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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本マニュファクチャリングサービスの16年3月期第3四半期累計は大幅増益、通期も営業増益・増配予想
- 2016/2/29 06:53
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
日本マニュファクチャリングサービス<2162>(JQS)は製造請負・派遣および製造受託EMSの大手である。パナソニックから譲り受けた電源関連のパワーサプライ事業が本格寄与して16年3月期第3四半期累計は大幅増収増益だった。通期も営業増益・増配予想で再増額余地がありそうだ。16年にはベトナムで自動車部品の製造受託を開始する。国内では改正労働者派遣法も追い風となる。株価は調整一巡して切り返しの動きを強めている。出直り展開だろう。
■製造請負・派遣事業、EMS事業、および電源関連のPS事業を展開
製造請負・派遣および製造受託EMSの大手である。製造請負・派遣、修理・検査受託、技術者派遣のヒューマンソリューション(HS)事業、子会社の志摩電子工業グループとTKRグループが展開する開発・製造受託のエレクトロニクス・マニュファクチャリング・サービス(EMS)事業、およびパナソニック<6752>から事業譲り受けた電源関連のパワーサプライ(PS)事業を展開している。
15年3月には兼松<8020>と資本・業務提携し、兼松が当社の第3位株主となった。兼松の部材調達力および販売力、当社の技術・製造ノウハウを相互活用することで、EMS事業拡大、戦略的部材調達、海外事業展開などで大きなシナジー効果が見込まれる。
■基本コンセプトは人材ビジネスとEMSの融合による「neo EMS」
基本コンセプトとして、日本、中国、ASEAN諸国における人材ビジネス事業とEMS事業の融合によるトータルソリューションサービス「neo EMS」を掲げている。
製造アウトソーシング企業NO.1を目指すとともに、サービスの一段の高付加価値化に向けて、開発・設計といった製造業の上流プロセス分野の機能を強化している。単なる製造アウトソーサーから、キーテクノロジーを有して技術競争力を備えた企業グループへの変革を推進する戦略だ。
13年10月にはTKRが日立メディアエレクトロニクス(日立ME)から電源事業、トランス事業、車載チューナー事業、映像ボード事業を譲り受け、水沢工場(岩手県)を取得した。
14年10月にはパナソニックから車載向けを除く電源・電源関連部品事業(高圧電源、低圧電源、マグネットロール、トランス)を譲り受け、受け皿会社パワーサプライテクノロジー(PST)が操業を開始した。パナソニックから引き継いだ取引社数は海外111社および国内90社で、主要顧客は日系複合機メーカーである。
日立MEおよびパナソニックからの事業譲受により、当社グループの電源事業は国内電源メーカー上位に匹敵する規模となった。電源に関する技術ノウハウの蓄積・融合を図り、PS事業を当社グループのキーテクノロジー分野としてLED照明、空気清浄器、エアコン、複写機向けなどに新規顧客開拓を推進する。さらにPS事業を中核としたグループリソースの再編も推進して、収益力を一段と向上させる方針だ。
14年10月には日本通運<9062>と、国内外の製造業務と物流業務を組み合わせた新たなワンストップサービスの構築に向けて業務提携した。製造業をターゲットに物流分野サービスを拡充し、19年度に売上高300億円を目指すとしている。
■中国では労働政策転換によって製造請負における競争優位性
中国での事業展開に関しては、14年3月施行の「中国労務派遣暫定規定」によって中国の労働政策が派遣から請負に転換する見込みとなり、14年5月には当社と子会社の北京中基衆合国際技術服務有限公司が、中国労務派遣専門委員会において発足した承欖(製造請負)研究プロジェクトに参画した。
16年3月の承欖(製造請負)法制化を目指しており、中国の製造業において製造請負の市場拡大が予想されるとともに、プロジェクトに参画している当社の競争優位性が期待されている。
■ASEAN諸国を中心にグローバル展開を加速
アジアへの展開ではマレーシアにおいて、TKRと志摩電子工業の事業構造改革による利益拡大を推進している。
14年9月には子会社nmsタイランドを設立し、カンボジアの人材エージェントと連携して製造業向けにタイ人とカンボジア人の派遣を開始した。14年10月には子会社nmsベトナムがNMSIRと事業提携してベトナムでの労働派遣ライセンスを取得した。
14年12月には子会社nmsタイランドがカンボジアの人材会社SOKおよびUNGの2社と、カンボジア人材のタイへの派遣事業について業務提携した。今後3年間でカンボジア人派遣在籍数1万人を目指すとしている。
15年11月にはベトナムに輸出加工企業(EPE)を設立して自動車関連部品の製造を開始すると発表した。EPEは一定の条件に基づいて製品すべてを輸出する外国企業のことで輸出入関税および付加価値税が免除される。日系自動車部品メーカーからの製造受託を受注済みで約1000名体制の稼働を見込んでいる。そして15年12月には出資額等の詳細を発表した。100%出資子会社のnmsベトナムを設立(1月14日に設立認可)して日系メーカーからの製造受託を推進する。
さらに兼松との北米を中心とした海外事業展開の協業推進により、EMSビジネスを拡大して中長期的に100億円の売上増を目指す方針だ。
■15年3月期第4四半期からPS事業を連結化
