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【アナリスト水田雅展の銘柄診断】スターティアはITインフラソリューションなどを展開、AR(拡張現実)関連で動意
- 2016/2/22 07:30
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
スターティア<3393>(東1)は電子ブック作成ソフト開発・販売やITインフラソリューションなどを展開している。ストック型収益の拡大とともに、中期成長に向けてM&A・アライアンス戦略を積極推進している。株価はAR(拡張現実)関連を材料視して動意づいた後、16年3月期利益・配当予想の減額修正を嫌気して急反落した。乱高下の展開となったが、その後は売り一巡感を強めている。
■電子ブック作成ソフトやITインフラソリューションなどを展開
オフィスのインターネット関連トータルソリューションカンパニーとして、電子ブック作成ソフト「ActiBook」やWebアプリケーションを開発・販売するウェブソリューション(WS)関連事業、ネットワークアウトソーシング環境やクラウドサービスを提供するネットワークソリューション(NS)関連事業、ビジネスホンやMFP(複合機)などOA機器を販売するビジネスソリューション(BS)関連事業、その他事業(16年3月期開始のコーポレートベンチャーキャピタル事業)を展開している。
主力の電子ブック作成ソフト「ActiBook」は、書籍、雑誌、IR資料などといった紙媒体を、簡単に電子ブックに変換できる電子ブック制作ソフトである。一つのソフトでマルチデバイスへの書き出しが可能な「ワンオーサリングマルチデバイス」を実現し、拠点間で利用可能なSaaS型サービスを提供している。導入実績は出版社を中心に15年6月末現在で2438社に達し、15年9月には伊藤忠商事<8001>のアニュアルレポート閲覧ソフトとして採用された。
クラウドサービスの分野では、1100社以上の導入実績がある法人向けクラウドストレージサービス「セキュアSAMBA(サンバ)」などを提供している。15年7月には中堅・中小企業を対象として、マイナンバー対策に役立つセキュリティ機能がセットになったファイルサーバーの提供を開始した。15年9月にはマイナンバーの収集・保管に特化した専用サービス「セキュアMyNUMBER(マイナンバー)」の提供を開始した。
15年7月にはインターネット接続サービス(ISP)「Tialink(ティアリンク)」の提供を開始した。NTT東日本・西日本が事業者向けに提供する光コラボレーションモデルの光回線「スターティア光」とセットにしたインターネット接続プランを提供する。
■ストック型収益の拡大を推進
大手との競合が少ない従業員300人未満の中堅・中小企業(全国約555万社)をターゲットとして、ITインフラのワンストップソリューションを提供するとともに、ストック型収益の拡大を推進している。アジア市場へも本格的に事業展開する方針だ。無借金経営という財務面の健全性の高さも特徴である。
■中期成長に向けてM&A・アライアンス戦略を積極推進
中期成長に向けてM&A・アライアンス戦略を積極推進している。14年8月にはホスティングサービス運用などのエーティーワークスと資本業務提携(17年3月末までに株式25%取得予定)し、個人・法人向けPCトラブル訪問サービスの日本PCサービス<6025>と業務提携した。
14年11月には回線敷設代行業務や一括請求サービスを展開する子会社クロスチェックを設立し、サービス販路開拓に向けてリボルバーと資本業務提携した。14年12月にはシステムインテグレーションのネクストイットの技術本部の一部事業(常駐派遣事業など)および技術者21名を承継した。
15年3月にはオウンドメディア構築事業のリボルバーとの資本業務提携の一環として、企業が低価格で簡単にオウンドメディアを発刊できる企業向けWEBマーケティング戦略支援サービスを開始した。オウンドメディアは企業自らの情報公開や大量コンテンツ配信が可能となるため、マスメディア、ソーシャルメディアに続く第三のメディアとして企業のマーケティングやブランディングへの応用が期待されている。
15年5月には東京・横浜・大阪に40拠点以上のレンタルオフィスを提供するアセットデザインと業務提携した。同社はレンタルオフィスへの新規入居者に対して、当社の法人向けオンラインストレージを無料で提供する。両社の事業を組み合わせることで起業家の支援および事業シナジーを生み出す狙いだ。
15年10月にはエヌオーエス(鹿児島県)を子会社化した。同社は鹿児島県を中心としてエリア企業向けにMFPのリース販売・レンタルサービスなどを展開しているため、南九州地域における新規顧客獲得などが期待できるとしている。
■子会社がAR(拡張現実)アプリを開発
16年1月には、江崎グリコが提供する「アーモンドピーク」と、コロプラ<3668>が運営するスマホゲーム「クイズRPG魔法使いと黒猫のウィズ」「白猫プロジェクト」がコラボレーションしたキャンペーン商品に、当社子会社スターティアラボ開発のAR(拡張現実)アプリ「COCOAR2(ココアル)」が16年3月1日から活用されると発表した。本キャンペーン商品に封入されているカードの表面を「COCOAR2」で読み込むとキャラクターが飛び出す仕組みになっている。
■第4四半期の構成比が高い収益構造
15年3月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)19億11百万円、第2四半期(7月~9月)21億34百万円、第3四半期(10月~12月)20億21百万円、第4四半期(1月~3月)26億16百万円、営業利益は第1四半期6百万円、第2四半期2億47百万円、第3四半期42百万円、第4四半期4億52百万円だった。
第4四半期の構成比が高い収益構造だ。15年3月期の売上総利益率は50.2%で14年3月期比1.8ポイント低下、販管費比率は41.6%で同0.2ポイント低下、ROEは15.9%で同2.7ポイント上昇、自己資本比率は70.2%で同2.6ポイント上昇した。配当性向は17.2%だった。
■16年3月期第3四半期累計は大幅減益、売上は2桁増収
