【アナリスト水田雅展の銘柄分析】クレスコの16年3月期第3四半期累計は大幅増益、通期は再増額が濃厚

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 クレスコ<4674>(東1)はビジネス系ソフトウェア開発を主力に、カーエレクトロニクス関連など組込型ソフトウェア開発も展開している。16年3月期第3四半期累計は大幅増収増益だった。通期も2桁増収増益・増配予想で再増額が濃厚だ。株価は地合い悪化の影響を受ける場面があったが切り返しの動きを強めている。指標面の割安感も強く調整が一巡して出直り展開だろう。

■ビジネス系ソフトウェア開発が主力のIT企業

 ビジネス系ソフトウェア開発(アプリケーション開発、基盤システム構築)事業を主力として、組込型ソフトウェア開発事業、その他事業(商品・製品販売)も展開している。15年3月期の顧客業種別売上構成比は、ソフトウェア開発の金融・保険関連41.2%、公共・サービス関連20.1%、流通・その他21.3%、組込型ソフトウェア開発のカーエレクトロニクス6.2%、通信システム3.8%、情報家電・その他6.9%だった。

 中期成長に向けた重点施策としては、品質管理とプロジェクトマネジメント力の向上、組込型ソフトウェア開発事業の再構築、新ビジネスモデル創出と事業領域拡大、クラウド関連ソリューションの展開、グループ連携強化による収益性改善、ニアショア開発・オフショア開発の推進(地方分散開発体制強化と海外開発体制整備)などを掲げている。

 なお2月1日、サッカーJ1リーグのFC東京(東京フットボールクラブ)とクラブスポンサー契約を締結したと発表している。また2月5日には、さまざまな新産業の発展を通じて日本経済の発展に貢献することを目的とする経済団体「新経済連盟」に入回したと発表している。

■オリジナル製品や次世代技術の開発を推進

 オリジナル製品に関しては「インテリジェントフォルダ」「クレアージュ」や、SAP基幹業務をモバイル化して業務効率を向上させる新ソリューション「モビック」などの拡販を推進している。

 15年5月には、旅行などのシーンで行われる点呼確認作業をビーコンとスマートデバイスを使って自動化するソリューション「みんなのてんこ」を販売開始した。訪日外国人旅行客に対するサービス向上を実現するため16カ国後に対応した適切な言語で通知する機能も備えている。

 15年5月にはBLE(Bluetooth Low Energy)技術に基づくIoT基盤プラットフォーム「BeaconBridge(ビーコンブリッジ)」の開発を発表した。15年6月には「BeaconBridge」に対して、Skeed社(東京都)と共同で次世代技術の自律分散型P2Pネットワークを活用する取組に着手すると発表した。

 15年7月には子会社クレスコワイヤレスが丸紅情報システムズと共同開発した単3電池2本型のビーコン(Beacon)デバイスの販売を開始した。スマートフォンやタブレットPCなどとBLE通信を行うビーコンデバイスである。15年10月にはクレスコワイヤレスがAPPLIYA社とスタンプ型のビーコンデバイス「Switch Beacon」と共同開発し、APPLIYA社が販売開始した。

■中期成長に向けてアライアンス・M&Aも積極活用

 得意分野を持つビジネスパートナーとのアライアンス・M&A戦略も積極活用している。

 13年4月ソリューション事業のクリエイティブジャパンを完全子会社化、企業コンサルティング事業のエル・ティー・エスを持分法適用会社化、13年9月三谷産業<8285>とクラウドサービス事業で協業、14年3月ゴマブックスと提携して企業内文書デジタルサービスの提供開始、14年8月高速クラウド構築支援サービスでSkeed社と技術提携、14年12月受託ソフトウェア開発のエー・アイ・エム・スタッフを持分法適用会社化した。

 15年3月には技術提携先のSkeedの第三者割当増資を引き受けて(出資比率12.1%)提携関係を強化した。15年4月にはSAP社の基幹業務パッケージの導入支援を主力とするエス・アイ・サービスの株式100%取得して完全子会社した。ERP事業を一段と強化する。

 15年5月には子会社のクレスコ北陸がアップゾーン(東京都)と資本業務提携してモバイルポータル事業に参入した。アップゾーンが提供するスマホ向けアプリケーション作成プラットフォーム「misterPARK」を中核に置いた多面的なモバイルポータル事業を展開する。

 15年7月にはソフトバンクの「IBM Watsonエコシステムプログラム」の初期エコシステムパートナーに選定された。テクノロジーパートナーとしてPepperをはじめとするロボット、モバイル、パソコンに対するさまざまなアプリケーション開発を通じてWatsonによるビジネス変革を支援する。

 15年9月にはKii社、KDDI<9433>、大日本印刷<7912>が設立したIoT時代の新たな企業間連携を生み出す企業連合「Kiiコンソーシアム」に参加した。現在21社が参加している。

 16年1月には連結子会社の再編(統合)を発表した。16年4月1日付で、SAP社のERPの導入支援・保守運営を展開する連結子会社クレスコ・イー・ソリューション(存続会社)が、SAP社のERPと各種顧客システムの連携を支援するエス・アイ・サービス(15年4月に完全子会社化)を吸収合併する。

■第4四半期の構成比が高い収益構造

 15年3月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)58億10百万円、第2四半期(7月~9月)61億89百万円、第3四半期(10月~12月)61億55百万円、第4四半期(1月~3月)69億09百万円、営業利益は第1四半期3億80百万円、第2四半期5億89百万円、第3四半期5億43百万円、第4四半期5億01百万円だった。

