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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】キーウェアソリューションズの16年3月期通期業績は大幅増益・復元配予想、収益改善基調
- 2016/3/14 07:47
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
キーウェアソリューションズ<3799>(東2)はシステム開発事業やSI事業を展開している。16年3月期通期は大幅増益・復元配予想で収益改善基調だ。マイナンバー関連、サイバーセキュリティ関連に加えて、農業ICT化サービスはTPP(環太平洋パートナーシップ)関連として注目される。株価は地合い悪化の影響を受ける場面があったが、調整が一巡して出直り展開だろう。
■NEC向け主力にシステム開発事業やSI事業を展開
公共システムやネットワークシステムなどのシステム開発事業、SI(システムインテグレーション)事業、プラットフォーム事業、その他事業(運用・保守、機器販売、フロンティア事業など)を展開している。
主要顧客は、筆頭株主であるNEC<6701>グループ向けが約4割を占め、NTT<9432>グループ、JR東日本<9020>グループ、三菱商事<8058>グループ、日本ヒューレット・パッカードなどが続いている。
ERP(統合業務パッケージ)関連やセキュリティ関連を一段と強化するとともに、NECと連携して医療分野や流通・サービス業分野にも事業領域を広げ、さらに農業ICT化分野にも参入している。
■医療分野を強化
15年1月には経済産業省「平成26年度健康寿命延伸産業創出推進事業」の「職場における健康投資に関する効果指標および投資環境整備(健康データのオープン化・小規模事業所)」に、職域健康投資コンソーシアムとして参画した。また総務省「新たなワークスタイルの実現に資するテレワークモデルの実証」プロジェクトにモデル企業として選ばれ、15年1月から実証を開始している。
15年10月には、東北福祉大学健康科学部の関田康慶教授(東北大学名誉教授)の医療安全研究グループ、およびアウトカム・マネジメント(福島県相馬郡)と共同で、医療安全管理モニタリング情報システム「HoSLM(ホスルム)」を開発し、医療機関向けに販売開始した。
■農業のICT化サービス分野に参入
15年3月には、自治体向けに農作物の品質・生産性向上や栽培技能の継承を支援する農業ICTサービス「OGAL(オーガル)」シリーズの提供を開始した。圃場に設置した各種センサーから収集した環境情報を遠隔からリアルタイムでモニタリングできるクラウド型サービスで、14年6月に宮城県亘理町いちごファームが導入して研究利用が開始されている。
また慶応義塾大学SFC研究所が農業ICTの普及と農業情報標準化に向けて設立したアグリプラットフォームコンソーシアムに参画した。政府が取り組む農業分野IT施策方針「農業情報創成・流通促進戦略」などを踏まえて、産学連携により国の農業IT施策の実地検証を行うとしている。
15年7月には地方創生に向けた新規就農者育成を支援するため、農業ICTサービス「OGAL(オーガル)」にNECソリューションイノベータの「NEC営農指導支援システム」との連携機能を実装し、自治体・JA・農業法人に対して提供開始した。
■第4四半期の構成比が高い収益構造
15年3月期の四半期別業績の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)33億34百万円、第2四半期(7月~9月)39億19百万円、第3四半期(10月~12月)40億67百万円、第4四半期(1月~3月)50億62百万円、営業利益は第1四半期3億24百万円の赤字、第2四半期1億95百万円の赤字、第3四半期70百万円の黒字、第4四半期4億51百万円の黒字だった。
第4四半期の構成比が高い収益構造である。そして不採算案件が一巡して営業損益は改善基調だ。
■16年3月期第3四半期累計は赤字縮小
今期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)連結業績は、売上高が前年同期比1.6%減の111億39百万円、営業利益が3億27百万円の赤字(前年同期は4億49百万円の赤字)、経常利益が3億12百万円の赤字(同4億63百万円の赤字)、純利益が3億74百万円の赤字(同5億32百万円の赤字)だった。全体の受注高は同2.4%減の112億94百万円だった。
官庁系・運輸系の既存顧客からのシステム更新が端境期のため受注高、売上高が減少したが、不採算・低採算プロジェクトの減少などで赤字が縮小した。売上総利益率は14.8%で同2.3ポイント上昇、販管費比率は17.7%で同1.2ポイント上昇した。営業外収益では投資事業組合運用益が増加(前期6百万円計上、今期16百万円計上)し、営業外費用では支払手数料が増加(前期15百万円計上、今期29百万円計上)した。また持分法投資損益が改善(前期は損失13百万円計上、今期は利益24百万円計上)した。
