【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ジオネクストは16年12月期営業黒字化予想で収益改善基調

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ジオネクスト<3777>(JQS)は収益柱を再生可能エネルギー事業にシフトしている。15年12月期は特別損失計上で最終赤字が拡大したが、太陽光発電事業に係る収益を計上して大幅増収となり営業赤字が縮小した。そして16年12月期は営業黒字化予想である。収益改善基調に変化はないだろう。株価は地合い悪化も影響して水準を切り下げたが、調整が一巡して切り返す動きだ。

■再生可能エネルギー事業、ヘルスケア事業に収益柱をシフト

 14年4月にターボリナックスHDから現社名ジオネクストに商号変更した持株会社である。

 従来のIT関連事業(ターボリナックスのITソリューション関連)、環境事業(東環のビルメンテナンスサービス)に加えて、新規事業の再生可能エネルギー事業(エリアエナジーの太陽光発電所開発・運営・O&Mサービス、日本地熱発電の地熱・温泉バイナリー発電開発)、ヘルスケア事業(仙真堂の調剤薬局・サプリメント事業)を展開している。

 収益改善および中期成長に向けた基本戦略としては、14年に開始した新規事業の再生可能エネルギー事業に収益柱をシフトし、従来のIT関連事業と環境事業の収益性を確保しつつ、新規事業のヘルスケア事業の拡大・収益化も目指す方針としている。

■再生可能エネルギー事業は太陽光発電と地熱・温泉バイナリー発電

 再生可能エネルギー事業では、連結子会社のエリアエナジーが太陽光発電所開発・自社運営・O&M(Operation & Maintenance)サービス、連結子会社の日本地熱発電が地熱・温泉バイナリー発電開発を推進している。また開発した太陽光発電所の一部を売却して収益を計上する。

■太陽光発電所の売却進展、自社運営の北海道三笠市の発電所は売電開始

 開発を進めている太陽光発電所は買い取り価格32円/kWで19ヶ所が確定している。このうち14ヶ所の太陽光発電所に係る権利等の譲渡に関して15年8月、エリアエナジーがコネクトホールディングス<3647>の連結子会社エコ・ボンズと基本合意契約を締結した。その後の個別契約に基づいて引き渡しおよび土地造成業務受託(11ヶ所)などを進めている。譲渡金額は総額13億53百万円となる。

 15年11月には土地造成業務(11ヶ所)の完了を発表した。そして15年12月期末時点で、土地売買契約、地上権譲渡契約、地位譲渡契約、土地造成業務委託契約を締結し、それぞれ引き渡しと代金決済が完了し、受領した代金の総額は5億74百万円となった。

 なお15年12月には、エコ・ボンズとの太陽光発電所に係る権利等の譲渡に関して、未了となっている商品(太陽光パネル)売買契約締結が16年12月期にズレ込むと発表した。太陽光パネルの売買代金の総額は7億78百万円で、このうち77百万円を申込証拠金として受領済みである。

 また15年12月には、エリアエナジーが建設を進めていた自社運営の北海道三笠市弥生町太陽光発電所が完成して売電を開始した。年間収入見込みは約18百万円としている。

■O&Mをストック型収益モデルとして育成

 O&Mは、太陽光発電所事業者から運用・保守・管理業務を受託するサービスである。独自開発した最先端の24時間365日対応常時遠隔監視・制御システム、監視カメラによる犯罪防止のための常時監視、発電データの管理、官公庁への報告書の作成、保安規程に基づく定期点検の実施、草刈・除雪・太陽光パネル清掃といった発電所構内の管理、さらに地域の各種行事・イベントへの参加といった地域との共生までワンストップサービスで受託する。

 電力会社からの出力抑制要請(電力会社が必要に応じて太陽光発電で発電した電気の買い取りを制限できる制度)にも対応して、監視・制御センターでの遠隔操作で常時監視・制御するため、コスト低減と安全な運用が可能となる。既存の太陽光発電所からの受託件数増加が予想されているため、O&Mサービス収入をストック型ビジネスモデルの収益柱として育成する方針だ。

