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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】パイプドHDは16年2月期増収増益・増配予想、中期成長力も見直し
- 2016/2/18 06:43
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
パイプドHD<3919>(東1)は旧パイプドビッツが株式移転で設立した持株会社である。情報資産プラットフォーム事業を主力として、広告事業やソリューション事業なども展開している。16年2月期は増収増益・増配予想である。マイナンバー関連の受注も好調のようだ。株価は地合い悪化も影響して急落したが、中期成長力も見直して反発展開だろう。
■旧パイプドビッツが株式移転で持株会社を設立、グループ再編も推進
旧パイプドビッツが15年9月1日付で株式移転によって純粋持株会社パイプドHDを設立し、新パイプドHDが15年9月1日付で東証1部に新規上場した。
15年3月にはパイプドビッツ総合研究所を設立した。政府の政策に対して情報通信技術の活用や課題、先行事例などさまざまな調査研究や実証実験を行い、公表や提言などを通じて地域や社会の課題解決に貢献するとしている。15年5月には自治体広報紙へのオープンデータ利活用モデル事業化を目的として新会社パブリカを設立した。
15年9月には子会社等株式の配当による組織再編を実施した。子会社パイプドビッツが保有する子会社株式等を当社(持株会社)に現物配当して、当社が子会社株式等を直接保有する。グループ内取引で当社の連結純資産額に変更を生じさせるものではないため連結業績に与える影響はない。
15年12月には、16年3月1日を効力発生日として子会社パイプドビッツの事業の一部を会社分割(新設分割)もしくは当社が出資する新会社へ事業譲渡し、それらの事業を新設会社へ承継すると発表した。子会社パイプドビッツのメディアストラテジーカンパニー(新会社名はゴンドラ)、アパレル・ファッションカンパニー(新会社名はフレンディット)、および美歴カンパニー(新会社名は美歴)について、個別事業に経営資源を集中させることを目的に分社化もしくは新会社を設立する。
■国内最大規模の情報資産プラットフォーム「スパイラル」が基盤
国内最大規模の情報資産プラットフォーム「スパイラル」を基盤として、情報資産プラットフォーム事業(データ管理などクラウドサービス提供)、広告事業(アフィリエイトASP一括管理サービス「スパイラルアフィリエイト」など)、およびソリューション事業(ネット広告制作、アパレル・ファッションに特化したECサイト構築・運営受託、子会社ペーパレススタジオジャパン(PLSJ)のBIMコンサルティング事業など)を展開している。
情報資産プラットフォーム事業では「スパイラル」、アパレル特化型ECプラットフォーム「スパイラルEC」、会計クラウド「ネットde会計」「ネットde青色申告」、クラウド型グループウェア×CMS×SNS連携プラットフォーム「スパイラルプレース」などを主力としている。
また薬剤・医療材料共同購入プラットフォーム「JoyPla」、美容関連のヘアカルテ共有サービス「美歴」、地域密着型SNS「I LOVE 下北沢」、政治・選挙プラットフォーム「政治山」、BIM建築情報プラットフォーム「ArchiSymphony」などを展開し、14年3月にはアズベイスを子会社化してコールセンタープラットフォームサービス「BizBase」にも事業領域を広げている。
15年9月には、地域密着型SNS「I LOVE 下北沢」が、下北沢東会(あずま通り商店街)と共同の連携体で実施する「外国人来街者に向けた街の魅力発信事業および、おもてなし提供等事業」が、経済産業省の「平成27年度地域商業自立促進事業」に採択された。
なお16年1月には子会社パイプドビッツが、ITサービスマネジメントシステムISO20000-1認証を更新、品質マネジメントシステムISO9001認証と情報セキュリティマネジメントシステムISO27001認証を継続した。
■マイナンバー関連の受注好調
15年7月には「スパイラル・マイナンバートータルソリューション」の提供を開始した。マイナンバー運用体制整備をトータルサポートする。また「スパイラル・オムニチャネルソリューション」の提供を開始した。マルチクラウドの活用により、オムニチャネル化に向けたスモールスタートを切ることができるオムニチャネル実践基盤で、情報資産プラットフォーム「スパイラル」が顧客情報統一管理を担う。
