【アナリスト水田雅展の銘柄分析】綿半ホールディングスの16年3月期第3四半期累計は大幅増益、通期は再増額の可能性

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 綿半ホールディングス<3199>(東1)はスーパーセンター事業や建設事業などを展開するグループ持株会社である。16年3月期第3四半期累計は大幅増益だった。通期業績予想は再増額の可能性が高く、17年3月期も増収増益基調が期待される。株価は上場来高値圏から一旦反落したが、指標面に割高感はなく、自律調整が一巡して上値を試す展開だろう。

■スーパーセンター事業や建設事業などを展開するグループ持株会社

 1598年(慶長3年)に初代・綿屋半三郎が長野県飯田市で創業した綿商いから400年以上の歴史を有している。現在は持株会社に移行して、事業会社の綿半ホームエイドが長野県中心にチェーン展開するスーパーセンター事業(従来のホームセンター事業を16年3月期第3四半期から名称変更)、綿半鋼機と綿半テクノス(両社は16年4月1日付で合併予定)が展開する建設事業、10年に子会社化したミツバ貿易が医薬品原料などを輸入販売する貿易事業を展開している。

 15年3月期の売上高構成比は、ホームセンター事業(16年3月期第3四半期累計からスーパーセンター事業)が54.7%、建設事業が40.5%(内訳は内外装工事が43.9%、立体駐車場が14.9%、鉄構分野が21.2%、建設資材販売が13.0%など)、貿易事業が4.5%、その他事業(不動産賃貸事業)が0.3%である。

■スーパーセンター事業は長野県中心にスーパーセンター業態を積極展開

 綿半ホームエイドがチェーン展開するスーパーセンター事業は、1977年にホームセンター業態1号店(長池店)をオープンし、07年からは生鮮食品や惣菜など食品の品揃えを強化したスーパーセンター業態の出店を開始して積極展開している。

 15年3月期末の店舗数はスーパーセンター業態8店舗、ホームセンター業態8店舗の合計16店舗(長野県15店舗、愛知県1店舗)で、15年5月に綿半スーパーセンター豊科店、15年11月に綿半スーパーセンター塩尻店がオープンして合計店舗数は18店舗となった。

 長野県内で唯一生鮮食品を扱うホームセンター・スーパーセンターで業態あり、NB商品を中心に地域特性に合わせた豊富な品揃え、価格競争力、ブルーカード(長野県内の主要な小売業やサービス業が加盟するポイントカード)による顧客囲い込みなど、ELP戦略を武器とした個店競争力の高さを強みとしている。サービス面ではカーピットを併設してカー用品取り付け・タイヤ交換やメンテナンスを行っていることも特徴だ。

 品目別売上構成比は、09年2月期には食品30.2%、非食品69.8%だったが、15年3月期には食品50.3%、非食品49.7%で食品が非食品を上回った。スーパーセンター業態の新規出店によって食品の売上構成比が上昇している。

 15年12月には、愛知県一宮市を中心に地域密着型の食品スーパー5店舗、および100円ショップ1店舗を運営しているキシショッピングセンターの全株式を取得して連結子会社化した。愛知県内への店舗網拡大、食品の取り扱い、小型店の運営ノウハウの共有などでホームセンター事業の強化につながるとしている。

■建設事業は長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事に強み

 綿半鋼機と綿半テクノスは、建築・土木・住宅リフォーム工事、鉄骨・鋼構造物の加工・製造などを展開している。長尺屋根工事などの外装改修工事および自走式立体駐車場工事に強みを持つ。

 長尺屋根工事では、工場の操業を止めずに老朽化した屋根の改修工事を行うWKカバー工法で特許を取得し、企業の工場・倉庫・物流センター、商業施設、駅舎関連などに豊富な工事実績を誇っている。自走式立体駐車場工事では、柱の少ない認定品「ステージダブル」など国土交通省の認定を多数有していることが強みであり、大型SCの立体駐車場などの工事実績が豊富である。

 15年11月に綿半鋼機と綿半テクノスの合併を発表した。建築・土木の設計施工を主体とする綿半鋼機と、鉄構・橋梁構造を主体とする綿半テクノスを経営統合することにより、事業の効率化を図り、建設事業の収益性向上を目指す。合併期日は16年4月1日付である。なお1月28日に合併内容の変更を発表し、存続会社を綿半テクノスに変更した。

■貿易事業はジェネリック医薬品向け天然原料などを輸入販売

 10年に子会社化したミツバ貿易は、医薬品・化成品向け天然原料の輸入専門商社で、ジェネリック医薬品向けアセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)や、メキシコ特産でヘアワックス・口紅などに使用するキャンデリラワックス(取り扱い数量国内1位)など、特定分野に強みを持っている。