セグメント別に見ると、システム開発事業は受注高が同10.9%減の72億43百万円、売上高が同7.7%減の71億78百万円、営業利益(連結調整前)が2億06百万円の赤字(同3億56百万円の赤字)だった。メディア系で新規大型案件を受注したが、官庁系・運輸系の既存顧客からのシステム更新が端境期のため受注高、売上高とも減少した。ただし不採算プロジェクトの抑制強化などで営業赤字が縮小した。
SI事業は受注高が同18.8%減の11億25百万円、売上高が同5.5%減の14億33百万円、営業利益が同62.0%増の87百万円だった。ERP系の大型案件や既存顧客の改修案件の獲得に至らず、受注が計画を下回ったが、営業損益は改善した。
プラットフォーム事業は、受注高が同2.5倍の19億17百万円で、売上高が同78.2%増の12億83百万円、営業利益が51百万円の赤字(同1億15百万円の赤字)だった。インフラ構築系の大型案件が寄与して受注高、売上高とも大幅増となり、増収効果で営業赤字が縮小した。
その他は、受注高が同22.2%減の10億08百万円、売上高が同4.6%減の12億43百万円、営業利益が82百万円の赤字(同38百万円の赤字)だった。機器およびライセンスなどの製品販売は堅調だったが、EC/Web系の案件減少を補うに至らなかった。
なお四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)32億31百万円、第2四半期(7月~9月)41億85百万円、第3四半期(10月~12月)37億23百万円、営業利益は第1四半期2億91百万円の赤字、第2四半期13百万円の黒字、第3四半期49百万円の赤字だった。
■16年3月期通期は大幅増益・復元配予想
今期(16年3月期)通期の連結業績予想(5月12日公表)は、売上高が前期比8.0%増の177億円、営業利益が5億円(前期は2百万円)、経常利益が4億20百万円(同65百万円)、そして純利益が3億70百万円(同78百万円の赤字)としている。配当予想は年間10円(期末一括)の復元配で予想配当性向は22.5%となる。
不採算・低採算案件の減少、マイナンバー制度(社会保障・税番号制度)関連のシステム開発需要、および販管費の抑制などの効果で収益が大幅に改善する見込みだ。通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は低水準だが、第4四半期の構成比が高い収益構造であり、通期ベースで収益改善基調が期待される。
■中期計画で18年3月期営業利益10億円目標
16年3月期を初年度とする新中期経営計画では長期基本方針を、既存事業の収益性向上と安定化、ポートフォリオの多様化、経営基盤の整備・改革としている。
既存事業のシステム開発事業では収益性の高い案件へのリソースシフト、SI事業ではSAPビジネスの拡大やコンサルティングファームとの連携推進などによるERP事業の売上・利益の拡大、またフロンティア事業(新規事業)ではスマートアグリやヘルスケア・医療分野でのビジネスチャンス創出を推進する。
経営目標値としては18年3月期売上高190億円、営業利益10億円、売上高営業利益率5.3%を掲げている。プロジェクト横断機能のさらなる強化や、マイナンバー制度関連のビジネスの取り込みも推進する方針だ。
国・地方を通じた行政情報システムの改革、20年東京夏季五輪に向けたITインフラ投資需要、さらにマイナンバー制度関連やサイバーセキュリティ関連なども寄与して受注拡大が期待される。収益は改善基調だろう。
■株価は調整一巡して出直り
株価の動きを見ると、地合い悪化の影響で2月12日の375円まで調整したが、15年2月の昨年来安値369円を割り込むことなく切り返している。3月11日には468円まで急伸する場面があった。調整が一巡したようだ。
3月11日の終値446円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS44円47銭で算出)は10倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は2.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS702円85銭で算出)は0.6倍近辺である。時価総額は約41億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線を突破した。調整が一巡して強基調に転換する動きだ。週足チャートで13週移動平均線を突破すれば出直りの動きが本格化しそうだ。