 第4四半期の構成比が高く、案件別の採算性も影響する収益構造だ。なお15年3月期の売上総利益率は18.0%で14年3月期比1.1ポイント上昇、販管費比率は10.0%で同0.4ポイント低下、ROEは14.1%で同3.4ポイント上昇、自己資本比率は60.8%で同1.3ポイント上昇した。配当性向は28.5%だった。

■16年3月期第3四半期累計は大幅増収増益

 2月5日発表した今期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比16.2%増の210億90百万円となり、営業利益が同29.0%増の19億51百万円、経常利益が同37.5%増の23億24百万円、純利益が同35.3%増の16億02百万円だった。

 金融・保険分野、公共・サービス分野を中心にソフトウェア開発事業が好調に推移して大幅増収増益だった。組込型ソフトウェア開発事業ではカーエレクトロニクス分野が好調だった。なお受注高は同17.2%増の221億21百万円だった。

 開発の効率化も進展して売上総利益率は18.6%で同0.5ポイント上昇、販管費比率は9.4%で同0.4ポイント低下した。営業外収益では有価証券売却益が増加(前期92百万円計上、今期2億23百万円計上)し、持分法投資利益が減少(前期33百万円計上、今期22百万円計上)した。営業外費用では有価証券評価損が縮小(前期66百万円計上、今期16百万円計上)した。特別利益では投資有価証券売却益が増加(前期1億23百万円計上、今期1億49百万円計上)し、保険解約返戻金が増加(前期2百万円計上、今期24百万円計上)した。特別損失では投資有価証券評価損28百万円を計上した。

 セグメント別の動向を見ると、ソフトウェア開発事業は売上高が同16.7%増の174億96百万円、営業利益(連結調整前)が同26.3%増の22億34百万円だった。売上高の内訳は金融・保険分野が同20.9%増の88億75百万円、公共・サービス分野が同24.2%増の44億77百万円、流通・その他分野が同2.5%増の41億44百万円だった。金融関連の開発規模拡大が継続しているようだ。

 組込型ソフトウェア開発事業は売上高が同14.0%%増の35億30百万円、営業利益が同17.1%増の5億01百万円だった。売上高の内訳は、通信システム分野が同8.1%減の6億62百万円、カーエレクトロニクス分野が同27.7%増の14億23百万円、情報家電・その他分野が同14.4%増の14億44百万円だった。カーエレクトロニクス分野は車載表示関連の開発が増加し、次世代の自動車自動走行関連の案件も含まれているようだ。

 商品・製品販売・その他は売上高が同2.6%減の63百万円、営業利益が37百万円の赤字(前年同期は26百万円の赤字)だった。

 なお四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)65億64百万円、第2四半期(7月~9月)72億55百万円、第3四半期(10月~12月)72億71百万円、営業利益は第1四半期4億23百万円、第2四半期7億85百万円、第3四半期7億43百万円だった。受注高は第1四半期72億86百万円、第2四半期70億27百万円、第3四半期78億08百万円だった。

■16年3月期増収増益基調で再増額が濃厚

 今期(16年3月期)通期の連結業績予想は前回予想(10月26日に増額修正)を据え置き、売上高が前期比10.1%増の276億円、営業利益が同14.3%増の23億円、経常利益が同16.0%増の26億円、純利益が同26.6%増の17億80百万円としている。

 配当予想(10月26日に増額修正)は前期比8円増配の年間46円(第2四半期末23円、期末23円)としている。予想配当性向は29.0%となる。なお配当に関しては、特別損益を零とした場合に算出される当期純利益の40%相当額をメドとした配当を継続的に実現することを目指している。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が76.4%、営業利益が84.8%、経常利益が89.4%、純利益が90.0%と高水準である。通期会社用には来期(17年3月期)以降の継続的な成長に向けての教育投資、新技術開発に関連する技術研究投資、社内作業効率向上化に関連するシステム開発投資、受託開発案件増加に対応した事務スペース拡充等の施策を織り込んで前回予想を据え置いたとしているが、第4四半期の構成比が高い収益構造であることも考慮すれば、通期会社予想に再増額が濃厚だろう。

 国内のIT投資需要は、クラウドやモバイル端末を活用したシステムへの移行、ITシステム基盤の統合・再構築、ビジネスプロセスの可視化・最適化、ビッグデータの分析と活用、仮想化技術の導入、ソーシャル・テクノロジーのビジネス活用などを背景として高水準に推移する見込みだ。中期的にも収益拡大基調だろう。

■株価は調整一巡して出直り

 なお14年11月のドイツ銀行ロンドン支店を割当先とする自己株式を活用した第三者割当による第1回~第3回新株予約権の発行、および新株予約権買い取り契約(行使許可条項付・ターゲット・イシュー・プログラム「TIP・2014モデル」)について、3月12日に第1回新株予約権の権利行使が全て完了した。

 第2回新株予約権については3月18日、5月12日、6月11日、7月9日、7月24日、8月21日、10月28日、そして11月25日に行使許可を発表している。

 株価の動きを見ると、地合い悪化の影響で2月12日に1547円まで調整する場面があったが、15年8月の昨年来安値1517円、そして15年9月の1544円を割り込むことなく、1700円台に戻して切り返しの動きを強めている。調整が一巡したようだ。

 2月26日の終値1744円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS158円94銭で算出)は10~11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間46円で算出)は2.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS990円11銭で算出)は1.8倍近辺である。なお時価総額は約209億円である。

 週足チャートで見ると直近安値圏で下ヒゲをつけ、さらに陽線を立てて調整一巡感を強めている。16年3月期増収増益・増配予想で再増額が濃厚であり、指標面の割安感も強めている。調整が一巡して出直り展開だろう。

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