【アナリスト水田雅展の銘柄診断】テラは調整一巡感、中期成長力を評価して出直り展開

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

独自開発のがん治療技術を医療機関に提供するテラ<2191>(JQS)の株価は、11月25日の1686円から12月25日の1322円まで調整したが、1300円近辺が下値支持線の形となり、1400円台に戻して調整一巡感を強めている。樹状細胞ワクチン「バクセル」薬事承認取得に向けた開発活動本格化が注目され、中期成長力を評価して出直り展開だろう。

東京大学医科学研究所発のバイオベンチャーで、細胞医療事業(樹状細胞ワクチン「バクセル」を中心とした独自開発のがん治療技術を契約医療機関に提供)を主力として、医薬品事業(樹状細胞ワクチン「バクセル」の薬事承認取得に向けた開発活動)、および医療支援事業(研究機関・医療機関から受託する細胞加工施設の運営・保守管理サービス、細胞培養関連装置の販売、治験支援サービス)を展開している。

樹状細胞ワクチン「バクセル」は、最新のがん免疫療法として注目されている。樹状細胞(体内に侵入した異物を攻撃する役割を持つリンパ球に対して、攻撃指令を与える司令塔のような細胞)を体外で大量に培養し、患者のがん組織や人工的に作製したがんの目印である物質(がん抗原)の特徴を認識させて体内に戻すことで、樹状細胞からリンパ球にがんの特徴を伝達し、そのリンパ球にがん細胞のみを狙って攻撃させる。そして独自技術で改良を重ね、がん治療用として最適化した。

細胞医療事業は契約医療機関における症例数に応じた収入が収益柱で、契約医療機関における累計症例数は14年6月末時点で約8250症例に達している。なお14年11月に3医療機関と新たに連携契約を締結し、契約医療機関数は全国で合計36カ所となった。

成長に向けたM&A・アライアンス戦略も加速している。13年4月iPS細胞による再生医療実用化を目指すヘリオスに出資、13年5月がん新薬を中心とした治験支援事業に参入するため子会社タイタンを設立、13年7月アンジェスMG<4563>と子宮頸がんの前がん病変治療ワクチンの共同研究・開発基本契約を締結、13年12月iPS細胞を利用したがん免疫細胞療法の開発に向けてヘリオスと業務提携した。

さらに14年1月樹状細胞ワクチン「バクセル」の薬事承認取得を目指して子会社テラファーマを設立、14年2月ゲノム診断支援事業に向けてゲノム解析ソフトウェア開発のジナリスと合弁子会社ジェノサイファーを設立、14年4月組織培養用培地のパイオニアであるコージンバイオに出資して資本業務提携した。14年8月には少額短期保険業者のミニンシュラーを子会社化(14年12月に商号をテラ少額短期保険に変更)して保険事業に参入した。15年2月から免疫保険の販売を開始する。

なお1月8日には樹状細胞ワクチン「バクセル」について、局所再発胃がんに対する症例報告が、英国の腫瘍外科専門学術誌「World Journal of Surgical Oncology」に掲載されたと発表している。医療法人社団医創会セレンクリニック名古屋(愛知県名古屋市)における胃がん手術後再発症例で、樹状細胞ワクチン「バクセル」の内視鏡を用いた投与が計7回行われ、最終投与から1ヶ月後に腫瘍は縮小し、組織生検の結果ではがん細胞の消失が確認されたとしている。

前期(14年12月期)の連結業績見通し(8月1日に減額修正)は、売上高が前々期比32.5%増の20億40百万円、営業利益が3億16百万円の赤字(前々期は23百万円の黒字)、経常利益が3億51百万円の赤字(同24百万円の赤字)、純利益が3億24百万円の赤字(同58百万円の赤字)としている。

医療支援事業での細胞培養関連装置新規受注などが寄与して大幅増収見通しだが、樹状細胞ワクチン「バクセル」の薬事承認取得に向けた開発活動本格化による経費増加、さらに新規事業立ち上げ費用などが影響して各利益は赤字の見通しだ。ただし樹状細胞ワクチン「バクセル」薬事承認取得に向けた開発活動本格化が注目される。

13年5月公布の「再生医療推進法」の理念のもと、14年11月には「医薬品医療機器等法(旧薬事法の改正)」および「再生医療等安全性確保法」の再生医療関連2法が施行され、再生医療・細胞医療の早期実用化の促進が期待されている。樹状細胞ワクチン「バクセル」に関しては「医薬品医療機器等法」に基づき、がん治療用再生医療等製品として早期承認制度を活用した薬事承認取得に向けて開発体制整備を強化し、15年度中に治験届の提出を目指すとしている。中期成長に対する期待感が高まる。

株価の動きを見ると、11月25日の1686円から反落して12月25日の1322円までほぼ一本調子に調整した。ただし足元では1400円台に戻して調整一巡感を強めている。週足チャートで見ると52週移動平均線が戻りを押さえて上値を切り下げる展開だったが、一方では14年8月1305円、10月1332円、12月1322円が下値支持線の形となった。中期成長力を評価して出直り展開だろう。

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