■15年12月期は特別損失発生で最終赤字拡大だが、営業赤字は縮小

 2月12日発表した前期(15年12月期)連結業績は、売上高が前々期(14年12月期)比3.9倍の7億96百万円、営業利益が1億47百万円の赤字(前々期は1億75百万円の赤字)、経常利益が2億09百万円の赤字(同2億46百万円の赤字)、純利益が8億11百万円の赤字(同2億74百万円の赤字)だった。なお配当は無配を継続する。自己資本比率は37.3%で同21.2ポイント低下した。

 太陽光発電開発案件譲渡に伴う太陽光パネル売買契約や他の譲渡案件の成約がズレ込んだため期初計画を下回り、特別損失を計上して純利益は赤字が拡大した。ただし太陽光発電関連に係る収益を計上して大幅増収となり営業赤字が縮小した。売上総利益率は29.9%で同1.5ポイント低下、販管費比率は48.4%で同49.2ポイント低下した。

 営業外費用では関係会社支払利息が増加(親会社リゾート&メディカルからの借入金に係る支払利息、前々期は3百万円計上、前期は16百万円計上)した。また持分法投資損益が悪化(前々期は損失5百万円計上、前期は損失7百万円計上)し、開業費償却が増加(前々期は2百万円計上、前期は27百万円計上)した。一方で支払手数料が減少(第15回新株予約権の行使等に伴う支払手数料、前々期は65百万円計上、前期は6百万円計上)した。

 なお1月20日に特別損失計上を発表し、減損損失3億17百万円(ヘルスケア事業における調剤薬局店舗用資産の減損1億15百万円、再生可能エネルギー事業における鹿児島県指宿市地熱発電所予定地に係る減損1億67百万円、環境事業における東環の収益性低下に伴うのれん減損34百万円)、開業費償却94百万円(ヘルスケア事業における仙真堂調剤薬局店舗等に係る開業費償却94百万円、再生可能エネルギー事業における日本地熱発電の創立費償却1百万円)、および訴訟損失引当金繰入額1億84百万円(バイナリー発電機2台に関する第三者異議訴訟が継続中のため、将来発生の可能性のある損失に備えた訴訟損失引当金繰入額)を計上した。前々期30百万円計上した事業整理損は一巡した。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、IT関連事業は売上高が同43.9%減の59百万円、営業利益が同72.4%減の7百万円、環境事業は売上高が同41.3%減の92百万円、営業利益が2百万円の赤字(前々期は16百万円の黒字)、ヘルスケア事業は売上高が69百万円(同0百万円)、営業利益が61百万円の赤字(同52百万円の赤字)、再生可能エネルギー事業は売上高が5億75百万円(同0百万円)、営業利益が80百万円(同32百万円の赤字)だった。

 IT関連事業はソフトウェア製品の更新需要などが減少した。環境事業は建物メンテナンスにおける大口契約の規模縮小などで収益性が低下した。ヘルスケア事業は仙真堂調剤薬局(14年12月1店舗目開業、15年5月2店舗目開業)の集客が計画を下回った。再生可能エネルギー事業は太陽光発電所開発案件の一部を譲渡して営業黒字化した。

 なお四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)48百万円、第2四半期(4月~6月)48百万円、第3四半期(7月~9月)4億59百万円、第4四半期(10月~12月)2億41百万円、営業利益は第1四半期73百万円の赤字、第2四半期90百万円の赤字、第3四半期28百万円の黒字、第4四半期12百万円の赤字だった。

■16年12月期は営業黒字予想で収益改善基調

 今期(16年12月期)連結業績予想(2月12日公表)は、売上高が前期(15年12月期)比22.5%増の9億76百万円、営業利益が44百万円の黒字(前期は1億47百万円の赤字)、経常利益が9百万円の赤字(同2億09百万円の赤字)、純利益が13百万円の赤字(同8億11百万円の赤字)としている。

 セグメント別には、IT関連事業の売上高が64百万円、営業利益が9百万円、環境事業の売上高が93百万円、営業利益が3百万円、ヘルスケア事業の売上高が1億18百万円、営業利益が2百万円の赤字としている。再生可能エネルギー事業について売上高が7億円、営業利益が2億58百万円を計画している。地熱発電については不確定要素が多いため売上を見込んでいないが、太陽光発電関連事業の本格化で収益改善基調だろう。