マイナンバー関連の受注が好調のようだ。15年9月にはビューティサロンチェーン運営のDu-Pay(東京都)、プレナス<9945>、15年11月には飲食店チェーン運営のキープ・ウィルダン(東京都)、一級建築事務所のINA新建築研究所(東京都)、アリさんマークの引越社(東京都)、首都圏模試センター(東京都)、人材派遣型CROのイーピーメイト(東京都)からの受注を発表している。
■ストレスチェック義務化関連も注目
15年9月には、クラウド型ストレスチェックサービス「こころの診断センター」の提供を開始し、TAC<4319>がメンタルヘルス対策サービスとして創設する「ストレスチェック義務化トータルソリューション」に採用された。TACは改正労働安全衛生法(ストレスチェック義務化)対応サービスとして、Webストレスチェックおよびメンタルヘルス対策研修ならびに組織診断をワンストップで提供する。
改正労働安全衛生法(ストレスチェック義務化)は、メンタルヘルス対策の充実・強化等を目的として、従業員50人以上の全事業所にストレスチェック実施を義務付ける内容で、15年12月1日に施行された。
■M&A・アライアンス戦略も積極推進
M&Aアライアンス戦略では、15年2月に世界有数のソフトウェアベンダーである米スプリンクラー社の日本法人スプリンクラー・ジャパン社に出資(A種優先株式)し、15年3月には米スプリンクラー社に純投資目的で総額約4百万米ドル出資した。
15年4月には子会社PLSJとエヌ・シーエヌ(岐阜県)が住宅業界向けBIM事業を展開する合弁会社MAKE HOUSEを設立、ソフトブレーン<4779>と業務提携した。
15年7月には講談社が刊行する女性誌「ViVi」のEC事業展開に関して、当社が新設する子会社ウェアハートと講談社との間で業務提携した。システム開発、ECサイト構築、商品仕入および物流についてウェアハートが担当する。
15年12月には、15年3月に出資して持分法適用関連会社化したカレン(東京都)の第三者割当増資を引き受けて、株式を追加取得(所有割合は39.02%から47.18%に上昇)した。常駐型マーケティング支援に強みを持つカレンとの連携を強化する。
■契約数増加に伴うストック型収益構造
15年2月期(旧パイプドビッツ)の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)7億14百万円、第2四半期(6月~8月)7億98百万円、第3四半期(9月~11月)8億00百万円、第4四半期(12月~2月)8億61百万円、営業利益は第1四半期1億40百万円、第2四半期1億65百万円、第3四半期1億71百万円、第4四半期1億49百万円だった。
契約数増加に伴って収益が拡大するストック型の収益構造である。15年2月期末の有効アカウント数(全事業合計)は1万757件で、14年2月期末比661件増加した。また15年2月期のROEは15.9%で14年2月期比2.2ポイント低下、自己資本比率は77.6%で同0.2ポイント低下した。配当性向は34.1%だった。
■16年2月期第3四半期累計は先行投資負担で減益
今期(16年2月期)第3四半期累計(3月~11月)連結業績は、売上高が28億46百万円、営業利益が4億29百万円、経常利益が4億19百万円、純利益が1億99百万円だった。前年同期(旧パイプドビッツ3月~11月)との比較で見ると23.1%増収、9.9%営業減益、11.4%経常減益、27.6%最終減益だった。先行投資負担で減益だった。
売上総利益率は72.5%で同5.1ポイント低下、販管費比率は57.5%で同0.5ポイント上昇した。営業外費用では持分法投資損失12百万円を計上、特別損失では組織再編費用18百万円を計上した。第3四半期末の有効アカウント数(全事業合計)は1万907件で、15年2月期末比338件増加(獲得数1667件、解約数1329件)した。
セグメント別の動向を見ると、情報資産プラットフォーム事業は売上高が前年同期比15.5%増の22億29百万円、営業利益(連結調整前)が同14.9%減の3億91百万円、広告事業は売上高が同63.6%増の1億68百万円、営業利益が同5.7倍の42百万円、ソリューション事業は売上高が同60.2%増の4億48百万円、営業利益が3百万円の赤字(前年同期は9百万円の黒字)だった。
