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【小倉正男の経済羅針盤】トランプ氏が大統領になったら世界経済は・・・
- 2016/2/29 10:16
- 小倉正男の経済コラム
■ローマ法王が批判しても勢いは止まらず
ドナルド・トランプ氏は、倒産・破産は数知れずという経営者である。リーマンショックの不動産不況時ももちろん破産している。
それでもいまや共和党の大統領候補になろうという勢いである。
アメリカでは、倒産・破産はさほど問題にされない模様だ。それは凄いことだが、トランプ氏の場合、1回や2回のことではないようだから、あまりにも凄すぎる。
アメリカのメディアは、トランプ氏には批判的だ。「共和党のリーダーはトランプを大統領候補から降ろせ」――そんな露骨な論調を打ち出している。しかし、選挙で決めることなので、勝手に降ろしたり引っ込めたりはできるわけもない。
ローマ法王まで、「壁をつくるのはキリスト教徒ではない」とトランプ氏を批判した。異例の批判である。しかし、それでトランプ氏の支持が低下したわけではない。むしろ、勢いを増している。
■「イラク戦争」の後遺症・反動を背負って支持を増やす
トランプ氏が言っていることは内向きなことだ。メキシコ国境に「万里の長城」を築いて、メキシコからの移民を許さない。メキシコからの移民は「麻薬密売人」や「レイプ犯」だから、万里の長城で足止めするというのである。
トランプ氏は、万里の長城を建築する費用はメキシコが負担しろ、と主張している。メキシコは、トランプ氏は大金持ちなのだから、自分で負担しろ、と――。
「イラク戦争」――アメリカが過剰に世界に介入したその後遺症が癒されていない。アメリカは、「イラク戦争」に3兆ドルの戦費を費やした、といわれている。ひどく贅沢に税金を食ったわけである。膨大な財政赤字が止まらない。
トランプ氏は、その後遺症や反動を背負って発言している。アメリカは自国のことだけを考えていればよい――。日米安保も、アメリカを守らないのに日本だけを守るのはおかしい。日本を守ってやっているのだから、おカネをもっと払わせろ。
経済においてもTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)には反対している。保護主義的な考えを基調としている。一国だけで繁栄できるわけではないというのに。
■大統領になったら金利を下げるのか上げるのか
トランプ氏は、本来は「イラク戦争」を犯しかねないものを感じるが、皮肉にも「イラク戦争」の後遺症や反動から支持を受けている。過激であるのは間違いないが、アメリカ一国が身勝手に繁栄したいという気分に満ちた過激さにみえる。
トランプ氏は、大統領になったら、どのような経済政策を採るのか――。例えば、金利は下げるのか、上げるのか。
不動産王だから、金利は下げるのではないか。大統領なのにまたまた破産をするわけにもいかないから・・・。いや、単純な推測は控えなければならない。
しかし、どちらにせよ、世界経済全体よりはアメリカ一国に身もふたもなく重心を置くのは間違いない。
仮にトランプ氏にアメリカを任せれば、世界経済が長期のスランプになりかねないのではないか。中国の巨大バブル崩壊が避けられないいま世界はトランプ氏という「不確実性」まで抱えたくないものだが・・・。
(経済ジャーナリスト 『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所)など著書多数。東洋経済新報社編集局・金融証券部長、企業情報部長,名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事など歴任して現職)