【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アートスパークHDは調整一巡して水準切り上げ、自動運転関連のテーマ性で13年10月高値目指す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 電子書籍ビューアやグラフィクス制作支援ソフトのアートスパークホールディングス<3663>(東2)の株価は、調整が一巡して水準切り上げの動きが本格化してきた。1月7日にはストップ高水準の785円まで急伸する場面があった。自動車の自動運転関連というテーマ性もあり、14年9月の872円、さらに13年10月の1022円を目指す展開だろう。

 グラフィクス技術のセルシスとエイチアイが12年4月に統合した持株会社で、電子書籍ビューア「BS Reader」やグラフィクスソリューションなどのコンテンツソリューション事業、グラフィクスコンテンツ制作支援ツールなどのクリエイターサポート事業、3Dグラフィックス描画エンジンなどのUI/UX事業を展開している。アプリケーション事業は戦略的に事業縮小を進めている。

 マルチデバイス対応の電子書籍ビューア「BS Reader」は、インフォコム<4348>グループのアムタスの電子書籍配信サービス「ekubostore」や、ソフトバンクモバイルのスマートフォン向け総合電子書籍サービス「スマートブックストア」など897以上の電子書籍配信サービスで利用されている。

 またマンガ制作ソフト「ComicStudio」は累計出荷本数が160万本を超え、マンガ・イラスト制作ソフト「CLIP STUDIO」は40万本を超えている。クリエイターの創作活動を支援するサイト「CLIP」は14年6月末時点の登録者数が41万人となった。

 戦略分野に対して積極投資を推進している。13年12月にエイチアイが自動運転関連ベンチャーのZMPの第三者割当増資の一部を引き受け、14年2月にエイチアイがエイチアイ関西の株式を取得、14年4月にエイチアイが組み込み機器向けソフトウェア開発のユーアイズデザインの株式を取得した。

 エイチアイとユーアイズデザインは、15年1月14日~16日開催の自動車次世代技術専門展「オートモーティブ ワールド2015:第3回コネクティッド・カー EXPO」に出展する。次世代車載HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)などを展示し、自動運転関連ベンチャーのZMPとのコラボレーションデモも展示する。

 また1月6日にはエイチアイが、米国で開催される世界最大規模の家電見本市CESにおいて、BlackBerryの子会社であるQNX社のブースで次世代車載HMIをデモ展示すると発表している。

 前期(14年12月期)の連結業績見通し(1月31日公表)は、売上高が前期比2.4%増の37億75百万円、営業利益が63百万円の黒字(前期は69百万円の赤字)、経常利益が36百万円の黒字(同68百万円の赤字)、純利益が同39.3%減の26百万円としている。

 第3四半期累計(1月~9月)は前年同期比15.3%減収で、営業利益、経常利益、純利益とも前年同期に比べて赤字幅が拡大した。クリエイターサポート事業は増収で営業黒字化したが、UI/UX事業でロイヤリティ収入の売上計上が第4四半期(10月~12月)にズレ込んだことに加えて、持分法適用会社のガラットに対する持分法投資損失なども影響したようだ。

 通期ベースでは、コンテンツソリューション事業での法人向けグラフィクス関連の強化、クリエイターサポート事業での「CLIP STUDIO」シリーズの拡販、UI/UX事業での受託開発案件の受注活動強化、そしてロイヤリティ収入の計上などで増収見通しとしている。利益面では製品開発の効率化や原価管理の徹底も寄与して営業黒字化、経常黒字化見通しだ。今期(15年12月期)の収益改善も期待される。

 株価の動きを見ると、12月22日の直近安値528円から切り返しの展開となり、1月7日にはストップ高水準の785円まで急伸する場面があった。調整が一巡して水準を切り上げる動きだ。

 1月7日の終値749円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS3円90銭で算出)は192倍近辺、前々期実績PBR(前々期実績の連結BPS340円55銭で算出)は2.2倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線を回復して上伸した。また週足チャートで見ると26週移動平均線がサポートラインとなって反発し、下値切り上げの展開が続いている。自動車の自動運転関連というテーマ性もあり、14年9月の872円、さらに13年10月の1022円を目指す展開だろう。

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