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【小倉正男の経済羅針盤】マイナス金利は応急的な「防火壁」
- 2016/3/4 09:47
- 小倉正男の経済コラム
■中国のバブル崩壊の飛び火をどう防ぐか
このところを見ていると、世界は中国の「バブル崩壊」を当然のものとして黙殺しているようだ。
上海の株式市場が下げようが上げようが、関係ないといった状況になっている。
中国経済の失速、これはもうはどうにも仕方がない。「社会主義市場経済」の因果応報、自業自得というしかない――。
むしろ、その結果としての石油価格の低落の度合いに焦点が移っている。これはアメリカの新興ビジネス・シェールオイルの盛衰に関係している。シェールオイル・バブルに乗って大量に出廻っているジャンク債などの金融不安に火をつけることになりかねない。
世界は、旺盛な需要を巻き起こしてきた中国の巨大なバブル崩壊に直面して、脆弱な構造を曝け出している。
■マイナス金利は中国のバブル崩壊の「防火壁」
中国のバブル崩壊の飛び火をどう防ぐのか――。「防火壁」が必要になってくる。
日銀が踏み込んだマイナス金利は、中国のバブル崩壊の飛び火を防ぐものと思えばわかりやすいのではないか。意図としては、「危機管理」=クライシスマネジメント・・・。そのぐらいしか見当たらない。
中国のバブル崩壊によって石油価格が低落すれば、シェールオイル・バブルも崩壊に連れ添うしかない。人民元もドルも不安が生じる――。
今年前半の急激な「円高ドル安」現象は、そうした事態によってもたらされたといってよいのではないか。
石油価格が低落すれば、日本のファンダメンタルズは改善される。日本が購入している最大の品目は石油――、貿易収支黒字は増大する。円は、相対的に安全な資産ということになる。円は大幅上昇し、ところが株価は大幅下落・・・、大混乱となった。
■安倍総理が投げる球種は・・・賃上げ・規制緩和
マイナス金利になったからといって、企業活動におカネが廻っていくとは考えにくい。億ションなど不動産購入におカネが向かうというのもどうだろうか。
中国からの不動産投資、国内の相続税対策投資はピークを打ったのではないか――。2020年の東京オリンピックまで景気が持続して回復して、億ションがずっと人気というのも楽観的すぎる・・・。
マイナス金利は、このコラムで1月25日に「いまでしょ」と書いたように、「円高ドル安」による株式市場の急低落に対する応急的な危機管理でしかないのではないか。
となれば、困難なところだが、賃上げとか規制緩和とか、金融政策以外の政策を動員しないと景気テコ入れにはならない。マイナス金利はあくまで応急措置でしかない。
日銀としてはやれることはやったという「心境」ではないか。ボールは日銀から政府に返された。ボールは安倍晋三総理のグラブのなかにある。
さて、投げる球種は・・・。賃上げ・規制緩和――、アベノミクスとしては正念場、覚悟を問われている。
(経済ジャーナリスト 『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所)など著書多数。東洋経済新報社編集局・金融証券部長、企業情報部長,名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事など歴任して現職)