四半期ベースで見ると、第3四半期(15年9月~11月)は売上高が9億64百万円、営業利益が86百万円、経常利益が85百万円、純利益が19百万円だった。前年同期(旧パイプドビッツ14年9月~11月)比20.5%増収、49.3%営業減益、49.1%経常減益、80.1%最終減益だった。スパイラルが好調に推移して大幅増収となり、売上総利益も増加したが、新規事業の先行投資負担などで売上総利益率が低下し、人件費などの販管費も増加して大幅減益だった。
また第3四半期を前四半期(旧パイプドビッツ15年6月~8月)との比較で見ると、2.0%増収にとどまり、51.3%営業減益、48.3%経常減益、76.1%最終減益だった。
なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(旧パイプドビッツ3月~5月)9億35百万円、第2四半期(同6月~8月)9億46百万円、第3四半期(新パイプドHD9月~11月)9億64百万円、営業利益は第1四半期1億64百万円、第2四半期1億78百万円、第3四半期86百万円だった。
■16年2月期通期は増収増益・実質増配予想
今期(16年2月期)通期の連結業績予想は、前回予想(9月1日公表、旧パイプドビッツ3月31日公表数値と同じ)を据え置いて、売上高が40億円、営業利益が8億20百万円、経常利益が8億20百万円、純利益が4億90百万円としている。旧パイプドビッツの15年2月期との比較で26.0%増収、31.2%営業増益、29.2%経常増益、31.6%最終増益予想となり、16期連続で営業最高益更新の見込みだ。
なお配当予想については、旧パイプドビッツが実施の8円(第2四半期末)および新パイプドHDが実施の10円(期末)を合計して、実質的に同2円増配の年間18円(第2四半期末8円、期末10円)としている。予想配当性向は29.6%となる。
主力の情報資産プラットフォーム事業の好調が牽引し、先行投資に伴う人件費増加などを吸収して大幅増収増益予想だ。通期ベースでアカウント数が増加基調であり、契約売上高(月額課金)が順調に増加する。名古屋営業所開設による中部圏の販売網拡大も寄与する。
また積極的な事業・育成・開発投資や人材採用を継続する方針を打ち出している。スプリンクラー・ジャパン社への出資を通じて、新規事業領域であるソーシャル分野(Sprinklr事業)にも進出する。なお持分法適用会社の可能性があるスプリンクラー・ジャパン社とカレンの業績、および純投資目的の出資先である米スプリンクラー社の投資評価損益などについては、現段階では業績への影響は軽微のため業績予想に織り込んでいないとしている。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は、売上高が71.2%、営業利益が52.3%、経常利益が51.1%、純利益が40.6%である。やや低水準の形だが、契約数増加に伴って契約売上高(月額課金)が増加するストック型収益構造であり、第4四半期の挽回が期待される。
■次世代ITベンダーを目指す
14年3月発表の「中期経営計画2017」では、15年2月期から17年2月期を「次世代ITベンダーへと革新する3ヵ年」と位置付けて、目標数値に17年2月期売上高92億円、営業利益28億円を掲げている。
そして15年9月1日付で純粋持株会社パイプドビッツHDを設立した。経営効率の向上、組織再編の柔軟性・機動性確保、グループ全体の最適化とガバナンス機能の強化を目的として、中長期の持続的成長および企業価値向上を推進するとしている。ストック型の収益構造であり、情報資産プラットフォーム事業が牽引して中期的にも収益拡大基調だろう。
■株価は地合い悪化も影響して急落したが売られ過ぎ感
株価の動きを見ると、第3四半期(9月~11月)業績を嫌気して高値圏1500円近辺から急落し、さらに地合い悪化も影響して水準を切り下げた。2月12日には持株会社上場後の安値となる974円まで下押した。その後もやや反発力の鈍い動きだが、売られ過ぎ感を強めている。
2月17日の終値1024円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS60円76銭で算出)は16~17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間18円で算出)は1.8%近辺、実績連結PBR(第3四半期末実績の連結BPS238円92銭で算出)は4.3倍近辺である。なお時価総額は約83億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えている。売られ過ぎ感の強い水準だ。マイナンバー関連の受注も好調で16年2月期通期は増収増益・増配予想である。中期成長力も見直して反発展開だろう。