建設技術研究所の前期15年12月期は、公共投資が底堅く推移したことで、増収増益と堅調
- 2016/2/23 09:32
- 決算発表記事情報
■技術者単価が3年連続で上昇、調査・設計業務の積算基準も改善される等事業環境は良好
建設技術研究所<9621>(東1)の前期15年12月期は、公共投資が底堅く推移したことで、増収増益と堅調であった。
15年12月期連結業績は、売上高402億20百万円(前年同期比1.8%増)、営業利益25億98百万円(同8.8%増)、経常利益27億34百万円(同8.3%増)、純利益16億33百万円(同9.6%増)であった。
単体の業績は、売上高337億34百万円(同1.6%増)、営業利益23億77百万円(同10.4%増)、経常利益25億13百万円(同10.4%増)、純利益15億20百万円(同11.2%増)であった。
当社が属する建設コンサルタント産業では、公共投資が約6兆円と安定していて、底堅く、しかも技術者単価が3年連続で上昇しているうえに、調査・設計業務の積算基準も改善される等事業環境は良好といえる。その結果、単体での過去3年間(13年~15年)の概算の受注高は、359億円、338億円、337億円と安定している。
連結子会社の15年の概算の受注高は、海外を市場とする建設技研インターナショナル35億10百万円(前年29億円)、福岡都市技術15億50百万円(同16億20百万円)、地圏総合コンサルタント16億20百万円(同21億円)であった。
建設技研インターナショナルは、フィリピン国内で上下水道事業を営む企業から大型の下水道整備業務を受注するなど、民間市場の開拓による顧客層の多様化を推進している。
土地区画整理を主な市場とする福岡都市技術は、震災復興に加えて従前の市場の回復や民間市場への展開がみられた。
砂防や地質分野に強みを持つ地圏総合コンサルタントは、リニア新幹線関連の地質調査で大型物件を受注するなど、好調に推移した。
また、新たにグループ会社として、環境モニタリング・解析を主体とする環境総合リサーチと、建築設計・監理を主体とする日総建が加わった。
当社の事業環境が、良好といえるのは、調査及び設計業務の性格等に応じた入札契約方式の採用、計画的な事業の進捗管理、中長期的な担い手の確保等に配慮した発注関係事務の適切な運用等がコンサルタント業務を発注する側の共通の指針となり、建設生産・管理システムの改革に向けての大きな一歩となっているからである。
例えば、積算基準の改定により、技術者単価と一般管理費等の見直しが行われたことで、設計業務の平均技術者単価は4万3,871円と前年比3.9%増加している。一般管理費等は、平成27年度より、業務原価に対する一般管理費等の割合が30%から35%へと見直されている。
15年1月30日に公表された改正品確法第22条に基づく発注関係事務の運用に関する指針では、「予定価格の適切な設定等による経営の安定」「適正な工期・設計変更」「若手技術者・女性技術者の活用など」「多様な入札・契約制度の導入」等が示されている。
「第4次社会資本整備重点計画の閣議決定」(15年9月)では、重点目標として、1)社会資本の戦略的な維持管理・更新、2)災害特性や地域の脆弱性に応じた災害リスクの低減、3)人口減少・高齢化等に対応した持続可能な地域社会の形成、4)民間投資を誘発し、経済成長を支える基盤の強化が設定された。
「安定的・持続的な公共投資の見通しの必要性」として、1)メンテナンスを含めた社会資本整備の計画的かつ着実な実施、2)担い手を安定的に確保・育成と、2つの項目が明記されている。
「現場の担い手・技能人材に係る構造改革の実施」としては、1)現場の担い手・技能人材の安定的な確保・育成・多様な人材の確保・育成、2)現場の生産性向上(CIM<コンストラクション・インフォメーション・モデリング>の導入、適切な工期設定・工程管理等)、3)発注者による取組の推進(歩切廃止、ダンピング防止、多様な入札契約方式等)と、3つの項目が挙げられている。
以上のように、国を挙げて、今後の資本整備のための具体的な案を示していることから、当社にとっては追い風といえる。
■国土交通省の業務評定点は、76.7点(13年)から77.3点(14年)へと改善
この様な状況を踏まえたうえでの前期を総括すると、復興支援に関しては、釜石市、女川町、山田町での復興支援を継続するとともに、福島県域への事業を展開した。
また、維持管理分野の戦略的投資を行った結果、受注が拡大し、前期の受注金額は34億60百万円(前年同期比12.3%増)となった。
新事業・技術開発の強化としては、環境モニタリング・解析等に強い環境総合リサーチと建築設計・監理等を行う日総建を子会社化したことで事業領域の拡大を実現している。また、CIM推進投資を拡充したことで、受注を獲得している。
担い手の確保としては、技術者の15年度の採用者数は、53名(前年38名)と拡大している。また、事業部門別の研修費も45百万円と前年の30百万円を上回った。更に、ダイバーシティ推進委員会の新設、海外事業に関わるプロジェクトマネージャーの育成の研修制度を始動している。
品質管理については、専門照査者制度の導入による照査実効性の向上を推進したことで、国土交通省の業務評定点は、76.7点(13年)から77.3点(14年)へと改善している。
■「中期経営計画2018」では受注拡大と共に利益率の改善を目指す
今期については、国土強靭化基本計画による社会資本整備に対する計画的な投資、改正品確法の本格的な運用実施による受注機会の増加が見込まれるものの、東日本大震災からの復興関連業務の施工段階への移行、財政再建のための発注減少も予測されるとみている。
今期16年12月期連結業績予想は、売上高425億円(前期比5.7%増)、営業利益24億円(同7.6%減)、経常利益25億円(同8.6%減)、純利益16億円(同2.0%減)と増収減益を見込む。
今期は、増収減益を見込むものの、「中期経営計画2018」では、2018年12月期の連結受注高は470億円、営業利益30億円、営業利益率6.5%と受注拡大と共に利益率の改善を目指している。
中期経営計画の重点課題としては、1)人材力強化戦略、2)経営・組織・生産の構造改革、3)受注シェアの戦略的拡大、4)新たな事業フィールドの開拓、5)品質及び効率の向上と、5つの課題を挙げている。