【アナリスト水田雅展の銘柄診断】協立情報通信は16年2月期業績予想に増額余地、法人ソリューション事業が好調

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 協立情報通信<3670>(JQS)は法人向けソリューション事業とモバイル事業を展開している。16年2月期はマイナンバー関連を含む法人向けソリューション事業の好調が牽引して通期会社予想に増額余地がありそうだ。株価は地合い悪化の影響で水準を切り下げたが、調整が一巡して出直り展開だろう。

■法人向けソリューション事業とモバイル事業を展開

 法人向けソリューション事業(情報通信システムソリューション、会計情報ソリューション、情報活用教育ソリューション、情報活用レンタルソリューション)、およびモバイル事業(法人向けモバイルソリューション、ドコモショップ6店舗運営)を展開している。

 企業のICT(情報通信技術)化実現に向けて、NEC<6701>、オービックビジネスコンサルタント<4733>、NTTドコモ<9437>、サイボウズ<4776>、日本マイクロソフトなどパートナー企業の製品・サービスを融合し、情報通信インフラ機器の販売だけでなく、システム構築から導入・保守・運用・教育までをソリューションとして提供している。

 ソリューション事業では、情報通信システムソリューションでNECのPBX(構内交換機)、会計情報ソリューションでオービックビジネスコンサルタントの「奉行シリーズ」をベースとして、中堅・中小企業向けを中心に情報インフラ、情報コンテンツ、情報活用支援(プラクティカルユース)の3分野を統合した経営情報ソリューションを、ワンストップサービスで提供していることが強みだ。

 さらに常設デモスペースの体感型フューチャーラボ「情報創造コミュニティー」において、製品活用体験セミナー、フェア、イベント、システム導入相談会、教育サービスなどを提供していることも特徴だ。

 モバイル事業では、NTTドコモの一次代理店であるティーガイア<3738>の代理店として、ドコモショップ6店舗(東京都内2店舗、埼玉県内4店舗)を運営し、個人向けモバイル端末などの店頭販売、および法人向けモバイルソリューションを展開している。

■第1四半期の構成比がやや高い収益構造

 15年2月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)15億47百万円、第2四半期(6月~8月)14億43百万円、第3四半期(9月~11月)13億66百万円、第4四半期(12月~2月)14億10百万円、営業利益は第1四半期1億02百万円、第2四半期88百万円、第3四半期24百万円、第4四半期52百万円だった。

 法人向けソリューション事業は企業のIT投資関連のため、3月期決算企業の年度末となる第1四半期の構成比がやや高くなる傾向がある。また15年2月期の売上総利益率は30.4%で14年2月期比2.9ポイント低下、販管費比率は25.8%で同3.5ポイント低下、ROEは22.3%で同7.3ポイント上昇、自己資本比率は42.2%で同3.0ポイント上昇した。配当性向は30.1%だった。

■16年2月期第3四半期累計は大幅増益

 今期(16年2月期)第3四半期累計(3月~11月)の非連結業績は、売上高が前年同期比6.7%増の46億51百万円、営業利益が同28.2%増の2億77百万円、経常利益が同29.6%増の2億80百万円、純利益が同25.2%増の1億74百万円だった。

 モバイル事業の収益は低水準だったが、ソリューション事業が好調に推移した。売上総利益率は30.9%で同0.5ポイント上昇、販管費比率は25.0%で0.4ポイント低下した。

 ソリューション事業は、売上高が同22.2%増の15億55百万円、営業利益が同2.1倍の2億53百万円だった。情報創造コミュニティーの移転・改装に伴って減価償却費や消耗品費が増加したが、PBX(構内交換機)リプレース需要の取り込みや大型案件の計上が寄与した。マイナンバー関連案件も顕在化しているようだ。受注高は同52.4%増の8億49百万円、第3四半期末の受注残高は同24.9%増の2億21百万円だった。

 モバイル事業は、売上高が同0.4%増の30億95百万円と前年同期水準を維持したが、営業利益が同74.9%減の14百万円だった。第2四半期(6月~8月)に来店客数と販売台数が減少したことに加えて、手数料収入の減少、端末仕入原価の上昇、広告費や人件費の増加、三郷インター店改装関連費用の発生などで営業損益が悪化した。ただし第3四半期(9月~11月)は来店客数が回復傾向となり、第2四半期比で売上高、営業損益とも改善した。

 なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)17億01百万円、第2四半期(6月~8月)14億30百万円、第3四半期(9月~11月)15億19百万円、営業利益は第1四半期1億37百万円、第2四半期64百万円、第3四半期75百万円だった。

■16年2月期増収営業増益予想、第3四半期累計が高進捗率で通期増額余地

 今期(16年2月期)通期の非連結業績予想(4月10日公表)は、売上高が前期比5.0%増の60億56百万円、営業利益が同11.9%増の3億01百万円、経常利益が同11.1%増の3億02百万円、純利益が同16.8%減の1億81百万円としている。

 純利益は前期計上した特別利益の移転補償金が一巡して減益予想だが、法人向けソリューション事業の好調が牽引し、減価償却費増加などを吸収して2桁営業増益・経常増益予想だ。

 セグメント別の計画については、ソリューション事業の売上高が同19.0%増の20億10百万円、営業利益が同71.1%増の2億81百万円、モバイル事業の売上高が同0.8%減の40億46百万円、営業利益が同80.9%減の20百万円としている。

 ソリューション事業では、パートナー企業との共創展開(共同営業やセミナー・イベントの共同開催)の効果で、情報創造コミュニティーへの大手企業の新規来場が増加基調である。さらにPBXリプレース需要を起点とした案件の高度化・多様化・大型化なども寄与する。人事・給与システムのバージョンアップや収集・保管サービスを含むマイナンバー関連案件も受注が顕在化している。

 モバイル事業では、販売台数に占めるiPhoneの構成比が上昇しているため、営業損益は第4四半期(12月~2月)も低水準の見込みだ。ただし端末の利活用に関するサービス提案・提供による顧客の囲い込み強化、一部店舗におけるマイショップラウンジの設置や開店時間の早期化など、攻めの集客対策を実施して販売台数の増加や好採算の副商材販促などに繋げる方針だ。

 なお光コラボレーションモデル事業者であるティーガイアからの再卸を受けて、自社ブランドによる法人向け光アクセスサービス「KCC光powered by TG光」事業を16年1月から開始する。当社の強みである通信機器の販売・設置・工事・保守に加えて、光回線までワンストップでの提供が可能になる。

 配当予想については、前期の創業50周年記念配当5円を落として、同5円減配の年間50円(期末一括)としている。予想配当性向は33.0%となる。継続的かつ安定的な配当の実施を基本方針として、配当水準については業績連動による適正な配当とともに、業績悪化時も一定水準を維持するとしている。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は、売上高が76.8%、営業利益が92.1%、経常利益が93.0%、純利益が96.2%である。3月期決算企業の年度末となる第1四半期の構成比が高い収益構造であることを考慮しても高水準である。不透明要因が多いとして通期会社予想を据え置いたが、ソリューション事業が好調に推移して増額余地がありそうだ。

■ストック型モデルの強化で高収益化目指す

 企業のICT投資需要は「クラウド」「モバイル」「セキュリティ」をキーワードとして高水準に推移することが予想されるため、中期的に法人向けソリューション提案力向上によって付加価値提供へのシフトを加速する。

 ストック型収益モデルを強化して利益率を一段と向上させる方針であり、中期経営計画では目標値として17年2月期売上高76億20百万円、営業利益7億04百万円を掲げている。中期的に収益拡大基調で一段の高収益化も期待される。

■株主優待制度は2月期末に実施

 株主優待制度については、毎年2月末時点で500株以上~1000株未満保有株主に対して島根県仁多郡産コシヒカリ「仁多米」2kg(1500円相当)、1000株以上保有株主に対して同5kg(3700円相当)を贈呈する。

■株価は調整一巡して出直り

 株価の動きを見ると、地合い悪化の影響で水準を切り下げ、2月25日昨年来安値となる1560円まで下押す場面があった。ただし終値ベースでは1600円台を維持している。

 2月26日の終値1650円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS151円41銭で算出)は10~11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間50円で算出)は3.0%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS886円03銭で算出)は1.9倍近辺である。時価総額は約20億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを抑える形だが、直近安値圏の下ヒゲで調整一巡感を強めている。指標面に割安感があり、調整が一巡して出直り展開だろう。

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