 製造部門も有しており、医薬品分野ではHMG(ヒト尿由来の排卵障害治療薬)原薬を製造して医薬品メーカーに販売している。メキシコではキャンデリラワックスの精製工場を保有している。なお宝飾品部門は15年3月に撤退した。

■15年3月期のROEは15.4%と高水準

 スーパーセンター事業では既存店売上の動向と新規出店戦略が注目される。15年3月期の既存店売上高は14年3月期比94.5%、既存店客数は同97.9%、既存店客単価は同96.5%だった。建設事業は基本的には第4四半期(1月~3月)の構成比が高い収益構造だが、大型案件の動向や個別案件の工事採算動向で利益率が変動する。

 なお15年3月期のROEは15.4%で14年3月期比1.6ポイント上昇、自己資本比率は22.1%で同4.5ポイント上昇した。配当性向は9.6%だった。

■16年3月期第3四半期累計は大幅増益

 1月28日発表の今期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)連結業績は、売上高が前年同期比5.7%増の668億87百万円、営業利益が同97.6%増の14億25百万円、経常利益が同95.8%増の15億71百万円、純利益が同86.7%増の10億25百万円だった。

 スーパーセンター事業と建設事業の好調が牽引して大幅増益だった。売上総利益率は18.8%で同1.5ポイント上昇、販管費比率は16.7%で同0.5ポイント上昇した。営業外費用では株式公開費用45百万円が一巡した。

 スーパーセンター事業は売上高が同7.1%増の375億07百万円、営業利益(連結調整前)が同41.2%増の5億35百万円だった。既存店の好調、新規出店、食品ロス率改善などで大幅増益だった。なお15年12月末の店舗数は、スーパーセンター11店舗、ホームセンター7店舗、および子会社化したキシショッピングセンターの食品スーパー5店舗、100円ショップ1店舗である。

 建設事業は、売上高が同4.5%増の263億40百万円、営業利益が同2.4倍の15億31百万円だった。大阪・エキスポシティ、ららぽーと平塚など自走式立体駐車場の大型案件の施工が進捗し、建築鉄骨の比較的利益率の高い案件が期前半に集中したことも寄与して大幅増益だった。

 貿易事業は、15年3月に宝飾品部門から撤退した影響により、売上高が同0.8%減の28億50百万円、営業利益が同4.8%減の3億29百万円だった。その他は売上高が同2.9%減の1億90百万円、営業利益が同14.5%増の75百万円だった。

 なお四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)208億22百万円、第2四半期(7月~9月)218億39百万円、第3四半期(10月~12月)242億26百万円で、営業利益は第1四半期2億98百万円、第2四半期4億80百万円、第3四半期6億47百万円だった。

■16年3月期通期も大幅営業増益基調、さらに再増額の可能性

 今期(16年3月期)通期の連結業績予想については前回予想(10月15日に増額修正)を据え置いて、売上高が前期比6.2%増の887億68百万円、営業利益が同35.8%増の13億83百万円、経常利益が同35.0%増の15億37百万円、純利益が同5.5%減の12億60百万円としている。

 純利益は繰延税金資産計上効果の減少(15年3月期6億円計上、16年3月期2億円計上予定)で減益予想だが、スーパーセンター事業と建設事業の好調が牽引して大幅営業増益基調だ。

 配当予想(1月15日に増額修正)は、期末に東証1部指定記念配当10円を実施して年間25円(期末一括、普通配当15円+記念配当10円)としている。前期との比較で10円増配となる。予想配当性向は19.6%となる。配当についてはグループの業績や内部留保の充実などを勘案したうえで、安定的な配当を継続して実施することを基本方針としている。

 セグメント別には、スーパーセンター事業の売上高が同9.9%増の502億57百万円、営業利益(連結調整前)が同72.4%増の5億19百万円、建設事業の売上高が同2.5%増の347億37百万円、営業利益が同38.4%増の16億37百万円、貿易事業の売上高が同6.7%減の35億20百万円、営業利益が同2.6%減の3億71百万円、その他の売上高が同1.5%減の2億54百万円、営業利益が同1.1%増の85百万円の計画としている。

