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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】朝日ラバーは16年3月期と中期計画の減額を嫌気したが下値固め完了感、PBR1倍割れ
- 2016/3/21 08:29
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
朝日ラバー<5162>(JQS)は分子接着・接合技術をコア技術として、車載用LED照明光源カラーキャップやRFIDタグ用ゴム製品などを展開している。株価は16年3月期業績予想や中期計画の減額を嫌気して安値圏だが、15年8月の昨年来安値を割り込むことなく下値固め完了感を強めている。0.8倍近辺の低PBRに割安感があり、反発のタイミングだろう。
■車載用小型電球・LED照明の光源カラーキャップが主力
自動車内装照明関連などの工業用ゴム製品、スポーツ用ゴム製品(卓球ラケット用ラバー)、医療・衛生用ゴム製品(点滴輸液バッグ用ゴム栓など)、機能製品のRFIDタグ用ゴム製品などを展開している。
自動車内装関連の車載用小型電球の光源カラーキャップ「ASA COLOR LAMPCAP」や車載用LED照明の光源カラーキャップ「ASA COLOR LED」が主力製品である。車載用の「ASA COLOR LED」は高級車向けに加えて、小型車や軽自動車向けにも採用が拡大している。
■シリコーンゴムや分子接着技術をベースにした製品開発力が強み
シリコーンゴムや分子接着技術をベースにした製品開発力が強みである。新製品では、分子接着技術を活用した機能製品のRFIDタグ用ゴム製品の増産を進め、医療分野の新製品プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)用ガスケットの量産も開始した。
■マイクロ流体デバイスの新工場(第2白河工場)着工・竣工延期
またNEC<6701>のポータブルDNA解析装置向けマイクロ流体デバイスについては14年10月に量産を開始した。マイクロ流体デバイスは分子接着技術を活用した製品で、NEC向け以外の複数案件も商談中である。
15年8月25日に「新工場の建設および補助金収入による特別利益および特別損失の計上のお知らせ」を発表した。マイクロ流体デバイスの17年3月期以降の受注状況を踏まえて生産能力を増強するため、またライフサイエンス分野や体外診断用途などの医療分野における新製品開発を行うため、福島県白河市の工業団地「工業の森・新白河」内に所有している当社白河工場の隣接地に、新工場(第2白河工場)を建設する。総投資額は約11億60百万円、15年9月着工予定、16年春竣工予定(2月23日にスケジュール変更を発表)である。
新工場建設および初期導入の生産設備投資は、マイクロ流体デバイスに関する事業として、福島県の平成27年度福島医療・福祉機器開発・事業化事業費補助金の補助対象事業として採択・交付決定された。交付金額は最大7億50百万円で設備稼働実績後に受領する。
これによって補助金収入を特別利益に計上し、補助金のうち固定資産取得に該当する分について圧縮記帳処理を行い、固定資産圧縮損として特別損失を計上する。現時点では確定した交付金額および交付時期が未定だが、確定次第速やかに公表するとしている。
なお2月23日に「新工場の建設および補助金収入による特別利益および特別損失発生のお知らせ」の一部変更を発表した。受注状況および今後の事業環境を勘案した結果、15年9月着工予定・16年春竣工予定としていたスケジュールを、16年6月着工予定・17年2月竣工予定に延期した。福島県の平成27年度福島医療・福祉機器開発・事業化事業費補助金の補助対象事業として採択・交付決定されているが、福島県に事業年度の変更手続きを申請中としている。また16年3月期の業績予想に対する影響はないとしている。
■見やすく疲れにくい自動車内装照明の開発開始
15年9月には埼玉大学と連携して、色のバラつきが少なく視認性に優れ、疲労低減性のある自動車内装照明用LEDの蛍光体層の共同開発を開始すると発表した。LEDの光を波長変換する蛍光体を組み合わせ、人間工学に基づいて運転者にとって見やすく疲れにくい照明の開発を目指す。
この共同開発は経済産業省の「平成27年度 革新的ものづくり産業創出連携促進事業(戦略的基盤技術高度化支援事業)」として申請し、補助金の採択を受けた。事業期間は15年度から3年間(予定)で、補助金額は3年間で9750万円(予定)としている。
■15年3月期の営業損益悪化は一過性要因も影響
15年3月期の四半期別業績の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)14億85百万円、第2四半期(7月~9月)15億40百万円、第3四半期(10月~12月)15億21百万円、第4四半期(1月~3月)15億13百万円、営業利益は第1四半期55百万円、第2四半期1億01百万円、第3四半期50百万円の赤字、第4四半期8百万円だった。
売上面は概ね順調に推移したが、プロダクトミックスの悪化や役員退職慰労引当金繰入額の計上で期後半の営業損益が悪化した。なお15年3月期のROEは9.6%で14年3月期比4.4ポイント上昇、自己資本比率は39.3%で同1.3ポイント上昇した。配当性向は18.0%だった。
■16年3月期第3四半期累計は営業増益
今期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比3.9%減の43億70百万円、営業利益が同13.8%増の1億21百万円、経常利益が同3.5%増の1億21百万円、純利益が同48.9%減の86百万円だった。
工業用ゴム事業、医療・衛生用ゴム事業とも減収だったが、前期に発生した医療・衛生用ゴム事業一部製品の品質管理に係るコストが一巡して営業増益だった。売上総利益は同10.7%減少した。売上総利益率は23.6%で同1.8ポイント低下した。販管費は同13.1%減少した。販管費比率は20.8%で同2.2ポイント低下した。特別利益では前期計上の受取保険金1億14百万円が一巡した。