15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)116億30百万円、第2四半期(7月~9月)121億57百万円、第3四半期(10月~12月)108億15百万円、第4四半期(1月~3月)146億43百万円だった。営業利益は第1四半期87百万円、第2四半期1億49百万円、第3四半期1億10百万円の赤字、第4四半期3億67百万円だった。
パナソニックから譲り受けた一般電源事業(子会社PSTのPS事業)を第4四半期から連結化して収益が拡大した。なお15年3月期のROEは12.2%で14年3月期比3.3ポイント低下、自己資本比率は17.1%で同6.6ポイント低下した。配当性向は8.1%だった。
■16年3月期第3四半期累計は大幅増収増益、パワーサプライ事業が寄与
2月12日に発表した今期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比36.5%増の472億27百万円で、営業利益が同10.6倍の13億32百万円、経常利益が同5.1倍の9億73百万円、純利益が同5.9倍の2億36百万円だった。
中国における受注環境悪化の影響があったが、15年3月期第4四半期(1月~3月)から開始したPS事業が好調に推移し、EMS事業の収益改善も寄与した。売上総利益率は13.4%で同2.5ポイント上昇、販管費比率は10.5%で同横ばいだった。営業外では為替差損益が悪化(前期は差益78百万円計上、今期は差損2億67百万円計上)した。特別損失では子会社TKRの工場に関する減損損失1億63百万円、海外子会社税務関連損失31百万円、事業構造改革費用42百万円を計上した。
セグメント別に見ると、HS事業は売上高が同1.2%減の98億80百万円、営業利益(連結調整前)が40百万円(前年同期は52百万円の赤字)だった。生産効率改善が寄与した。EMS事業は売上高が同2.4%減の240億15百万円、営業利益が同26.5%増の2億15百万円だった。中国は受注環境の悪化と最低賃金の上昇などで減収減益だったが、国内は受注好調、マレーシアは事業構造改革の効果で収益が改善した。PS事業は売上高が133億31百万円、営業利益が10億69百万円だった。想定を上回る利益を確保できたようだ。
なお四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)155億12百万円、第2四半期(7月~9月)165億31百万円、第3四半期(10月~12月)151億84百万円で、営業利益は第1四半期4億59百万円、第2四半期4億31百万円、第3四半期4億42百万円だった。
■16年3月期大幅営業増益・増配予想、再増額余地
今期(16年3月期)通期の連結業績予想は前回予想(11月13日に売上高を減額、利益を増額)を据え置いて、売上高が前期比32.0%増の650億円、営業利益が同3.0倍の15億円、経常利益が同77.2%増の13億円、そして純利益が同1.6%増の5億80百万円としている。
海外EMS事業において白物家電を中心とした高収益案件の受注が増加し、PS事業において製造コストと販管費が想定以上に抑制されていることも寄与して大幅営業増益予想だ。売上総利益率は前期比1.0ポイント上昇の12.8%、販管費比率は同0.3ポイント低下の10.5%を想定している。
セグメント別の計画を見ると、HS事業は売上高が同5.2%増の140億円で、セグメント利益(連結調整前)が2億円(前期は17百万円の赤字)、EMS事業は売上高が同1.1%減の320億円で、セグメント利益が同10.7%増の2億90百万円、PS事業は売上高が同5.3倍の190億円(前期は第4四半期の35億73百万円)で、セグメント利益が同4.2倍の10億円(同2億37百万円)としている。
配当予想(11月13日に増額修正)は前期比2円増配の年間7円(期末一括)としている。予想配当性向は11.9%となる。配当の基本方針については総還元性向20%を中期目標としている。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が72.7%、営業利益が88.8%、経常利益が74.8%、純利益が40.7%である。利益進捗率はややバラツキがあるが、営業利益の進捗率は高水準である。EMS事業およびPS事業の一段の収益改善が期待され、改正労働者派遣法も追い風となる。通期営業利益予想には再増額余地があるだろう。
■中期目標として総還元性向20%
中期的な目標数値として、20年3月期の売上高1000億円、売上高営業利益率3.5%を掲げている。利益還元については中期目標として総還元性向20%を目指している。
国内HS事業では採用の確保が課題となるが、海外HS事業におけるアセアン諸国での製造派遣・製造請負事業の拡大、海外EMS事業における事業構造改革の効果や好採算案件の受注拡大、PS事業の本格寄与、自動車部品製造受託への展開などで中期的に収益拡大が期待される。
■株価は調整一巡して切り返し
株価の動きを見ると、地合い悪化の影響で2月15日に416円まで下押す場面があった。ただし15年2月の昨年来安値386円を割り込むことなく切り返し、18日には535円まで戻した。調整が一巡したようだ。
2月26日の終値491円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS58円71銭で算出)は8~9倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間7円で算出)は1.4%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS537円16銭で算出)は0.9倍近辺である。時価総額は約57億円である。
週足チャートで見ると52週移動平均線を割り込んだが、直近安値圏で陽線を立てて調整一巡感を強めている。好業績を評価して出直りだろう。