 なお15年12月に、連結子会社ターボリナックスが保有する関連会社の北京拓林思への出資持分全てを、北京拓林思の親会社である北京万里に譲渡(16年3月20日予定)すると発表している。北京拓林思は持分法適用関連会社から除外され、16年12月期に特別利益(関係会社株式売却益約16百万円)を計上する見込みだ。

 また2月19日に、持分法適用関連会社だった遺伝子治療研究所について、保有する全株式を譲渡(2月19日株式譲渡完了)したと発表している。持分法適用関連会社から除外されるとともに、16年12月期に特別利益(関係会社株式売却益約19百万円)を計上する。

■中期経営計画で17年12月期純利益8.4億円目標

 14年2月発表の中期経営計画ローリングプラン(15年12月期~17年12月期)では、経営目標値として17年12月期の売上高55億円、営業利益14億50百万円、経常利益14億円、純利益8億40百万円を掲げている。本計画では第15回新株予約権(14年12月発行)の行使は前提としていない。

 セグメント別(17年12月期、連結調整前)には、既存分野のIT関連事業が売上高1億20百万円、営業利益43百万円、環境事業が売上高1億30百万円、営業利益22百万円、新規分野のヘルスケア事業が売上高6億50百万円、営業利益1億40百万円、再生可能エネルギー事業が売上高46億円、営業利益14億25百万円の計画としている。ストック型ビジネスモデルのO&Mサービス収入が収益柱となって全体を牽引する計画だ。

 IT関連事業と環境事業は規模拡大ではなく、付加価値の高い商品・サービスの提供で収益性を確保するとともに、再生可能エネルギー事業への人員活用などでシナジー効果も高める方針だ。ヘルスケア事業は、新株予約権行使による資金調達の状況に合わせて、東北地方や北関東地方を中心に調剤薬局6店舗程度を開設する方針としている。

 なお2月19日にCHARACOM社との業務提携解消を発表した。15年9月にIT関連事業におけるキャラクターライセンス事業に関する業務提携基本契約を締結したが、具体的な業務を推進するための個別契約締結や取引に至らなかった。

 再生可能エネルギー事業の地熱・温泉バイナリー発電については、鹿児島県指宿市山川地区の2ヶ所において、源泉使用権および発電機を設置する土地を取得済みである。16年前半に10ヶ所程度で売電を開始し、17年12月期に収益が本格化する計画としている。再生可能エネルギー事業におけるストック型ビジネスモデルが牽引して収益改善基調だろう。

■有利子負債削減も進展

 14年12月発行の第15回新株予約権340個(=3400万株)について、割当先であるEVO FUNDから、S&BROTHERS(シンガポール)へ200個(=2000万株)、および当社第4位株主である須田忠雄氏へ35個(=350万株)譲渡した。なお第15回新株予約権の行使状況は、16年1月31日時点で未行使予約権個数325個となっている。

 15年8月には、親会社リゾート&メディカルとの間で14年9月に締結したコミットメントライン契約に基づく借入金3億68百万円を全額返済し、当該契約を解除した。再生可能エネルギー事業を中心として一定の収益が実現されたのを機に、借入金の返済により有利子負債の削減を図るとともに、親会社リゾート&メディカルからの独立性を明確にする。良好な関係は継続する。

■継続企業の前提に疑義注記、上場廃止にかかる猶予期間に入る見込み

 営業損失の発生および営業キャッシュ・フローのマイナスが10期継続して発生している。このため継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような状況が存在している。

 また15年12月期末において、4期連続で営業利益および営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなったため、上場廃止にかかる猶予期間に入る見込みだ。16年12月期に営業利益および営業活動によるキャッシュ・フローがいずれもマイナスに留まった場合には、JASDAQ市場の上場廃止基準に抵触し、当社株式は上場廃止となる。

■株価は調整一巡して切り返し

 株価の動きを見ると、地合い悪化も影響して水準を切り下げ、2月10日には56円まで下押す場面があった。その後は12日に91円まで急伸する場面があるなど、切り返しの動きも強めている。調整が一巡したようだ。

 2月23日の終値は68円、時価総額は約28億円である。週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、日足チャートで見ると25日移動平均線突破の動きを強めている。調整が一巡して反発展開だろう。

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