セグメント別に見ると、工業用ゴム事業は売上高が同2.9%減の35億62百万円、営業利益(連結調整前)が同44.6%減の1億99百万円だった。自動車用「ASA COLOR LED」は、第1四半期まで自動車メーカーの生産調整の影響を受けたが、第2四半期以降は海外向けが増加した。機能製品であるRFID用ゴム製品は、海外向けで新機種対応の受注調整が続いて大幅減少した。スポーツ用ゴム製品である卓球ラケット用ラバーは、第2四半期までの顧客側の在庫調整の影響で減少したが、第3四半期から回復傾向のようだ。マイクロ流体デバイス関連の受注は微増だった。
医療・衛生用ゴム事業は、売上高が同8.0%減の8億08百万円、営業利益が同47.6%増の83百万円だった。プレフィルドシリンジ用ガスケット、採血用・薬液混注用ゴム栓を販売している一部顧客における生産調整の影響で減収だったが、前年同期に発生した一部製品の品質管理に係るコストが一巡して大幅増益だった。
なお四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)13億96百万円、第2四半期(7月~9月)15億02百万円、第3四半期(10月~12月)14億72百万円、営業利益は第1四半期26百万円、第2四半期49百万円、第3四半期46百万円だった。
■16年3月期業績予想は2回目の減額修正だが、修正後も大幅営業増益
今期(16年3月期)通期の連結業績予想については2月8日に減額修正を発表した。前回予想(11月9日に減額修正)に対して売上高を2億40百万円、営業利益を91百万円、経常利益を77百万円、純利益を48百万円減額した。
減額要因は、工業用ゴム事業において自動車用「ASA COLOR LED」の受注が前回予測時点に比べて減少していること、RFID用ゴム製品の受注回復が遅れていること、さらにマイクロ流体デバイスの受注が減少していることとしている。
修正後の今期(16年3月期)通期の連結業績予想は、売上高が前期比3.1%減の58億70百万円、営業利益が同74.4%増の2億円、経常利益が同63.6%増の2億円、純利益が同57.4%減の1億40百万円としている。売上高を減額したが、前期発生した医療・衛生用ゴム事業一部製品の品質管理に係るコストが一巡して営業増益予想だ。純利益は前期計上の特別利益(受取保険金)が一巡して減益予想だ。
配当予想(5月12日公表)は前期と同額の年間13円(第2四半期末3円、期末10円)としている。予想配当性向は41.5%となる。
修正後の通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が74.5%、営業利益が60.5%、経常利益が60.5%、純利益が61.4%である。16年3月期は顧客側の生産調整・在庫調整の影響を受けたが、17年3月期の需要回復に期待したい。
■中期経営計画を見直し17年3月期営業利益8億円目標
2月23日に第11次3ヵ年中期経営計画(V-1計画)(14年5月策定、15年3月期~17年3月期)の見直しを発表した。
ライフサイエンス分野のマイクロ流体デバイス製品について、最終年度17年3月期売上高目標を12.5億円としていたが、売上比率を高く設定していた主力案件の受注が計画を大幅に下回る見込みとなったことや、他の開発案件の量産開始も遅れる見込みとなった。さらに今後に事業環境を勘案した結果、17年3月期の経営目標数値を従来の売上高80億円(自動車分野37億円、医療分野13億円、ライフサイエンス分野16億50百万円、その他13億50百万円)、営業利益8億円について、売上高60~65億円とし、営業利益については精査中とした。マイクロ流体デバイスの売上目標は17年3月期1億円以上とした。なおマイクロ流体デバイスを生産する新工場についても着工・竣工予定を延期した。
なお20年3月期を見据えた長期ビジョンを「AR-2020VISION」として、前半3ヵ年(15年3月期~17年3月期)を第1ステージ「V-1計画」、後半3ヵ年(18年3月期~20年3月期)を第2ステージ「V-2計画」と位置付けている。そして中期経営方針については、既存事業の質・量の継続的成長(国内事業は質的成長、海外事業は量的成長)、新市場・新分野への事業展開、20年に向けた事業基盤の強化・整備としている。
■従業員持株ESOP信託を導入
なお15年7月に従業員インセンティブプラン「従業員持株ESOP信託」導入を発表し、15年11月に詳細を発表している。朝日ラバー従業員持株会に加入する従業員のうち一定の要件を充足する者を受益者とする信託を設定し、当該信託は今後5年間にわたり当社持株会が取得すると見込まれる数の当社株式を予め定める期間中に取得(取得株式の総額77百万円、取得期間15年11月19日~15年12月22日)する。その後、当該信託は当社株式を毎月一定日に当社持株会に売却する。
■株価は下値固め完了感
株価の動き(15年12月16日付で貸借銘柄)を見ると、地合い悪化に16年3月期業績予想および中期計画の減額修正も嫌気して安値圏だ。2月24日には595円まで下押した。ただし15年8月の昨年来安値562円を割り込むことなく、その後は600円台で推移して下値固め完了感を強めている。
3月18日の終値637円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS31円35銭で算出)は20~21倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間13円で算出)は2.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS794円03銭で算出)は0.8倍近辺である。時価総額は約29億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線突破の動きを強めている。0.8倍近辺の低PBRに割安感があり、反発のタイミングだろう。