【鈴木雅光の投信Now】ハイ・イールド債ファンドの人気とそのリスクを検証する
- 2014/11/5 12:45
- 株式投資News
高金利債券を組み入れたハイ・イールド債ファンドが人気を集めている。投資信託の専門誌、投資信託事情が発表している「1年間継続して資金純増の人気ファンド」を見ると、対象ファンドは全部で77本。このうち14本が、ハイ・イールド債を組み入れて運用するファンドだ。
同じハイ・イールド債でも、投資対象国・地域別に分けると、次のようになる。
・米国=3本
・欧州=8本
・アジア=1本
・新興国=1本
・グローバル=1本
このように、欧州のハイ・イールド債に投資するファンドが今、人気を集めていることが分かる。
ハイ・イールド債とは、格付けがBB格以下のもので、元利金の支払いが滞るデフォルトリスクが高い半面、クーポンレートが高く設定されている社債のことだ。その分、高いリターンは期待できるが、反面、債券価格の価格変動リスク、信用リスクは高くなる。ハイ・イールド債を組み入れたファンドの大半は毎月分配型だが、国際投信投資顧問の「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」からの乗換対象としてこの手のファンドを検討しているのであれば、リスクの度合いが全く異なるものだという点を自覚しておく必要がある。
ハイ・イールド債ファンドで怖いのは、世界的に金融不安が高まった時に組入債券の価格が急落することもあるが、それ以上に注意しなければならないのは、市場の流動性リスクだ。いささか古いデータで恐縮だが、ハイ・イールド債市場の規模は、米国が約134兆円、欧州が約38兆円、新興国が約29兆円となっている(2013年12月末)。
米国のハイ・イールド債を組み入れているファンドは、まだ市場規模が大きいので、流動性欠如に陥るリスクは低いが、問題は欧州と新興国のハイ・イールド債市場だ。解約による資金流出が続いた時、まずは売りやすい債券から売却していくが、そうなると、ポートフォリオには売るに売れない、流動性の極めて低いクズ債券だけが残されることになる。そのような債券ばかりで構築されたポートフォリオが、満足のいくパフォーマンスを上げられるはずがない。運用実績はじり貧になる恐れがある。
「債券」という資産クラスを自分のポートフォリオに組み入れたいのであれば、このようなリスクの高いハイ・イールド債に投資するよりも、グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)のように、信用力の高いソブリン債を組み入れたファンドを買う方が、まだ理に適っていると思うが、いかがだろうか。(証券会社、公社債新聞社、金融データシステム勤務を経て2004年にJOYntを設立、代表取締役に就任、著書多数)