1月29日発表の今期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)連結業績は、売上高が前年同期比19.9%増の72億74百万円、営業利益が同34.3%減の1億94百万円、経常利益が同42.0%減の2億36百万円、そして純利益が同82.0%減の51百万円だった。
NS事業では中堅・中小企業向けマネージドサービスや既存顧客向けインテグレーションサービス、BS事業ではカラー複合機やセキュリティ関連商材が好調に推移して、いずれも大幅増収増益だったが、WS関連事業では電子ブック作成ソフト「ActiBook」および「ActiBook AR COCOAR」の販売が低調で減収となり、営業損益が悪化した。
なお売上総利益率は45.3%で同3.7ポイント低下、販管費比率は42.6%で同1.5ポイント低下した。営業外収益では持分法投資利益が減少(前期は43百万円計上、今期は36百万円計上)し、為替差損益が悪化(前期は差益51百万円計上、今期は差損4百万円計上)した。特別利益では前期計上した投資有価証券売却益52百万円が一巡した。また資本・業務提携先において当初目論んでいた業績と乖離した結果が散見されている状況を鑑み、特別損失に関係会社株式売却損20百万円、投資有価証券評価損41百万円を計上した。
セグメント別(連結調整前)に見ると、WS事業は売上高が同2.5%減の13億47百万円、営業利益が21百万円の赤字(前年同期は1億41百万円の黒字)、NS事業は売上高が同31.8%増の20億74百万円、営業利益が同23.0%増の1億05百万円、BS事業は売上高が同36.4%増の48億90百万円、営業利益が同82.8%増の1億88百万円、その他事業(第1四半期から開始したコーポレートベンチャーキャピタル事業)は売上高が0百万円、営業利益が25百万円の赤字だった。
なおコーポレートベンチャーキャピタル事業は、15年6月に勉強ノートまとめ共有アプリ「Clear」を開発しているアルクテラスにリードインベスターとして出資し、15年9月にはITベンチャー企業を主たる投資対象として運用しているファンドに出資した。
四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)22億53百万円、第2四半期(7月~9月)25億08百万円、第3四半期(10月~12月)25億13百万円、営業利益は第1四半期1億07百万円の赤字、第2四半期1億93百万円、第3四半期1億08百万円だった。
■16年3月期通期の利益・配当予想を減額修正、ただし売上は据え置き
今期(16年3月期)通期の連結業績予想については1月29日に利益を減額修正した。前回予想(5月8日公表)に対して営業利益を6億74百万円減額、経常利益を6億24百万円減額、純利益を3億17百万円減額し、修正後の通期予想は売上高が前期比15.2%増の100億円、営業利益が同38.4%減の4億60百万円、経常利益が同41.9%減の5億10百万円、純利益が同57.8%減の2億50百万円とした。
営業増益予想から一転して営業減益予想となった。WS関連事業における販売低迷に加えて、純利益は関係会社株式売却損や投資有価証券評価損の計上も影響する。
利益減額修正に伴って配当予想も減額修正した。期末配当を前回予想(9月17日に配当方針変更に伴って増額修正)7円50銭から2円50銭減額して5円として、年間は13円(第2四半期末8円、期末5円)とした。15年10月1日付株式2分割を考慮して第2四半期末の8円を4円に換算すると年間9円となり、15年3月期の年間20円を株式2分割後に換算した年間10円に対して1円減配の形となる。また予想配当性向は36.9%となる。
なお配当性向の基本方針については15年9月に変更を発表している。従来の1株あたり当期純利益の15%相当額から、5ポイント引き上げて1株あたり当期純利益の20%相当額に変更している。
修正後の通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が72.7%、営業利益が42.2%、経常利益が46.3%、純利益が20.4%である。利益進捗率が低水準だが、第4四半期の構成比が高い収益構造のため挽回を期待したい。
■中期経営計画で17年3月期経常利益14億円目指す
14年8月発表の「新・中期3ヵ年利益計画」では、連結経常利益の目標値として15年3月期8億66百万円、16年3月期11億34百万円、17年3月期14億円を掲げている。
初年度15年3月期の実績経常利益は8億78百万円で計画を達成した。2年目の16年3月期は新サービス投入による経常利益成長段階に入り、ホスティングなどの先行投資を継続しながら、海外事業を含めて収益回収段階に入るとしている。規模拡大や継続的成長に向けてM&A・アライアンス戦略も積極推進する。中期的に収益拡大基調が期待される。
■株価は16年3月期利益・配当予想減額を嫌気した売り一巡
株価の動き(15年10月1日付で株式2分割)を見ると、1月下旬にAR(拡張現実)関連を材料視して動意づき、500円近辺から1月29日の戻り高値998円まで急伸した。そして16年3月期利益および配当予想の減額修正を嫌気して急反落し、地合い悪化も影響して2月12日には12年6月437円以来の安値水準となる450円まで調整した。乱高下の展開だが、その後は500円台を回復して売り一巡感を強めている。
2月19日の終値509円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS24円41銭で算出)は20~21倍近辺、今期予想配当利回り(株式2分割を考慮して第2四半期末の8円を4円に換算した年間9円で算出)は1.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績に株式2分割を考慮した連結BPS389円90銭で算出)は1.3倍近辺である。時価総額は約52億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感の強い水準だ。また週足チャートで見ると13週移動平均線を割り込んだが、2月の直近安値から切り返しの動きを強めている。売り一巡して反発展開だろう。