスパート(東京都)と、セキュリティ分野において戦略的協業を推進することで合意した。多様化するサイバー攻撃やマルウェア対策に備えるためセキュリティ・ソリューションを強化する。
■第4四半期の構成比が高い収益構造
15年3月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)27億22百万円、第2四半期(7月~9月)30億89百万円、第3四半期(10月~12月)28億17百万円、第4四半期(1月~3月)33億11百万円、営業利益は第1四半期2億81百万円、第2四半期3億86百万円、第3四半期3億51百万円、第4四半期4億48百万円だった。
システム構築関連で第4四半期の構成比が高い収益構造だ。15年3月期の売上総利益率は30.7%で14年3月期比0.4ポイント上昇、販管費比率は18.4%で同0.3ポイント上昇、ROEは15.4%で同1.2ポイント上昇、自己資本比率は15.4%で同2.6ポイント上昇した。配当性向は28.7%だった。
■16年3月期第3四半期累計は営業減益
1月29日発表の今期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)連結業績は、売上高が前年同期比0.2%増の86億45百万円、営業利益が同9.9%減の9億16百万円、経常利益が同4.4%減の10億30百万円、純利益が同8.3%増の7億21百万円だった。
販管費の増加などで営業減益だったが、ECサイト構築パッケージソフト「ecbeing」を活用したECソリューション事業、セキュリティビジネス、独自サービス「SCクラウド」など主力事業が概ね順調に推移した。売上総利益率は30.6%で同0.3ポイント低下、販管費比率は20.0%で同0.9ポイント上昇した。営業外では受取利息、受取配当金、持分法投資利益が増加した。特別利益では投資有価証券売却益が増加(前期は25百万円計上、今期1億46百万円計上)し、特別損失には特別退職金31百万円、和解金45百万円を計上した。
セグメント別に見ると、ECソリューション事業は売上高が同微増の41億97百万円で、経常利益(連結調整前)が同17.5%増の9億97百万円だった。システムインテグレーション事業は売上高が同0.9%増の11億75百万円で、営業利益が同28.3%減の4億70百万円だった。物品販売事業は売上高が同0.1%減の26億21百万円で、営業利益が同52.5%減の21百万円だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)28億円、第2四半期(7月~9月)30億03百万円、第3四半期(10月~12月)28億42百万円、営業利益は第1四半期2億94百万円、第2四半期3億25百万円、第3四半期2億97百万円だった。
■16年3月期通期は増収増益予想
今期(16年3月期)通期連結業績予想は、前回予想(5月8日公表)を据え置いて売上高が前期比1.0%増の120億60百万円、営業利益が同1.3%増の14億85百万円、経常利益が同1.0%増の15億40百万円、純利益が同2.0%増の9億60百万円としている。配当予想も前回予想を据え置いて、前期と同額の年間20円(第2四半期末10円、期末10円)としている。予想配当性向は28.1%となる。
ECソリューション事業では、中堅・大手優良企業のECサイト構築需要の増加に伴って、ECサイト構築パッケージソフト「ecbeing」の販売・カスタマイズ・保守が好調に推移する。ECサイト累計構築数は増加基調のためストック型収益も拡大基調だ。ネット広告需要の増加でデジタルマーケティングビジネスの拡大も期待される。
システムインテグレーション事業では、企業のセキュリティ対策意欲の高まりやクラウドサービス需要の拡大が追い風となり、不正接続PC検知・排除システム「L2Blocker」が好調のようだ。物品販売事業ではウインドウズXPサポート終了に伴う入れ替え需要の反動影響が一巡する。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が71.7%、営業利益が61.7%、経常利益が66.9%、純利益が75.1%である。やや低水準の形だが、第4四半期の構成比が高い収益構造でありネガティブ要因とはならない。製品機能充実のための費用の増加、知名度向上のための広告宣伝費の増加、新卒社員の積極採用に伴う人件費の増加はあるが、増収増益基調に変化はないだろう。
またEC関連市場は拡大基調であり、国内断トツ首位のECサイト構築実績を武器として、中期的にも収益拡大基調が期待される。
■株主優待と継続的な自己株式取得で積極還元姿勢
株主優待制度は毎年3月31日および9月30日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して実施している。優待内容は保有株数に応じてオリジナルQUOカードを贈呈(3000株以上保有株主に対してQUOカード3000円分など、詳細は会社ホームページを参照)し、2年超の継続保有株主に対しては長期保有優待制度も実施している。
15年9月16日発表の自己株式取得(取得株式総数の上限30万株、取得価額総額の上限3億円、取得期間15年9月17日~15年12月16日)は、15年12月16日時点で取得株式総数2万5900株、取得価額総額2513万300円となって終了した。
16年1月7日発表の自己株式取得(取得株式総数の上限10万株、取得価額総額の上限1億円、取得期間16年1月7日~16年1月31日)については、16年1月31日時点で取得株式総数7万2500株、取得価額総額6560万9800円となって終了した。
■株価は地合い悪化の影響で急落したが売られ過ぎ感
株価の動きを見ると、地合い悪化の影響で2月12日に13年10月719円以来の安値水準となる721円まで急落する場面があった。その後は売られ過ぎ感を強めて切り返す動きだ。
2月16日の終値760円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS71円15銭で算出)は10~11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は2.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS486円45銭で算出)は1.6倍近辺である。時価総額は約105億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感の強い水準だ。また週足チャートで見ると大陰線を引いて水準を切り下げたが、安値圏の下ヒゲで底打ち感を強めている。株主優待制度や継続的な自己株式取得といった積極還元姿勢も評価して出直り展開だろう。EC(電子商取引)関連やサイバーセキュリティ関連のテーマ性も注目点だ。