 スーパーセンター事業の月次売上状況(前年同月比、速報値)を見ると、16年1月は全店120.3%、既存店98.3%だった。既存店売上は上旬の暖冬の影響で灯油、季節家電、除雪商品などが低調となり、3ヶ月連続の前年割れだった。ただし中旬以降は気温低下や降雪で持ち直しているようだ。また灯油などは利幅の薄い商品のため利益面への影響は限定的のようだ。そして15年4月~16年1月累計は全店108.2%、既存店101.3%で、既存店も前年比プラスを維持している。なおキシショッピングセンターについては16年1月から全店データに含まれている。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が75.4%、営業利益が103.0%、経常利益が102.2%、純利益が81.4%で営業利益と経常利益は超過達成している。建設事業において好採算大型案件が期前半に集中したことや、スーパーセンター事業における暖冬の影響などを考慮して通期会社予想を据え置いたようだが、再増額の可能性が高いだろう。

■17年3月期も増収増益基調

 来期(17年3月期)については、スーパーセンター事業で大型の新規出店の計画はないようだが、既存店が堅調に推移し、15年11月にオープンした綿半スーパーセンター塩尻店、および15年12月に連結子会社化したキシショッピングセンターが通期寄与する。

 また建設事業では、自走式立体駐車場の大型案件の受注・施工が高水準であり、工事利益率の改善も期待される。来期(17年3月期)も増収増益基調だろう。

■景気に左右されない安定・成長性のある事業構造を目指す

 中期ビジョンでは基本方針に「時代の変化に対応し、景気に左右されない安定・成長性のある事業構造を創り上げる」を掲げ、多様性のある経営人財の育成、IT化推進による経営改革、M&A推進のための財務体質強化、長期を見据えた海外展開の準備に取り組んでいる。

 スーパーセンター事業では、近隣県への進出も含めて本格的な多店舗展開(当面の目標100店舗体制)に向けた体制作りの期間として、出店スピード加速のための体制整備や新フォーマット店舗の開発に取り組んでいる。

 体制整備では、店舗オペレーションの効率化、パートナーのプロ化(パートのスキルアップ)、発注精度の向上、物流ネットワークの整備・強化、本部バックアップ体制の整備などを推進する。

 新フォーマット店舗の開発では、限られた売場面積の中で地域特性に合わせた品揃えを強化するため、小型スーパーセンター業態(700~1000坪)の開発や、食品と非食品の超小型店業態(300坪程度)の研究を推進している。15年4月にはホームセンター業態の「綿半ホームエイド川中島店」(売場面積2000㎡)に生鮮食品を加えて、小型スーパーセンター業態としてリニューアルオープンした。

 また商品面では、長野ブランド(健康・自然)を活かした商品政策(健康を意識した商品政策、長野県ブランドを活かした商品開発)にも取り組む。

 建設事業では、デザインセンターを活用した提案営業や施主に対する直接営業の強化、技術ノウハウを活かした新製品の継続的開発や付加価値の提供などで、採算を重視しながら受注拡大に繋げる。

 また遠隔地の案件に対しては、施工代理店方式(当社が開発した冶具・ノウハウを提供)も活用して、エリア・顧客基盤の拡大に取り組む。そして中長期的な課題として、施工代理店方式を活用した海外展開も検討するようだ。

 リニア新幹線の停車駅となる長野県飯田市を発祥とする老舗企業であり、高い信用力を背景として、リニア新幹線・駅舎および周辺関連工事の受注も期待される。

 貿易事業では、利益率の高い医薬品分野を中心として、ニッチ市場における新商品の開発を強化する。

 中期経営計画は未策定だが、中長期ビジョンとして売上高1000億円、経常利益20億円程度を当面の目標としてイメージしているようだ。アベノミクス地方創生戦略やリニア新幹線なども追い風であり、スーパーセンター事業における新フォーマット開発や多店舗展開が牽引して、中期的に収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年9月末に実施

 株主優待制度については15年8月に導入を発表した。毎年9月30日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して贈呈する。15年9月30日現在の株主を対象として開始した。

 優待品の内容は次の(1)~(3)の中から1点を選択する。(1)2000円相当の長野県特産品のうち1点、(2)綿半ホームエイド店舗で利用できるブルーカードポイント2倍カード、(3)社会貢献活動への2000円寄付。

■株価は上場来高値圏から反落したが、自律調整一巡して上値試す

 株価の動き(15年12月25日付で東証1部指定)を見ると、2月2日の上場来高値1615円から利益確定売りや地合い悪化の影響で一旦反落したが、2月12日の直近安値1206円から切り返す動きだ。自律調整が一巡したようだ。

 2月22日の終値1325円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS127円79銭で算出)は10~11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間25円で算出)は1.9%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1009円63銭で算出)は1.3倍近辺である。時価総額は約131億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線近辺から切り返す動きだ。サポートラインを確認した形だろう。16年3月期は再増額の可能性があり、17年3月期も増収増益基調が期待される。指標面に割高感はなく、自律調整が一巡して上値を試す展開だろう。

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